かけた耳

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かけた耳
(L'Oreille cassée)
発売日 1937年
シリーズ タンタンの冒険 (Les aventures de Tintin)
出版社 カステルマン
制作陣
ライター エルジェ
アーティスト エルジェ
オリジナル
掲載 20世紀子ども新聞
掲載期間 1935年12月5日 – 1937年2月25日
言語 フランス語
翻訳版
出版社 福音館書店
発売日 1998年
ISBN 978-4834025279
翻訳者 川口恵子
年表
前作 青い蓮 (1936年)
次作 黒い島のひみつ (1938年)

かけた耳』(フランス語: L'Oreille cassée)は、ベルギー漫画家エルジェによって描かれたコミック「タンタンの冒険シリーズ」の第6作目である。南米にある架空の国家であるサン・テオドロスを主な舞台としており、架空の国を舞台とする初めての作品であり、タンタンの私生活が初めて描かれている。

あらすじ[編集]

ある朝、自室でシャワーを浴びていたところ、タンタンはラジオニュース番組で、ブリュッセル市内の民族学博物館から、南米の先住民族アルンバヤ族崇拝の対象にしていた木像が盗難の被害に遭ったことを知る。タンタンとスノーウィは早速事件現場となった博物館に向かい、捜査に携わっているデュボンとデュポンに事件の詳細について尋ねていたところ、警備員から「盗難された木像が元あった場所に戻っている」との報告があり、事件は一段落したかのように思われた。

しかし、タンタンは納得がいかず、自宅にあった資料からアルバンヤ族とその木像に関する項目を調べて、資料にあった図版から像の片耳が欠けている特徴があることを見つけ出し、返却された像が模造品であることを突き止める。その後、タンタンは、市内に在住する木彫りの彫刻家が自宅で不審死を遂げたニュースを耳にする。盗難事件とその不審死の背後に隠れた繋がりがあると推測し、彫刻家が住んでいたアパルトマンを訪ねて、大家の中年女性から死亡時の現場の状況について聞き出すも、タンタンはその証言から状況内容に違和感を持ち、彫刻家が自殺に見せかけられて何者かに殺害された可能性を疑う。そこでタンタンは真相を探るべく彫刻家が生前飼っていたオウムを譲り受けようとするが、そのオウムはすれ違いざまにラモンという別の男に引き取られていた。紆余曲折を経て、タンタンはようやくオウムを手に入れるも逃げられ、その晩にはオウムを奪還したがっているラモンに襲撃されてしまう。その後、アパルトマンに戻って来たオウムを取り返しに向かうも、またしてもラモンに引き取られ、帰り際にラモンとその相棒アロンソの2人が乗る自動車にはねられそうになる。ラモンとアロンソは、ある目的からアルンバヤの木像を狙っており、その手掛かりをつかむため彫刻家のオウムを欲しがっていたのだ。

アロンソたちは身元の特定を避けるため自動車のナンバープレートを細工していたが、タンタンはその細工を暴いて彼らの住所を突き止め、その自宅を偵察しに向かう。一方、アロンソたちは、オウムの喋り声からその彫刻家が自分たちの仲間であるトルティーヤに殺害されたことを知りその自宅に連絡するも、既に彼は木像を手にして故郷であるサン・テオドロスに帰国しようとしているところだった。アロンソたちはトルティーヤが乗る客船に乗り込んで、彼を殺害し、像を奪還しようとするも、問題の像は見つからず、その翌朝、同じく船に潜入していたタンタンにトルティーヤ殺害を暴かれて、アロンソたちは逮捕され、身柄をサン・テオドロスの警察に引き渡される。

タンタンは、サン・テオドロスの首都であるロス・ドピカスにやって来たが、ひょんなことからテロリストと間違われて銃殺刑を受けそうになるも、刑執行時に叫んだ言葉がきっかけで国家元首のアルカサル将軍に気に入られ、大佐に任命されてしまう。しかし、石油の利権に関わる外交政策をめぐってアルカサルと対立し、政治犯として服役させられることになるが、タンタンの説得で改心した元テロリスト・パブロたちの助けを借りて脱獄し山奥にある農園へ逃げ込む。タンタンは、アルンバヤ族が住む集落を目指して、農園近くを流れるアドラヤル河を渡りジャングルを彷徨っていたところ、消息不明と言われていたイギリス人探検家リッジウェルと出会う。リッジウェルの案内で遂にアルンバヤ族の集落へとたどり着き、タンタンはそこでリッジウェルと部族の酋長から、資料になかった木像にまつわる逸話を聞かされる。元々その木像は、当時のアルンバヤの酋長たちが友情の証として探検家に譲渡したものであったが、探検隊に付き添った通訳の青年が部族の所持していた宝石を掠め取ったことで部族の怒りを買い、探検家と通訳以外の同行者が皆殺しにされたという。タンタンは、通訳が実はその木像の中に盗んだ宝石を隠して持ち帰ろうとしたが部族の攻撃から逃げる過程で像を取り戻せず宝石を回収しそこなったのではないかと推理し、アロンソたちの真の狙いが像に隠された宝石であることを看破する。

像に関する情報を一通り得たタンタンは、一旦ベルギーに帰国するが、とある骨董品店でアルンバヤの木像とよく似た像が売られているところを目撃する。店員からの情報で、その像がトルティーヤに殺害された彫刻家の実兄が営むアトリエで製作されたことを知る。タンタンは、工房にいた彫刻家の実兄から、木像が彫刻家の遺品の中に紛れていたこと、その像が既にベルギーに在住するサミュエル・ゴールドウッドというアメリカ人に売却されたことを聞き出す。本物の像を返却してもらうため、タンタンはすぐさまゴールドウッドの自宅を訪ねるも、折しも彼は仕事のため既に旅客船で帰国の途についているところだった。タンタンは、ゴールドウッドが乗る客船へ向かう郵便用の飛行機に乗り込み、辛くも潜入するが、祖国の警察から脱走していたアロンソたちもその船に同乗して既にゴールドウッドから木像を盗み取っていた。アロンソたちはタンタンと鉢合わせになったことに驚き、像を落としてしまうが、その衝撃でバラバラになった像の中から出てきたダイヤモンド甲板からそのまま海の中へと転がり落ちてしまう。タンタンは狙いのダイヤモンドを失い怒り狂うアロンソたちと揉み合いになり、そのまま海へと転落してしまう。タンタンはすぐさま船員たちから救助されるが、アロンソたちは2人揃ってそのまま海底へと沈んでいった[1]

タンタンは、全ての事情を知ったゴールドウッドから承諾を得て像を取り戻し、バラバラになった像を修理した上で正式に博物館へ返却。ようやく事件は本当に解決したのだった。

登場人物[編集]

一部のキャラクターは『タンタンとピカロたち』にも登場する。

タンタン
スノーウィ
デュポンとデュボン
アロンソ・ペレス
ラモン・バダ
アルカサル将軍
パブロ
チクレ
リッジウェル
カロマ
サミュエル・ゴールドウッド

注釈[編集]

  1. ^ 1991年製作のテレビアニメ版では、アロンソたちは2人ともタンタンに救助され、そのまま確保されている。