アンデッドガール・マーダーファルス

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アンデッドガール・マーダーファルス
ジャンル ホラーミステリー伝奇
小説
著者 青崎有吾
出版社 講談社
レーベル 講談社タイガ
巻数 既刊2巻
テンプレート - ノート

アンデッドガール・マーダーファルス』は、講談社講談社タイガより発売されている青崎有吾小説。2016年10月現在2巻まで刊行されている。

あらすじ[編集]

時は「怪物一掃」が進んだ19世紀末、「怪物専門の探偵」を名乗る3人組の東洋人集団”鳥籠使い”一行は、それぞれの目的のためステッキの異人を追ってヨーロッパへとやってくる。彼らは情報を集めながら、欧州各国で発生する怪物がらみの事件を解決していく。

登場人物[編集]

“鳥籠使い”一行[編集]

輪堂 鴉夜(りんどう あや)
通称怪物専門の探偵。紫水晶のような大きな瞳と長い黒髪を持つ、幼さを残しながらも妖艶な絶世の美少女。「不死」と呼ばれる怪物で、実年齢は962歳(肉体年齢は14歳3ヵ月)。
馳井一族のもとで隠遁生活を送っていたが、物語から1年ほど前に教授の襲撃を受けた際にジャックの半人半鬼の力で首を刎ねられ、死にはしなかったものの胴体を再生できず生首だけの姿になる。元は鬼の力を持つ津軽に殺してもらおうと考えていたが、肉体を取り戻すための協力を取り付けたことで教授の本拠地であろうヨーロッパへと向かうことになる。
生首なので自力では身動きが取れず、普段は鳥籠の中で持ち運ばれる。極めて論理的な思考を持ち、長生きのためかなり博識。死なないという特性と体(頭)の小ささを利用して常人では潜めない場所で長時間待機し続けられる。少々食い意地が張っているが、胃がないせいで食事を取ると「大変なことになる」ためなかなかものを食べられない。
真打 津軽(しんうち つがる)
“鳥籠使い”を名乗る半人半鬼の青年。20代前半。髪と瞳は青く、四肢に近い動脈と左の顔面には青い刺青のような線が浮き上がっているため、つぎはぎだらけのコートや手袋で隠している。
明治維新後の日本で行われていた「怪奇一掃」のために集められた部隊”鬼殺し”の一員だったが、教授に捕らえられて鬼の力を植え付けるという人体実験を受けた結果半人半鬼となってしまう。実験後隙を突いて施設から脱走を果たし、見世物小屋で怪物達と殺し合いをしながら生活をしていたとき、鴉夜から勧誘を受け彼女の助手としてヨーロッパへと向かうことになる。
性格は非常に軽く、笑えない冗談やつまらない小噺を連発しては鴉夜に窘められる。見世物小屋で暮らしていたのは自分が鬼に呑まれた際には死ぬ前に高みの見物を決め込んでいる悪趣味な観客や座長を皆殺しに出来るという理由からであり、鴉夜からは思考が人外だと評されている。また、自分自身が怪物に侵食されつつあることから、人間と怪物との共存には否定的。日常的に怪物達と殺し合ってきたことから戦闘能力は非常に高く、その力は「怪物の王」と謡われる吸血鬼をも上回る。助手だけに推理力はいまいちだが物覚えはかなりいい方で、半年で10カ国語を習得している。
馳井 静句(はせい しずく)
鴉夜に仕えるクールなメイド。黒髪をボブカットにした美女。馳井一族最後の生き残り。
鴉夜に対する忠誠心は非常に厚い。そのため助手でありながら鴉夜に対して生意気な軽口を叩く津軽に対しては、冷たくつれない態度を取る。
戦闘能力も高く、媚毒を打たれるまでは悪名高い吸血鬼のカーミラを圧倒するほどの実力者。銀板を溶接したスペンサー騎兵銃に銃身と同じ長さの日本刀を搭載した特殊な武装『絶影(たちかげ)』を得物とする。

フランス[編集]

アニー・ケルベル
パリの新聞<エポック>紙の特派員。赤毛でそばかす顔の小柄な少女。”鳥籠使い”一行とは知己の仲で、しばしば彼らの行く先に取材のために現れる。
ジャン・ドゥーシュ・ゴダール
齢180を超える吸血鬼。「人類親和派」の筆頭として知られる。ブルゴーニュ地方の出身で、ジーヴルの名士。
100年以上前に吸血鬼同士の抗争で父を失いオーストリアに逃れるも、その際吸血鬼ハンターによって母と妹を喪う。その地で結婚したが50年ほど前のカーミラとの抗争で再び一族全員を喪いフランスへ帰国、故郷の山奥で出会ったハンナとの結婚がきっかけで人類親和派に転じ、郷土の発展に寄与している。
警察の捜査に不満を持ち、妻を殺害した犯人探しを鴉夜一行に依頼する。
ハンナ・ゴダール
ジャンの妻。元は人間で名家の娘として独自に法律の勉強をしていた。趣味はアンティークの修繕。
1898年11月4日の真夜中、就寝中に殺害される。遺体発見時の状況から銀の杭で胸を貫かれ、聖水を浴びせられたと考えられていた。
クロード・ゴダール
ゴダール夫妻の長男。
ラウール・ゴダール
ゴダール夫妻の次男。
ハンナ殺しの真犯人。吸血鬼こそが人類を支配すべき特別な種類と考えており、親和派となった父親に翻意させるため、その元凶である母親を人間の手に見せかけて殺害する。真相を語り出した鴉夜を口封じしようとしたが津軽に妨害され、鬼の力で再生能力を失ってしまい死亡した。
シャルロッテ・ゴダール
ゴダール夫妻の末娘。
アルフレッド
ゴダール郷に20年仕える執事。人間。
ジゼル
ゴダール邸のメイド。人間で4年前から働いている。
アルセーヌ・ルパン
主に美術品や宝石を狙うフランスの怪盗。本拠地は「空洞の針(エギュイ・クルーズ)」。”怪盗紳士”を自称している通り殺しを嫌い、卓越した変装技術と演技力で盗みを鮮やかに成功させることからホームズは「犯罪のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と評している。素顔は金髪の美青年。
あくまでその力は人間の範疇でしかないが、非常に器用であり無数のビー玉を武器に一度は半人半鬼の津軽をも圧倒した。
ファントム
通称オペラ座の怪人(ファントム・オブ・ジ・オペラ)”。本名はエリック。ペルシャ出身の36歳。生まれついての白髪とただれた右顔面のせいで迫害され、20年間オペラ座で生活していた。
主演の歌姫からルビーを奪ったルパンを追跡するも敗北して「盗まれ」、太陽のような魅力に惹かれてそのまま部下となった。ただし本当に危ない場面では上司でも容赦なく見捨てて逃げる。
たぐいまれなるテノール歌手であり、空気と反射物を利用して音を自在に操る技術を会得している。またロープの扱いも巧み。

ベルギー[編集]

グリ警部
ベルギー警察の警部。「灰色(グリ)」は部下達が口癖の「灰色の脳細胞」をからかって付けたあだ名。左右対称の見事な黒髭が特徴的な、五十路間近の恰幅のいい小男。
鴉夜をして「なかなかの切れ者」と評する名刑事。
ボリス・クライヴ
人造人間を産み出そうとした変わり者の研究者。天涯孤独。研究者というよりは山男といった風貌の大柄な男。
頭部を切断された状態で発見され殺人事件と考えられていたが、実は自分自身の頭脳を人造人間に移植するためリナに命じて自分の首を刎ねさせたことが判明する。
死後の警察による調査からかつてフランケンシュタイン姓を名乗っていたことが明らかになっており、フランケンシュタイン博士が生み出した人造人間の子孫ではないかという疑惑が持ち上がっているが、真相は不明である。
リナ・ランチェスター
ボリス博士の助手。若くして才能に恵まれた美女。ボリスの指示で彼自身を殺害した張本人であり、博士の死後人造人間にその頭部を取り付けた。自分たちが生み出した人造人間に対して内心では恐怖心を持っていたが、人造人間からはそのことを見抜かれていた。
ヴァン・スローン
流れ者。ボリスの指示で墓荒らしなどを行っていた。

イギリス[編集]

シャーロック・ホームズ
世界最高の探偵。癖毛をなでつけた痩せ形で背の高い40代の男。ベイカー街221Bに住む。
拳闘の使い手で柔道も得意。特技はまるで未来を書き換えているかのようにその場を支配する「場律(バリツ」だが、年齢的な問題もあって消耗が大きい模様。元コカイン中毒者だが、夜中にバイオリンも弾かなければ壁に銃を撃ち込んだりもしない。シドニー・パジェットの挿絵のせいで普段から鹿打ち帽と袖無しコートを着ていると勘違いされることに文句を付けている。
ジョン・H・ワトソン
ホームズの助手で医師。温厚そうな顔立ちで口髭が特徴の40代男性。軍隊式格闘術の使い手。
レストレード
スコットランドヤードの警部。ホームズ達の知人。今年結婚30周年を迎えた。
マイクロフト・ホームズ
シャーロックの兄。推理力は弟以上。
フィリアス・フォッグ
1872年、40歳で八十日間世界一周を成し遂げた男。通称”鉄人”。旅行のおかげで巨万の富を得、ストランド街で世界一周をテーマとした博物館を開く。
自身が保有する80カラットの人工ブラックダイヤ<最後から二番目の夜(ペナルティメット・ナイト)>をルパンが狙ったため、警備をホームズと鴉夜に依頼する。
パスパルトゥー
フォッグの執事で、彼と共に世界を旅した。

<ロイズ>[編集]

レイノルド・スティングハート
<ロイズ>諮問警備部第五エージェント。色素の薄い北欧系の端整な顔立ちをした、20代前半の神経質そうな男。潔癖症で怪物を蛇蝎のごとく嫌う。
心臓一突き(スティングハート)」の二つ名の通りサーベルの達人で、未成年の吸血鬼程度なら一ひねりできるほどの実力者。また太極拳に似た武術にも精通しているらしく、素手でも突きの威力は衰えない。
<最後から二番目の夜>防衛でルパンたちと交戦するために派遣されるも、乱入してきたジャックの攻撃で吹き飛ばされ再起不能となる。
ファティマ・ダブルダーツ
<ロイズ>諮問警備部第七エージェント。アラブ系の褐色肌で背が低く気弱そうな女性。苦労人。
両腕に装備した金属矢を8連射できる特注の洋弓銃(クロスボウ)。最大の武器は研ぎ澄まされた聴覚で、狙撃に銃ではなく弓を使うのも耳を阻害しないため。
<最後から二番目の夜>防衛任務で派遣され、ファントムとの交戦では相性の悪さで苦戦する。直後に乱入してきたジャックによって反撃する間もなく胴体を無惨に斬り裂かれ、殉職した。
イヴ・ジェンキンス
<ロイズ>諮問警備部部長秘書。

<夜宴(バンケット)>[編集]

ジェームズ・モリアーティ
<夜宴>のボス。爬虫類のような落ちくぼんだ目が特徴的な老人。かつていくつもの知的犯罪を立案しロンドンの暗黒面を牛耳った「犯罪のナポレオン」。元数学教授であり、”教授”を自称している。津軽を半人半鬼に変えた張本人。
1891年にライヘンバッハでホームズに敗北、滝壺に転落し右足を失うも生還する。その後はアジアに向かい清国で潜伏していたが、自分を訪ねてきたジャックとの出会いがきっかけと成り新たな犯罪結社を結成した。
切り裂きジャック
1888年のイーストエンドにて、15歳で完全犯罪を成し遂げた殺人鬼。半人半鬼と化しており、髪の色は赤く染まっている。
モリアーティの人体移植に関する論文を読み、清国で隠遁していた彼の元を尋ね自分自身の肉体に怪物の力を移植するよう依頼した。日本を訪れた際に鬼の力を取り込み鴉夜の首を切断、奪った不死の肉体から力を得て免疫力を高め、さらに吸血鬼の再生能力と鋭敏な五感も手に入れている。最大の武器は両の手刀で、その威力・速さ・鋭さは人体を鋭利な刃物のように容易く斬り裂く。身体能力では同じ半人半鬼である津軽をも凌駕し、「殺人の年季が違う」とまで言われており、さらに頭脳も明晰。
カーミラ
330歳を超える女吸血鬼。仕込み刀付きの日傘をさす美しい令嬢。普段は俗っぽいが、吸血鬼らしくプライドは人一倍高い。
<夜宴>のメンバーとなる50年ほど前に、ゴダール郷の一族を殲滅。以降の足取りが途絶えていた。
吸血鬼の間では有名な存在であり、同族の仲では5本の指に入る実力者。同性愛者で、体液に含まれる媚毒で女を虜にしてから吸血するという趣味がある。
アレイスター・クロウリー
自称・「魔術と数秘術の研究家」。ロンドン中のカルト教団を追い出され、警察から指名手配を受けている青年。最近までは<黄金の夜明け団>のメンバーだった。通称“ロンドン一邪悪な男”
魔術のタネは異常発達した短母指外転筋によって放たれる指弾。ガソリンを詰めたカプセルを放って人体を発火させたり、神経毒を塗った針を飛ばしたりと凶悪な弾丸をいくつも所持している。
ヴィクター
ボリス達の手で生み出された人造人間フランケンシュタイン博士の手記を元に優れた部位をつなぎ合わせて作られているため半人半鬼以上の身体能力を持ち、痛みにも強い。
誕生時は幼児並みの知能しかなかったがわずかな時間で急激に知性を成長させる。しかし自分の脳がボリスの物であることや処分される可能性があることを知ってしまい、自身の存在意義に思い悩み暴走する。津軽の活躍で沈静化されたが、母と慕った女性さえ自分に怯え名前も付けてもらえなかったことで苦悩し、死に場所を求めて旅に出る。しかしその道中で教授達の勧誘を受け、彼らに名前を与えられると同時に<夜宴>のメンバーとして迎えられる。
F
紳士スタイルの衣服に身を包んだ中国人の男。

用語[編集]

怪物一掃
産業革命以降、ヨーロッパで起きた怪物を一掃しようとする運動。これにより元々希少だった種は絶滅しているが、フランスなどでは人間を捕食しないという誓約を交わした「親和派」と呼ばれる怪物にのみ人権を与えている。また、日本でも明治維新後に同様の『怪奇一掃』が実行され多くの妖怪が絶滅した。
吸血鬼
強靱な肉体と鋭敏な五感を併せ持ち、人や動物の生き血を糧とする『怪物の王』。些細な傷なら出血すらほとんどなく治癒し、腕を切り落とされても2日あれば元通り生えてくるという優れた再生能力を持つ。ただし直射日光、純銀、聖水といった弱点で負った傷は軽微な物でも治るまでかなりの時間を要する。再生能力が残存し弱点が反応するのは生きている間だけで、死亡してしばらくたった遺体は人間のものと変わらない。平均寿命は400年ほどで、500年も生きれば長生きとされ、成人後はほとんど老化しない。また自らの血を人間に与えることにより、その者を吸血鬼とする能力を持つ。
不死
その名の通り不死身の肉体を持った怪物。吸血鬼以上の再生能力を持ち、切断された首を崖下へと投げ捨てられた時には着地する前に肉体が元通りになったという。寿命も存在せず不死となった瞬間から一切歳も取らない。実は後天的・人為的に産み出された種族であり、肉体の一部を取り込んでも不死とはならないが、その代わりに免疫機構が強化される。怪物界における最強の盾であるが、絶対上位の攻撃力を持つ鬼によって受けた傷は再生できず死んでしまう。作中では、存在しているのは輪堂鴉夜ただ1人であり、彼女が「超のつく変態」から施された改造手術はモリアーティを持ってしてもまるで解明できない物だった。
日本において地獄の使者とされる種族で、欧州では悪魔(ディアブル)や悪鬼(オーガ)と呼ばれる存在。身体能力では怪物の王たる吸血鬼と比べても互角以上。「全ての怪物に対して絶対上位の攻撃力を持つ」と言う細胞の特性を有する怪物界における最強の矛であり、吸血鬼や不死の再生能力をも無視して相手を殺すことが出来る。ただし知能が獣並みなうえ、耐久力は人間と変わらず体の色も目立つため、怪奇一掃の際にほとんど狩り尽くされてしまった。
鬼の細胞を植え付けられた人間は「半人半鬼」となり怪物殺しの力を獲得するが、移植細胞の侵食を受け徐々に鬼に呑まれていくというリスクがある。また半人半鬼の特徴として髪や瞳の色が元となった鬼の体色へと変化し、動脈に添って刺青のような模様が現れる。
人狼
隠れるのが上手いうえ吸血鬼のように人前に姿を現すこともないため”不可視”の異名を持つ種族。純銀を嫌う。
ドワーフ
19世紀末の人類の技術レベルを遙かに超える技術を500年以上前から有していた種族。14世紀末に人狼に襲われ絶滅した。
<ロイズ>
イギリスに存在する保険機構。
諮問警備部
大口顧客専用の、怪物の出現、災害の発生、クーデターの勃発などで保険をかけた私財が危機にさらされた場合にガードマンを派遣する特殊な部署。少数精鋭でメンバーは7名、ナンバーは国籍・年齢・性別関係なく実力順で全員が恐ろしく強い。元々はもっと穏やかな部署だったが、産業革命以降は狂信的な怪物排斥主義の集団となっており、人の理屈の通じない怪物というイレギュラーを「殺すこと」に目的がシフトしている。

書籍[編集]

  1. 2015年12月16日発行 ISBN 978-4-0629-4009-2
  2. 2016年10月18日発行 ISBN 978-4-0629-4030-6

コミック[編集]

友山ハルカによって漫画が連載されている。『月刊少年シリウス』(講談社)にて、2016年8月号から2017年7月号まで連載し、その後は『ネメシス』#34から#41まで連載し、その後は『コミックDAYS』に移籍。既刊1巻。

書誌情報[編集]

  • 友山ハルカ 『アンデッドガール・マーダーファルス』 講談社〈シリウスKC〉、既刊1巻(2016年10月20日現在)
    1. 2016年10月20日発売 ISBN 978-4-06-390655-4

出典[編集]

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