イランイランノキ

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イランイランノキ
Ylang Cananga odorata.JPG
イランイランノキ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: モクレン目 Magnoliales
: バンレイシ科 Annonaceae
: イランイランノキ属 Cananga
: イランイランノキ C. odorata
学名
Cananga odorata
(Lam.) Hook.f. & Thomson[1]
和名
イランイランノキ
植物画

イランイランノキ(学名:Cananga odorata)は、バンレイシ科イランイランノキ属の樹木。古くから熱帯域で栽培され、様々に利用されてきた。

概説[編集]

イランイランノキは平均12メートル(人の背丈から10メートル以上まで)の樹高に達する。直射日光あるいは部分光によって生育し、原産地である熱帯多雨林の酸性土を好む。葉は長くなめらかで光沢がある。花は黄緑色あるいは淡紅色で、ヒトデのように巻き上がり縮れた形状。香り高い精油やアブソリュートを得ることができる。

イランイランという語はタガログ語 (ilang-ilang) に由来し、「花の中の花」という意味である。学名の属名はインドネシアのアンボン島での現地名に由来する[2]

インドネシアには新婚夫婦のベッドの上にイランイランの花を散らす風習がある。

特徴[編集]

高木あるいは低木で、樹皮は灰白色。枝は黒ずみ、若い間は軟毛があるが後に無毛となる[3]。葉柄は長さ1-2cmで狭い溝がある。葉身は卵形から楕円形、ないし広楕円形で、長さ9-23cm、幅は4-14cm。基部は円形から鈍形、あるいは切形、つまり葉脈に向かって次第に狭まるのではなく、急に葉柄につながるような形を取る。先端は鋭く尖る形か鋭く突き出して尖る形を取る。葉質は膜質から薄い紙質、で、側脈は互いに平行に走り、主脈と側脈の上に白い柔らかい毛がある以外は毛がなく、これらの毛も次第になくなる。

花は葉脇から出るか新枝の先端につき、それぞれ短い花序柄が出て、その先に花が1個から多数つく。苞があるがごく小さく、またすぐに落ちる。花柄は1-5cmの長さがあり、軟毛が生えていて、その先端の花をぶら下げる。萼片は3個あり、卵形で先端は鋭く尖り、長さ約7mm、軟毛で覆われていて基部は互いに合着する。最初は蕾を囲んでおり、開花時には反り返る。花弁は6個で、狭披針形で長さ5-8cmで幅0.5-1.8cm、先端は細長く尖り、また不規則に曲がりくねる。色は黄緑色から次第に黄色に変わる。雄しべは多数あり、花の中心の雌しべを囲んでおり、黄色。雌しべは黄緑色で長さ4mmのものが10-12個ある。果実は楕円形で長さ1.5-2.3cm、明らかな柄があり、球状にまとまって集合果の形を取り、黒く熟する。種子は個々の果実に2-12個が入っており、淡褐色をしている。

近縁のゴニオタラムス属 Goniothalamus 等にも共通するのだが、本種の花の大きさは確定できない。蕾が開いて花弁が展開した後にも花弁の成長が続き、長さ8cmほどにまで達するのだが、その成長が止まった時点ではまだ良い香りがあまり出ておらず、黄緑色だった花弁が黄色く萎えてきてからようやく香りが強くなってくる。この時点で花弁は枯れ始めているわけだが、花の機能という面から考えれば、むしろここからが開花の時期と考えられる[4]

分布[編集]

東南アジア各地からオーストラリアにまで自生状態で生育しているが、真の自生地は不明である[5]

精油の利用[編集]

精油は花を水蒸気蒸留法で抽出して得る。抽出時間によって、エクストラグレード(特級)、ファーストグレード(1級)、セカンドグレード(2級)、サードグレード(3級)の4等級に区分される。グレードが高いほど良質で少量しか抽出することができない。有機溶剤抽出法でアブソリュートが得られる。イランイランの主要な香気成分はアントラニル酸メチル、リナロールゲラニオール酢酸ベンジル安息香酸メチルである[要出典]。どのグレードの成分割合も非常に不安定である。また、カナンガ精油、ガージャンバルサム精油、コパイパ精油、ペルーバルサム、合成成分などを添加したり、少量のエクストラグレードの精油と低グレード精油を混ぜるなどの偽和が行われている。そのため、市販される精油の実際の毒性や生物活性(効能)は不明である[6]

香りは抽出法、グレードなどによって異なる。蒸留法で得られる精油は、甘いフローラル調のジャスミンアブソリュートとアーモンド油をブレンドしたものを思わせる香りで[7]、最高級品「エクストラ」のフェードアウトは、やわらかく甘い、かすかにスパイシーでバルサム調の芳香を放つ。「グッドエクストラ」は、独特のクリーミーな香調、グレード「No.3」は甘い花の香りとバルサム様のウッディな香りがする。イランイランアブソリュートは他のどの精油よりも強いフローラルな香りで、「貧乏人のジャスミン」としても知られる。エクストラグレードのイランイラン精油と共に香水で多用され、特に重厚なオリエンタル調あるいはフローラル調のものに用いることが多いが、どのような精油や香気成分とも相性が良く、さまざまにブレンドされる。また、香料として多くの食品、飲料に添加されている[6]

専ら香料として利用されてきたが、近年ではアロマテラピーでも広く使われ、中枢神経をリラックスさせる効果があると言われ、また興奮、陶酔の作用、抗抑鬱作用、催淫作用もあると唱えられている[7][8]。科学的にはリラックス作用ではなく刺激作用が確認され、香りの吸引で鬱状態が軽減される可能性がある[6]。低濃度の場合、リラックス作用が認められる。強い香りは悪心や頭痛を引き起こす場合がある。精油には高い皮膚感作性が認められる[6]

主な原産国にはコモロフィリピンマダガスカルセイシェルインドネシアなどがある。その中でもコモロがイランイランの精油の全産出量の29%を占めている(1998年)[要出典]

出典[編集]

  1. ^ Thomas Thomson (1817-1878) botanist or Carl Gustaf Thomson (1829-1899) entomologist
  2. ^ 吉田(1997),p.105
  3. ^ 以下、主として牧野原著(2017),p.175
  4. ^ 吉田(1997),p.105-106
  5. ^ 吉田(1997),p.105
  6. ^ a b c d マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年
  7. ^ a b クリシー・ワイルドウッド 著 『アロマテラピーの精油でつくる自然香水』 高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1996年
  8. ^ イランイラン:生活の木ライブラリー

参考文献[編集]

  • 牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
  • マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年
  • 『アロマテラピー検定テキスト(1級・2級)』 日本アロマ環境協会[要出典]
  • 植田邦彦、「クロボウモドキ」;『朝日百科 植物の世界 9 』、(1997)、朝日新聞社、:p.103-107