窒化ガリウム

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窒化ガリウム
IUPAC名 窒化ガリウム(III)
別名 ガリウムナイトライド
組成式 GaN
式量 83.7297 g/mol
形状 黄色粉末
結晶構造 本文参照
CAS登録番号 [25617-97-4]
密度 6.1 g/cm3, 固体
融点 > 2500 ℃(ウルツ鉱構造[1]

窒化ガリウム(ちっかガリウム、GaN)はガリウム窒化物であり、主に青色発光ダイオード(青色LED)の材料として用いられる半導体である。ガリウムナイトライド (gallium nitride) とも呼ばれる。

物理的性質[編集]

結晶構造はウルツ鉱構造と閃亜鉛鉱構造の2種類を取りうるが、前者がエネルギー的に安定であり、よく使われている。ウルツ鉱構造の格子定数は、a軸が 3.18 Å、c軸が 5.17 Å である。

バンドギャップは室温において約 3.4 eV で、波長では約 365 nm に相当し、紫外領域の光源となる。微量のインジウム (In) を加えて InGaN 結晶にすることで紫色、青色の光源として用いることができる。発光ダイオードによる光の三原色のひとつとして交通信号やディスプレイに用いられる。

GaN を他の半導体と比較して、

  1. 熱伝導率が大きく放熱性に優れている
  2. 高温での動作が可能
  3. 電子の飽和速度が大きい
  4. 絶縁破壊電圧が高い

などの優位性から半導体デバイスとしての応用が大いに期待されている。

電子デバイスへの応用は、AlGaN/GaNのヘテロ構造を利用した高周波デバイスが先行している。これは、GaNの持つピエゾ効果によりヘテロ界面に発生する高密度の2次元電子ガスを利用できるためである。 また、高い絶縁破壊耐圧を持つことから損失の低いパワーデバイスを実現できると考えられる。

化学的性質[編集]

窒化ガリウムは化学的には非常に安定した物質であり、一般的な酸(塩酸硫酸硝酸など)や塩基には溶けないが、紫外線を照射することで強アルカリには溶解する。

半導体の製造工程におけるエッチングの際には反応性イオンエッチング (reactive ion etching, RIE) によるドライエッチングを行う。

歴史[編集]

1980年代前半はセレン化亜鉛 (ZnSe) と GaN が青色系発光ダイオードの材料の候補であった。しかし格子定数と熱膨張係数が GaN に近い基板が存在せず、良質な結晶を作製できなかったため、ほとんどの研究者、研究機関は ZnSe を用いて青緑色発光ダイオード作製を目指していた。世界の研究者からはZnSeを用いた青緑色半導体レーザも報告されたが、寿命が短く製品化には至らなかった。

1989年、赤崎勇天野浩は電子線照射で、長年作れなかったP型窒化ガリウムを発明。その後、pn接合の青色発光ダイオードを実現したが、窒化ガリウムが光るのは紫外発光で、青には光らなく暗い。これは、ホモジャンクソンと言いLEDには使わない。そして、電子線照射は実験的にはいいが量産化には向かない。

1992年、中村修二は電子線照射よりも、もっと簡単に熱処理でP型窒化ガリウムを作ることを発見。そして、20年もの間、なぜP型にならなかったのか理論を解明。

高輝度青色LEDは光る材料によって決まり、その材料は窒化インジウムガリウム。中村修二は1年半、改良を重ねて作った独自の2フローMOCVDで、室温でもよく光る窒化インジウムガリウムを1992年に発明した。

1993年、世界に先駆け発明、実用化した高輝度青色発光ダイオードは、窒化インジウムガリウムを発光層にしたダブルヘテロ構造で、従来の100倍も明るく、この高輝度青色LEDがノーベル賞受賞対象である。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Harafuji, K.; Tsuchiya, T.; Kawamura, K. J. Appl. Phys. 2004, 96, 2501-2512. DOI: 10.1063/1.1772878