ウバイドゥッラー・ハン

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ウバイドゥッラー・ハン
ブハラ・ハン国ハン
在位 1533年 - 1540年
出生 1485年
死去 1540年
子女 アブドゥルアズィーズ
王家 シバン家
王朝 シャイバーニー朝
父親 マフムード(ムハンマド・シャイバーニー・ハンの兄弟)
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ウバイドゥッラー・ハン1485年 - 1540年)は、シャイバーニー朝ブハラ・ハン国の君主(ハン、在位:1533年 - 1540年)。シャイバーニー朝の創始者であるアブル=ハイルの曾孫で、ムハンマド・シャイバーニーの甥にあたる。

生涯[編集]

父マフムードの死後に、ウバイドゥッラーは父に付与されていたブハラを相続する。1507年にシャイバーニーがティムール朝の支配下に置かれているホラーサーン地方への遠征を実施した際、ウバイドゥッラーも遠征に従軍して優れた軍功を立てた[1]。シャイバーニーの治世の末期に領地のブハラを没収されるが、1510年にシャイバーニーが戦死した後にブハラは返還される[2]

シャイバーニーの死後、ウバイドゥッラーは年長のクチュクンジ、アブー・サイード親子に君主の地位を譲った[3]。クチュクンジ在位中、ウバイドゥッラーは軍事・外交を担当し、内政の中心だったクチュクンジと国務の役割を分担した[4]1511年にイランのサファヴィー朝と同盟したティムール朝の王族バーブルサマルカンドに進軍すると、ウバイドゥッラーはブハラを放棄してテュルキスタン(ヤシ)に退却した[5]。ウバイドゥッラーは軍を建て直し、翌1512年に従兄弟のムハンマド・ティムールと共にマー・ワラー・アンナフルの奪還を図ってサマルカンドを占領したバーブルを攻撃した。1512年春にウバイドゥッラーはバーブルから勝利を収めてサマルカンドを奪回し、中央アジアからバーブルの勢力を駆逐した[6]

1533年にウバイドゥッラーはブハラで即位する。即位後もウバイドゥッラーはブハラを本拠地とし、ブハラの重要性は増していった[7]。ウバイドゥッラーはサファヴィー朝支配下のホラーサーン地方に8度の遠征を実施し、ヘラートマシュハドを一時的に領有した[3]

ウバイドゥッラーの死後、アブドゥッラー1世の短期の統治期間を経て、シャイバーニー朝はブハラの政権とサマルカンドの政権に二分される。

人物像[編集]

ウバイドゥッラーの父マフムードは、15世紀のナクシュバンディー教団の指導者ウバイドゥッラー・ホージャ・アフラールにちなんだ名前を息子につけた[8]。敬虔なイスラーム教徒であるウバイドゥッラーは、ホージャ・アフラールと同じ名前であることを誇りにしていた[3]スーフィー(イスラームの聖者)のシェイフ・アブドゥミー・アーザムに師事し、スーフィズム(神秘主義)をテーマとする文章を多く残した[8]

モグーリスタン・ハン国の歴史家ハイダル・ミールザーは、ウバイドゥッラーをイスラーム法を遵守し、詩や音楽の心得がある、筆遣いの優れた人物だと伝えている[3]。また、ウバイドゥッラー統治下のブハラはティムール朝のフサイン・バイカラ時代のヘラートに匹敵する繁栄をみせ、学芸は高い水準にあったと、ハイダル・ミールザーは称賛した[3]。ウバイドゥッラーはティムール朝から継承したブハラの図書館を所有し、他のシャイバーニー朝の君主と同じように写本の蒐集に熱意を注いでた[9]。ブハラの図書館には、師であるアブドゥミー・アーザムの作品も多く収蔵されていた[8]

脚注[編集]

  1. ^ セミョノフ「チムール以降のウズベキスタン史」『アイハヌム 2009』、80頁
  2. ^ セミョノフ「チムール以降のウズベキスタン史」『アイハヌム 2009』、82-83,95頁
  3. ^ a b c d e 堀川「ウバイドゥッラー・ハン」『中央ユーラシアを知る事典』、82頁
  4. ^ 堀川「民族社会の形成」『中央アジア史』、156頁
  5. ^ セミョノフ「チムール以降のウズベキスタン史」『アイハヌム 2009』、96頁
  6. ^ 間野『バーブル』、18-19,43-44頁
  7. ^ 堀川徹「モンゴル帝国とティムール帝国」『中央ユーラシア史』収録(小松久男編, 新版世界各国史, 山川出版社, 2000年10月)、233頁
  8. ^ a b c セミョノフ「チムール以降のウズベキスタン史」『アイハヌム 2009』、98頁
  9. ^ 堀川「民族社会の形成」『中央アジア史』、167頁

参考文献[編集]

  • 堀川徹「民族社会の形成」『中央アジア史』収録(竺沙雅章監修、間野英二責任編集, アジアの歴史と文化8, 同朋舎, 1999年4月)
  • 堀川徹「ウバイドゥッラー・ハン」『中央ユーラシアを知る事典』収録(平凡社, 2005年4月)
  • 間野英二『バーブル』(世界史リブレット人, 山川出版社, 2013年4月)
  • A.A.セミョノフほか「チムール以降のウズベキスタン史」『アイハヌム 2009』収録(加藤九祚編訳, 東海大学出版会, 2009年10月)
  • 『中央ユーラシアを知る事典』(平凡社, 2005年4月)、560-561頁収録の系図