やらせ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
検索に移動

やらせとは、事実関係に作為・捏造をしておきながらそれを隠匿し、作為などを行っていない事実そのままであると(またはあるかのように)見せる・称することを言う。片仮名で「ヤラセ」とも表記される。

新聞テレビなどメディアにおいて行われるやらせを指すことが多い。やらせには倫理的な問題のみならず犯罪行為にまでエスカレートすることが多いため、やらせを行うことで、その放送局の社会的な評価は著しく下がる傾向にある。スポンサーからの信用もなくなり、結果的に番組自体の終了につながることになる。

語源[編集]

元はマスコミ業界用語であったものが、やらせが社会問題となったことで一般用語化したとされる。1972年には、読売新聞が映画『ヤコペッティの残酷大陸』を「開き直った”やらせ”ドキュメンタリー」と評している[1]。1976年、1977年には、朝日新聞がテレビ放送のやらせに言及している[2][3]。1981年には、読売新聞がコラムにて「わが国のテレビ業界には「やらせ」という用語が、いまだに残っているという」と述べている[4]

手法[編集]

全てのやらせに共通するのは打ち合わせするなど事実関係に手を加えておきながら、それを読者や視聴者などの受け手から隠蔽することである。やらせの方法は様々あるが、制作者の意に沿う結果を生じさせるための人(事前の打ち合せを受けた素人や番組スタッフ、および芸能人)を用意して演技させる手段が多い。このような人や物を用意することは「仕込み」ともいわれ、ほぼ同義である。しかし一説によると「仕込み」は下記やらせ事件をきっかけに、それまでの「やらせ」を言いかえる詭弁として業界内で定着したという[要出典]

用語の一般化[編集]

1985年テレビ朝日アフタヌーンショー』において、ディレクターが暴走族にリンチを依頼したとされる「やらせリンチ事件」が発生。テレビ朝日は放送免許の更新を拒絶されるのではという未曾有の危機に瀕することとなった。新聞では事件初期から「やらせリンチ」と報じていた[5][6]

また同様の有名な事件として、1992年NHKNHKスペシャル』にて放送されたドキュメンタリー番組奥ヒマラヤ禁断の王国・ムスタン[7][8][9]のやらせ問題がある。朝日新聞のスクープによって大きな社会問題となったこの事件ではヒマラヤの気候の厳しさを過剰に表現した点、スタッフに高山病にかかった演技をさせた点、少年僧の馬が死んだことにした点、流砂や落石を人為的におこした点が主に問題とされた。皮肉にも同番組は高い視聴率をマークし、評判も良かった。ニュース・報道・ドキュメンタリー番組において高い評判を得ていたNHKの信用を大きく傷つけた不祥事となった。

やらせの問題点[編集]

報道・ドキュメンタリーのように、取材対象が事実であることが前提となっている分野において、事実を歪曲するほどの過剰な演出、つまりやらせを行った場合、報道の対象が存在しないにもかかわらずこれを作り出す「捏造」とも本質において変わりがなく、倫理的に非常に大きな問題となる。

一方、やらせはバラエティ番組でも発生しており、映画『クイズ・ショウ』のモチーフとなったアメリカの人気クイズ番組『21』において発生したやらせ事件などがあげられる[10]

また捏造でなくても、報道・ドキュメンタリー番組において、実態にそぐわないがイメージ的には欲しいシーンを出演者に要請する、内容に対して明らかに歪曲しているタイトルをつけるなどの作為的歪曲が行われるケースもあり、石原発言捏造テロップ事件などが代表としてあげられる。

しかし、より強く・効果的に印象付ける、円滑に進行して結論へ至るなどの点では演出と差異を付けることが出来ない。「川口浩探検隊」シリーズのように、過剰な演出自体が人気を博した番組もあり、許容されるべき「演出」か、非難に値する「やらせ」かの明確な線引きは困難である。近年ではネットによる番組精査のしやすさによる発覚の容易さや、テレビ局をはじめとするマスコミへの不信感から、わずかなミスや従来レベルの演出であっても「やらせ」と糾弾されるケースも多い。

また、放送免許を有するテレビ局側と、実際の番組制作を請け負う下請け、孫受け番組制作会社との癒着、制作予算の削減による制作現場への重圧も「やらせ」の発生する重要なファクターとなっている。例を挙げるならば、花粉症対策で虚偽事実を放送した教えて!ウルトラ実験隊(テレビ東京)[11]、そして2007年フジテレビ系列で放送され、当時人気番組であった発掘!あるある大事典(関西テレビ)だろう。あるある大事典IIでは「納豆ダイエット」を紹介したが、制作側がデーターを捏造し、ダイエットのビフォーアフターも別人を用いていたことが発覚[12]。また、担当放送作家よる外国人教授の翻訳捏造指示やコンビニ・スーパーでの納豆買占め指示も発覚し番組は打ち切りとなった。

メディアの反応[編集]

「禁断の王国・ムスタン」の事件が発覚するとメディアは一斉にこれを非難したが、その前年には朝日新聞においてスクープのために記者自身の手で珊瑚に落書きしたという不祥事が発生しており、またテレビ各局でもその直前直後に「やらせ」が発覚している(詳細は朝日新聞珊瑚記事捏造事件を参照)。

メディアが「やらせ」問題を追及された場合、「過度の演出であった」と弁明することが多い。そうしたことから逆に、行き過ぎた演出が視聴者からやらせと捉えられることもある。また、昨今では「行き過ぎた演出」は「やらせ」と同義的に捉えられる。

やらせが発覚した主な番組、映画[編集]

ここでは、やらせ問題が信憑性の保障されている資料や出典先で明言され、制作側・放送局側による事実確認の結果、最終的にやらせ問題が事実であることが正式に判明し、重大なメディア問題として物議を醸したケースのみを記している。

Twenty One

テレビ番組[編集]

映画[編集]

関連書籍[編集]

  • 小松健一 『ムスタンの真実―「やらせ」現場からの証言』 リベルタ出版(1994年10月)。ISBN 4947637315
  • 竹林紀雄 『日本映画史叢書5 映画は世界を記録する』より10章「テレビ・ドキュメンタリーの新しい相貌」 森話社(2006年9月)。ISBN 4916087674
  • 日木流奈 『ひとが否定されないルール―妹ソマにのこしたい世界』 講談社(2002年4月)。ISBN 4062113120
  • 森達也『ドキュメンタリーは嘘をつく』草思社(原著2005年3月)。ISBN 4794213891。

脚注[編集]

  1. ^ 読売新聞1972.03.14夕刊 p.9
  2. ^ 朝日新聞1976.03.21朝刊 p.12
  3. ^ 朝日新聞1977.06.15朝刊 p.24
  4. ^ 読売新聞1981.06.29朝刊 p.1
  5. ^ 毎日新聞1985.10.09朝刊 p.23 「”やらせリンチ”TV放映」
  6. ^ 読売新聞1986.10.10朝刊 p.1 「ディレクターに逮捕状 テレビ朝日”やらせリンチ”」
  7. ^ NHKスペシャル 奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン第1回 幻の王城に入る”. NHKアーカイブス. 日本放送協会. 2008年12月5日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年12月11日閲覧。
  8. ^ 2011年8月19日に閲覧した際には「該当する保存番組が見つかりませんでした」と表示された。
  9. ^ NHKスペシャル 奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン第2回 極限の大地に祈る”. NHKアーカイブス. 日本放送協会. 2008年12月5日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年12月11日閲覧。
  10. ^ a b 2009年10月8日に奇跡体験!アンビリバボーで紹介された。価格.com2016年10月8日閲覧。
  11. ^ テレ東系『教えて!ウルトラ実験隊』ねつ造で番組打ち切り | 調査・研究結果 - 放送研究と調査(月報)メディアフォーカス | NHK放送文化研究所”. www.nhk.or.jp. 2020年4月4日閲覧。
  12. ^ 『「あるある大事典」ねつ造:苦情9200件 関テレ「処分甘い」の声も』 毎日新聞、2007年1月25日
  13. ^ 1993年2月3日付『朝日新聞』朝刊
  14. ^ 松本人志、やらせ疑惑に「局の方針なんでしょうね」 - お笑い : 日刊スポーツ” (日本語). nikkansports.com. 2020年4月4日閲覧。
  15. ^ 「消えた天才」からのご報告とお詫び TBSテレビ 2019年9月5日
  16. ^ 水トク!大家族スペシャルにおける不適切な演出について”. TBS. 2015年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月閲覧。
  17. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2018年11月18日). “「イッテQ!」番組内で視聴者に謝罪 日テレ” (日本語). 産経ニュース. 2020年4月4日閲覧。

関連項目[編集]