エスペラント

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エスペラント
Esperanto
緑星旗 ユビレーア・スィムボーロ 緑の星
シンボル
発音 IPA: [espe'ɾanto]
創案者 ルドヴィコ・ザメンホフ
創案時期 1887年
話者数 母語話者200 - 2,000人
第二言語話者100万人 - 200万人
話者数の順位 100位以下
目的による分類
人工言語
表記体系 ラテン文字
参考言語による分類 文法ロマンス諸語
語彙:ロマンス諸語およびゲルマン語派
音韻スラヴ語派
公的地位
公用語 なし(幾つかの国際機関公用語として使用)
統制機関 アカデミーオ・デ・エスペラント
言語コード
ISO 639-1 eo
ISO 639-2 epo
ISO 639-3 epo
SIL ESP
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エスペラント (Esperanto) とは、ルドヴィコ・ザメンホフとその弟子(協力者)が考案・整備した人工言語。母語の異なる人々の間での意思伝達を目的とする、国際補助語としてはもっとも世界的に認知され、普及の成果を収めた言語となっている[要出典][1]

概要[編集]

言語のシンボル
緑星旗 ユビレーア・スィムボーロ 緑の星
緑星旗 ユビレーア・スィムボーロ 緑の星

エスペラントを話す者は「エスペランティスト」と呼ばれ、世界中に100万人程度存在すると推定されている(使用状況を参照)。

当初は特別な名称を持たなかった(単に「国際語」とされていた)が、創案者のラザロ・ルドヴィコ・ザメンホフが「エスペラント博士(D-ro Esperanto)」というペンネームを使って発表したため、しだいにこの名で呼ばれるようになった。この「エスペラント」という単語は、エスペラントで「希望する人」の意味であり、この単語それ自体でこの言語を意味し、日本エスペラント学会などは「エスペラント (Esperanto)」と表記しているが、言語であることを示すべく日本ではエスペラント語とも呼ばれる。ザメンホフは、帝政ロシア領(当時)ポーランドビアウィストク出身のユダヤ人眼科医で、ユリウス暦1887年7月14日グレゴリオ暦同年7月26日)に Unua Libro(最初の本)でこの言語を発表した。

ザメンホフは世界中のあらゆる人が簡単に学ぶことができ、世界中ですでに使われている母語に成り代わるというよりは、むしろすべての人の第2言語としての国際補助語を目指してこの言語を作った。現在でも彼の理想を追求している使用者が多くいる一方、理想よりも実用的に他国の人と会話したり、他の国や異文化を学ぶためのものと割り切って使っている人もかなりいる。今日では異なる言語間でのコミュニケーションのためのほか、旅行文通国際交流(文化交流の場合が多い)、ラジオインターネットラジオも含む。無線の場合、短波が多い)、インターネットテレビなど、さまざまな分野で使われている。英語を国際共通語として当然視してしまう姿勢への対抗的姿勢が、とって代わるべき国際補助語としてこのエスペラントを持ち出すこともあった。中国語では「世界語」と呼ぶ。

歴史[編集]

エスペラントの草案者、L.L. ザメンホフ
1887年にワルシャワで出版されたエスペラントについての最初の本 "Unua Libro"

エスペラントは1880年代ラザロ・ルドヴィコ・ザメンホフによって創案された。最初の文法書・単語集は1887年に発表された。

言語の開発[編集]

最初、ザメンホフはラテン語の復権が言語問題の解決策になると考えていたが、実際にラテン語を学ぶとその困難さに気づいた。一方で英語を学んだ際、名詞の文法上の性および複雑な格変化ならびに動詞の人称変化を省略できないかと考えた。言語を学習するにはたくさんの単語を覚えなければならないが、街を歩いているとき偶然、ロシア語で書かれた2つの看板を見て、解決策を思いついた。швейцарская(シュヴェイツァールスカヤ、門番所)とкондитерская(コンディテルスカヤ、菓子屋)という2つの看板には、共通して-skaja(スカーヤ、場所)という接尾辞が使われていた。彼はひとつひとつ別々に覚えなければならないと思われていた単語を、接辞を使ってひとつの単語から一連の単語群として作り出せるようにする方法を考えた。基本となる語彙は、多くの言語(ただし、ヨーロッパの言語に限られる)で使われているものを採用した。

1878年、現在のエスペラントのプロトタイプといえる Lingwe uniwersala(リングヴェ・ウニヴェルサーラ)を、ザメンホフはギムナジウムの同級生たちに教えた。その後6年間、まず各民族語の文学作品の翻訳と詩作に取りかかり、新しい言語の欠陥や運用上の扱いにくさをなくすことにした。ザメンホフは後の1895年ロシアエスペランティスト、ニコライ・ボロフコに宛てた手紙に「私は6年間を言語を完璧にするために費やした。たとえそれが1878年の段階ですでにできあがっていたとしても」と書いている。彼はすでに自らの言語を公表できる準備ができていると考えていたが、ロシア政府の検閲がそれを許さなかった。これにより公表が遅れたが、その間、彼は旧約聖書シェークスピアの作品などをエスペラントに翻訳し、言語の改良も重ねていった。1887年、ようやく出版された Unua Libro(最初の本)でエスペラントの基礎について紹介した。こうして今日話されているエスペラントが世に出された。

最初の世界大会まで[編集]

最初のうち、エスペラントの話者どうしの交流の手段としては、文通か雑誌『La Esperantisto』(1889年から1895年まで発行)程度しかなかった。1905年までに17のエスペラント関係の雑誌が発行された。活動は最初ロシアや東ヨーロッパに限られていたが、次第に西ヨーロッパアメリカアジアに広がっていった。日本では1906年二葉亭四迷が日本最初のエスペラントの教科書『世界語』を著した。

1904年小規模な国際会議が開かれ、それが1905年8月、フランスブローニュ=シュル=メールで行われる最初の世界エスペラント大会の開催につながる。このときは33の国から688人が参加した。大会でザメンホフは、エスペラント運動の指導者としての地位を公式に放棄した。ザメンホフ自身がユダヤ人であったため、反ユダヤ主義による偏見が言語の発展を妨げるのを恐れたためである。彼はエスペラント運動の原理に基づいたブローニュ宣言を提案し、大会出席者たちはこれを採択した。

言語の発展[編集]

1905年にフランスのブローニュで開催された第1回世界エスペラント大会で、『エスペラントの基礎』の変更を制限する宣言が採択された。宣言は、言語の基礎をザメンホフが出版した『エスペラントの基礎』(Fundamento de Esperanto、フンダメント・デ・エスペラント)から変更してはならないとし、いかなる者もこれを変える権利を有しないとした。この宣言は使用者が適当と思うように新しい考えを発表しても良いとしている[2]

しかしながら実際には、現代のエスペラントの使い方は『エスペラントの基礎』で示された「お手本」と完全に一緒というわけではない。たとえば「私はこれが好きです。」の一文をエスペラント文に翻訳するときを例に説明する。『エスペラントの基礎』に沿って訳せば"Mi amas ĉi tiun."(ミ アーマス チ ティーウン)となるが,これは「私はこれを愛しています。」の意味となり、少し意味が強すぎてふさわしくないと感じるエスペランティストが多く、実際には"Mi ŝatas ĉi tiun."(ミ シャータス チ ティーウン)で代用することが多いが、これは元来「私はこれを高く評価します。」という意味であり、元の意味からは少しずれている(ただし,現行の辞書では動詞"ŝati"を「好きだ」の意味で使うことを追認している)。また、"Ĉi tiu plaĉas al mi."(チ ティーウ プラーチャス アル ミ)と訳すこともある。逐語訳すれば「これは私に気に入る」であり、完全に同じ意味ではないが、こちらの訳の方が「私はこれが好きです。」の意味に近い。

ほかの慣習的な変化としては、国名を表す接尾辞-uj- から -i- が主流に変わったことがある(例:JapanujoJapanio[3]。また、厳密に言えば、エスペラント化された単語のうち -a で終わる単語はすべて形容詞であるが、ヨーロッパ諸語での Maria のように -a で終わる名前が使われることがあり、これを慣習的にエスペラント化された名詞として認められる辞書もある[4]。ただし、『エスペラントの基礎』に従うなら、エスペラント化された名詞は、すべて Mario のように -o で終わらなければならないはずであり、この立場をとる辞書もある[5]。またĥの発音がとりわけ難しいとされてkに置き換えられる[6]など、語形変化も起こっている。

加えてエスペランティストたちは、新しく登場した事物や概念、外来語を表すために、さまざまな新語を取り入れた。たとえば1934年発行の "Plena Vortaro" は7,004項目(ほぼ語根)からなるが、2005年発行の "La Nova Plena Ilustrita Vortaro" は1万6,780項目からなる[7]。これらはそのまま使うのではなく、可能な限りエスペラントの造語法などに従った形で取り込まれている。たとえば、コンピュータ (computer) はkomputilo(コンプティーロ)といった具合である(道具を意味する接尾辞 -il- を使っている)。これにより、テレビやウェブやWindowsやMacなど、ザメンホフの時代には存在しなかった事物も自由に表現できるようになっている。たとえば、「CD-ROMの中のbinというフォルダにあるボールペンのアイコンをダブルクリックするとウィンドウズにワープロのプログラムやファイル、フォントなどがインストールされます。このときインターネットに自動的にアクセスするので、通信を許可するようにファイアウォールを設定してください。」といった文章も、現代のエスペラントでは表現できるのである。

新語の導入はエスペランティストなら誰でも提案することができ、最終的には一種の「競争原理」を勝ち抜いてもっとも頻繁に使われるようになったものが受け入れられる。たとえば「コンピュータ」に関しても、komputatorokomputero などさまざまな提案が行われたが,最終的にエスペランティストにとってもっとも簡潔と思われる komputilo が勝ち残ったのである[8](この際,動詞 komputi「計数・計量する」に「計算機で計算(演算)する」という意味が付け加えられた)。エスペラントの言語としての統制機関としてアカデミーオ・デ・エスペラントが在るが、個々のエスペランティストに厳しい制約を設けるようなことはしていない[9]

新語はどんなものでも受け入れられるとは限らない。たとえば「安い」を意味する新語 ĉipa(チーパ・英語の cheap に由来)は、長たらしい malmultekosta(マルムルテコスタ:mal/multe/kost/a=「(反対)・多く・費用・(形容詞)」)に代わるものとして造られたが、あまり使われていない。

最初の世界大会以降[編集]

1905年以降、世界エスペラント大会は2つの世界大戦の間を除き、毎年開催されている。

1920年代国際連盟の作業言語にエスペラントを加えようという動きがあった。イギリスのロバート・セシルや日本の新渡戸稲造をはじめ10人の各国代表者が賛同したが、フランスの代表者ガブリエル・アノトーの激しい反対にあい、実現しなかった。フランス語英語国際語の地位を脅かされつつあり、エスペラントを新たな脅威とみなしていたためである。

年表[編集]

分類[編集]

エスペラントは人工言語であるため、公式にはどの自然言語とも類縁関係にないとされている。どの国の言語でもないため言語による民族感情に左右されず、特定の民族に有利になったり不利になったりしないため、だれでも使用の恩恵を受けられると言われている。

しかし実際には文法、語彙ともにヨーロッパの諸言語、とりわけロマンス語を基礎に成立しているため、既存の語族に分類した場合、エスペラントは印欧語族に分類されるとの見方が20世紀初頭からある。そのため、非ヨーロッパ言語の話者には習得や運用が難しい(英語など、ほかの自然言語よりはまし、という程度でしかない)という、日本を含む非ヨーロッパのエスペランティストからの指摘もある。

発音体系はスラブ語の影響を受けているが、語彙はおもにロマンス語フランス語イタリア語スペイン語ポルトガル語など、約7割)、ゲルマン語ドイツ語英語など、約2割)から採用している。ザメンホフが定義していない文法上の語用論については、初期の使用者の母語、すなわちフランス語ポーランド語ロシア語ドイツ語などの影響を受けている。特にフランスハンガリーなどのエスペランティストための働きは無視できない。

ラテン語およびギリシア語などと同様、語順は自由であるが、慣習上、英語と同じようなSVO文型が多い。また形容詞名詞の前に立つことができる。主格および対格以外のは、前置詞によって示される。印欧語特有の屈折語的性格と、語幹に接辞が付属していく膠着語的性格とを併せ持つ(特に膠着語的性格が際だっている)言語であり、これは英語・ドイツ語などとも共通する点が多い。

使用状況[編集]

エスペラント利用者の分布(Pasporta Servoによる宿泊施設の位置)

エスペラントの使用者人数調査は、ワシントン大学の心理学教授シドニー・S・カルバートによって行われた。彼自身エスペラント大会に出席したことがあるエスペランティストであった。カルバートは160万人の人々がエスペラントを "Foreign Service Level 3" の能力で使いこなすことができると結論づけた。これは「専門的で堪能な」(エスペラントで挨拶と簡単な表現ができることにとどまらず、実際に意思伝達ができる能力を有する)人々に限定した数字である。この調査はエスペラント使用者を探し出すものではなく、多くの言語の世界的な調査の一部分が元になっている。この数字は Almanac World Book of Facts と Ethnologue にも登場した。この数字は世界人口の約0.03%に相当する。この数字では、ザメンホフが目指した普遍語には程遠い。Ethnologue はこのほかエスペラントを母語として育った、エスペラント母語話者が200人から2,000人いると言及した。

カルバートは研究の結果だけ公表し、調査方法の詳しい点については明らかにしなかった。それゆえ、彼の研究の正確性は疑われている。ドイツのエスペランティスト、ズィーコ・ファン・ダイクはこの数字を疑い、調査して『神話なしのエスペラント (Esperanto sen mitoj)』の中でその結果を発表した。「もし、100万人のエスペラント話者が世界中に平均的に散らばっているとしたら、ケルンには182人いることになる」と予想した。ズィコゼックは30人しか流暢に話す人を見つけることができなかった。そして、この数字は世界の平均的な地方よりも高い方である、と言及した。彼はまた、「さまざまなエスペラントの組織の登録者数が2万人おり、組織に登録されていないエスペランティストもたくさんいるだろうが、登録されている人の50倍もいるとは考えにくい」ということも言及した。ほかのエスペランティストたちも組織の登録者数と非登録者数がそんな比率で存在しないと考えている。カルバート教授のデータ、あるいはその他のデータもエスペランティストの人口を確実にはじき出すことは不可能である。

公的地位[編集]

エスペラントを公用語としている国は存在しない。20世紀初頭には、ベルギーとドイツの国境付近に存在した中立地帯モレネの公用語をエスペラントにする案が提案されたこともある。1968年アドリア海上に石油プラットフォームに似た人工島をつくって独立宣言した自称国家であるローズ島共和国はエスペラントを公用語として採用したが、翌年にはイタリア海軍により爆破され消滅した。非政府組織、特にエスペラント関係団体などでは作業語として使われている。もっとも大きいエスペラントの組織、世界エスペラント協会(UEA)は、NGOのひとつとして国連ユネスコと協力関係にある。

UEAにおいて日本を代表する国別団体として、1919年に設立され、1926年に財団法人化された日本エスペラント協会(JEI)が活動している。2018年現在の会員数は1,108人である[10]

派生言語[編集]

エスペラントの基礎』はエスペラントを改造することを認めていない。しかしながら、年月が経つにしたがって、たくさんの団体・個人がエスペラントの改善を試み、その改造案を提示した。改善の対象となったのは字上符つき文字や女性形語尾 -in-、形容詞の格の一致などが多い(最後についてはザメンホフ自身も失敗であったと回顧している)。

改造案のほとんどは失敗か計画段階にとどまったが、唯一1907年パリで行われた国際語選定代表者会で発表されたルイ・ド・ボーフロンによるイド改造案(イド語)はある程度の支持者を得た。イドのおもな改造はアルファベット(特に字上符つき文字の排除)といくつかの文法事項の変更であった。初期には比較的多くの人がイド改造案に賛同したが、この運動は短期間に改造に次ぐ改造を呼び次第に分裂していった。現在は改造もほぼ収まっているものの、イド語の使用人口・影響力ともエスペラントとは比較にならず、これもまた「成功した」とは言いがたい。

Fasile などの新しい国際言語案もエスペラントを意識したものと言えるが、これもエスペラントを脅かすレベルまでにはまったく到達していない。

アルファベット[編集]

エスペラントのアルファベットalfabeto(アルファベート)と呼ばれ、ラテン文字アルファベットにサーカムフレックスつきアルファベット ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝブレーヴェつきアルファベット ŭ を加えた28文字を使用する(ただし、ĥ は k に置き換えられる傾向にあり、今日ではあまり見られない)。q、w、x および y は人名や科学記号など特殊な場合を除いて使用しない。各字母の名称は、母音字はその発音、子音字はその子音に母音 -o をつけたものである(a アー、b ボー、c ツォー、ĉ チョーなど)。ちなみに q、w、x および y の名称は、それぞれ q クーオ、w ドゥオブラ・ヴォー(またはヂェルマーナ・ヴォーもしくはヴァーヴォ)、x イクソ、および y イプスィローノ(またはイ・グレーカ)である。

代用表記[編集]

英文タイプライターなどでダイアクリティカルマークが付いた文字が表示できないとき、別の文字に置き換えてダイアクリティカルマークつき文字を表現することを代用表記 (Surogata skribosistemo) と呼ぶ。h、x あるいは ^ などを文字の後ろ(または前)に加え、ダイアクリティカルマークつき文字であることを示す方式が主流だが、ŭを w に置き換えるなど、エスペラントで使用しない文字に置き換える方法もある。何を後置するかによって、H-方式、X-方式のように呼ぶ。現在はUnicodeが普及したことにより、コンピュータの上では代用表記の使用は少なくなってきている。

H-方式[編集]

H-方式 (H-sistemo) またはザメンホフ方式 (Zamenhofa sistemo) は h を後置する方法で、唯一『エスペラントの基礎』で定義されている方法である。そのため「第2の正書法」とも呼ばれる。ただし u にだけは後置しない。flughaveno(空港)のように代用表記に見える綴りがあると紛らわしいという欠点がある。エスペラントですでに使われている文字を転用するこの方式が採用されたのは、活字の数を増やしたくなかったためと言われている。

X-方式[編集]

X-方式 (X-sistemo) は x を後置する方法である。x はエスペラントでは使用しないため(エスペラント文に限れば)置き換えるのが簡単であるという利点から、インターネットなどで広く使われている。ただし、フランス語の人名や名詞・形容詞(特に複数形)には -(e)aux, -eux または -oux で終わるものがあるため、このような置き換えたくない文字の処理をどうするかが問題になる。この問題を避けるため、ŭを ux と書かずに vx と書く方法があるが、あまり広まっていない。

エスペラント版ウィキペディア・ウィクショナリーの代用表記[編集]

エスペラント版のウィキペディア、ウィクショナリーには、X-方式が使われており、{{subst:x|c}}ĉ{{subst:x|g}}ĝ と、x がついた文字を自動的に字上符つきのものに置きかえる機能がついている。以前のバージョンでは[[eaux]](フランス語で「水」の複数形)と入力すると「eaux」のように表示はされるがリンク先は "eaŭ" となり、"eaux"という記事名で新しい記事を作ることができない不具合があったが、現在は解消されている。

キャレット方式[編集]

^-方式(^-sistemo)は、c^, g^ のように ^(キャレット)を後置する方法である。ŭ については u^, u~ の双方が見られる。H-方式などに比べて見栄えがよくないという欠点はあるが、キャレットがサーカムフレックスと同じ形であることから、初心者やエスペラントを知らない人でも容易に理解できる利点があり、こうした人々を読者に想定した文書などでよく使われる。

TeXでの代用表記[編集]

TeXでエスペラントを記述する場合にはH-方式もX-方式も使いにくいということで、babelパッケージでは独自の方式を使うことになっている。この方式では字上符がつくべき文字の直前に ^(サーカムフレックス)を置いて表す。この方式とX-方式はsedawkなどの簡単なスクリプトで相互に変換することができる。

Unicode[編集]

かつてコンピュータがダイアクリティカルマークつき文字を扱えなかったころは、エスペラントを何らかの代用表記で表すしかなかったが、現在はISO/IEC 8859-3(いわゆるLatin-3)やUnicodeの普及により、コンピュータ上でもエスペラントのダイアクリティカルマークつき文字を表示できるようになった。以下はHTMLなどで表示する場合の数値文字参照による記述である。

文字 Unicode
符号位置
文字参照
10進表現 16進表現
Ĉ U+0108 Ĉ Ĉ
ĉ U+0109 ĉ ĉ
Ĝ U+011C Ĝ Ĝ
ĝ U+011D ĝ ĝ
Ĥ U+0124 Ĥ Ĥ
ĥ U+0125 ĥ ĥ
Ĵ U+0134 Ĵ Ĵ
ĵ U+0135 ĵ ĵ
Ŝ U+015C Ŝ Ŝ
ŝ U+015D ŝ ŝ
Ŭ U+016C Ŭ Ŭ
ŭ U+016D ŭ ŭ

アクセント[編集]

「アクセントは常に最後から2番目の音節にある。」(エスペラントの基礎、文法第10条)

エスペラントのアクセント強勢)は akcento(アクツェント)と呼ばれ、日本語のような高低アクセントではなく、英語などと同じ強弱アクセントである。英語では同音でアクセント位置によって意味が異なってしまう desert(砂漠)と dessert(デザート)を、エスペラントでは dezertodeserto のように音を変えて取り入れている。この例は、フランス語の音(それぞれ /dezEr/, /desEr/)から、またはその中間形を取り入れたとも考えられる。アクセントの位置によって単語を区別する必要がないため、人によって高低アクセントになってしまったり、あまり注意が払われない場合もある。

きれいに発音するためイタリア語などと同じように、アクセントのある母音を心持ち長めに発音するのが推奨されている(母音の長短そのものは意味の違いをもたらさない)。ただし、最後と最後から2番目の母音の間に子音が2個以上あるときはアクセントのある母音を短く発音し、子音がないか1個だけのときに長く発音する。これに加えて、最後と最後から2番目の母音の間の複子音の第二要素が l, r のものと kv , dz である場合はアクセントを長く発音するというものもある。

また、特に詩などで、語末の母音を省略することがある(母音が省略されていることを「'」(アポストローフォ)で示す)が、その場合でもアクセント位置は変わらない。

単語[編集]

最初のエスペラントの語彙は、1887年にザメンホフが出版した Lingvo internacia の中で定義されている。初期には約900語が定義された。しかしながら、言語の使用者は必要に応じて多くの言語で国際的にもっとも使われている単語を取り入れて使うことが、文法規則(エスペラントの基礎、文法第15条)によって許されている。1894年、ザメンホフは最初の5つの言語(仏・英・独・露・ポーランド)のエスペラント辞書 Universala Vortaro を発表した。そのときから特に西ヨーロッパの言語から多くの外来語がエスペラントに取り入れられた。より多数の使用者が取り入れた単語が人気を得て広まっていった。近年では、新しい外来語や造語のほとんどは技術用語または科学的な用語である。日常的な用語はすでにある単語から合成して造られるか(例: komputilo)、あるいは既存の単語に新しい意味を追加して使う傾向にある(例: muso (鼠)はコンピュータの入力機器の意味も持つようになった)。

新しい外来語を取り入れるか、それとも既存の単語から新しい単語を合成したり、既存の単語に新しい意味を加えたりして対応する方がいいのか、この種の議論には限りがない。エスペラントを学ぶ人は基本単語に加えて、単語が結合する規則なども覚えなければならない(例: eldonejo はそのまま訳すと「出すところ」で、それは「出版社」や「発行所」を意味する)。

新しい単語を創り出す権利はすべてのエスペランティストが持っているため、造語法を学ぶことは非常に重要である。新しい単語はエスペラントのコミュニティで使われていく中で次第に淘汰され、ほとんどの場合、最終的にひとつの形に落ち着くことになる。たとえば「コンピュータ」に相当する語は最初、komputmaŝino、komputilo、komputatoro などいろいろな形が使われたが、最終的に komputilo に落ち着いた。しかし「データ」を表す dateno と datumo など、複数の形が併存している例も見られる。

単語のうちいくつかはそのままの意味のほかに慣習的な意味を持っている。たとえば、ワニを意味する "krokodilo" から派生した "krokodili" と言う動詞は、「エスペラントを話さなければならないところで自国語を話す」という意味がある。

最大のエスペラント辞典は La Nova Plena Ilustrita Vortaro de Esperanto(SAT, 2002, ISBN 2-9502432-5-8)であり、1万6,780個の語根と4万6,890個の複合語句が記載されている。2005年、最新の改訂版が出版された(ISBN 2-9502432-8-2)。これは英語などの辞書と比べると非常に少ないように思えるが、実際にはエスペラントの造語法に従って自由に複合語を作ることができるため、実際に世界で使われている語彙は数十倍にのぼると考えられる。

文法[編集]

概要[編集]

エスペラントは印欧語を基にしているため屈折語的性格を持っていると言われることがあるが、文法上の性を持たず、語幹に一定の接辞(接頭辞・接尾辞)や文法語尾を付け加えて語の意味を限定したり拡張したりするなど、膠着語的性格をはるかに色濃く有しており、実際にはほとんど膠着語であると言って差し支えない。名詞および形容詞主格及び対格の2つのを持つ。名詞および形容詞には、さらに単数 (singularo) および複数 (pluralo) の区別があり、形容詞はそれが関わる名詞に合わせて格と数の変化をする。対格語尾には、移動の目標を表したり任意で適切な前置詞の代わりをしたりする働きもある。対格があるため、ロシア語ギリシア語ラテン語または日本語などのように語順は比較的自由である。なお、動詞は人称変化しない。

品詞[編集]

次の品詞区分が『エスペラント日本語辞典』(2006, ISBN 4-88887-044-6)で行われている:名詞、代名詞、形容詞、副詞動詞数詞前置詞、等位接続詞、従属接続詞、間投詞冠詞。また、疑問、指示などに使われる語で、分類からは代名詞、副詞などの広範囲にまたがる45語については総称して相関詞ということがある。なお、代名詞を人称代名詞、疑問代名詞、指示代名詞などのように分け、動詞を自動詞他動詞と分けるように、さらに細分化して扱うことがある。

品詞語尾と語根[編集]

エスペラントではすべての名詞、形容詞、動詞と、形容詞などからの派生副詞は、語根 (radiko) とその単語の品詞をあらわす品詞語尾 (finaĵo) の組み合わせによって構成される。たとえば forto(力)は fort- という語幹と名詞を表す語尾 -o から成り立っている。品詞語尾によって単語の品詞がわかり、また品詞語尾を換えることにより品詞を変化させることができる。たとえば forta とすると「強い」という意味になる。

品詞語尾 -o は名詞 (substantivo)、-a は形容詞 (adjektivo)、-e は副詞 (adverbo) をそれぞれ表す。名詞あるいは形容詞の品詞語尾の後ろに -j を加えると複数形になる。対格にするには -n を名詞あるいは形容詞語尾の後ろにつけ、複数形の場合は複数形語尾の後ろにつける。動詞には法や時制を表す6種類の語尾がある。

形容詞は名詞の数と格に一致させる。すなわち修飾する名詞が複数形の場合は形容詞も複数形にし、対格の場合は形容詞も対格にする。bona(よい)、tago(日)を例に一致の変化を示す。

主格 対格
単数 bona tago bonan tagon
複数 bonaj tagoj bonajn tagojn

形容詞の数と格の一致によって語順がかなり自由となり、また、形容詞‐名詞、名詞‐形容詞のどちらも可能であることによって標準的なSVO型のほか、SOV型VSO型などの文も作ることができる。ただし初心者はこの「一致」を忘れることが多い(ただし、忘れても会話が成立しなくなるほどの問題になることはないだけの冗長性をエスペラントは備えている)。

  • La knabino feliĉan knabon kisis. (ラ・クナビーノ・フェリーチャ・クナーボ・キースィス)=「その少女は幸せな少年にキスした」
  • La knabino feliĉa knabon kisis. (ラ・クナビーノ・フェリーチャ・クナーボ・キースィス)=「その幸せな少女は少年にキスした」

合計すると2個以上になる複数個の単数形の名詞を修飾する形容詞は複数形にする。

  • ruĝaj domo kaj aŭto. (ルーヂャ・ドーモ・カイ・アウト)=「赤い[家と車]」
    • この例では家も車も赤いことになる(家も車も単数だが修飾する「赤い」が複数なので、両者にかかっていることがわかる。意味としては、ruĝa domo kaj ruĝa aŭto. (ルーヂャ・ドーモ・カイ・ルーヂャ・アウト)=「赤い家と赤い車」と同じ)。
  • ruĝa domo kaj aŭto. (ルーヂャ・ドーモ・カイ・アウト)=「[赤い家]と車」
    • 上の例に対してこちらは、家は赤いが車の色は不明である(修飾する「赤い」は単数なので、単数の「家」のみにかかることが明らか)。

叙述的な形容詞は対格としない。

  • Mi farbis la pordon ruĝan. (ミ・ファルビス・ラ・ポルド・ルーヂャ)=「私は赤色のドアを塗った(ドアは始めから赤色)。」
  • Mi farbis la pordon ruĝa. (ミ・ファルビス・ラ・ポルド・ルーヂャ)=「私はドアを赤色に塗った(塗った結果として赤色になった)。」

派生語と接辞[編集]

エスペラントでは語根の数を絞り、その代わり多くの語彙を派生語であらわす。上述の品詞別の単語も派生である。また、接頭辞接尾辞(あわせて接辞という)を有効利用する。たとえば、語根 long は、

  • 品詞語尾をつけて longa(ロンガ)=長い、longo(ロンゴ)=長さ、となる。
  • 「反対」の意味の接頭辞 mal をつけて、mallong という語幹 (radikalo) を構成し、これにより、mallonga(マルロンガ)=短い、mallongo(マルロンゴ)=短さ、となる。
  • 「他動」の意味の接尾辞 ig をつけて、longig という語根を構成し、これにより、longigi(ロンギーギ)=長くする、longigo(ロンギーゴ)=長くすること(すなわち「伸長、延長」)、となる。
  • 接頭辞と接尾辞を両方用いて、mallongig という語幹を構成し、これにより、mallongigi(マルロンギーギ)=短くする、mallongigo(マルロンギーゴ)=短くすること(すなわち「短縮」)、などもできる。

冠詞[編集]

不定冠詞はない。すべての性、数、格に関係ない定冠詞 la がある。」(エスペラントの基礎、文法第1条)

人称代名詞[編集]

※()内は同義の英語

単数 複数
1人称 mi (ミ) - 私 (I) ni (ニ) - 私たち (we)
2人称 vi (ヴィ) - あなた/あなたがた (you)
3人称 li (リ) - 彼 (he) ili (イリ) - 彼ら/彼女たち/それら (they)
ŝi (シ) - 彼女 (she)
ĝi (ヂ) - それ (it)
oni (オニ) - ひと/人々 (one, people; 仏語 on)
再帰 si (スィ) - 自身 (self, own; 独語 sich)

対格にするには -n をつける。「私を」は min となる。所有格(所有形容詞、属格)にするには形容詞語尾 -a をつける。「私の」は mia となる。所有形容詞は形容詞の一種なので、普通の形容詞と同じように複数語尾や対格語尾の変化があり、miajn librojn 「私の本(複数)を」のように、名詞の数と格に一致させる必要がある。

動詞[編集]

動詞の「不定形」は「不定詞」ともいう。不定形以外の現在形から命令形までを「定形」または「定動詞」と呼ぶ。現在形から未来形までは「直説法」である。また、仮定形は「仮定法」と、命令形は「意志法」と呼ばれる。

動詞 (verbo) に関しては、平叙文での動詞の位置は原則として文の要素のうち主語の後ろに置かれることが多いが、実際にはかなり自由である。エスペラントには助動詞 (helpverbo) と明確に呼ばれる品詞がない。povi、devi および voli などは、下に示すように西欧語などでの助動詞と同じような意味・用法を持っているが、ほかの動詞と活用上区別されない。同様に、存在動詞にも活用上の区別がない。英語などとは異なり、自動詞と他動詞の区別は厳格である。英語やフランス語などにあるような「時制の一致」はない。不規則動詞はまったく存在せず、世界一不規則動詞が少ない言語[11]としてギネスブックに登録されている。動詞は人称変化しない。例としてkanti(歌う)を使って変化を示す。

不定形 -i(kanti)
現在形 -as(kantas)
過去形 -is(kantis)
未来形 -os(kantos)
仮定形 -us(kantus)
命令形 -u(kantu)

分詞[編集]

分詞 (Participo) は(能動・受動)と(継続・完了・将然)によって6種類存在する。これらの分詞と、複合時制を作る助動詞のように働く動詞 esti の3時制(現在形・過去形・未来形)との組み合わせによって、エスペラントでは細かい時制表現が可能である。分詞と esti を組み合わせた文では、能動態・受動態それぞれ9種類ずつ、時制表現のバリエーションがある。必要なら現在完了進行形のような複複合時制を作ることもでき、バリエーションはさらに増える。以下にバリエーションを列挙する。

  • 現在継続(進行)形
  • 現在完了形
  • 現在将然(未然)形
  • 過去継続(進行)形
  • 過去完了形
  • 過去将然(未然)形
  • 未来継続(進行)形
  • 未来完了形
  • 未来将然(未然)形

9種類もバリエーションが存在するにもかかわらず、分詞を使った複合時制はエスペラントでは好まれない。英語なら現在進行形や現在完了形など複合時制を義務的に用いる表現でも、エスペラントでは相を表す副詞を使用して単純時制で表現する場合が多い。受動態の分詞形容詞を使えば受動文を表現できるが、エスペラントでは受動文を避けて能動文で表現する傾向がある。

分詞は動詞に分詞を作る接尾辞をつけることによって作る。下の表は分詞を作る接尾辞の表である。例として、形容詞の品詞語尾 -a をつけた分詞形容詞を挙げる。

分詞 能動態 受動態
継続相 -ant- ~している (kantanta) -at- ~されている (kantata)
完了相 -int- ~した (kantinta) -it- ~された (kantita)
将然相 -ont- ~しようとする (kantonta) -ot- ~されようとする (kantota)

分詞形容詞は形容詞の一種なので、格・数の変化をし、分詞形容詞が修飾している名詞に一致させる。形容詞の品詞語尾 -a を副詞の品詞語尾の-eに付け替えれば分詞副詞、名詞の品詞語尾の -o につけ替えれば分詞名詞になる。

分詞副詞(たとえば kantante「歌いながら」)はイタリア語のジェルンディオ、フランス語のジェロンディフなどのようなもので、文の主動詞に対する同時性などを表したり、分詞構文を作ったりする。分詞副詞は格・数の変化をしない。

他動詞から作られた分詞形容詞と分詞副詞は、対格目的語を取ることができる。

分詞名詞(たとえば kantanto「歌っている人」)は分詞形容詞や分詞副詞よりも動詞的性格の薄れた完全な名詞である。たとえ他動詞から作られた分詞名詞であっても対格目的語を取ることはできない。たいていの場合、その動作をする人物を表す。分詞名詞は格・数の変化をする。

[編集]

エスペラントには4つのが存在する。

直説法[編集]

直説法 (deklara modoreala modo) の時制には現在、過去、未来があり、それぞれの動詞の語尾は -as、-is および -os である。現実(のこととして話し手が表現しようとする)動作および状態を表現する。継続中の動作は分詞形容詞を使った複合時制を使う方法もあるが、単純時制を使う方が一般的である。

  • Mi estas studento. (ミ・エスタス・ストゥデント)=「私は学生です」
  • Li ĵus finis la laboron. (リ・ジュス・フィーニス・ラ・ラボーロン)=「彼はたった今仕事を終えました」
  • Ne en unu tago elkreskis Kartago. (ネ・エン・ウヌ・ターゴ・エルクレースキス・カルターゴ)=「ローマは一日にして成らず」
  • Longe ĉerpas la kruĉo, ĝis ĝi fine rompiĝas.(ローンゲ・チェールパス・ラ・クルーチォ、ヂス・ヂ・フィーネ・ロムピージャス)

ドイツ語などのように、近い過去や近い未来、確定した未来を現在形で言ってしまうことはない。過去はあくまでも過去、未来はあくまでも未来である。確定した未来か未確定の未来かは、エスペラントでは区別されない。

不定法[編集]

不定法(不定詞・不定形ともいう。neŭtra modo, infinitivo)の品詞語尾は -i であり、辞書に載っている形である。動詞句をつくることができるが、定動詞とは異なり、主文を作ることはできない。

エスペラントの不定詞(不定形)には時制がない。ちなみにイド語の不定詞には現在、過去、未来の区別がある。

不定詞の名詞的用法[編集]

不定詞の名詞的用法(infinitivo kiel subjekto、主語としての不定詞)は不定詞を名詞のように扱うことである。主語、目的語、補語の役割を果たす。目的語として用いられた場合でも、対格語尾 -n はつかない。名詞を修飾するのは形容詞であるが、動詞を修飾するのはあくまで副詞である。これは主語たる不定詞の述語として用いられるのもまた副詞であるということを意味する。

  • Paroli estas facile, fari estas malfacile. (パローリ・エスタス・ファツィーレ、ファーリ・エスタス・マルファツィーレ。)=「易くは言う、難しは行う。」
複合動詞[編集]

動詞 devi、deziri、rajti、povi などの後ろに動詞の不定詞を置くことで、複合動詞 (kompleksa verbo) のようにすることができる。英語での助動詞と不定詞との関係とよく似ている。ただし、devi、deziri、rajti、povi などは、いわゆる「助動詞」ではない。エスペラントには「助動詞」という品詞は存在しない。

  • Mi povas paroli vian lingvon. (ミ・ポーヴァス・パローリ・ヴィーアン・リングヴォン)=「私はあなたの言葉を話すことができます」
  • Vi volos reveni. (ヴィ・ヴォーロス・レヴェーニ)=「あなたは帰りたいと思うだろう」
  • Li devis maldungi ilin. (リ・デーヴィス・マルドゥンギ・イーリン)=「彼は彼らを解雇しなければならなかった」

仮定法[編集]

仮定法kondiĉa modo, imaga modo)の語尾は -us である。

  • 事実とは逆の仮定
    • Se mi estus birdo, mi povus flugi en la ĉielon.(セ・ミ・エストゥス・ビールド、ミ・ポーヴス・フルーギ・エン・ラ・チエーロン)=「もし私が鳥ならば、空に向かって飛んでいけるのに」

単純な仮定法では時制はないが、厳格に現在、過去、未来の時制を表したい場合は複合時制を使う方法がある。

命令法(意志法)[編集]

命令法 (ordona modo) の動詞の語尾は -u である。命令だけでなく、依頼、要求または禁止など主語に対する話者のそうあって欲しいという「意志」を表現するため、意志法 (vola modo) とも呼ばれる。命令文で主語が vi のとき、特に強調する場合を除いて主語 vi は省略される。

  • Iru !(イール !)=「行け!」(主語viは省略)
  • Vi iru !(ヴィ・イール !)=「君が行け!」(省略せず、viを強調。ほかの誰でもなく「君が」行け)
  • Li iru.(リ・イール)=「彼に行かせろ」(彼が行くべきだという話者の意志・願望)
  • Mi iru. (ミ・イール)=「私が行きます」(私こそが行くべきだという話者(すなわち私)の意志)
  • Ni iru !(ニ・イール!)=「行こう!」(私たちが行くんだという話者(すなわち ni の中の一人としての私)の意志。英語のLet's go. に相当)
  • Mi petis ke li savu min. (ミ・ペーティス・ケ・リ・サーヴ・ミン)=「私は彼に助けてと頼んだ」(彼に助けて欲しいという主文の主語(すなわち私)の意志)
  • Ĉu ni iru al la kinejo ?(チュ・ニ・イール・アル・ラ・キネーヨ)=「映画に行きませんか?」(私たちが行くべきかどうか、聞き手の意志を尋ねる体裁で勧誘している)

コピュラ[編集]

動詞 esti は、ラテン語の sum、esse、fui、フランス語êtreイタリア語の essere、英語の beなどに相当するものである。日本語では「ある」と訳されることもある。 非常に重要な動詞で存在を表現したり、コピュラ文のほか、分詞形容詞を伴って複合時制の文を作ることができる。for-est-i、est-ont-a のように esti 自体に接辞をつけることができる。コピュラは2つの名詞句をつなぐ。

表現[編集]

あいさつ

  • Saluton. (サルートン)=「やあ」
  • Tre agrable. (トレ・アグラーブレ)=「はじめまして」
  • Bonan matenon. (ボーナン・マテーノン)=「おはよう」
  • Bonan tagon. (ボーナン・ターゴン)=「こんにちは」
  • Bonan vesperon. (ボーナン・ヴェスペーロン)=「こんばんは」
  • Dankon. (ダンコン)=「ありがとう」
  • Ĝis revido. (ヂス・レヴィード)=「さようなら」/ Ĝis. (ヂス)=「またね」

  • Mi estas tre ĝoja konatiĝi kun vi. (ミ・エスタス・トレ・ヂョーヤ・コナティーヂ・クン・ヴィ)=「あなたと知り合いになれてとてもうれしいです」
  • Mia nomo estas ~.(ミーア・ノーモ・エスタス・~)=「私の名前は~です」
  • Mi estas Japan(in)o.(ミ・エスタス・ヤパーノ)=「私は日本人です」
  • Kiel vi fartas?(キーエル・ヴィ・ファルタス)=「お元気ですか」
  • Kio okazas?(キーオ・ オカーザス)=「何が起こっているのですか」

記数

  • 1 - unu(ウヌ)
  • 2 - du(ドゥ)
  • 3 - tri(トリ)
  • 4 - kvar(クヴァール)
  • 5 - kvin(クヴィン)
  • 6 - ses(セス)
  • 7 - sep(セプ)
  • 8 - ok(オク)
  • 9 - naŭ(ナゥ)
  • 10 - dek(デク)
  • 100 - cent(ツェント)
  • 1000 - mil(ミル)

日本語由来のエスペラント単語[編集]

参考のため語種を付記し、漢語外来語和語の別を示す。付記されていないものは和語である。

  • aikido アイキード(合気道、和製漢語)
  • animeo アニメーオ(アニメ、ラテン語 anima からできた英語 animation に由来)日本のアニメ、日本式の画風のものをいう。国を限定しないなら二重語の animacio
  • bonsajo ボンサーヨ(盆栽、和製漢語)
  • cunamo ツナーモ(津波) 学術用語としての「気象以外の要因による波」だけでなく、単なる大波 (ondego) として使われたり、「押し寄せるもの」の例えに使う場合もある。
  • ĉanojo チャノーヨ(茶の湯 → 茶道、前半部 ĉa は漢語) japana teceremonio と言う方が多い。
  • ĉirimeno チリメーノ(縮緬、後半部 men は漢語)
  • eno エーノ(、漢語)
  • goo ゴーオ(、漢語)
  • hajko ハイコ(俳句、和製漢語)- 派生語として hajkaro ハイカーロ(句集、俳句集)などがある。
  • harakiro ハラキーロ (腹切り→切腹
  • haŝioj ハシーオイ() - 日本以外の東アジア圏で使われる箸を総称して合成語 manĝobastonetoj マンヂョバストネートイ(「食事」+「小さな棒」の複数形)が使われる。
  • hibakŝo ヒバクショ(被爆者、和製漢語)
  • ĵudo ジュード(柔道、和製漢語)- 派生語として ĵudejo ジュデーヨ(柔道場)などがある。
  • kamikazo カミカーゾ(神風) 神風特別攻撃隊の略称「神風」が転じて「自爆テロ」も指す。
  • kapao カパーオ(河童
  • karaokeo カラオケーオ(カラオケ、後半部はギリシャ語 orkhestra に由来する英語 orchestra から)
  • karateo カラテーオ(空手、「唐手」から)
  • katano カターノ(刀→日本刀
  • kimono キモーノ(着物
  • mangao マンガーオ(漫画、和製漢語) 日本風の漫画 (japana bildliteraturo) に限定して使用する。日本のアニメを含む場合もある。国を限定しない漫画は bildliteraturo を使用する。アメリカ風なら komikso がある。
  • moĉio モチーオ()- 「米製のケーキ」を意味する合成語 rizkuko を用いることが多い
  • noo ノーオ(、和製漢語)
  • origamio オリガミーオ(折り紙
  • sakeo サケーオ(酒→日本酒
  • samurajo サムラーヨ(
  • suŝio スシーオ(寿司
  • ŝintoo シントーオ(神道、和製漢語)
  • ŝogio ショギーオ(将棋、漢語) Japana ŝako「日本チェス」という言い方もある。
  • ŝoguno ショグーノ(将軍→征夷大将軍、漢語)
  • tankao タンカーオ(短歌、和製漢語)
  • tempuro テンプーロ(天ぷら、外来語)
  • tofuo トフーオ(豆腐、漢語)
  • tokusacuo トクサツーオ(特撮
  • udono/udonoj ウドーノ、ウドーノイ(うどん、漢語「饂飩」) 単数・複数のどちらも使われる。
  • utao ウターオ(歌→和歌
  • zorioj ゾリーオイ (草履、和製漢語)

エスペラント由来のネーミング[編集]

ザメンホフ・エスペラント・オブジェクト[編集]

ザメンホフまたはエスペラントに由来するネーミングを持つ物体(モニュメント・場所・建物・乗り物など)は総称してザメンホフ・エスペラント・オブジェクト (Zamenhof/Esperanto-Objekto, ZEO) と呼ばれる。ZEOという単語はヒューゴ・レーリンゲルが1997年に発表した Monumente pri Esperanto[12]で使用した語である。彼はその著作で世界54の国にある1,044のZEOを紹介した。世界エスペラント協会にはZEOを扱う委員がいる。

最初のZEOは1896年に進水したスペインの船舶「エスペラント」である。

著名なエスペラント由来のネーミング[編集]

企業・団体別[編集]

個人別[編集]

エスペラントに関する作品[編集]

作品中にエスペラントやエスペランティストが明示的に出てくるものを示す。なお、エスペラントで物事を名づけている場合は「著名なエスペラント由来のネーミング」のセクションも参照のこと。

小説[編集]

戯曲[編集]

漫画[編集]

テレビドラマ[編集]

映画[編集]

コンピュータゲーム[編集]

立体美術作品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 二木紘三 著、「国際語の歴史と思想」(1981年、毎日新聞社)p.166
  2. ^ M.ボウルトン著、水野義明訳「エスペラントの創始者ザメンホフ」(1993年、新泉社)p.128-130
  3. ^ 藤巻謙一「まるごとエスペラント文法」(2001年、日本エスペラント学会)、p.51
  4. ^ "Plena Ilustrita Vortaro"(1971年、Sennacieca Asocio Tutmonda)
  5. ^ "La Nova Plena Ilustrita Vortaro"(2005年、Sennacieca Asocio Tutmonda)
  6. ^ 辞典編集委員会編「エスペラント日本語辞典」(2006年、日本エスペラント学会)p443・ĥ解説
  7. ^ "La Nova Plena Ilustrita Vortaro"(2005年、Sennacieca Asocio Tutmonda)、前書き
  8. ^ 辞典編集委員会編「エスペラント日本語辞典」(2006年、日本エスペラント学会)p578・該当の語に対する「より望ましい語」の注記による
  9. ^ CED編、"Esperanto en Perspektivo"(1974年、世界エスペラント協会)、p664-669
  10. ^ 財団法人日本エスペラント学会 2017年度事業報告書
  11. ^ 人工言語として。自然言語ではケチュア語などにも不規則動詞が少ない。
  12. ^ Hugo Röllinger "Monumente pri Esperanto - ilustrita dokumentaro pri 1044 Zamenhof/Esperanto Objektoj en 54 landoj",Universala Esperanto Asocio, Rotterdam 1997, ISBN 92 9017 051 4.
  13. ^ [1]
  14. ^ http://www.festivalo.co.jp/story/index.html
  15. ^ http://www.puk.jp/theatre/theater.html プーク人形劇場
  16. ^ http://www.felica.ac.jp/mean.html
  17. ^ http://www.mediafactory.co.jp/anime/rahxephon/onair/ab_world.html ラーゼフォン 世界観
  18. ^ 街区名称は「丸の内オアゾ(OAZO)」に決定
  19. ^ http://www.movado.com/AboutMovado.aspx
  20. ^ http://www.tokoyo.jp/wa_6.php
  21. ^ ヤクルトのマメ知識
  22. ^ 「はじまりへの旅」公式サイト

関連書籍[編集]

関連項目[編集]

言語[編集]

象徴[編集]

組織・施設[編集]

その他[編集]

学習[編集]

辞書[編集]

入力ツール[編集]

情報[編集]

組織[編集]