多層建て列車

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多層建て列車の例:はこね・えのしま

多層建て列車(たそうだてれっしゃ)とは、ある列車が始発駅から終着駅まで運転する間に、異なる始発駅の列車あるいは異なる終着駅の列車と相互に分割併合しながら運転する列車をいう。建物の階層に例えて、2つの列車に分割されるものを2階建て、3つに分割されるものを3階建てのように称す。

新幹線並行在来線のような多層建て路線網や、Maxのような車両自体が2階建ての列車を意味するものではない。

当項目では日本における事例を主題として解説する。

長所および短所[編集]

多層建て列車の長所としては、次のようなものがある。

  1. 支線区へ乗換えなしで直通運転が実施できるため、乗客にとって乗換えの手間、時間を節約できる。
  2. 線路容量に余裕がない場合、複数の列車を統合することにより線路容量の有効活用を図ることができる。
  3. 前項と同じ理由で、乗務員の効率的運用を図ることができる。
  4. 本線と支線で輸送量に差がある場合、編成の長さを増減することで輸送力の適正化を図ることができる。

一方、次のような短所もある。

  1. 列車系統と列車ダイヤの整合が困難。本線と支線区の有効時間帯を合わせるのが困難である。
  2. 分割併合のための構内作業が(機関車連結の必要のため客車列車では特に)複雑となる。また自動解結装置自動連結装置を有していない車両については、連結や解結のための要員が必要になる。
  3. 分割併合を行う駅で停車時間が増える。
  4. 分割併合を行う駅では誘導信号機などの設備が必要となる。
  5. 異常時の運転手配が複雑。併結する列車が遅れた場合、その遅れが正常運転している列車にも波及してしまう。また、単独運転する場合は、乗務員の手配が必要となる(すなわち、運転整理面において不利になる)。
  6. 行き先の違う車両を併結するため、駅や車内での旅客への案内が煩雑になり、乗客の車両乗り間違いの虞れがある。
  7. 運転台付きの車両が増えるため、乗車定員が減る。
  8. 上記各短所も然ることながら、車体塗色や形態・設備の異なる車両(例 : 急行型車両と一般型車両)を混結する列車の場合もあり、(列車自体の)見た目の統一感が損なわれてしまいかねない。特に非電化区間で顕著であった。

国鉄時代には、7 - 8列車が関係するような大規模なもの(急行「陸中」など)も見られたが、新幹線の開業により接続駅からの乗換え連絡に改められたり準急・急行列車自体の減少などがあり、その数を減らしていった。

JR発足後は、一転して分割併合運用を前提とした装備を持つ車両が多数新造されるようになり、ミニ新幹線による新在直通など積極的に支線区への直通を実施する例が見られる。

多層建て列車の例[編集]

以下の()内の区間は複数の列車を併結運転している区間。

2階建て列車[編集]

2つの列車を併結運転している例

JR[編集]

原則として、列車名のあるものについて示す。

新幹線[編集]
東北新幹線(東日本旅客鉄道)[編集]

東北新幹線では多くの列車で、“ミニ新幹線+フル新幹線”の二階建て列車を構成しているが、ここでは代表的な列車を列挙する。

上越新幹線(東日本旅客鉄道)[編集]
在来線の特急列車[編集]
快速列車[編集]
普通列車[編集]
  • 大垣浜松武豊行き
    • 平日に1本のみ運転。大府駅で切り離され、前4両が浜松行き、後ろ4両が武豊行きになる。
  • 広島備後庄原府中行き
    • 毎日朝1本のみ運転。三次駅で切り離される。休日は備後庄原行きが三次止まりとなるため、編成の切り離しのみとなる。

私鉄[編集]

小田急電鉄[編集]
西武鉄道[編集]
東武鉄道[編集]
  • 東武本線
    • 東武500系電車が運用される各特急列車: 浅草駅 - 下今市駅間など(野岩鉄道会津鉄道直通列車有り)
      2017年4月21日ダイヤ改正で運行開始。500系の開発コンセプトは「さまざまな運行形態で運用可能な速達性と快適性を持った特急列車」であり[3]、1編成3両固定の併結・分割を可能とした仕様で導入されているため[3]、途中駅で分割・併合を行う列車が存在する[4]。具体的には以下の通り。
      リバティけごん:浅草駅 - 東武日光駅・新栃木駅
      ・リバティきぬ:浅草駅 - 鬼怒川温泉駅・新藤原駅
      ・リバティ会津:浅草駅 - 会津田島駅
      リバティりょうもう:浅草駅 - 館林駅(全日下りのみ)
      スカイツリーライナー:浅草駅 - 春日部駅(途中駅で分割・併合を行わない)
      アーバンパークライナー:浅草駅 - 大宮駅・野田市駅および大宮駅 - 運河駅(平日のみ)
      以下に列車の分割・併合の具体的な区間を示す[4]
      ・浅草駅 - 下今市駅間:リバティけごん+リバティきぬ、リバティけごん+リバティ会津(下今市駅で分割、終日)
      ・浅草駅 - 東武動物公園駅間:リバティけごん+リバティりょうもう(東武動物公園駅で分割、全日下りのみ)
      ・浅草駅 - 春日部駅間:アーバンパークライナー(春日部駅で大宮駅行き・野田市駅行きに分割、平日下りのみ)
名古屋鉄道[編集]
  • 公式に案内のあるものは、夕方・夜間のミュースカイ中部国際空港駅 - 犬山駅間)と、朝時間帯の一部列車のみである。
  • その他、途中駅で分割した編成をその駅始発の列車として扱うものがあるが、これらの列車は特に時刻表などでの案内はなく、事前に車内アナウンスなどで知らされるのみである。
近畿日本鉄道[編集]

3階建て列車[編集]

2011年3月11日(3階建て運行最終日)時点の編成図
かもめ・みどり・ハウステンボス
← 長崎・早岐・ハウステンボス
佐世保/博多 →
列車名
区間
「かもめ」
博多駅 - 長崎駅間
「ハウステンボス」
博多駅 - ハウステンボス駅間
「みどり」
博多駅 - 佐世保駅間
号車 1 2 3 4 5 7 8 9 10 11 12 13 14
座席 G G G
  • 各号車とも長崎・早岐・ハウステンボス寄りのA室と佐世保/博多寄りのB室に分かれる
  • 「かもめ」「ハウステンボス」の一方を連結しない場合がある
  • 7 - 10号車は「みどり」として運転する場合がある
  • 「かもめ」「みどり(・ハウステンボス)」は肥前山口駅で分割・併合
  • 「みどり」「ハウステンボス」は早岐駅で分割・併合、「みどり」は進行方向を変える
座席種類
G=グリーン車座席指定席
指=普通車座席指定席
自=普通車自由席

新幹線が開業する以前は東北地方を中心に3階建て以上を組む列車も存在したが、新幹線開業に伴う急行列車を中心とする優等列車の整理・廃止に伴いこうした列車は少なくなり、2011年3月12日のJRダイヤ改正により日本国内において定期運行の3階建て列車は存在しなくなった。

2012年3月時点における日本最後の定期運行の3階建て列車は、1992年3月25日から2011年3月11日まで鹿児島本線・長崎本線の博多駅 - 肥前山口駅間で併結運転を行っていた「かもめ・みどり・ハウステンボス」である。この併結は1976年の長崎本線・佐世保線電化に伴い運行を開始した「かもめ・みどり」の2階建て列車が母体で、1992年に「ハウステンボス」が運行を開始した際、博多駅 - 早岐駅間で「みどり」に併結することになったことから、列車によっては3階建て列車を組むことになった。なお、従来通りの「かもめ・みどり」の2階建て列車や、「かもめ」を欠いた「みどり・ハウステンボス」の2階建て列車も存在したほか、2000年代に入ると「ハウステンボス」編成を連結した「みどり」が「かもめ」と併結する場合も見られるようになった。車両は2000年3月10日までは485系電車、それ以降は783系電車が用いられていた。

2011年3月12日のダイヤ改正で「かもめ」が全列車単独運転となったことから、現在は「みどり・ハウステンボス」の2階建て列車のみが存続している。2017年3月4日のダイヤ改正では「有明」と併結を組む形で「かもめ」の2階建て列車が復活した。

廃止された多層建て列車の主なもの(列車自体は存続したものを含む)[編集]

国鉄民営化以前[編集]

JR各社[編集]

JR以外の私鉄[編集]

  • 京浜急行電鉄快特三崎口行(下り)の一部列車は、品川(または京急川崎) - 金沢文庫間を12両編成で走り、そのうち4両を金沢文庫で切り離し、普通浦賀行または新逗子行になっていたが(上りはその逆で、京急川崎で切り離した4両は特急羽田空港行きとして運転)、この運転方式は2010年5月16日のダイヤ改正で廃止された[5]
  • 東武鉄道
    • 快速・区間快速 : 浅草駅 - 下今市駅間など(野岩鉄道・会津鉄道直通列車有り)
      2006年ダイヤ改正までは、一部の区間急行において、新栃木駅東武宇都宮線直通列車と分割・併合する運用が存在した。
      2013年ダイヤ改正までは、朝ラッシュ時の上り区間急行は、南栗橋駅館林駅で後方4両を増結して北千住駅まで10両で運転した。このうち浅草駅行きは北千住駅で後方4両を解結していた。同改正をもって10両編成の区間急行は廃止され、この運用も廃止された。
      2017年4月21日ダイヤ改正で快速・区間快速が種別廃止となったため[6]、東武鉄道が運行する一般列車においては、分割・併合運用が完全に消滅した。

分割の案内例[編集]

分割する際の乗り間違いを防ぐために以下の方法を用いるところもある。

  • 乗車位置に列車名や行き先を明記する。
  • 号車番号をドア上など目立つところに貼り付け、その番号を用いて案内する。
    また号車番号の標記を行き先・編成毎で切り替える方法もある。2015年現在では、「はやぶさ(E5系)・こまち(E6系)」や「やまびこ(E2系)・つばさ(E3系)」の事例がある[7]
    • かつて「きのくに」で天王寺駅発着は数字・南海難波駅発着はアルファベットで付番していた。現在では近鉄の京橿特急・京奈特急を併結する京奈特急にアルファベットで付番している。
  • 客室にも列車名や行き先を表示する。
    東北地方の気動車急行で採用され、東武日光線系統で運行していた快速・区間快速(6050系電車)でこの方式が採用されている[8]
  • 側面の行先表示装置に「この車両は○○行き(この車両○○まで)」を追記する。
    JR東日本常磐線快速電車E231系成田線直通列車で、常磐線区間の上野駅 - 我孫子駅間のみを運行する列車との区別で使われている。この場合、前面は、最終行先の「成田」を表示し、側面にその車両の行先を表示している。
    西武鉄道で採用された方式で、主に池袋発の秩父鉄道直通列車で見られる。なお、2013年3月16日まで新宿線系統では拝島線等への多層建て列車も存在し、このような表記で存在した。
    近畿日本鉄道(一般車および22000系以降の特急車のみ)・阪神電気鉄道では「この車両○○まで」、阪急電鉄では「この車両は○○まで」と表記。
    かつて設定されていた近鉄南大阪線の大阪阿部野橋発、富田林・橿原神宮前行き準急の場合「前部(後部)車両は橿原神宮前(富田林)行き」。
    阪神の車両の場合、行き先と交互に表示される。
    南海電気鉄道ズームカーによる大運転では、場合は「後部X両橋本三日市町または河内長野)」と表示される。
    阪急の場合、切り離される編成の行先表示は、英語表記のみ切り離される駅のものとなっている。
  • ホームに「分割案内板」などの切り離し位置を示す看板を用意する。
    小田急電鉄の事例が広く知られており、かつては編成パターンに応じてA~Eまでの分割案内板が設置されていた。
  • 車両の座席や吊革などを行き先別に別の色にする。
    京王電鉄が採用した方法で、新宿発の特急で高尾山口京王八王子の各方面に分割される列車では、京王八王子行きの編成の吊革の色を緑色に変えている。なお、2006年9月以降は分割・併合運転は実施されていないが、かつて分割・併合運転を行っていた8000系車両の一部に緑色の吊革を持つ編成が残る。この方式であれば、一括放送でも「吊革の色が白(あるいは緑)の車両は高尾山口行き」など、的確な案内が可能となる。
    • なお、5000系電車による4連+3連、ならびに6000系電車の5連+3連では高尾山口行き3連が緑色の吊革であった。
  • 車両のアナウンスを、内容に応じて流す車両・流さない車両を切り替える(編成別放送)。
    小田急電鉄などで採用されていた方法で、小田急の場合1000形のうち8両固定・10両固定の編成2000形以外の通勤車全車両に「分割放送装置」が設置されている。全車一斉・前編成・後編成と放送する対象車両を選択可能。なお、現在は活用されておらず、号車番号での案内になっている。ただし3000形の近年の増備車では、液晶ディスプレイにより視覚的な案内を行なっている。
    京浜急行電鉄では都営地下鉄浅草線直通列車と品川止まり列車、三崎口方面行き列車と浦賀新逗子方面行き列車が併結されている品川駅もしくは京急川崎駅 - 金沢文庫駅間で分割放送装置を活用している。
    近畿日本鉄道では多層建て列車に対して分割放送装置を活用している(同社では途中駅での増解結列車でも活用)。
    211系電車では、車両個別に放送する対象車両を選択可能になっていたが、高崎線東北線(宇都宮線)では幌をつなぐことで、隣の編成の放送が聞こえてしまうことがあることから、あまり活用されていなかった。

現在の増解結列車[編集]

多層建て列車に似たケースとして、1つの列車の一部編成を途中駅で増結または解結することが挙げられるが、この場合は多層建て列車とはみなされない。「一部編成の増解結」も輸送力の調整法としてよく行われており、1960 - 80年代の東北地方の急行列車では多層建て列車と組み合わせての車両運用もよく見られた(詳しくは増解結の項を参照)。しかし1980年代以降の新幹線開業や、それに伴う優等列車の系統整理により、こうした列車は急速に数を減らしていった。

2017年3月現在、JRグループの優等列車で、多層建て列車を組みかつ一部編成の増解結を行う列車としては、特急「ひだ5号」が挙げられる。特急「ひだ5号」は名古屋駅発であるが、岐阜駅大阪駅発の「ひだ25号」を連結する。高山駅で「ひだ25号」を解結し、「ひだ5号」のみで終着の飛騨古川駅に向かう。大阪駅 - 大垣駅間で「ひだ25号」に乗車し、飛騨古川駅まで行く場合はいずれも車両の移動が必要となるが、特急料金は直通するものとして計算される[9]

2011年3月11日までは「しおかぜ9・22号」(運行は21号と同様)「みどり23号」(肥前山口駅で「かもめ」と分割し、早岐駅で一部編成を解結する)も多層建て列車で一部編成の増解結を行う列車だったが、2011年3月12日のダイヤ改正により「しおかぜ9・22号」は松山駅発着となり、「みどり23号」は「かもめ」との併結がなくなったため、それぞれこのパターンからは外れた。

また、2016年3月25日までは、岡山駅宇和島駅行きの特急「しおかぜ21号」(岡山駅を5両で発車するが、宇多津駅高松駅からの「いしづち21号」(2両)を併結。宇多津駅から松山駅間は7両で運転するが、松山駅で「しおかぜ」の後ろ2両および「いしづち」を解結し、3両で宇和島駅に向かう。)も多層建て列車で一部編成の増解結を行う列車だったが、2016年3月26日のダイヤ改正により「しおかぜ21号」は松山駅発着となり、このパターンからは外れた。

脚注[編集]

  1. ^ 2013年3月ダイヤ改正について (PDF) 2012年12月21日 JR東日本新潟支社からのお知らせ
  2. ^ 特急ロマンスカー時刻表(小田急電鉄ホームページ)”. 2015年1月4日閲覧。
  3. ^ a b “2017年春、東武本線に新型特急車両「500系」を導入します!” (プレスリリース), 東武鉄道株式会社, (2015年4月22日), http://www.tobu.co.jp/file/pdf/4c10174fc83e8d1045e7adde5e16c37a/150422.pdf 2017年3月24日閲覧。 
  4. ^ a b “2017年4月21日(金)ダイヤ改正を実施!東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線・東武アーバンパークライン【特急列車概要 】” (プレスリリース), 東武鉄道株式会社, (2017年1月18日), http://www.tobu.co.jp/file/pdf/b71449315c885fe96933bd12d8f48b8a/170118_1.pdf 2017年3月24日閲覧。 
  5. ^ 報道発表資料「5月16日(日)ダイヤ改正を実施します」(京浜急行電鉄ホームページ)”. 2015年1月4日閲覧。
  6. ^ “2017年4月21日(金)ダイヤ改正を実施!東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線・鬼怒川線など【特急列車以外の一般列車】” (プレスリリース), 東武鉄道株式会社, (2017年2月28日), http://www.tobu.co.jp/file/pdf/2647e3941996778a3a8afbb919eccd2f/170228_4.pdf 2017年3月24日閲覧。 
  7. ^ 東北新幹線と山形・秋田新幹線の場合、前者は1号車から、後者は11号車から車両の付番がされているが、当初より前者が「やまびこ」200系10両編成、後者が6両編成(「つばさ」400系登場時)を組んだ際に、新幹線直行特急(ミニ新幹線)列車へ10番台の号車番号を付番したことによる。のちにMaxE4系8両編成と組んだ「Maxやまびこ・つばさ」が存在したことで、車両番号が欠けた列車が存在した。
  8. ^ なお、東武6050系電車ではこのために車内に方向幕を設けたが、この他にも(設置している車両に限り)車内に設置しているLED表示器や液晶ディスプレイなどで対応が可能である。
  9. ^ 「しおかぜ」・「いしづち」の場合には、この列車に限らずどの列車においても特急料金は通しで発売される。