アスリート

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ニューヨークシティマラソンに参加した大勢のアスリートたち(2005年)
パラリンピック車いす陸上競技 T54クラスで活躍するアスリートたち(2009)
オリンピックの7種競技に参加したアスリートたち(2008年)

アスリート英語: Athlete)とは、スポーツや、他の身体運動に習熟している人である[1]。スポーツや、身体的強さや俊敏性やスタミナを要求されるゲームについて、トレーニングを積んだり、技に優れている人のこと[2]

運動選手(うんどうせんしゅ)、スポーツ選手(スポーツせんしゅ)、スポーツマン(英: sportsman)ともいう。

概説[編集]

オックスフォード辞典では「スポーツや、他の形式の身体運動に習熟している人[1]」という定義を、メリアム=ウェブスター辞典は「スポーツや、身体的強さや俊敏性やスタミナを要求されるゲームについてトレーニングを積んだり技に優れている人のこと[2]」という定義を、それぞれ掲載している。

アスリートという言葉は、「競技会やコンテストの参加者」を意味するギリシャ語の「άθλητὴς(athlētēs アスレーテース)」に由来している。この語は「競技」を意味する「ἂθλος (áthlos アスロス)」「ἂθλον (áthlon アスロン)」からの派生語である[注 1]

イギリス英語では、athleteには「競技的トラック&フィールド・イベントに参加する人」(A person who takes part in competitive track and field events (athletics)という用法も(2番目の用法として)ある[3]大辞泉では、主として陸上競技水泳球技などの選手について言う、との説明文を掲載している[4]

日本ではかつては「スポーツ選手」と言うのが一般的であったが、1990年代後半から英語の「アスリート」が使われることが増えた。

様々な分類[編集]

さまざまな分類法がある。

アマチュアとプロ[編集]

ひとつの分類法は、(スポーツによって)受け取らない / 受け取る で分類する方法である。

アスリートや競技について「アマチュア」と言う場合、愛好家、愛する人という意味で、もともと基本的には、競技以外にしっかり本職をもっていて、競技を生活の糧を得る手段に使わず純粋にそれを愛好する人のことを指した。それに対して「professional プロフェッショナル」(略して「プロ」)とは、競技に参加することを職業とし、それで生活の糧を得る(お金を得る)人のことを指す。

アスリートにはアマチュアもプロもいる。競技種目ごとに、アマチュア/プロの分布の状態は異なっている。アマチュアの競技者しかいないという競技種目も多い。一部の競技はビジネス化が大々的になされていて、競技がテレビ番組などで放送され、テレビ放送局運営企業や他のマスメディアや大企業と結び付いて、複合的なビジネスの種や核として利用されていて、放映権などが関係して「放映権料」などとして大金が動くので、一部のプロ選手には大金が支払われ、そうした経済的な成功ばかりを夢見て競技を行う選手まで出ている。視聴者にはこうした派手な競技ばかりが目につくが、あくまでそれは様々な競技種目のごく一部であり、大半の競技種目はもっと控えめな状態で、純粋に競技を愛好する人たちの割合が多い。

一般に、プロがいる競技種目でも、全アスリートの中でプロになれるのはその中のごくごく一部である。競技以外の職業をしっかり持ち、アマチュアのアスリートとして長く競技人生を楽しむ人も多い。

普通の(平凡な)アスリート / トップアスリート[編集]

ほかの分類法としては、アスリートの中での順位、位置づけに着目した分類法もある。「平凡なアスリート / チャンピオン[5]」「普通のアスリート /一流のアスリート」や「普通のアスリート /トップアスリート」などという分類を、ことさらに したがる人や、そういう分類をしておいて、片方にばかり意識を向けて、片方を無視したがる人がいるわけである。

アスリートの集団全体を統計的に、つまり数的にとらえれば、大半のアスリートは「平凡なアスリート」に分類されることになる。100人のアスリートがいれば、そのうちのほとんどは(決して「トップアスリート」ではなく)「平凡なアスリート」「ありきたりのアスリート」としての道をたどることになる。統計学では(どんな分野のことを扱う場合でも、たいてい便宜的に、習慣的に)95%のところで線を引く、ということが行われているが、(「トップアスリート」は本当は、もっと少数で、もっと厳しめの線引きがされることが一般的であろうが)今仮に、統計学の慣習にしたがって、少し甘めの線引きを採用したとしても、100人のアスリートのうち95人までは「平凡なアスリート」に分類されることになり、圧倒的な多数が、「平凡なアスリート」である。アスリートひとりひとりはそれなりに競技力を向上させようと努力しているわけであるが、競技スポーツは「競争」の世界であり、他のアスリートたちも同様に努力していて能力を向上させようとしているので、結果として、ほとんどのアスリートは「上位数パーセント」には入り込むことができず、アスリート人生を「平凡なアスリート」として終えてゆく。

アスリートの中でも「一流」と認められる者が漠然と「top athlete トップアスリート」と呼ばれることがある。特に厳密な規定があるわけではない。一般論として言えば、各競技種目の上位「ひとにぎり」のアスリートをそう呼んでいる。一般的には、各競技の世界大会で上位に入賞する者や、世界ランキングの上位に位置する者を指す。中学生高校生であれば、各国のジュニア大会(=若者だけが参加できる大会)の全国大会の上位者なども「トップアスリート」と同等に見なされることもある。[注 2]。 (報道というものの性質として、たとえば商人や企業のビジネスマンなどについて扱う場合は、社会的な現実や問題をさまざまな角度から掘り下げて、社会の現実を視聴者に伝えるために、「平凡な商人(ビジネスマン)」も「優秀な商人(ビジネスマン)」も「落伍した商人(ビジネスマン)」も、(社会の多様性や社会問題を広く視聴者に伝えるために)等しくマスコミなどの取材を受けること、それなりにスポットが当てられること、があるが、競技スポーツに関しては華やかな勝者にばかりスポットが当てられがちで、たとえばニュース番組などのスポーツのコーナーなどでは、こうしたトップアスリートばかりが繰り返し繰り返しメディアに登場することになるばかりで、反対に「平凡なアスリート」の大多数は、メディアからはほぼ忘れられたような状態で(世間のほとんどの人々の意識には少しも残らない形で)アスリート人生を生きてゆくことになる、という現実がある。(例えばプロ野球などでは「一軍の選手」ばかりにスポットが当たり、「二軍」(や「三軍」)に所属するアスリートにはスポットがほとんど当たらず、二軍の選手のかなりの部分は、そのまま一軍に上がることができないまま、選手人生を終えていってしまう、という現実がある。)

トップアスリートの例

職業人生の短さと対策[編集]

一般に、プロのスポーツ競技者の職業人生は、他の一般的な職業と比較して非常に短期間とされる。例えば、日本のプロ野球選手の場合、平均選手寿命は(わずか)約9年であり「平均引退年齢」は約29歳である[6]。また、Jリーガー(J1、J2、J3の選手)では、2013年2月の時点で1142人いるが、毎年100人以上が新規契約され、ほぼ同数が契約解除されており、統計的にはJリーガーの50〜60%程度が入団3年以内に引退している[7]。Jリーガーに対してアンケート調査を行ったところ、90%が「引退後の人生に不安を感じている」と回答した[8]

武井壮はプロスポーツを志した時点で、それぞれのスポーツの収入や待遇、その後の生活の選択肢などを考慮すべきであり、「そんな事も知らずにスポーツに中高大の10年を費やす無計画はダメ」と警鐘を鳴らしている[9]

スポーツ社会学では、アスリートはリスクの高い職業である、とされている。「プロスポーツ選手に固有の専門スキルは、所属球団やクラブに限定されないいわば職業特殊的なものであり、一般企業に適用可能なスキルではないゆえにその緊要性は一層高い」とも指摘されるが、「身体と精神と感情とを自己制御し、刻々と変化する状況をとられて瞬時に反応し行動するというスポーツ選手のいわばもう一つのスキルは、実はいかなる仕事にも適用しうるものとしてすぐれて汎用的である」とも言われる[10]。しかし、アスリートの社会人基礎力の欠如や知的基礎能力の低さが指摘されることも多く[11][12][13]、元アスリートの(産業界、ビジネス界での)需要は少ない。

引退後の人生[編集]

引退した選手のごく一部は当該スポーツのコーチ監督を務めるが、ポストに就ける人数は非常に少なく、大多数の選手は、それまでの競技とは関係の無い、異なった職業人生を歩まざるを得ない[14]。プロ野球選手の場合、「業界で見ると、不動産、不動産投資販売、保険営業、サービス系の営業が多い」と言う[15]実業団の選手であっても、競技中心の生活を送ったために社業について行けない場合がある[16]

対策[編集]

米国のメジャーリーグベースボールなどでは、現役の選手に対して(オフシーズンなどに)、選手引退後の人生に役立つような職業訓練を実施している。選手らは引退後、建築に従事する大工自動車販売業でのカーディーラー営業マンなどへと転職するなど、(スポーツ選手やコーチ以外の)様々な職業人生を歩む方が一般的であり、現役時代の職業訓練が効果を発揮する。ただし、2009年のスポーツ・イラストレイテッド誌によれば、NBAプレイヤーの60%が引退から5年以内に自己破産、NFL選手の78%は引退後2年以内に破産、または経済的に困窮するとされる[17]

横浜DeNAベイスターズ初代代表取締役社長池田純は「スポーツで結果を出せず突然クビになって、社会とのつながりがなくなったかのような孤立感、孤独感を覚えながらセカンドキャリアをスタートさせることになってしまうことが多いのも現実です」「机に向かって勉強する、困ったときに本を読む、文章を書く、しっかりと言葉で表現するなど、人生における学び基礎が、なかなか身についていないプロアスリートも多い」と指摘し、学生アスリートの段階から教育環境を整備することを提唱している[18]

日本サッカー界では、2002年にJリーグキャリアサポートセンター(JCSC)が設立され、キャリアカウンセリングやキャリアデザイン支援を行っているが、職業斡旋機能の脆弱さや現役選手のキャリアデザイン教育の不備が指摘されている[19]

日本野球界では、選手の将来のための職業訓練はほぼ実施されていない。日本野球機構アンケート結果[20]によれば、「プロ野球引退後に就きたい職業」の1位は「一般企業の会社員」となっているが、そのための具体的な支援は行われていない。2014年12月、プロ野球選手会が中心になって、野球選手の再就職を支援するためのインターネット上のウェブサイトが立ち上げられた[21][22]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 例えば、「トライアスロン」「バイアスロン」なども同系統の派生語である。
  2. ^ なお、北米では「トップアスリート」に、ごく稀に、人だけでなく動物(競走馬や競技馬など)を含むこともある。『20世紀の北米トップアスリート100選(ESPN)』では、競走馬も3頭(35位、84位、97位)がランクされた。日本などでは、一般的には動物は「アスリート」には含めない。

出典[編集]

  1. ^ a b Oxford Dictionaries, Lexico 「A person who is proficient in sports and other forms of physical exercise.」
  2. ^ a b Merriam-Webster "athlete" 「a person who is trained or skilled in exercises, sports, or games requiring physical strength, agility, or stamina」
  3. ^ Oxford Dictionaries Lexico "Athlete"の2番目の用法。「british」以下に書かれている。
  4. ^ 大辞泉
  5. ^ [1]
  6. ^ 日本プロ野球選手会 公式ページ
  7. ^ JリーグCSC調査
  8. ^ 1999年Jリーグ選手協会 調査
  9. ^ 武井壮「プロの収入や待遇を知らずに中高大の10年間をスポーツに費やす無計画はダメ」と持論” (日本語). ハフポスト (2015年11月4日). 2020年4月25日閲覧。
  10. ^ 井上雅雄 (2009) (日本語), 職業としてのアスリートとプロスポーツの諸問題, 日本スポーツ社会学会, doi:10.5987/jjsss.17.2_33, https://doi.org/10.5987/jjsss.17.2_33 2020年4月25日閲覧。 
  11. ^ 元アスリートたちが語る「引退後の実情」 ~第3回スポーツ・セカンドキャリア・シンポジウム~ | The BORDERLESS [ボーダレス]” (日本語). The BORDERLESS [ザ・ボーダレス]. 2020年4月25日閲覧。
  12. ^ アスリートが備えるビジネススキルとは(写真=共同)” (日本語). 日本経済新聞 電子版. 2020年4月25日閲覧。
  13. ^ 元メジャーリーガーが語るセカンドキャリア論とは” (日本語). マイナビニュース (2013年12月16日). 2020年4月25日閲覧。
  14. ^ 特別読み物 サラリーマンにもなれない!? はじめての「就活」元プロスポーツ選手 現実は厳しい(週刊現代) @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2020年4月25日閲覧。
  15. ^ プロ野球選手から公認会計士に。経験者だからわかるセカンドキャリアの難しさ” (日本語). Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (2019年9月20日). 2020年4月25日閲覧。
  16. ^ アスリートの「第ニの人生」、その厳しい現実 | 「走り」を制する者は仕事を制す” (日本語). 東洋経済オンライン (2016年6月22日). 2020年4月25日閲覧。
  17. ^ 杉浦大介. “大金を稼いだのに破産…米スポーツ選手の“異常”な金銭感覚 〈dot.〉” (日本語). AERA dot. (アエラドット). 2020年4月25日閲覧。
  18. ^ 引退した元プロ野球選手が人生に苦しむ理由”. ダイヤモンド・オンライン. 2020年4月25日閲覧。
  19. ^ 吉田章,佐伯年詩雄,河野一郎「<研究資料>トップアスリートのセカンドキャリア構築に関する検討(第1報)」『体育科学系紀要』第29巻、筑波大学体育科学系、2006年3月、 87-95頁。
  20. ^ http://npb.jp/npb/careersupport2018enq.pdf
  21. ^ NHKニュースweb「プロ野球選手会が再就職支援システム」
  22. ^ [2]

関連項目[編集]