アコーディオン

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アコーディオン
別称:手風琴
各言語での名称
Accordion
Akkordeon
Accordéon
Fisarmonica
手风琴(手風琴)
アコーディオン
アコーディオン
分類

鍵盤楽器蛇腹楽器気鳴楽器

音域
F3〜A6程度※機種によって異なる。
関連項目

コンサーティーナバンドネオン

アコーディオン (: Accordion)は、蛇腹のふいご鍵盤の操作によって演奏する可搬式のフリーリードによる気鳴楽器である。コンサーティーナバンドネオンは近縁の楽器であり、広義にはアコーディオンに含められることがある。これらはあわせて蛇腹楽器と総称される。

アコーディオンの構造[編集]

基本形状[編集]

向かって左からコンサーティーナ(左右相称)、ピアノ式アコーディオン(左右相称)、ボタン鍵盤式ダイアトニックアコーディオン(左右相称)

蛇腹楽器(アコーディオン族)は、伸縮自在の蛇腹の左右にそれぞれ筐体(きょうたい。器械を内蔵した箱)がついている。

アコーディオン(狭義)は左右の筐体の形が違う。演奏者は通常、右手側の筐体はバンドやベルトなどで胴体(腹部や胸部)に固着させる。蛇腹の伸縮動作は左手側の筐体を動かして行う(これに対してコンサーティーナやバンドネオンは、左右の筐体の形はほぼ同じで、また筐体は演奏者の胴体に固着させない)。

右手側の筐体は主に主旋律を担当する。ピアノと同様の「ピアノ式鍵盤」(以下「鍵盤」)もしくは「ボタン式鍵盤」(以下「ボタン」)が並んでいる。
左手側の筐体はさまざまで、ベース音和音を奏でるのに特化したボタンが配置されているタイプが多いが、左手側も旋律をピアノのように奏でられるフリーベース・アコーディオンや、日本の教育楽器でよく見られる「合奏用アコーディオン」のように左手側はボタン鍵盤が無いタイプもある。
一般的な「独奏用アコーディオン」の場合、右手側が8~50鍵ほど、左手側が18~120個ほどのボタンがある。筐体の内部構造は、ボタンと空気弁を繋げるためにシャフトが張り巡らされ、大変複雑である。重量は2~15キログラム程度。

音が鳴るしくみ[編集]

両手で左右の筐体を保持する。それぞれの手で、筐体上の鍵盤やボタンを押すと、シャフトでつながった対応する空気弁が開くようになっている。蛇腹を伸縮することで送られた空気が開かれた弁を通り、リードを通り抜けるときにこれを振動させて音を鳴らす。リードはフリーリードと呼ばれるもので、薄い金属の板であり、共鳴管によらずリード自身の長さや厚さで音高が決定される。フリーリードの1枚のリードは一方からの通気でしか発音しないため、通常アコーディオンの場合は蛇腹を押した時にも引いた時にも発音するように一つのリード枠に表裏2枚のリードがセットされている。この発音原理はハーモニウムハーモニカによく似ている。
押し引きで違うリードが発音するため、押し引きで同音の出るクロマティックタイプのアコーディオンと、押し引きで違う音の出るダイアトニックタイプのアコーディオンがある。

特長[編集]

同時に複数の音を鳴らすのが容易であり、一台で主旋律と伴奏をこなすこともできる(合奏用アコーディオンを除く)。一人で持ち運べるサイズで取り扱いやすく、屋外での演奏にも適している。鍵盤ハーモニカのように息を必要としないので、弾き語りもできる。

教育楽器[編集]

日本では小学校などの一般的な音楽教育の現場でも教育楽器として採用されており馴染みは深い。小学校などで用いられているのは、左手のボタンが無い簡略化した(ベースレス)ピアノ式アコーディオンである(楽器ごとにアルト、ソプラノ、テナー、バスと分担化されており、器楽合奏や鼓笛パレードで組み合わせて用いられる場合が多い)。しかしピアノやギターに比べるとその普及度は低く、楽器も安価なものは少ない。

ストラデラ・ベース・アコーディオンについて[編集]

ピアノ・アコーディオンの左手のボタン配置の方式は機種によって異なる。最も普及しているタイプは和音伴奏に便利な「ストラデラ・ベース・システム」(The Stradella Bass System)であり、これは「スタンダード・ベース」とも呼ばれる。これに対して、ピアノと同様に左手でも和音と旋律を自由に弾きこなせる「フリー・ベース・システム」を愛用する演奏者もいる。

ストラデラ・ベース・システムの呼称は、楽器生産で有名なイタリアのストラデッラで開発されたことにちなむ。中型・大型のアコーディオンの場合、通常次の6列から構成される。2列目のボタンはファンダメンタル・ベース(the Fundamental Bass)と呼ばれ5度音階に従って並べられている。1列目のボタンはカウンター・ベース(the Counter Bass)と呼ばれ、2列目より長3度高い関係になっている。メジャーコードは3列目に配置され、4列目はマイナーコードで構成される。5列目はセブンスコードを格納し、最後の6列目はディミニッシュ・セブンスコードを持つ。

次はアスキーアートによるボタンの配置図である。

... C      G      D      A     E     B     F#   C#    G#    D#    A#     F      C    ...
 ... Ab     Eb     Bb     F     C     G     D    A     E     B     F#     C#     G#   ...
  ... AbM    EbM    BbM    FM    CM    GM    D    AM    EM    BM    F#M    C#M    G#M   ...
   ... Abm    Ebm    Bbm    Fm    Cm    Gm    Dm    Am    Em    Bm    F#m    C#m    G#m  ...
    ... Ab7    Eb7    Bb7    F7    C7    G7    D7    A7    E7    B7    F#7    C#7    G#7  ...
     ... Abdim7 Ebdim7 Bbdim7 Fdim7 Cdim7 Gdim7 Ddim7 Adim7 Edim7 Bdim7 F#dim7 C#dim7 G#dim7 ...

値段やサイズ、楽器の系統にも因るが、まったく無い列があったり、レイアウトが多少変更されていることがある。ほとんどのロシア式の配置は、ディミニッシュ・セブンス・コードの列はボタンひとつ分移動され、ディミニッシュ・セブンス・Cコードは図のディミニッシュ・セブンス・Fコードの位置にあり、人差し指が届きやすいようになっている。

ストラデラ・ベース式のアコーディオンは、ボタンの数と種類によって次のように分類される。

  • 「12ベース」アコーディオン:FからDまでとかBbからGまでとかのファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコードを持つ。さらにここからマイナーコードを省略した8ベースもある。
  • 「24ベース」はBbからAまでで、ファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコードを持つ。
  • 「32ベース」はEbからEまでで、ファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコード、セブンスコードを持つ。
  • 「48ベース」はEbからEまでで、6つの列すべてを持つ。
  • 「72ベース」はDbからF#までで、6つの列すべてを持つ。
  • 「80ベース」はCbからG#までで、ディミニッシュ以外のすべてを持つ。
  • 「96ベース」は80ベースと同様だが、6つすべての列を持つ。
  • 「120ベース」はAbb(i.e. low G)からA#まで - 20行 - 6つすべての列を持つ。

アコーディオンの歴史[編集]

初期のアコーディオン。1830年代。8鍵のボタン鍵盤式
20世紀前半のアール・デコ調のアコーディオン (Tombo No.100 Lirico)

最初のフリーリード楽器は中国であるが、これは息で空気を送り込むようになっている。この笙のようなフリーリードによる発声の仕組みを、18世紀ヨーロッパの旅行者が中国から持ち帰ったものと思われる。

最初のアコーディオンの発明者については、諸説がある。

  • ブッシュマン説 - 1822年ドイツのフリードリッヒ・ブッシュマン (Friedrich Buschmann、1805年6月17日 - 1864年10月1日) が発明した簡素な蛇腹楽器「ハンド・エオリーネ」(Hand-Aeoline) を最初のアコーディオンと見なす説。
  • デミアン説 - 1829年5月23日にオーストリアのシリル・デミアン(Cyrillus Damian)が特許を取得した「アコーディオン」を起源と見なす説。「アコーディオン」はデミアンによる命名で、「和音」を意味する語 accord に由来する。ディアトニック式で、全音階(メジャースケールの7音)を持ち、単一のキーのみで演奏された。
  • ロシア人説 - ドイツやオーストリアで蛇腹楽器が発明される前に、すでにロシアで同様の楽器が考案されていたと主張する者もいるが、根拠は薄い。

「アコーディオン」という呼称を重視するならば、アコーディオンの発明者はデミアンである。1979年「アコーディオン150年祭」というイベントが日本でも行われた。

アコーディオンの外見は時代とともに変化しており、この楽器を見慣れた人なら、外形を見ただけでその楽器の製作年代をある程度推定することができる。鍵盤式アコーディオンの場合、20世紀前半までは、鍵盤部の両脇がライアーのようにふくらみ、ボディも角ばったアール・デコ調のデザインが好まれた(右の写真)。20世紀後半以降は、装飾を減らし、ボディの角に丸みを持たせたタイプが普及している。こうした外観の変化は、自動車のデザインの変遷と似ている面がある。今日でも、中古楽器市場や骨董市場では、古いデザインのヴィンテージ・アコーディオンもかなり出回っている。

かつてオーケストラの中に入る鍵盤楽器といえばピアノチェレスタオルガン、の他にハーモニウムが使用されることがあったが、楽器と奏者の性能が上がったことで、アコーディオンがハーモニウムよりも多用されるようになっている。武満徹ベアート・フラーグバイドゥーリナはオーケストラ曲でアコーディオンまたはバヤンを用い、高い音響効果をあげている。

ギャラリー[編集]

アコーディオンの種類[編集]

楽器店のアコーディオン売場の陳列棚。狭義の「アコーディオン」には含まれない蛇腹楽器も一緒に並んでいる(東京・谷口楽器で撮影)
ピアノ・アコーディオン・・・1,2,13
ダイアトニック・アコーディオン・・・3
バンドネオン・・・4
コンサーティーナ・・・5~10
クロマティック・アコーディオン・・・11,12,14
電子アコーディオン・・・11~14

ピアノ・アコーディオン[編集]

ピアノ・アコーディオン(「ピアノ鍵盤アコーディオン」もしくは単に「鍵盤アコーディオン」と呼ばれることもある)は19世紀ヨーロッパで開発されたタイプで、日本では最も一般的なタイプのアコーディオンである。右手部はピアノの鍵盤と同形状の「手鍵盤」になっており、ピアノよりは鍵盤のサイズは小さめであることが多いが、ピアノ奏者でも演奏することができる。左手のベース・ボタンは和音伴奏のためのもので、ボタン配列は標準的な「ストラデラ・ベース」や、旋律も自由に弾ける「フリー・ベース」など複数ある。鍵盤数は楽器のサイズによってまちまちだが、プロ奏者が使う大型のアコーディオンでは41鍵120ベース(右手の手鍵盤は41個、左手の和音伴奏用のベースボタンは120個)が標準であり、中型や小型の機種では鍵盤数はこれより少なくなる。

ボタン・アコーディオン[編集]

ダイアトニック・アコーディオン[編集]

ダイアトニック・アコーディオンはもっとも初期に開発されたシンプルなアコーディオンである。ダイアトニック(diatonic)とは「全音階」を意味し、単一のキーのみが演奏でき、ピアノの黒鍵にあたる半音は出せない(半音を出すためのアクシデンタル・キーを追加したタイプもある)。蛇腹(じゃばら)を伸ばすときと縮めるときで違う音がでる「押引異音式」になっている。ピアノ・アコーディオンなどに比べると構造が単純で軽量である。右手は主旋律を演奏し、左手は2~3のベース音とトニックとデミナントのシンプルな和音を演奏する。ダイアトニックの項目も参照。

メロディオン[編集]

一列のボタン鍵盤をもち、全音階のみを弾くタイプを、特に「メロディオン」(melodeon)と呼ぶことがある。日本では、鍵盤ハーモニカの商品名「メロディオン」(melodion)と混同されることがある。

ケイジャン・アコーディオン[編集]

ケイジャン音楽の伴奏に特化したメロディオン。

スタイリッシュ・ハーモニカ[編集]

シュタイリシェ・ハーモニカ(Steirische Harmonika=シュタイアーマルク式ハーモニカ)とも。オーストリアドイツスイススロベニア南チロルなどのアルプス地域を中心に民族音楽やポピュラーミュージックの主力楽器の一つとして現在でも多く使われている、アコーディオンに似た蛇腹楽器で、多くがダイアトニック式のボタンタイプである(一部には鍵盤型の物も存在する)が、メロディが3~5列、ベース、コードが11個前後と比較的多めである(鍵盤型のものは更に多い)。

クロマティック・アコーディオン[編集]

全音階でしか演奏できないダイアトニック・アコーディオンを改良したもので、ピアノなどと同様に半音階の音も出すことができる。ダイアトニック・アコーディオンが押引異音であるのに対し、クロマティック・アコーディオンは押引同音になっている。1850年ごろにウイーンのフランツ・ワルターによって作られた。クロマティックの項も参照。ボタン式のキー配列にはイタリア式とベルギー式の2種類があり、日本のボタンアコーディオンの演奏者の中で、桑山哲也以外はほとんどがイタリア式である[1]。詳しくはクロマティック・アコーディオンを参照。

バヤン[編集]

ロシアあるいはウクライナ音楽に特化したクロマティック・アコーディオン。本来は独自の鍵盤配列を持った民族楽器の一つで、1907年にピョートル・ステリゴフによって開発された。後に、イタリア式クロマティック・アコーディオンを参照して、西洋伝統音楽に耐える構造に徹底的に作り変えられ、レジスターや列数が強化された。バヤンは右手のボタン配列が通常のアコーディオンと若干異なる。音域は同一でも、音色はリード形状のせいで微妙なレヴェルで異なる。AKKO社[2]は右の8フィートのリードを二種から三種に増やし、重さは16.5kgを越え音栓数は31に及ぶモデルを生産している。これだけの重さに耐えなおかつ余裕で使いこなすロシア人の体力がよく解る楽器の歴史が見える。現在も、発祥時のピリオドモデルと改良されたモダンモデルどちらも生産されているものの、ロシア語圏で一般に広く出回っているのはすでに改良されたモダンモデルである。ロシアとウクライナでは路上やコンサートホールで頻繁に見かけることができる。詳しくはバヤンを参照。

電子アコーディオン[編集]

2004年日本電子楽器メーカーであるローランドがVアコーディオンを発表。ピアノ式とボタン式があり、世界中のアコーディオン・サウンド、オーケストラ音色、ドラム&パーカッション音色、バーチャルトーン・ホイール・オルガン音色など多彩な音色を内蔵している。

広義のアコーディオン属の楽器[編集]

コンサーティーナやバンドネオン等のコンサーティーナ族の楽器は、狭義の「アコーディオン属」(アコーディオン族)には含めず、アコーディオンとは別の楽器と見なされる。例えば、バンドネオン奏者は自分の楽器を「アコーディオン」と呼ばれることを嫌う[3]。これは、「ヴァイオリン属」の楽器であるヴィオラチェロの演奏者が、自分の楽器を「ヴァイオリン」と呼ばないのと同様である。しかし歴史をさかのぼれば、バンドネオンの発明者であるバンド自身が自分の楽器を当初は「アコーディオン」と呼んだように、コンサーティーナ属も広義のアコーディオン属に含める場合があるため、ここでも簡単に解説しておく。詳しくは蛇腹楽器を参照。

コンサーティーナ[編集]

コンサーティーナ(左)とバンドネオン(右)。(東京・谷口楽器の商品棚で撮影)

イギリス物理学者チャールズ・ホイートストンが発明した蛇腹楽器。詳しくは「コンサーティーナ」を参照。

バンドネオン[編集]

ドイツハインリヒ・バンドが発明した蛇腹楽器。狭義のコンサーティーナとは別種の楽器であるが、コンサーティーナ属に含まれる。詳しくはバンドネオンを参照。

メロフォン[編集]

メロフォンの外見はギターに似る。右手で蛇腹につながったハンドルを操作して空気を送り、左手で(ギターで言うところの)ネックに備えられたボタンを操作して音高を変えて演奏する。

楽器以外に付けられたアコーディオン[編集]

アコーディオンの蛇腹の様な構造が含まれる機械類もアコーディオンが含まれる事がある。ただし、アコーディオンという言葉には蛇腹やベローズという意味は無い。

  • アコーディオンカーテン
  • アコーディオンドア

世界の代表的なアコーディオン奏者[編集]

Category:各国のアコーディオン奏者も参照のこと。

日本の代表的なアコーディオン奏者[編集]

Category:日本のアコーディオン奏者も参照のこと。

世界のアコーディオンメーカー[編集]

  • Cavagnolo (キャバニョロ)
  • VICTORIA(ヴィクトリア)
  • Hohner (ホーナー)
  • Mengascini(メンガシーニ)
  • Ballone Burini (バロン・ブリーニ)
  • EXCELSIOR (エキセルシァー)
  • GUERRINI(ゲリーニ)
  • Dallape (ダラッペ)
  • BUGARI(ブガリ)
  • Castelfidardo(カステルフィダルド)
  • Weltmeister(ベルトマイスター)
  • Paolo Soprani (パオロ・ソプラーニ)

日本のアコーディオンメーカー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 2015年10月22日、指原カイワイズ(フジテレビ)にて桑山談。
  2. ^ 外部リンク
  3. ^ 「でも、バンドネオン奏者に「アコーディオン奏者の○○さん」と声をかける事はタブーです。/ バンドネオンとアコーディオンは、親戚のような関係にあるものの/ 全く異なる楽器です。」(早川純「バンドネオンはアコーディオンではぬぁい!!」2017-2-24閲覧)

参考文献[編集]

  • 渡辺芳也「アコーディオンの本」ISBN 4-393-93422-9

関連項目[編集]