イケマ

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イケマ
Cynanchum caudatum 1.JPG
福島県会津地方 2009年7月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: リンドウ目 Gentianales
: ガガイモ科 Asclepiadaceae
: イケマ属 Cynanchum
: イケマ C. caudatum
学名
Cynanchum caudatum (Miq.) Maxim.
和名
イケマ(牛皮消)

イケマ(牛皮消、学名:Cynanchum caudatum )はキョウチクトウ科ガガイモ亜科イケマ属のつる性多年草。別名、「ヤマコガメ」「コサ」ともよばれる[1]

特徴[編集]

つる性で、初夏に伸びて藪(やぶ)の他の草などに巻きついて這い登って葉を茂らせ、高さは2 - 5mになる。つるの巻き方向は、左から右巻きで、低木に巻き付いて寄りかかって成長する[1]

は長さ10cm前後のガガイモより長い葉柄をもっており、に対生する。形は卵形で先端は尾状に鋭く尖り、基部は深い心形になる。裏面は淡緑白色で、葉脈が浮きだって目立つ。葉身の長さ5 - 15cm、幅4 - 10cmで、縁は全縁。

花期は7 - 8月。葉腋から葉の上に花が顔を出し、長さ6 - 12cmある葉柄より長い花柄の先に、径2 - 4cmの散形花序をつける。小花柄は1 - 2cm、花冠(花弁)は淡緑色で、(つぼみ)の状態は真ん丸であるが、5裂して開花すると星形となって裂片は後部へ反り返る[2]。副花冠は白色で花弁の内側にあり、小さな花が多数集まって花序全体が球のように丸く咲く[2]

花が終わると、秋に径1cm、長さ8 - 11cmの、ガガイモ科特有の袋果(果実)を2つずつつける。袋果は、オクラのような紡錘形をしており、中には種子を多数つくる[2]。秋に袋果が割れ、白く長い種髪(毛束)をつけた長さ8mmほどの種子がはじけ、風邪により散布される[2]

毒草であるが、昔から生薬として用いられ、アイヌたちにとっては護身用として大切にされた[1]。地下には長く太い根茎があり、アルカロイドを含み毒性がある[1]

コイケマとの違いは、コイケマのほうがイケマよりも葉の基部に深い凹みがあり、花序柄がイケマより短いことで見分けがつく[2]

分布と生育環境[編集]

日本では、北海道本州四国九州に分布し、山地の林縁や草地に自生する。アジアでは、南千島中国に分布する。日当たりのよい環境でよく育ち、山地の林や、土手、草原などでみられる[1]

毒性[編集]

全草、特に植物体を傷つけたときに出る白い汁(乳液)にシナンコトキシンなどを含み有毒である。誤食した場合、軽症では嘔吐が、重症では痙攣が起こる事がある。 学名のCynanchum とは、「犬を殺すもの」という意味であり、毒性によって犬を殺すことができるところから、この名前がついたという。

蝶のアサギマダラは、イケマの葉の裏側に産卵して、その幼虫が葉を食べて育つ。アサギマダラの幼虫は、鳥などの外敵から身を守るため、イケマの毒を体内に蓄積するといわれる[2]

アイヌとの関係[編集]

本種の和名「イケマ」は、アイヌ語で「それの足」を意味する「イ・ケマ」に由来する。この場合の「それ」はカムイ(神)を婉曲に指した言葉である。アイヌは本種を古くから呪術用、薬用、食用に用いられていた。本種の根を乾燥させたものを細かく刻み、紐を通したものをネックレスのように首から下げるか、小片をマタンプシ鉢巻)に取り付けて魔よけとしたという。また、葬儀のとき、夜道の一人歩き、漁や旅のときにも身につけて、魔除けとして使われていた。 若芽は天ぷらなどの食用に用いていた。根も焼いたり煮たりして食べていたが、生煮えだったり、食べ過ぎると中毒になった。 漢方では、イケマの根を「午皮消根」というが、利尿、強壮、強心薬として、また、食中毒の解毒や腹痛、歯痛、風邪薬、回虫の駆除として使われていた[3]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 谷川栄子 2015, p. 26.
  2. ^ a b c d e f 谷川栄子 2015, p. 27.
  3. ^ 日本のハーブ事典 2012年 村上志緒 東京堂出版P31

参考文献[編集]

  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅲ 』(1981)平凡社
  • 谷川栄子『里山のつる性植物 観察の楽しみ』NHK出版、2015年6月20日、26-27頁。ISBN 978-4-14-040271-9。