あらくれ (小説)

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あらくれ』は、1915年(大正4年)に徳田秋声読売新聞紙上に連載した日本の長篇小説であり[1][2]自然主義文学者の徳田が写実的に描いた女の一代記であ[2]る。

同作を原作として1957年(昭和32年)に成瀬巳喜男が監督し、東宝が製作・配給して公開した日本の長篇劇映画[3]は、水木洋子が脚色、主人公を高峰秀子が演じた文芸映画であるが、当時の「映画倫理管理委員会」(新映倫、現在の映画倫理委員会)は同作を成人映画に指定し、18歳未満の鑑賞を制限した[3]

1961年(昭和36年)には、朝日放送が「近鉄金曜劇場」枠の第1回作品として、テレビドラマ化している[4]

略歴・概要[編集]

徳田秋声が執筆し、1915年(大正4年)1月から7月まで「読売新聞」紙上で連載され、同年中に新潮社が単行本として刊行した[1][2][5]。1937年(昭和12年)には、岩波文庫に収められている[5]

第二次世界大戦の終結後、初出から33年が経過した1948年(昭和23年)、文藝春秋新社が編んだ『秋声選集』の第3集に収められる[5]。翌1949年(昭和24年)10月には、連載直後に単行本を上梓した新潮社が、新潮文庫から同作を再刊行した[5]1957年(昭和32年)には東宝が映画化し5月22日に公開し、同年、角川書店角川文庫から同作を刊行した[5]

1961年(昭和36年)10月6日には、朝日放送が『近鉄金曜劇場』という、基本的に毎週完結のドラマ枠を開始するにあたり、第1回作品として、森光子を主演にテレビドラマ化している[4]

1993年(平成5年)12月31日、秋声の著作はすべて著作権の保護期間が満了し、パブリックドメインに帰した。

あらすじ[編集]

お島は、東京近郊の農家の養女として育てられ、長じて、養家の勧めるままの結婚を拒絶して家を飛び出す。缶詰屋と結婚・離婚、地方の旅館でその経営者と関係を持ったりという日々を経て、洋服屋と結婚する。お島は共働きの生活に生きがいを得たが、夫の凡庸さに愛想を尽かし、独立を決意する[1]

庄屋からもらわれてきたお島が7歳のときからいる養家は、或る冬の夜泊った六部が幸いが見舞うだあろうと言い残してから幸い続きで身代をふとらせる。お島が家を相続するはずで、18歳になって結婚することになる。夫が養父の甥で、雇い人同然の自分が嫌いな 作(さく) という男だとわかると、生家に逃げ帰る。まもなくだまされて挙式させられるが、また逃げだし、神田の缶詰屋鶴と結婚する。お島は妊娠し、鶴は作との関係を疑ったうえに、情婦もでき、ひどいけんかのあげく、お島は出て行き、流産する。山国の小さい町の兄の手伝いに行くが、兄は商売がおもしろくなくて、そこをひきあげることになり、借金の担保にお島の身体が預けられる。お島はしばらく旅館浜屋の手伝いをしているうちに、若主人と関係し、病気でさとに帰っている妻の家や近所のてまえ、お島は縁続きの山の温泉宿にやられる。父親が東京から出てきて、むりやり連れて帰り、下谷のおばの家に預けられ、そこには若い裁縫師小野田が出入りしている。ちょうど戦争のために多忙なとき、醜男だががっしりした小野田が頼もしくおもえ、ふたりで始めた洋服屋は、男の働きのないのやお島の放肆なやり方のせいで、なんども失敗する。男か自分に生理的な欠陥があり、夫婦の間もこじれがち。4度目に本郷にもった店は繁盛するようになり、腕のいい若い裁ち師を雇い、お島はその男が気に入る。ながく疑問だった身体を治療してもらい、そのほうの確信がつき、男から受けた圧迫の償いが欲しくなる。小野田が帰省した留守に、浜屋を訪ねると、若主人は負傷が原因で死んだあとであった。温泉へ回って、電話で小野田がまだ帰っていないのを確認し、お気に入りの裁ち師を呼び寄せ、彼に手伝ってもらって例の店をやるようなことをほのめかす。

ビブリオグラフィ[編集]

国立国会図書館の蔵書による一覧である[5]

  • 『あらくれ』、新潮社、1915年
  • 『あらくれ』、岩波文庫岩波書店、1937年/改版 1972年9月 ISBN 4003102215
  • 『秋声選集 第3集 あらくれ』、文藝春秋新社、1948年
  • 『あらくれ』、新潮文庫、新潮社、1949年10月 ISBN 4101012024
  • 『徳田秋声選集 第2巻 新世帯・あらくれ』、乾元社、1952年
  • 『あらくれ』、角川文庫角川書店、1957年
  • 『日本文学全集12 徳田秋声・正宗白鳥 - あらくれ・縮図・何処へ・泥人形・入江のほとり・人間嫌い』、河出書房新社、1969年
  • 『新選名著複刻全集近代文学館24 あらくれ』、日本近代文学館、1970年
  • 『新潮日本文学 4 徳田秋声集 あらくれ・縮図・元の枝へ・町の踊り場・和解』、新潮社、1973年11月 ISBN 4106201046
  • 『秋声全集 第4巻 あらくれ・奔流』、臨川書店、1990年3月 ISBN 4653020868
  • 『徳田秋聲全集 第10巻 爛・あらくれ』、八木書店、1998年10月 ISBN 4840697108
  • 『あらくれ』、講談社文芸文庫講談社、2006年7月11日 ISBN 4061984489
  • 『アラクレ 大活字版1』、電子書斎、2012年
  • 『アラクレ 大活字版2』、電子書斎、2012年

映画[編集]

あらくれ
Untamed Woman
Arakure.jpg
監督 成瀬巳喜男
脚本 水木洋子
原作 徳田秋声
製作 田中友幸
出演者 髙峰秀子
上原謙
森雅之
音楽 斎藤一郎
撮影 玉井正夫
編集 大井英史
製作会社 東宝
配給 日本の旗 東宝
公開 日本の旗 1957年5月22日
アメリカ合衆国の旗 1958年1月31日
上映時間 121分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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あらくれ』は、徳田秋声の同名小説を原作として、1957年(昭和32年)に成瀬巳喜男が監督し、東宝が製作・配給して公開した日本の長篇劇映画である[3]。主人公・お島を当時満33歳の高峰秀子が演じた[3][6]。設定は原作どおりだが、ストーリー展開を脚本の水木洋子が大幅に改変している。奔放な女性の生き様を描く本作を、当時の「映画倫理管理委員会」(新映倫、現在の映画倫理委員会)は成人映画に指定し、18歳未満の鑑賞を制限した[3]

作品データ[編集]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

受賞歴[編集]

テレビドラマ[編集]

あらくれ』は、徳田秋声の同名小説を原作として、1961年(昭和36年)に朝日放送が「近鉄金曜劇場」枠の第1回作品として製作・放送した単発1時間のテレビドラマである[4]映画版高峰秀子が演じた役を、当時満41歳の森光子が演じた[4][8]

スタッフ・作品データ[編集]

キャスト[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c あらくれ世界大百科事典 第2版コトバンク、2012年6月19日閲覧。
  2. ^ a b c あらくれデジタル大辞泉、コトバンク、2012年6月19日閲覧。
  3. ^ a b c d e f あらくれ、日本映画情報システム、文化庁、2012年6月19日閲覧。
  4. ^ a b c d あらくれテレビドラマデータベース、2012年6月19日閲覧。
  5. ^ a b c d e f あらくれ国立国会図書館、2012年6月19日閲覧。
  6. ^ デジタル版 日本人名大辞典+Plus『高峰秀子』 - コトバンク、2012年6月19日閲覧。
  7. ^ 米国アカデミー賞日本映画製作者連盟、2012年6月19日閲覧。
  8. ^ 知恵蔵2011『森光子』 - コトバンク、2012年6月19日閲覧。

参考文献[編集]

  • 『大正の名著 - 浪漫の光芒と彷徨』明快案内シリーズ、渡邊澄子自由国民社、2009年8月1日 ISBN 4426108276
  • 『二松學舍の学芸』、今西幹一/山口直孝、翰林書房、2010年4月 ISBN 4877372970
  • 『大正女性文学論』、井上理恵/新・フェミニズム批評の会、翰林書房、2011年1月 ISBN 487737308X
  • 『虐待と親子の文学史』、平田厚論創社、2011年5月 ISBN 4846010643
  • 『忘れられる過去』、荒川洋治朝日文庫朝日新聞出版、2011年12月7日 ISBN 4022646438

関連項目[編集]