大手私鉄

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大手私鉄(おおてしてつ)とは、日本の民営鉄道事業者私鉄)の分類の一つで、特に経営規模の大きなもののこと。大手民鉄とも呼ばれ、他の私鉄とは区別される。国土交通省鉄道局などでも、統計資料を出す際にこの区分を用いている。

概要[編集]

大手私鉄各社は、経営規模(資本金営業キロ、輸送人員など)が大きく、4つの都市圏(東京名古屋大阪福岡)及びその周辺で通勤・通学輸送を分担しているという共通点があり、各種の統計や設備投資額で足並みをそろえている。

なお、JRで上場している本州3社(東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本))、及び九州旅客鉄道(JR九州)は株主構成から考えると「民間の鉄道」に当たり、また営業キロにおいてはJR旅客6社とも大手私鉄を上回っているが、国鉄から分割民営化されたという歴史的経緯から、JRグループ各社は大手私鉄には含まれない。

歴史[編集]

「大手」という区分の誕生[編集]

私鉄における「大手・中小」の区分は日本私鉄労働組合総連合会(私鉄総連)における賃金交渉の過程で生まれた[1]。まず中央労働委員会による1951年(昭和26年)の調停により「会社規模・立地条件・労働生産性・人件費率」などを考慮して個別に賃金を決める方法が提示され、翌1952年(昭和27年)の調停案ではより具体的に関東5社(東武鉄道東京急行電鉄京浜急行電鉄京王帝都電鉄京成電鉄[注釈 1]、関西5社(京阪神急行電鉄京阪電気鉄道近畿日本鉄道阪神電気鉄道南海電気鉄道)の計10社の賃金増額率を他と区別した(10社は24 - 26%、他は20%増)[1]。そして1953年(昭和28年)の調停案では10社に名古屋鉄道西日本鉄道を加えて「大手12社」と明示した[1]。私鉄の春闘を報じた新聞各社でも1952年頃より「大手筋十社[3]」(朝日新聞)、「十大私鉄[4]」(読売新聞)などと表現されるようになり、1954年の春闘報道において「大手十三社[5][注釈 2]」(朝日新聞)、「東京の大手私鉄[6]」(読売新聞)と、「大手」「大手私鉄」といった表現が登場している。

当初は労使交渉における基準でしかなかった「大手・中小」の区分はその後他の場でも用いられるようになり、「大手私鉄」という語句も次第に一般化していった[1]

各社の成立[編集]

今日「大手私鉄」とされる各社がその企業群の姿になったのは、陸上交通事業調整法によって私鉄各社の統合が図られたのち(1945年末時点では東武鉄道・西武農業鉄道・京成電鉄・東京急行電鉄(大東急)・名古屋鉄道・近畿日本鉄道・京阪神急行電鉄・阪神電気鉄道・西日本鉄道の9社)、戦後の1947年6月1日に南海電気鉄道が近畿日本鉄道から、1948年6月1日に京王帝都電鉄・小田急電鉄・京浜急行電鉄が東京急行電鉄から、1949年(昭和24年)12月1日に京阪電気鉄道が京阪神急行電鉄から分離した結果で、この時点で14社となった。

その後、1990年5月31日には相模鉄道が大手私鉄に昇格して15社体制に、2004年4月1日には特殊法人帝都高速度交通営団から事業を継承した東京地下鉄株式会社が大手私鉄に加わって16社体制になり、現在に至っている。

大手私鉄の一覧[編集]

  • 本社所在地、設立年および掲載順序は『平成26年度 鉄道要覧』による[7](設立年の出典は一部例外あり)。
  • 資本金、鉄軌道営業収益、旅客営業粁程、旅客車両数、駅数、旅客輸送人員は特記を除いて『大手民鉄データブック』による(2015年3月31日現在)[8](資本金の出典は一部例外あり)。
No. 会社ロゴ 会社名
(略称)
本社所在地 設立 資本金
(百万円)
鉄軌道
営業収益
(百万円)
旅客営業
粁程
(km)
旅客
車両数
(両)
駅数
(駅)
旅客
輸送人員
(千人)
備考
1
Tōbu Tetsudō Logo.svg
東武鉄道
(東武)
東京都
墨田区
1897年明治30年)
11月1日
102,135 157,613 463.3 1,914 203 885,047 創立は大手私鉄の中で一番古い[注釈 3]関東最大の私鉄。
2
SeibuRailway logo.svg
西武鉄道
(西武)
埼玉県
所沢市[注釈 4]
1912年(明治45年)
5月7日
21,665 99,147 176.6 1,274 92 628,496 2006年3月27日より西武ホールディングスの完全子会社となる。
3
Keisei Logo.svg
京成電鉄
(京成)
千葉県
市川市
1909年(明治42年)
6月30日
36,803 59,499 152.3 598 69 266,439
4
KeioRailway logo.svg
京王電鉄
(京王)
東京都
多摩市
1948年昭和23年)
6月1日
59,023 81,908 84.7 843 69 632,728 1975年5月5日までは総営業距離が最短の大手私鉄であった。
5
TokyuLogotype.svg
東京急行電鉄
(東急)
東京都
渋谷区
1922年大正11年)
9月2日
121,724 151,723 104.9 1,208 97 1,116,309 連結売上高が1位の私鉄(鉄軌道営業収益は事業全体の55%)[注釈 5]
6
Keikyu logo.svg
京浜急行電鉄
(京急)
東京都
港区[注釈 6]
1948年(昭和23年)
6月1日
43,738 80,532 87.0 790 73 448,563
7
Tokyo Metro logo (full).svg
東京地下鉄
(東京メトロ)
東京都
台東区
2004年平成16年)
4月1日
58,100 348,717 195.1 2,702 179 2,494,829 2004年4月1日より大手私鉄に。車両数、鉄軌道営業収益、輸送人員は大手私鉄最多。
8
Odakyu electric railway company logos.svg
小田急電鉄
(小田急)
東京都
新宿区
1948年(昭和23年)
6月1日
60,359 117,242 120.5 1,054 70 729,227
9
SOTETSU logo horizontal.svg
相模鉄道
(相鉄)
神奈川県
横浜市西区
1964年(昭和39年)
11月24日
100 32,270 35.9 398 25 224,571 1990年5月31日より大手私鉄に。総営業距離が最短の大手私鉄。2009年9月16日より相鉄ホールディングスの完全子会社となる。
10
Meitetsu logo.svg
名古屋鉄道
(名鉄)
愛知県
名古屋市中村区
1921年(大正10年)
6月13日
88,863 86,836 444.2 1,060 275 360,113
11
Kintetsulogo.png
近畿日本鉄道
(近鉄)
大阪府
大阪市天王寺区
2014年(平成26年)
4月30日
100 153,943 508.1 1,919 294 563,612 総営業距離が最長の私鉄。2015年4月1日より近鉄グループホールディングス(旧・近畿日本鉄道)の完全子会社となる。設立年、資本金は体制移行後のもの(2015年4月現在)[9]
12
Nankai logo.svg
南海電気鉄道
(南海)
大阪府
大阪市浪速区
1925年(大正14年)
3月28日
72,983 56,075 154.8 702 100 227,031 現存する最古の純民間による私鉄。
13
Keihan railway logo.svg
京阪電気鉄道
(京阪)
大阪府
大阪市中央区
2015年(平成27年)
4月1日
100 52,675 91.1 703 89 280,508 2016年4月1日より京阪ホールディングス(旧・京阪電気鉄道)の完全子会社となる。設立年、資本金は体制移行後のもの(2016年4月1日現在)[10]
14
Hanshin-logo.svg
阪神電気鉄道
(阪神)
大阪府
大阪市福島区
1899年(明治32年)
6月12日
29,384 33,932 48.9 358 51 227,204 1975年5月6日から1990年5月30日までは総営業距離が最短の大手私鉄で、2008年までは車両数が最小の大手私鉄であった[11]2006年10月1日より阪急阪神ホールディングス(旧・阪急ホールディングス)の完全子会社となる。
15 阪急電鉄
(阪急)
大阪府
大阪市北区
2005年(平成17年)
4月1日
100 100,360 143.6 1,307 90 627,537 2005年4月1日より阪急ホールディングス(現・阪急阪神ホールディングス、旧・阪急電鉄)の完全子会社となる。
16
Nishitetsu logo vector.svg
西日本鉄道
(西鉄)
福岡県
福岡市中央区
1908年(明治41年)
12月17日
26,157 21,133 106.1 334 72 99,258 三大都市圏以外で唯一の大手私鉄。車両数、鉄軌道営業収益、輸送人員は大手私鉄最少。

大手私鉄15社[編集]

  • 上の一覧表から東京地下鉄を除いた15社を大手私鉄と呼ぶこともある。これは東京地下鉄が現在、国と東京都のみが株主の特殊会社であるためである。「鉄道事業者#大手私鉄・準大手私鉄・中小私鉄の区分」も参照。
  • 阪急電鉄と阪神電気鉄道はいずれも、2006年10月1日より阪急阪神ホールディングスの完全子会社であるため、この2社が一括して1社とされる場合もある。そのため全体で15社にしている場合がある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 西武鉄道小田急電鉄はこの年の春闘に参加していなかった[2]
  2. ^ 「13社」とは1953年調停案の12社に帝都高速度交通営団を加えた数で、西武鉄道・小田急電鉄は引き続きストを行っていないため除外されている。
  3. ^ また明治期に発足した私鉄のうち、創立以来社名を一度も変更していない
  4. ^ 2019年度にかつての本社所在地(東京都豊島区)に移転予定。
  5. ^ JR6社を含めた場合は3位
  6. ^ 2019年度に本社を神奈川県横浜市西区みなとみらいに移転予定。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 名古屋鉄道広報宣伝部(編) 『名古屋鉄道百年史』 名古屋鉄道、1994年、236頁。
  2. ^ 朝日新聞1952年3月22日朝刊3頁
  3. ^ 朝日新聞1952年4月18日朝刊1頁
  4. ^ 読売新聞1952年4月17日朝刊
  5. ^ 朝日新聞1954年4月10日朝刊
  6. ^ 読売新聞1954年5月2日朝刊
  7. ^ 国土交通省鉄道局(監) 『平成26年度 鉄道要覧』 電気車研究会、2014年。ISBN 978-4-88548-125-3。
  8. ^ 大手民鉄の現況(単体) (PDF)”. 日本民営鉄道協会. 2016年9月19日閲覧。
  9. ^ 会社概要 - 近畿日本鉄道
  10. ^ 会社概要 - 京阪電気鉄道
  11. ^ 大手民鉄データブック「大手民鉄の素顔」”. 日本民営鉄道協会 (2009年10月). 2016年10月2日閲覧。

関連項目[編集]

  • みんてつWeb(社団法人 日本民営鉄道協会の公式サイト)