アンテナ
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アンテナ(英: antenna)とは、電流と電波を相互に変換する導体で出来た構造を持つ装置である。
無線通信、レーダー、核融合炉におけるプラズマ加熱に用いられる。無線通信分野では空中線とも呼ばれる。
アンテナの特性[編集]
指向性[編集]
電波の放射方向と放射強度との関係を指向性という。指向性が鋭いアンテナは、特定の方向へ強く電波を放射する。指向性は送信でも受信でも同じ特性となる。
指向性の有無は、アンテナの用途と関係している。ブラウン・アンテナのような無指向性のアンテナは、スマートフォンなどの移動する無線機に適している。一方で、八木・宇田アンテナやBSアンテナなどの指向性を持つアンテナは、家庭用テレビアンテナなど、固定された場所同士の通信に適している。
指向性は放射角と放射強度の関係をレーダーチャートにした図で表される。ダイポール・アンテナの特性は2つの円を並べた「8の字」、ブラウン・アンテナ(垂直面内)の特性は2つの半円を並べた図となる。指向性を持つアンテナでは、放射が最大となる方向(メインローブ)と逆方向の利得(F/B比)やそれに直交する方向(サイドローブ)の利得(F/S比)も性能を示す重要な指標である。
利得[編集]
アンテナが放射する電波の電界強度を、アンテナの利得(ゲイン)としてデシベル(dB)で表す。表記には2通りあり、半波長ダイポールアンテナを基準とするdBまたはdBd表記(相対利得)と全ての方向に均等に電波を放射する仮想的な等方向性(アイソトロピック)アンテナを基準とするdBi表記(絶対利得)がある。dBi表記はdBd表記より2.14dB(又は2.15dB)大きな値となるため、利得の比較には注意が必要である。
指向性を持つアンテナにおいては、放射が最大となる放射角における電波の強さを利得とするため、指向性が強いアンテナほど利得が大きくなる傾向がある。
偏波(へんぱ)[編集]
電界が常に一つの平面内に存在する場合を直線偏波といい直線偏波の中で電界が大地と平行な場合を水平偏波、大地と垂直な場合を垂直偏波という。例えば素子が大地に対して平行ならば水平偏波、垂直ならば垂直偏波となり首都圏のテレビ放送では水平偏波が多い。
直線偏波とは異なり、電界が伝播方向に向かって回転する場合を円偏波といい電波の進行方向に向かって右に回転する場合を右旋円偏波、左に回転する場合を左旋円偏波という。円偏波は回転する電界の大きさが一定の場合を言うが実際のアンテナでは電界の大きさが一定とならず楕円の形になり、その場合を楕円偏波という。楕円偏波において、楕円の長軸と短軸の比を軸比という。円偏波は衛星放送やGPS等の衛星通信で使用されることが多く、また円偏波は電波の周囲からの不要な反射(マルチパス)の影響を受けにくいためETCなどでも使われている。
良好な通信を行うには送信アンテナが水平偏波の場合は受信アンテナも水平偏波、送信アンテナが右旋円偏波の場合は受信アンテナも右旋円偏波というように偏波を一致させる必要がある。
定在波比(VSWR)[編集]
効率よく通信を行うには、アンテナと送信機又はアンテナと受信機のインピーダンスを整合させる必要がある。整合の程度を表すものとして定在波比がある。
給電方式[編集]
高周波電力を供給するためアンテナと給電線とを接続する点を給電点という。給電点の電流と電圧の関係により、次のように分類できる。
- 電流給電
- 給電点において電流が最大で電圧が最小となる給電方式。例:中央から給電した1/2波長ダイポール・アンテナ
- 電圧給電
- 給電点において電圧が最大で電流が最小となる給電方式。例:端部から給電した1/2波長ダイポール・アンテナ
接地[編集]
接地(アース)を必要とするアンテナでは、大地に直接接続して接地するのが基本である。ただし、この場合アンテナの地上高は0mになる。地上高を高くするために大地の代わりに波長に対して十分長い導線を四方八方に複数、水平に張ることで電気的に接地型アンテナと同じにできる。この導線をラジアルと言う。ラジアルは1/4波長まで短くできるが、その場合は指向性が上向きになる。またラジアルの本数が1本の場合は、もはや接地アンテナとは言えない。砂地や岩の多い大地では十分に接地抵抗を低くできない。そこで大地に平行に導線を展張することがある。これをカウンターポイズ(counterpoise)と言い、大地との間にコンデンサを形成させることで高周波的に接地と同じ効果を狙ったものである。
アンテナの種類[編集]
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電波の周波数や用途により、大きさも形状も異なる。
形状による分類[編集]
線状アンテナ[編集]

- ダイポール・アンテナ
- 逆V型アンテナ
- U型アドコックアンテナ
- エクスパンディッド・クワッド
- スクエアローアンテナ
- 折返しダイポールアンテナ
- 広帯域ダイポールアンテナ
- クロスダイポールアンテナ
- 八木・宇田アンテナ(八木アンテナ)
- GIP八木
- パラスタックアンテナ
- 単線給電アンテナ
- ループ・アンテナ
- 位相差給電アンテナ
- HB9CV
- スイス・クワッド
- ZLスペシャル
- アレイアンテナ
- フェイズドアレイアンテナ
- アダプティブアレーアンテナ
- Lazy-Hアンテナ
- バードケージアンテナ
- ツイギー・ビーム
- 8JKビーム・アンテナ(フラットトップアンテナ)
- HB9CV
- 接地アンテナ
- モノポールアンテナ
- ロングワイヤーアンテナ
- 逆L型アンテナ
- 逆F型アンテナ(線状)
- ホイップアンテナ
- モノポールアンテナ
- 非接地型垂直アンテナ
- ブラウン・アンテナ(グラウンド・プレーン・アンテナ)
- スリーブアンテナ
- コーリニヤ(コーリニア、コリニア)アレーアンテナ
- 1/2λアンテナ
- J型アンテナ
- スリムジムアンテナ
- ビームアンテナ

- 水平偏波全方向性アンテナ
- ターンスタイルアンテナ
- 折返しターンスタイルアンテナ
- 多段ターンスタイルアンテナ
- スーパーターンスタイルアンテナ
- スーパーゲインアンテナ
- EWEアンテナ
- ターンスタイルアンテナ
- コーナーリフレクタ・アンテナ
- くし形アンテナ
- アドコック・アンテナ
板状アンテナ[編集]
- バイコニカル・アンテナ
- ディスコーン・アンテナ
- ボウタイ・アンテナ
- スパイラル・アンテナ
平面アンテナ[編集]
- マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)
- 板状逆Fアンテナ(PIFA)
- 一層構造導波管スロットアレーアンテナ
- ラップアラウンド・アンテナ
開口面アンテナ[編集]
- ホーンアンテナ
- ホーンリフレクタアンテナ
- ディッシュアンテナ
- パラボラアンテナ
- カセグレンアンテナ(カセグレン型パラボラアンテナ)
- グレゴリアンアンテナ(グレゴリ型パラボラアンテナ)
- 球面アンテナ
- パラボラアンテナ
- レンズ・アンテナ
進行波アンテナ[編集]
EHアンテナ[編集]
- スター型EHアンテナ
- ブリッジ型EHアンテナ
スーパーラドアンテナ[編集]
- スーパーラドアンテナ
磁界アンテナ[編集]
誘電体アンテナ[編集]
- 誘電体アンテナ
その他[編集]
アンテナパーツ[編集]
アンテナの接続・設置のために用いる関連器具を、アマチュア無線あるいは家庭用テレビ受信アンテナ工事では総称してアンテナパーツあるいはアンテナアクセサリーという。主なアンテナパーツには次のようなものがある。
- マスト
- アンテナを設置するための支柱
- サイドベース(マストホルダー)
- マストを建物の壁面に取り付けるための器具
- 屋根馬(ルーフベース)
- マストを建物の屋根上に取り付けるための四本足の器具
- 支線止め金具
- 支線止め金具またはステー金具は、マストをステー(支線)で支えるときにマストに付ける金具
- ターンバックル
- ターンバックルはステーの張力を調節する金具
- ワイヤーコース(シンブル)、シャックル、ナスカン
- いずれも支線同士、支線とステー金具、支線とアンカー等とを接続するのに用いる金具類
- Uボルト
- アンテナをマストに取り付ける金具
日本のアンテナメーカー[編集]
主要製品による分類[編集]
家庭用テレビ受信用[編集]
アマチュア無線用[編集]
- コメット
- 第一電波工業
- クリエートデザイン
- ミニマルチアンテナ
- ナガラ電子工業
- サガ電子工業
- 日高電機製作所
- 工人舎
自動車用[編集]
業務用[編集]
- アンテナ技研
- スタッフ
- 電気興業
- 日高電機製作所
- 日本アンテナ
- 日本電業工作
- 日立国際八木ソリューションズ
アンテナメーカーではないが業務用アンテナを製造している企業[編集]
関連項目[編集]
- グリエルモ・マルコーニ - アンテナの命名者
- マクスウェルの方程式
- 電磁気学・電気工学
- 電波工学・無線工学
- 電子工学
- 定在波比(SWR、VSWR)
- 自己補対アンテナ
- 列車無線アンテナ
- 同軸ケーブル
- 日本の地上デジタルテレビ放送
- 日本の放送送信所一覧