日本国憲法第66条

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日本国憲法 第66条(にほんこくけんぽう だい66じょう)は、日本国憲法第5章内閣」にある条文の一つ。内閣の組織、内閣総理大臣及び国務大臣の資格、内閣と国会の関係(議院内閣制)について規定する。

条文[編集]

「日本国憲法」、法令データ提供システム。

第六十六条
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

解説[編集]

本条にいう「文民」とは、政府見解によれば、次に掲げる者以外の者をいう[1]

  1. 旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの
  2. 自衛官の職に在る者

なお、同じ政府見解によれば、軍国主義思想とは、「一国の政治、経済、法律、教育などの組織を戦争のために準備し、戦争をもって国家威力の発現と考え、そのため、政治、経済、外交、文化などの面を軍事に従属させる思想をいう」と定義づけている[2]

法律の定め: 内閣法

もともと、GHQ草案に沿えば、日本は戦力を保有しないことが想定されているため、軍人の存在を前提とする文民条項が草案に盛り込まれることはなかった。しかし、衆議院での憲法改正審議の中で、いわゆる「芦田修正」が行われたことがわかると、連合国の最高政策決定機関である極東委員会は、「芦田修正」により、今後日本が軍隊を保有しうることを問題視した。検討の結果、1946年9月25日、極東委員会は文民条項の規定を求める決定を下し、GHQを通じて日本政府に修正が要請された。これを受けて、貴族院での審議において、憲法66条が修正され、文民条項が設けられた[3]

沿革[編集]

大日本帝国憲法[編集]

東京法律研究会 p.7/11

第十條
天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
第五十五條
國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律勅令其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス

憲法改正要綱[編集]

「憲法改正要綱」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

二十:第五十五条第一項ノ規定ヲ改メ国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ帝国議会ニ対シテ其ノ責ニ任スルモノトシ且軍ノ統帥ニ付亦同シキ旨ヲ明記スルコト
二十二:国務各大臣ヲ以テ内閣ヲ組織スル旨及内閣ノ官制ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムル旨ノ規定ヲ設クルコト

GHQ草案[編集]

「GHQ草案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

日本語[編集]

第六十一条
内閣ハ其ノ首長タル総理大臣及国会ニ依リ授権セラルル其ノ他ノ国務大臣ヲ以テ構成ス
内閣ハ行政権ノ執行ニ当リ国会ニ対シ集団的ニ責任ヲ負フ

英語[編集]

Article LXI.
The Cabinet consists of a Prime Minister, who is its head, and such other Ministers of State as may be authorized by the Diet.
In the exercise of the executive power, the Cabinet is collectively responsible to the Diet.

憲法改正草案要綱[編集]

「憲法改正草案要綱」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第六十二
内閣ハ其ノ首長タル内閣総理大臣及法律ヲ以テ定ムル其ノ他ノ国務大臣ヲ以テ組織スルコト
内閣ハ行政権ノ行使ニ付国会ニ対シ連帯シテ其ノ責ニ任ズルコト

憲法改正草案[編集]

「憲法改正草案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第六十二条
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

脚注[編集]

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  1. ^ 1973年(昭和48年)12月19日(72回国会)の衆議院建設委員会において、大村襄治政府委員内閣官房副長官)は「政府といたしましては、憲法第六十六条第二項の文民につきましては、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの」、それから「自衛官の職に在る者」、この二つを判断の基準にいたしているわけでございます。」と答弁している。
  2. ^ 1973年(昭和48年)12月19日(72回国会)の衆議院建設委員会において、大村襄治政府委員(内閣官房副長官)は「軍国主義思想とは、一国の政治、経済、法律、教育などの組織を戦争のために準備し、戦争をもって国家威力の発現と考え、そのため、政治、経済、外交、文化などの面を軍事に従属させる思想をいうものと考えられるのでございまして、この思想に深く染まっている人とは、そのような思想がその人の日常の行動、発言などから明らかにくみとれる程度に軍国主義思想に染まっている人、言いかえれば、単に内心に軍国主義思想を抱くだけではなく、これを鼓吹し普及をはかる等、外的な行為までその思想の発現が見られるような人をさすものと理解しております。」と答弁している。
  3. ^ 「極東委員会と文民条項」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

参考文献[編集]

  • 東京法律研究会 『大日本六法全書』 井上一書堂、1906年(明治39年)。

関連項目[編集]