新垣隆

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新垣 隆
基本情報
出生 1970年9月1日(44歳)
出身地 日本の旗 日本 東京都
学歴 桐朋学園大学音楽学部作曲科卒業
ジャンル クラシック現代音楽
職業 作曲家ピアニスト
共同作業者 佐村河内守

新垣 隆(にいがき たかし、1970年(昭和45年)9月1日[1] - )は、日本作曲家ピアニスト[2]

経歴[編集]

ヤマハ音楽教室千葉県立幕張西高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部作曲科卒業[3]。作曲を三善晃、南聡、中川俊郎、ピアノを森安耀子に師事した[2]。無声映画伴奏楽団カラード・モノトーンに参加[2]アンサンブル・ジェネシスのレジデント・コンポーザーである。元・桐朋学園大学音楽学部作曲専攻非常勤講師[4][5]

人物評[編集]

若い頃の新垣を知る現代音楽家の渋谷慶一郎[6]は、新垣が自身の名義で発表した作品については「演奏する人だから、奇抜なことをしても曲に運動神経があって面白かった」[7]と語り、「非常に優秀なピアニストで作曲家」[8]「俗世の欲のようなものからは果てしなく遠い人物」[9][6]と、新垣の記者会見後に評している。

作曲家の伊東乾は、新垣について「新垣隆君は、日本で芸術音楽の作曲に関わる者で知らない人のない、彼の世代のトップランナーの1人として20代前半から注目されてきた芸術家です。」[10]と書いている。また「誠実で、普段は控えめで、人間性はとても優しく、しかし音楽の主張は明確で、素晴らしい耳と手を持つ高度なピアニスト、ピアノ教授でもあり、つまるところ、彼の悪口を言うような人が、ちょっと思い浮かばないような第一人者です」[10]とも評している。

新垣隆が佐村河内守のゴーストライターであることを暴露する記事を『週刊文春』に書いたノンフィクション作家の神山典士は、「自室には民族音楽を含めて世界中の音楽のCDや楽譜が山積みになり、80年代のアイドル歌謡曲や演歌などにも詳しい。つまり、音楽オタク」と書いている[11]

作曲作品[編集]

  • ピアノソナタ(1985-86年)[12]
  • 郊外(6手Pf、2002年)
  • 木管五重奏曲「明るい街角で」(2013年)[12]
  • 序奏、ロンド〜螺旋 あるいはソナチネ第2番 ピアノのための(Pf、2013年、佐藤祐介委嘱)[12]
  • 「ぼくらはオコジョのおまわりさん」(Sp, Vn, Pf きむらゆういちの同名の絵本による)[12]
  • 「インヴェンション あるいは 倒置法 II」
  • 「インヴェンション あるいは 倒置法 III」
  • 男声合唱曲「連辞一層次II」
  • 周辺域-Periphery:CD『糸』(Fontec)に収録
  • 交響曲HARIKOMI
    • 2014年6月25日、『週刊文春』の依頼を受ける形で「交響曲HARIKOMI」を作曲することが、ニコニコ動画のイベントで発表された。これは『週刊文春』のテーマ曲として依頼され、「取材対象が現れるのを息を潜めて待ち続ける――。その緊張感、焦燥感、そしてターゲットに直撃する時の高揚感をイメージした曲をぜひ作っていただきたい」と要望している[13]
  • モーツァルトピアノ協奏曲第26番カデンツァ(中村紘子デビュー55周年記念CD収録)

編曲作品[編集]

ディスコグラフィ[編集]

出演番組[編集]

ゴーストライター問題[編集]

2014年(平成26年)2月5日、18年にわたり佐村河内守ゴーストライターを務めていたことを公表した[14][15][16]。記者会見では佐村河内は聴覚障害者ではない疑いがあることも明かした[17]。新垣の電話による申し出により所属する大学が同年2月6日付の退職を決めたが、学生がネット上で署名活動を行なったこともあり、決定は白紙に戻った[18]。しかし、新垣はけじめをつけたいとして同年2月13日に大学に辞表を提出し、3月末での退職をあらためて希望[19]、大学は2014年度非常勤講師委嘱の辞退を受け入れることを決定した[5]

佐村河内と出会った25歳当時の状況は「少年時代には、ピアノでプロのヴァイオリニストと共演し早熟の天才と呼ばれたこともあった」が、「大学から得られる報酬は月に数万円程度」で「普段は町のピアノ教室やヴァイオリン教室の発表会の伴奏をしたり、レッスンの伴奏をしたりして糊口を凌いで」いたと記事中で描写されている[20]

ゴーストライターについて新垣は「私は、お金とか名声が欲しいのではありませんでした。佐村河内の依頼は現代音楽ではなく、調性音楽でしたから、私の仕事の本流ではありません」、「彼の申し出は一種の息抜きでした。あの程度の楽曲だったら、現代音楽の勉強をしている者だったら誰でもできる。どうせ売れるわけはない、という思いもありました」、「自分が作曲した作品が、映画音楽であれゲーム音楽であれ、多くの人に聴いてもらえる。その反響を聴くことができる。そのことが純粋に嬉しかったのです」などと語っている[20]

「佐村河内守」名義で発表された作品と評価[編集]

2014年(平成26年)2月6日発売の『週刊文春』誌上にて、神山典士が「佐村河内守の楽曲は新垣隆によるものである」というスクープ記事を発表した[14]。同日、新垣隆は、佐村河内守からの依頼で、20曲以上を提供し、報酬として約700万円を受け取っていたことを記者会見で明らかにした[21]。金銭のトラブルはなく、今後も佐村河内を訴訟する予定はないとのこと。提供した作品の著作権については、「放棄する」と語った[22]。なお、JASRACには佐村河内名義の曲が103件登録されており、他に、近作のピアノソナタ第2番など未登録のものも数曲ある。ただし、登録された曲のうち80件ほどはゲーム音楽2作品の各シーンを細分化したものである[23]

代作の実態については「彼は実質的にはプロデューサーだった。彼のアイデアを実現するため、私は協力をした」、「彼が依頼し、私が譜面を作って渡すという、そのやり取りだけの関係」、「彼と私の情熱が非常に共感し合えた時もあったと思う」などと語った[24]

佐村河内から作曲の依頼を受けた作品は、映画『秋桜』への音楽が最初のものであった。その後ゲーム『バイオハザード』『鬼武者』への作曲で脚光を浴びた。後者の交響組曲のCD収録の際は新垣自ら指揮をしている。

これらの作品はいずれも基本的には調性によって書かれ、作風はロマン派的なものである。

交響曲第1番 HIROSHIMA
直木賞作家、五木寛之の「乾いた心を打たずにはおかな」かったばかりか[25]、この交響曲と同様に調性による作品を創作の中心としていた作曲家、三枝成彰吉松隆を始めとして、クラシック界の一流アーティスト達からも賞賛を浴びた。三枝成彰は交響曲第1番 HIROSHIMAについて、「私がめざす音楽と共通するところを感じる」とした[26]。また、吉松隆は「すべての聴き手を巻き込む魅力に富むと同時に見事に設計された傑作だと確信する」と賞賛した[27]音楽評論家許光俊は、同作を「世界で一番苦しみに満ちた交響曲」と評し、「これに比べれば、ショスタコーヴィチですら軽く感じられるかもしれない」と述べている[28]
これに対し、新垣が自身の名義で発表した作品を「曲に運動神経があって面白かった」[7]と評価した渋谷慶一郎は、『交響曲第1番 HIROSHIMA』について、佐村河内のゴーストライター問題が発覚し、新垣が記者会見する前には[29][要高次出典]「音楽としては全然面白くないね。聴力があってもなくてもつまらない」[30][要高次出典]と述べている。
ヴァイオリンのためのソナチネ
義手のバイオリニストの少女の存在を知った佐村河内が、少女に作曲、贈呈したとされた曲であった。作曲後、佐村河内を特集したテレビ番組で、この「美談」が紹介されたが、放送終了後に佐村河内から少女の家族に「お宅は私のお蔭で娘がテレビに出られたのにもかかわらず、私への感謝の気持ちがなさすぎる」というメールが届いた。これに驚いた家族が「いままでお世話になったことは感謝しているけれど、我が家から娘をテレビに出してほしいと頼んだことは一度もない」と返信したところ、佐村河内は激怒し、最終的に両者は絶縁状態となった[11]。一方で、実際にこの少女の家族と古くから親交があったのは新垣であり、少女が4歳の頃からヴァイオリンの発表会などで伴奏を務めていた。佐村河内に困惑した少女の家族が新垣と神山典士に相談したところ、新垣が真相を話した事が、一連のスキャンダルが暴露される一つの発端となった[11]
この曲は、2014年のソチオリンピックで、高橋大輔のショートプログラムに使用する予定になっていたため、事実の露見を受けて高橋大輔側は国際スケート連盟に、作曲者を不明 (Unknown) として登録し[31]、採用された[32]
新垣は、「この事実を知って(高橋が)受けるショックを考えると…」と悩みつつも、「日本を代表してオリンピックで活躍する高橋選手までもが、佐村河内さんと私のウソを強化する材料になってしまう」という思いから、告白に踏み切ったという[22]。また新垣自身は、この曲について「自分で言うのもおかしな話ですが、この曲は五輪という大きな舞台で鳴り響く資格のある、素晴らしい曲だと自負しています。高橋選手には、堂々と自信をもって演技して欲しいと心から思っております」と述べている[11]
オリンピック直前の発表について高橋大輔は、「正直ビックリしました。このタイミングでって。勘弁してよっていうのはありました。」と苦笑しながら語っており[33][34]、『ニューヨーク・タイムズ』(電子版)は「最悪のタイミング」と評している[35][36]
一方で高橋大輔は、「でも正直、彼の背景とかを全く知らずに曲を選んだ。作った人が誰であろうと、どういう形だろうと素晴らしい曲」と、曲自体は高く評価[33]しており、「この曲でスケート人生の最後を滑れることをうれしく思う」と語った[37]。世界選手権でもこの曲を使用する予定であった[38]が、けがのために出場を辞退した[39]

脚注[編集]

  1. ^ 新垣氏激白! 佐村河内氏の耳不自由でない「録音聞きコメント」 SANSPO.COM 2014年2月7日
  2. ^ a b c アーティスト(新垣 隆)”. マツダ映画社. 2014年2月5日閲覧。
  3. ^ PETETOK5”. 2014年2月22日閲覧。
  4. ^ 教員紹介 作曲専攻 桐朋学園大学音楽学部
  5. ^ a b お知らせ(2014年3月28日) 桐朋学園大学音楽学部
  6. ^ a b ゴーストライター新垣氏「どうみても良い人」「悪意を感じない」 ネットで同情や応援の声広がる - J-CAST 2014年2月7日
  7. ^ a b 渋谷慶一郎のツイート Twitter 2014年2月5日 18:14
  8. ^ 渋谷慶一郎のツイート Twitter 2014年2月5日 18:12
  9. ^ 渋谷慶一郎のツイート Twitter 2014年2月5日 18:15
  10. ^ a b 偽ベートーベン事件の論評は間違いだらけ(伊東乾) JBPres 2014年2月7日 1:39
  11. ^ a b c d 神山 2014a, pp. 24-31}
  12. ^ a b c d http://www.kitara-sapporo.or.jp/event/dsp.php?num=197 演奏会『作曲家/ピアニスト 新垣隆の世界』のパンフレット
  13. ^ 新垣隆氏に「週刊文春」が作曲依頼!タイトルは「交響曲HARIKOMI」、週刊文春、2014年6月27日
  14. ^ a b 「現代のベートーベン」佐村河内守氏のゴーストライターが語った! 週刊文春Web 2014年2月5日
  15. ^ “作曲男性が名乗り出る”. 時事通信. (2014年2月5日). http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014020500822 2014年2月5日閲覧。 
  16. ^ “新垣隆さんが告白「私が佐村河内守さんのゴーストライター」”. ハフィントン・ポスト. (2014年2月5日). http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/05/niigaki-takashi_n_4728709.html?utm_hp_ref=japan 2014年2月5日閲覧。 
  17. ^ ざんげの告白 18年前からゴースト 日刊スポーツ2014年2月6日
  18. ^ ゴースト新垣氏 学生が退職反対署名活動 日刊スポーツ2014年2月11日
  19. ^ 〈速報〉ゴースト新垣氏 大学に辞表を提出 2014年2月18日 朝日新聞デジタル
  20. ^ a b 週刊文春2014年2月13日号|最新号 - 週刊文春WEB”. 文藝春秋. 2014年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月9日閲覧。
  21. ^ 佐村河内さん代作会見詳報(4) 「20曲以上提供、報酬は700万円前後」 産経新聞 2014.2.6 15:36
  22. ^ a b “新垣隆さん、大輔SP曲に「本番も踊ってくれて非常に嬉しい」”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2014年2月7日). オリジナル2014年2月7日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140207084647/http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20140207-OHT1T00004.htm 2014年3月17日閲覧。 
  23. ^ JASRAC作品データベース検索「権利者名」に「佐村河内」と入力し、「作品コード順」で検索。
  24. ^ 「依頼あれば当然やった」=佐村河内さん「影武者」の新垣隆さん 時事ドットコム 2014/02/06-21:00
  25. ^ 佐村河内守著「交響曲第1番」の本の帯[疑問点 ]
  26. ^ 勇気をもらった「交響曲第一番」、三枝成彰のイチ押し、2009年7月12日
  27. ^ 交響曲第1番ふたたび、作曲家:吉松隆の21世紀音楽界諦観記、2010年1月14日
  28. ^ 「世界で一番苦しみに満ちた交響曲」 「連載 許光俊の言いたい放題」第128回、HMVジャパン 2007年11月6日
  29. ^ 渋谷慶一郎のツイート Twitter 2014年2月4日 23:25
  30. ^ 渋谷慶一郎のツイート Twitter 2014年2月4日 23:28
  31. ^ 高橋大輔SP曲の作曲者名削除 日刊スポーツ 2014年2月8日
  32. ^ 佐村河内氏代作問題:高橋SP曲変更なし ゴースト判明も 毎日新聞 2014年02月06日
  33. ^ a b 高橋大輔ソチ入り、佐村河内問題に苦笑 デイリースポーツonline 2014年2月9日
  34. ^ ソチ入り高橋、ニセ作曲騒動に「びっくりしたけど作った人は関係ない」 MSN産経ニュース 2014年2月9日
  35. ^ フィギュア高橋には「最悪のタイミング」 米紙 MSN産経ニュース 2014年2月7日
  36. ^ In Japan, a Beloved Deaf Composer Appears to Be None of the Above "The New York Times" Feb. 6, 2014
  37. ^ 高橋 右膝不安も…ラスト五輪「自分を信じてやる」 - Sponichi Annex 2014年2月13日
  38. ^ 高橋大輔 世界選手権へ決意 東スポWeb 2014年2月23日
  39. ^ 高橋大輔、けがで世界選手権を欠場 補欠の小塚崇彦が出場 朝日新聞Digital 2014年3月4日

関連文献[編集]

関連項目[編集]