ちかえもん
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ちかえもん | |
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ジャンル | 時代劇 |
作 | 藤本有紀 |
演出 |
梶原登城 川野秀昭 |
出演者 |
青木崇高 優香 小池徹平 早見あかり 山崎銀之丞 徳井優 佐川満男 北村有起哉 高岡早紀 岸部一徳 富司純子 松尾スズキ |
音楽 | 宮川彬良 |
国・地域 |
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言語 | 日本語 |
時代設定 | 江戸時代(1703年〈元禄16年〉) |
製作 | |
制作統括 | 櫻井賢 |
プロデューサー | 木村明広 |
製作 | NHK大阪放送局 |
放送 | |
放送チャンネル | NHK総合 |
音声形式 | 解説放送(ステレオ2) |
放送国・地域 |
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放送期間 | 2016年1月14日 - 3月3日 |
放送時間 | 木曜 20:00 - 20:43 |
放送枠 | 木曜時代劇 |
放送分 | 43分 |
回数 | 8 |
公式ウェブサイト | |
特記事項: 木曜時代劇(第2期)最終作品 |
『ちかえもん』は、NHK大阪放送局製作によりNHK総合テレビの「木曜時代劇」枠で2016年1月14日から3月3日まで放送されたテレビ時代劇である。連続8回。近松門左衛門の人形浄瑠璃『曾根崎心中』の誕生秘話を創作し、“人間近松”を描いた人情喜劇。藤本有紀作[1][2]。主演は青木崇高と松尾スズキ[3]。第34回向田邦子賞受賞作[4][5]。
企画・制作[編集]
人形浄瑠璃の名作「曽根崎心中」を書きあげた江戸時代の文学者・近松門左衛門の生涯を、藤本有紀が史実・事実に基づいたフィクションとして描いたもので、「曽根崎心中」を執筆するまではスランプに陥っていた近松が、名作誕生に至るまでの様々な苦悩と、それを取り巻く人間模様をコメディーの要素を交えて描いたヒューマンドラマにしている[6]。松尾芭蕉、井原西鶴と並ぶ元禄時代(1688年‐1704年)の三大文豪として数えられるも、存命中や没後すぐに書かれた資料がほとんどないことから謎に満ちている近松の生涯を、大胆に想像を膨らませて描いている[7]。
セットも衣装も所作もれっきとした時代劇でありながら、近松が心の声を語るモノローグでの現代的な言葉遣い、近松が口ずさむ「大阪で生まれた女」などのフォークソングの替え歌、劇中のアニメーションの使用など、時代劇に馴染みがない視聴者でも気軽に楽しめる工夫が散りばめられており、劇中で「近松門左衛門」という名前を覚えられない万吉がとっさに名付けた近松の愛称「ちかえもん」も国民的アニメを連想させる親近感あふれる番組タイトルとなっている[7]。
番組制作にあたり、園田学園女子大学付属の近松研究所が資料提供を行った[8]。劇中の人形浄瑠璃の場面は人形遣いの桐竹勘十郎らと三味線の竹澤團七が参加して約300年前の初演を再現、人形を新調して、現在は3人で遣う人形を1人で遣う初演当時の「一人遣い」にも挑戦している。三味線の團七は義太夫三味線の開祖・竹澤権右衛門役で出演し、『曾根崎心中』の場面用に新たに作曲も行った[6]。
撮影は2015年10月下旬から翌2016年1月下旬にかけて京都の松竹撮影所を中心に行われ、京都や滋賀でのロケも行われた[2]。
あらすじ[編集]
![]() | この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。あらすじの書き方を参考にして、物語全体の流れが理解できるように(ネタバレも含めて)、著作権を侵害しないようご自身の言葉で加筆を行なってください。(2019年7月)(使い方) |
元禄16年(1703年)、浄瑠璃作者・近松門左衛門は以前ほど作品が受けなくなり、堂島新地にある遊郭「天満屋」に入り浸っていた。自作を上演していた「竹本座」の客足は遠のき、座長である竹本義太夫や周囲から不満をぶつけられ、新作の執筆も一向に進まずにいた。そんな折、「不孝糖」なる飴を売り歩く渡世人・万吉と出会い、万吉は近松を勝手に相棒とみなす。
2人のまわりで起きるさまざまな出来事をきっかけに、近松は、戦国の世が終わって百年が経ち、大衆の求めるものはこれまで通りの忠義を主題とする歴史物語ではなくなっていたことに気づく。万吉や周囲の人々に振り回されてゆくうち、近松は徐々に創作意欲を取り戻してゆくのだった。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
- 万吉
- 演 - 青木崇高
- 不孝糖を売り歩いて生計を立てる渡世人。
- 堂島新地の遊郭「天満屋」にて勘定を押し付けられ払えず、居残りとして働く。
- 場の空気を読めない性格で、一言多く、思い込みも激しい。近松からは「アホ」呼ばわりされている。
- お袖
- 演 - 優香
- 遊郭「天満屋」の年増の遊女。
- 平野屋徳兵衛
- 演 - 小池徹平
- 豪商「平野屋」の放蕩息子。通称「アホぼん」。
- とある出来事からお初に入れ込んでいる。
- お初
- 演 - 早見あかり
- 「天満屋」の新入り遊女。
- 島原から流れてきた。
- 黒田屋九平次
- 演 - 山崎銀之丞
- 油問屋「黒田屋」の主人。
- 竹本義太夫
- 演 - 北村有起哉
- 道頓堀の「竹本座」座元。
- かつては近松との『出世景清』で売れたが、近頃の客入れは悪い。
- 顔を合わせるたびに近松を否定し、筆を急かす(しかも一切褒めない)天敵。
- お玉
- 演 - 高岡早紀
- 「天満屋」の女将。
- 夫を尻に敷く肝っ玉の据わった女性。
- 金持ちに愛想が良いが貧乏人には冷たい。
- 平野屋忠右衛門
- 演 - 岸部一徳
- 豪商「平野屋」の大旦那(徳兵衛の父)。
- 喜里
- 演 - 富司純子
- 近松の母。
- 近松含め3人の子を育てた。
- 妻に逃げられ、筆も進んでいない近松を心配している。
- 万吉のことは気に入っており「おかあはん」と呼ばれている。
- 近松門左衛門
- 演 - 松尾スズキ
- 本作の主人公。文学者。本名は「杉森 信盛」(万吉からは「ちかえもん」、喜里からは「信盛」と呼ばれている)。
- 妻には逃げられ、なかなか筆が進んでおらず、毎度喜里からは説教されている。
- 劇中ではフォークソングの替え歌を披露し、「…ってな陳腐な言い回しはわしのプライドが許さんのである」で締めくくる。
その他[編集]
- 喜助
- 演 - 徳井優
- 「平野屋」の番頭。
- 天満屋吉兵衛
- 演 - 佐川満男
- 「天満屋」の主人。
- お玉の尻に敷かれている。
- 佐七
- 演 ‐ 茂山逸平
- 「平野屋」の手代。
- 伊八
- 演 ‐ 村上かず
- 「天満屋」の手代。
- 銀介
- 演 ‐ 三谷昌登
- 「天満屋」の手代。
- 鉄
- 演 ‐ 蟷螂襲
- 「天満屋」の料理人。
- 六
- 演 ‐ 中村大輝
- 「天満屋」の料理人。
- お鈴
- 演 ‐ 川崎亜沙美
- 遊女。
- お里
- 演 ‐ 辻本瑞貴
- 遊女。
- 徳川綱吉
- 演 ‐ 宮川彬良
- 時の5代将軍。
- 「生類憐みの令」のほか、「親孝行」を推奨したため、「孝行糖」が流行した。
- 坂田藤十郎
- 演 ‐ 瀬川菊之丞
- 時の人気歌舞伎役者。
- 大石内蔵助
- 演 ‐ 茂山七五三
- お鶴
- 演 ‐ 田所草子
- 豪商「平野屋」のご寮(徳兵衛の母)。労咳でこの世を去る。
- 鬼塚新右衛門
- 演 ‐ オール巨人(オール阪神・巨人)
- 大坂奉行所の与力。
- 永瀬壱岐守
- 演 ‐ オール阪神(オール阪神・巨人)
- 大坂西町奉行。
- 横川敏斎
- 演 ‐ 桂吉弥
- 医者。
- 喜里を診察した際には代金を取らなかった。
- 結城格之進
- 演 ‐ 国広富之
- お初の父。蔵役人。
- かつて平野屋忠右衛門とは面識があった。
- 杉森信義
- 演 ‐ 木内義一
- 近松の父。
スタッフ[編集]
- 作 - 藤本有紀
- 音楽 - 宮川彬良
- 制作統括 - 櫻井賢
- プロデューサー - 木村明広
- 演出 - 梶原登城、川野秀昭
- 義太夫節指導・三味線 - 竹澤團七
- 人形遣い・監修 - 桐竹勘十郎
- 劇中アニメーション - 岡江真一郎
- 撮影協力 - 国立文楽劇場、文楽協会
- 制作・著作 - NHK大阪放送局
放送日程[編集]
放送回 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 替え歌 |
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第1回 | 1月14日 | 近松優柔不断極(ちかまつゆうじゅうふだんのきわみ) | 梶原登城 | 大阪で生まれた女 |
第2回 | 1月21日 | 厄介者初、井守黒焼(やっかいものおはつといもりのくろやき) | 悲しくてやりきれない | |
第3回 | 1月28日 | 放蕩息子徳兵衛(あほぼんとくべえ) | 学生街の喫茶店 | |
第4回 | 2月 | 4日善悪不明九平次(ぜんかあくかくへいじ) | 川野秀昭 | 傘がない |
第5回 | 2月11日 | 標的、忠右衛門(ターゲットはちゅうえもん) | フランシーヌの場合 | |
第6回 | 2月18日 | 義太夫些少活躍(ぎだゆうわりとかつやく) | 知りたくないの | |
第7回 | 2月25日 | 賢母喜里潔決断(ははうえきっぱりけつだん) | 梶原登城 | かあさんの歌 よこはま・たそがれ |
最終回 | 3月 | 3日曽根崎心中万吉心中(そねざきしんじゅうとまんきちのおもい) | 我が良き友よ |
各放送回ごとに主要登場人物の一人ずつにスポットを当てる構成になっており、サブタイトルにも示されている。
平成28年度文化庁芸術祭参加作品として、2016年10月19日から10月21日までNHK総合にて再放送された[9]。
評価[編集]
ライターの近藤正高はエキサイトに寄せた第2話のレビューの中で、「万吉が遊郭に居残って奔走する場面が『幕末太陽傳』を思わせる[注 1]。また、近松と万吉のちぐはぐなやり取りは、落語におけるご隠居と与太郎のやり取りを思わせ、」遊女のお初が女将によって木に縛り付けられる場面を取り上げ、「『曾根崎心中』をはじめとする近松門左衛門の作品はやりきれない悲劇が多いにも関わらず、その作者を主人公にした本作がコメディタッチなのは、いつか訪れる悲劇を際立たせるための要素ではないかと思った」と評した[10]。放送終了後には、近松が唱えた「虚実皮膜論」を踏まえてラストシーンで万吉に語らせた台詞「ウソとホンマの境目がいちばん面白い」のとおり、史実や時代考証を踏まえた事実(ホンマ)の中に創作や替え歌などの遊びによる虚構(ウソ)が巧みなさじ加減で織り交ぜられ、「時代劇の新たな可能性を見たような気がした」と評している[11]。
2016年4月には本作により藤本有紀が第34回向田邦子賞を受賞。「抜群に面白く、あまり対抗馬が見当たらないくらい」として選考委員の全員一致での受賞で、時代劇作品として初の同賞受賞となった[4]。受賞理由として、「近松門左衛門と『曾根崎心中』を洒落て茶化して一遍の黄表紙本に仕立て上げた快作」であり、「大阪弁の遊びがまことに面白く、言葉を操って虚を実にし、実を虚に見せる技は申し分が無い」としている[12]。
受賞[編集]
エピソード[編集]
本作にて主演・万吉役と年増の遊女・お袖役で共演した青木崇高と優香は、本作の衣装合わせで出会いクランクアップ後より交際を開始して、2016年6月に結婚している[14][15]。
関連商品[編集]
- CD
-
- 宮川彬良『NHK木曜時代劇 ちかえもん オリジナル・サウンドトラック』(2016年2月24日、スザクミュージック、NGCS-1064)
- DVD
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ “青木崇高×松尾スズキ 『ちかえもん』制作開始!”. NHKドラマ. ドラマトピックス. 日本放送協会 (2015年10月26日). 2019年7月19日閲覧。
- ^ a b “青木崇高×松尾スズキ、『曾根崎心中』誕生秘話を創作”. ORICON NEWS (ORICON ME). (2015年10月26日) 2019年7月19日閲覧。
- ^ “青木崇高、「ちりとてちん」制作の地に凱旋!”. ザテレビジョン (KADOKAWA). (2015年11月13日) 2019年7月18日閲覧。
- ^ a b c “向田邦子賞に「ちかえもん」の藤本有紀さん 同賞初の時代劇、「対抗馬見あたらず」で全員一致”. 産経ニュース (産経デジタル). (2016年4月5日) 2019年7月19日閲覧。
- ^ a b “向田邦子賞に藤本有紀さんの「ちかえもん」”. スポーツ報知. (2016年4月5日). オリジナルの2016年4月5日時点におけるアーカイブ。 2016年4月5日閲覧。
- ^ a b 名作「曽根崎心中」 文楽演者が初演再現 NHK「ちかえもん」 Archived 2016年3月7日, at the Wayback Machine.(東京新聞 2016年1月8日、2016年2月4日閲覧)
- ^ a b “時代劇をもっと面白く 「曽根崎心中」誕生秘話描く『ちかえもん』”. ORICON NEWS (ORICON ME). (2016年2月3日) 2019年7月19日閲覧。
- ^ “尼崎の「近松研究所」、NHK時代劇「ちかえもん」制作に一役”. 尼崎経済新聞. (2016年2月23日) 2019年7月19日閲覧。
- ^ “再放送情報「ちかえもん」”. NHKドラマ. 日本放送協会 (2016年9月30日). 2016年10月19日閲覧。
- ^ 近藤正高 (2016年1月28日). “「ちかえもん」は悲しくてやりきれないコメディか”. エキレビ!. エキサイト. 2016年2月4日閲覧。
- ^ 近藤正高 (2016年3月4日). “「ちかえもん」最終回に何度も意表を突かれた、ええもん見せてもろた”. エキサイトニュース. エキレビ!. エキサイト. p. 3. 2019年7月19日閲覧。
- ^ “銀杏・峯田和伸主演『奇跡の人』文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門大賞受賞”. ORICON STYLE. (2016年12月27日) 2016年12月27日閲覧。
- ^ “優香と青木崇高が結婚へ、ドラマ「ちかえもん」での共演がきっかけ”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2016年6月13日) 2019年7月20日閲覧。
- ^ “優香、36歳の誕生日に婚姻届提出 青木崇高と結婚”. eltha (oricon ME). (2016年6月28日) 2019年7月20日閲覧。
- ^ “松尾スズキ 大いに語る!コメディ時代劇『ちかえもん』DVD-BOX特典映像決定”. TVLIFE web (学研プラス). (2016年5月6日) 2019年7月20日閲覧。
外部リンク[編集]
NHK総合 木曜時代劇 木曜日20:00-20:43 |
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
ぼんくら2
(2015.10.22 - 12.3) |
ちかえもん
(2016.1.14 - 3.3) |
鼠、江戸を疾る2
(2016.4.14 - 6予定) |
火曜日14時台 本作品まで木曜時代劇(再放送) |
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ぼんくら2
(2015.10.27 - 12.8) |
ちかえもん
(2016.1.19 - 3.8) |
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