エルマ (対潜迫撃砲)

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エルマ
博物館船となったフギン級ミサイル艇「フギン」のLLS-920
後方から見たLLS-920
博物館船となった機雷敷設艇カルマルスンドのLLS-920

エルマ対潜迫撃砲は、スウェーデンサーブ社が開発した対潜迫撃砲

概要[編集]

哨戒艇などに搭載し、主に平時の領海警備に使用して、潜水艦を浮上させ拿捕することを目的とした小型対潜迫撃砲である。あえて小型にすることで直撃しても潜水艦を撃沈してしまわない程度の威力に押さえてある。成形炸薬の炸裂により潜水艦の外殻に穴が開けば、潜水艦は潜行が困難になり浮上せざるをえなくなる。

開発経緯[編集]

当時、スウェーデンでは漁船の魚網が引き裂かれる事例が多数あり、ソ連潜水艦による領海侵犯が日常的に行われている証左とされていた。1981年には、ソ連海軍のウィスキー型潜水艦カールスクルーナ近郊で座礁するという、ウィスキー・オン・ザ・ロック事件も発生した。この事件自体は航法ミスによる偶発的なものであったが、当初、スウェーデン政府は、同国海軍の魚雷のテストを偵察するための領海侵犯であると疑っていた[1]。これらの状況を受けて、スウェーデン沿岸での特殊潜航艇との交戦を主眼として、1983年中盤より開発開始したのが本砲である[2]

本砲システムは、固定式の9連装発射器4基を1セットとして使用する多弾散布型の前投式対潜兵器である。弾頭は、歩兵携行用のカールグスタフ無反動砲の砲弾を基にした成形炸薬弾であり、潜水艦の耐圧殻にユーロ硬貨大の穴を穿つことで浮上を強要する。信管は着発式、一度の斉射で80×100メートルの範囲に着水して沈降する[3]

弾体諸元表[2]
M83 M90
全長 267 mm 465 mm
発射重量 4.2 kg 5.7 kg
射程 250~300 m 600 m

発射機についても、下記の通りに順次に改良が重ねられた。

LLS-920
初期型。M83のみを発射可能[2]
ASW-600
M90の運用に対応した改良型。1992年に実用化された[2]
ASW-601
調整可能なマウント2基(それぞれ9連装発射機×2基ずつ)により構成されていた。1995年に実用化された[2]
ASW-604
ヘリコプター搭載用。20連装発射機1〜2基から構成されており、M90の運用に対応していた[2]
ALECTO
当初はKAS-90、KAS-2000と称されていた。127mm口径に大口径化(弾体重量15〜16 kg)し、最大射程2,000メートルに延伸する予定であった[2]が、後に開発中止された。

採用国と搭載艦[編集]

 スウェーデン海軍
 フィンランド海軍

また日本もASW-601を試験的に購入したとされている[2]

参考文献[編集]

  1. ^ 西村直紀 「ウィスキー・オン・ザ・ロック」『世紀の失敗物語 兵器・乗物編』 グリーンアロー出版社1998年、74-77頁。ISBN 978-4766332629。
  2. ^ a b c d e f g h Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. pp. 757-758. ISBN 978-1557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC. 
  3. ^ 多田智彦「世界の艦載兵器」、『世界の艦船』第811号、海人社、2015年1月、 13-167頁。

関連項目[編集]