東京一極集中
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
東京一極集中(とうきょういっきょくしゅうちゅう)とは、日本において、政治・経済・文化・人口など、社会における資本・資源・活動が、首都圏に集中している事を言う。
目次 |
人口の集中
首都圏への人口流入を見ると、1955年から1970年頃までは毎年30~40万人の転入超過があった。この時期は、同時に旧首都圏の京阪神への流入超過も続いていた。しかし、1970年を境として、1都3県や京阪神への転入超過は鎮まっていった。一方の京阪神は1972年に逆に純流出となっている。
1980年頃から再び首都圏への流入超過が始まり、バブル経済直前の1987年にピークに至り、この時の純流入は20万人に迫った。その後は再び沈静化に向かい、1993年には殆ど均衡した。その後、都心での住宅開発などによる「都心回帰」により、再び流入超過の兆しを見せ、今も首都圏の人口流入は続いている。
その結果、国勢調査結果を長期的に見ると、全国の人口に対する1都3県の割合は、第二次大戦終結直後の1945年に13.0%であったが、調査の度にその割合を高め、直近の2005年では26.9%となっている(2005年は概数速報による)[1]。
21世紀に入り、首都圏、なかんずく東京特別区への人口集中は一層進んでいる。2000年の国勢調査結果と2005年の国勢調査結果を比較すると、東京都が約50万人、神奈川県が約30万、埼玉県が約10万人、千葉県が約10万人と、1都3県で約100万人増加した。一方、地方では、トヨタ自動車などの製造業の求人が好調だった愛知県が約20万人増加しているのが最高で、ほとんどの道県で減少した。 ちなみにこの1都3県と北関東3県では関東(キー局又は関東広域圏と呼ばれる)の放送局が視聴できる(これに加え、茨城県を除いて県域独立UHF局が存在する)。
昼間人口や人口密度は現在も大阪府が第2位だが、2006年5月1日には神奈川県の推計人口が今まで第2位だった大阪府を抜いた。
アメリカ最大の都市であるニューヨーク市と比較すると、ニューヨーク市への郊外からの流入人口は56万人[2]であるが、東京特別区部(23区)への流入人口は333万人[3]と、ニューヨーク市のほぼ6倍の流入規模がある。また、東京都市圏の人口が3460万人で、ニューヨーク都市圏の人口が2136万人であることからも、首都圏の人口規模がいかに巨大であるかが読み取れる。
東京では中心部から広範囲に渡って人口の集積が起きており、東京周辺における緑地の少なさや、住宅・道路環境の悪さは関東大震災後の帝都復興計画の大幅縮小という失策や、戦後の都市計画の失敗・挫折によるものであると言えよう。[要出典]人口の集中自体に対して善悪をいうことは難しいが、人口集中の結果、必然的に生活環境に対してなんらかの負荷や制約がもたらされるのは確かであり、各種の問題を抱えやすくなる。2007年のNHKの調査では、80%以上の人が問題を感じていると結果が出た。[要出典]
政治・行政
東京一極集中の問題点は、首都としての長期的で全国視野の都市計画の欠如も一つの原因といえる。1970年代から2000年代前半にかけて、東京一極集中を緩和させる観点から、政府の一部機関が筑波研究学園都市・さいたま新都心に移転した。
小泉純一郎政権は「地方にできることは地方で」というスローガンの下に三位一体改革を推進したものの、地方交付税を大幅に削減し、「市町村合併特例法」を初めとする時限立法を制定して市町村合併を促したため、多くの市町村が合併した。その結果、過疎化と衰退が加速した地域も多く現れている。
財政再建のため公共投資の費用対効果の検証が厳しく行われ、採算重視となっていくことが想定され、インフラ整備で地方はますます不利になる恐れをはらんでいる。具体的には、東京は需要が多いために採算も取れるが、東京以外は需要が見込み難く、採算が取れない場合が多いためである。これまでは、道路公団の高速道路料金のプール制に見られるように、採算区間から不採算区間への一種の補助があり、不採算区間・地域であっても、いったん計画に乗れば整備する事が保証されたが、今後は借金の返済が優先され、そうした保証はなくなる。
また、公共交通が採算性重視で評価されるようになった結果、路線バスや鉄道ローカル線が、廃止代替バスやバス転換に追いやられる地域が増えている。結果として地方の衰退を招き、東京一極集中が一層加速している。
皇室
明治天皇・大正天皇・昭和天皇と、近代になって東京に生活の場を移してからの天皇も、即位の礼に関しては京都府の京都御所に戻り行っていたが、平成2年の今上天皇の即位の礼は警備上の都合などで、史上初めて東京の皇居で行われた。
即位の礼は高御座を京都御所から皇居に運び出して行われ、「高御座のあるところが天皇の正式な在所であり、そこが本来の皇居である」との見解を示す近畿地方の人々を少なからず落胆させたようである。
経済
本社機能
経済では規模の利益が働き、集中させるほど物流コスト・管理コスト・取引維持コストが低下する。この点からも、工場や物流センターなどを除く本社機能(総務・企画・人事・労務など)は一極集中させやすい。しかし、人間の集中が都市インフラの容量を超えると交通渋滞などのデメリットも顕在化してくるため、新たなインフラの拡充が必要となる。
一つの現象として、関東地方のみならず、関東地方以外に本社を持つ企業まで、本社を東京に移転するケースが増えている。その地場産業や地域密着型企業が移転した場合、経済の空洞化が起こることが心配される。さらに、法人税収でも大企業が集中する東京とそれ以外の地域では著しい格差が生じており、是正が求められている。
たとえば、近畿地方の歴史を見ると、江戸時代には、「諸国之台所」と呼ばれた大坂(大阪)以外にも、「近江商人」「伊勢商人」と呼ばれるように、近江八幡や松坂(松阪)に商人の本店が多く集まっていた。そして、明治維新以後は、「京阪神」と呼ばれるように、大阪や京都、神戸などに本社が多く集まっていた。しかし、東京との二本社制になり、やがて東京が実質上の本社になり、社長・取締役などの主要役員が東京に駐在し、活動の拠点とするといった例が多数見られる。主な例:川崎重工、サントリー、有線ブロードネットワークスなど。
IT産業
インターネットは場所に関係なく世界中に情報発信ができることから、以前はIT産業が地方活性化の手段として期待された。実際に札幌など地方の大都市に立地している企業も少なくはないものの、全体的には首都・東京(特に「ビットバレー」と言われる渋谷や、六本木ヒルズ周辺)に集中している。
インターネットの特性や限界から、仕事では「直接顔を合わせる」ことが依然として重要であると考えられていることや、「ネットは断片的な情報としては早いが、現物を確認してその真偽を判断せねばならない」点が認知されていることが、その背景にある。また、ネットインフラが人口密集地帯から優先して整備されるという事情もある。
金融
メガバンクや大手証券会社は、物流コストをほとんど持たない上に、顧客(特に大企業)が集中し、かつ情報収集がしやすい東京都心に、以前から本社機能を集中させている。
証券取引所などにおいても東京証券取引所への集中が顕著で、二番手の大阪証券取引所、その他の地方証券取引所(札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所など)は、その上場企業数の減少に苦慮している。IT企業、ベンチャー企業においても、最初から東京の新興市場への上場を目指す傾向が強くなり、地方上場から「出世」していくという昔からのパターンは少なくなっている。
また、1967年の神戸証券取引所の廃止、2000年3月の新潟証券取引所と広島証券取引所の廃止(東証への編入)、2000年7月の東証のテリトリー制の廃止などにより東証への集中が進んでいる。1998年に証券市場と店頭市場との住み分けが廃止されたことに対応して、東証以外の証券取引所でも、大証のナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)、札証のアンビシャス、名証のセントレックス、福証のQ-Boardなど、新興企業向け市場を開設したものの、札証、名証、福証では上場企業の発掘は当初の期待通りには進んでいない。
株式売買高でもかつては東証のシェアは60%から70%程度だったが、ネット証券会社の急速な伸張などもあり、90%を超え、2003年には95%に達している。また、取引が少ないなどの理由により重複上場を廃止する企業も多い。 こうした東証への過剰な集中は災害や事故には極めて脆い。1997年8月、2005年11月の東証のシステムダウンによる売買停止はこれを如実に示す事態となった。
外資
特に日本の主要金融機関との取引が重要なゴールドマン・サックスやドイツ銀行、モルガン・スタンレーなどのコンサル、欧州銀行の進出は顕著で、日本の時価総額上位企業(TOPIX Core30、TOPIX Large70)や三菱・三井などの財閥系企業にとって無くてはならない存在になっている。
またIBM、マイクロソフト、アップルコンピュータ、インテルなどの半導体及びIT企業、LOUIS VUITTON、エルメスなどの高級ブランド店、フォルクスワーゲン、ルノーなどの欧州自動車産業も全て首都圏に日本支社を置いており、日本企業がこれらの企業と取引をするコストの面でも、更に集積を発展させる要因となっている。
交通
東京一極集中を前提とした経済活動は、交通網にも大きな影響を与えている。
東京近郊の鉄道網が次々と東京に乗り入れすることにより、東京の通勤圏は拡大の一途をたどった。近年は都心回帰により通勤圏の拡大は止まっているが、業務機能が集積した都心を中心として、そこから郊外に鉄道や道路が伸びる放射状都市になっているため、満員電車や交通渋滞などが解消される見通しは立っていない。
関東平野の外側を迂回する交通ルートについては、道路網が比較的整備されているのに対し、鉄道網はあまり整備されていないほか、路線によっては規格も低い[4]。
空路では成田国際空港に国際線が集中している。また、国内線では羽田空港が全国各地の空港を結ぶ一大拠点となっているが、その便数の多さから飽和状態となっており、新たにもう1本の滑走路を建設するなど、施設の増強が続いている。
問題点
東京一極集中がひき起こしている問題点としては、以下の点が指摘されている。[誰?]
- 過密
- 依然として劣悪な住宅環境、慢性的に渋滞する道路、殺人的な通勤ラッシュなど、過密問題を引きずっている。
- 危険への脆弱性
- 過剰に東京に一極集中した結果、地震や洪水などの自然災害や、テロや戦争などの大規模殺傷事件が直撃すると、日本の首都機能が破壊されるという危険をはらんでいる。
- 特に東京湾岸部は海抜0メートルの軟弱地盤であり、地球温暖化に伴う海面上昇や地震による液状化の被害をまっさきに受ける。環状道路沿いでは局所的なスコールが起こり、川が増水し洪水被害さえもたらしている。
- 2006年には、東京湾沿岸の送電線が切断されただけで、半日間首都機能が麻痺する首都圏大規模停電が発生した。日本の首都機能の麻痺は、日本のみならず世界的な経済活動に打撃を与える危険性が高い。過密な東京都区部を避けて、近隣の神奈川県、埼玉県、千葉県、多摩地域などに移転する政府機関や企業もあるが、大企業の本社の地方移転は進んでいない。
- また東京は太平洋側の平野部に位置するために、雪が少ないという気候的特徴を持っている。したがって積雪対策が軽視されやすく、わずか数cmの積雪でも電車は運休・遅延し、高速道路は通行止めになり、経済活動にも大打撃を与える。
- 本来は災害に強いはずのインターネットも、ネットワークを相互接続するインターネットエクスチェンジが各地域には一応あるものの東京に一極集中しているため、脆弱であると指摘されている。
- 東京圏以外の各地の衰退
- 東京圏に人・モノ・資金・情報・機能が集中することにより、東京圏以外は経済的に衰える地域が多い。
- 大学の卒業生や各界の著名人が、地域に留まらず、東京へ多量に流入している。メリットシステムの論理からすると優秀な人材が吸い取られるのは仕方ないのかもしれないが、長期的には、地域の優秀層が空洞化すると次世代の優秀層が薄くなり地域の停滞が深刻化する。
- 東京周辺の他の都市への影響
- また東京周辺の各都市(いわゆるベッドタウンなど)では東京に依存した都市づくりを行ったため[要出典]、地元での経済活動は衰退している地域もある。
- 過度の都市化による弊害
- 東京首都圏への人口集中によるスラム化の進行や、犯罪組織の増加が見られ、治安の悪化が懸念されている[5]。
- 用地不足から都市開発がいびつな姿で進んだ地域もある。日本橋の上を覆う首都高速道路はその典型である。
- 規模の不経済
- 巨大都市は、集積の不経済を伴う可能性をはらんでいる。OECDのレビューでは、約700万人までは大きいほど富裕であることを意味するが、その限度を超えると大都市圏の規模と所得は負の相関関係になる、としている。
日本国外の取り組み
日本以外では、首都一極集中による弊害を絶つために様々な取り組みが行われている。その形式は主に「政経分離型」と「機能分散型」の2種類に分けられる。※詳しくは、首都#複都制を参照。
- アメリカ合衆国
- アメリカ合衆国では元々国の成り立ちもあって都市ごとに機能が分担されている。首都のワシントンD.C.を始めとして各州の政府所在地は必ずしも州内最大都市とは限らない。国家の中心地を見ると政治がワシントンD.C.、経済がニューヨークとなっているが、ニューヨーク州の州政府はニューヨークではなくオールバニに置かれている。このような「政経分離策」により2001年9月11日にアメリカ同時多発テロ事件が発生した際には国家機能の潰滅という最悪の事態を回避することができた。
- また、ワシントンD.C.やニューヨーク以外の地方都市にも、製造、流通、金融などの大企業の本社が分散している。例えば、スポーツ用品販売大手で知られるナイキはオレゴン州郊外に本社を構えている。カリフォルニア州の都市であるサンノゼにはデル、オラクルなどIT関連の大企業本社が多数立地している。また、サンノゼの属するサンフランシスコ・ベイエリアの中心都市であるサンフランシスコは、アメリカ第二の金融の中心都市である。他にもアトランタのコカ・コーラ社、リッチモンドのフィリップモリス社、シャーロットのバンクオブアメリカ、シンシナティのP&G社、セントルイスのモンサント社、シアトルのボーイング社(現在、本社はシカゴに移転)など枚挙に暇がなくこれらの企業はグローバル化によって肥大化するとともに都市の経済を牽引してきた。
- また、これら本社機能の地域分散は新規のベンチャー企業を起こしやすく、有能な人材が地域にとどまることで地方企業の群雄割拠により企業間の新陳代謝が進み、競争を活発化させた。今日に見るIT関連産業の勃興、ひいてはそれによる米国経済再興はこれら地元企業の成長と競争原理による市場活性化を抜きにして語れないものとなっている。[要出典]
- ブラジル連邦共和国
- ブラジルではサンパウロとリオデジャネイロの両市の過密が問題となったことから1960年代にアマゾン内陸部に新首都ブラジリアを建設した。
- 大韓民国
- 韓国も日本と同じく首都ソウルへの一極集中が進んでおりソウル特別市の人口は現在1000万人を超えている。しかし、ソウルは北朝鮮との軍事境界線に近く朝鮮戦争の苦い経験もあって常に有事に対応できる体制作りが進められてきた。その一環として、現在、政府機関の一部がソウルから韓国中部の大田に移転している。現在の日本で行われている方策は韓国のような「機能分散型」であるが現段階では分散が東京70km圏内に留まっている。そのため必ずしも一極集中状態の是正や緩和にはつながっていない。
- オーストラリア
- 1901年にイギリスから独立した際にシドニーとメルボルンで首都の位置争奪による対立が起きたが中間地点のキャンベラに首都を置くことで終息した。日本でも東京の石原慎太郎都知事が反対していることから同じように候補地と対立が起きると懸念する意見もある。
脚注
- ^ 総務省統計局国勢調査
- ^ ニューヨーク市への流入人口は約56万人
- ^ 2005年国勢調査
- ^ 一例として、都心を迂回した国道16号圏外の地域相互間を鉄道だけで行き来すると仮定した場合、茨城県と群馬県を結ぶ水戸線と両毛線、三国峠ルートの上越線と上越新幹線、碓氷峠ルートの北陸新幹線、佐久地方と山梨県を結ぶ小海線、山梨県と静岡県富士川以東を結ぶ身延線など、大回りを強いられる場合や、頻度や移動時間に難があり利用しづらい路線を経由することになる。なお、仮に埼玉県北部と山梨県を結ぶ雁坂峠ルートの鉄道があれば路線網の空白地域の短絡が可能だが、このルートの路線は無く、その計画もない。
- ^ 2005年東京都議会会議録 第17号
関連項目
参考文献
- 藻谷浩介 「実測!ニッポン経済」『週刊エコノミスト』2006年9月19日特大号、毎日新聞社。
- OECDテリトリアル・レビュー「グローバル経済における都市の競争力」



苫小牧からアメリカへ、鷲谷修也という男の挑戦。~MLBにドラフト入団した21歳~

