カツベン!
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カツベン! | |
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監督 | 周防正行 |
脚本 | 片島章三 |
製作 |
天野和人 土本貴生 |
製作総指揮 | 佐々木基 |
出演者 |
成田凌 黒島結菜 永瀬正敏 高良健吾 音尾琢真 徳井優 田口浩正 正名僕蔵 成河 森田甘路 酒井美紀 シャーロット・ケイト・フォックス 上白石萌音 城田優 草刈民代 山本耕史 池松壮亮 竹中直人 渡辺えり 井上真央 小日向文世 竹野内豊 |
音楽 | 周防義和 |
主題歌 | 奥田民生「カツベン節」 |
撮影 | 藤澤順一 |
編集 | 菊池純一 |
制作会社 | アルタミラピクチャーズ |
製作会社 | 「カツベン!」製作委員会 |
配給 | 東映 |
公開 |
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上映時間 | 127分[1] |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
『カツベン!』は、2019年12月13日公開の日本映画[2]。監督は周防正行で、『舞妓はレディ』以来5年ぶりとなるオリジナル映画作品[3]。周防としては自身が脚本を書いていない初の作品となる[4]。主演は成田凌[3]。
製作[編集]
主演には映画初主演となる成田凌、ヒロインには黒島結菜が男女100名ずつのオーディションを行った上で決定された。この2名に決定した理由について、周防は「成田くんは出会った時の素直な雰囲気に加えて、活動弁士として活躍する姿が容易にイメージできた。黒島さんは駆け出しの女優を演じるに相応しい初々しさと可憐さを感じた」と語っている[3]。
主人公の活動弁士を演じる成田は撮影前に周防とともに講談や浪曲を観賞し、更に現役の活動弁士からも指導を受けた[3]。
背景[編集]
100年前、まだ映画が「活動写真」という名で呼ばれ、声もなくモノクロだった時代、海外においてはオーケストラの演奏をバックに多彩な才能を発揮したチャーリー・チャップリンやバスター・キートンといった人気俳優が絶大なる人気を誇っていた。
そんな中で日本の活動写真といえば、楽士の奏でる音楽に合わせて、活動弁士(通称:活弁)と呼ばれる喋りの達人たちが配役のすべての声を担当し、その軽妙洒脱なお喋りは観客の心を鷲掴みにし、たちまち人気を博すことになった。現在の声優に近い立場にあった活動弁士にはそれぞれにファンがついており、人気の活動弁士と契約することは正に映画館にとっては存在自体を問われるほどの重要課題でもあった。
あらすじ[編集]
大正の初め頃、地方の街に住む子供の染谷俊太郎は、活動弁士の声帯模写を得意としていた。お気に入り弁士は山岡秋声だった。ある日、俊太郎の住む街では時代劇映画の撮影がおこなわれていた。俊太郎は知り合いの子供たちと悪戯を仕掛けて警官に負われ、近くにいた少女の手引きでその場を逃れる。しかし、気づいた警官から逃げる中で偶然映画に映り込んでしまう。後日、その映画が街に巡ってきたとき、少女(梅子)の案内で裏口から小屋に忍び込み、自分たちが出た映画を見ることできた。仲良くなった俊太郎と梅子は再度小屋に忍び込もうとしたが入口は塞がれていた。俊太郎は活弁の物真似を披露し、梅子は大きくなったら映画俳優になりたいと話して、お礼にキャラメルを渡した。だが、まもなく梅子は街を離れてしまう。
時は流れて成長した俊太郎は、いかさま興行師の安田の下で山岡秋声を騙って弁士をしていた。俊太郎が弁士を務めて映画を上映する間、留守になった付近の家で仲間が窃盗を働く手口だった。だが、俊太郎は刑事に追われた機会に盗んだ金とともに逃げ出し、芝居小屋「青木館」の住み込みとなる。金の入った鞄は屋根裏に隠し、下働きをする。「青木館」には本物の山岡秋声がいたが、酒浸りとなっていた。看板弁士の茂木貴之はライバルの「タチバナ館」から移籍の誘いを受け、「青木館」の主人は楽士や弁士の引き留めにやきもきする。俊太郎は映像技師の浜本と親しくなり、彼の集めているフィルムの切れ端を見せてもらう。そこには浜本がファンだという沢井松子という女優の映ったものが多く入っていた。
そんなある日、山岡が出番に現れず、他の弁士も代わりはできないと拒む。俊太郎は山岡の代わりに弁士を務めて観客から喝采を浴びるが、戻ってきた山岡にダメ出しされて稽古を付けられる。やがて俊太郎は人気弁士となって「青木館」は賑わいを取り戻した。一方、「タチバナ館」の手下に安田がおり、俊太郎が「青木館」で弁士をしていることに気づいて、金を取り戻そうとする。以前の刑事も現れて、俊太郎は微妙な立場に立たされる。そんな折、客席に沢井松子の姿があった。松子は成長した梅子だった。再会を喜び合うものの、梅子は茂木の力添えで女優になった経緯があり、茂木から離れることができないという。安田は仲間と俊太郎を襲って喉を締め上げる。逃げ出した俊太郎は舞台に立つが思うように声が出ず、客席に入り込んだ安田たちに野次を飛ばされる。そのとき梅子が舞台に上がって女優の声を当て、苦境を乗り切った。俊太郎は梅子から駆け落ちを持ちかけられるも、一度は断る。しかし金を持って駆け落ちするべきか苦悶する。
安田は俊太郎に金を持参するよう脅すが、屋根裏に鞄はなかった。俊太郎の様子を見た三味線楽士が持ち逃げしたのだ。安田は梅子を拉致して、返すには金を用意しろと告げる。「タチバナ館」の一味は「青木館」を襲撃して中を荒らし、フィルムをずたずたにしてしまう。明日の上映が迫る中、俊太郎は浜本に命じて、時代劇、『金色夜叉』、『椿姫』などのあり合わせのフィルムをつなぎ合わせて即席の映画を作った。翌日、俊太郎は「タチバナ館」に出向いて梅子を助け、駅で待っていろと言い残して「青木館」に戻る。いろんな作品の入り交じった即席映画に俊太郎は語りを付けて観客を沸かせたが、中にいた安田が発砲、そこに警察も現れて騒動となる。フィルムに引火して「青木館」は炎上、逃げる俊太郎を安田と警察が追う展開になる。安田に追いつかれて銃を向けられ俊太郎は観念するが、弾切れで命拾いしたところに警察が到着した。一方「青木館」の焼け跡では、落胆した主人の前にフィルム缶に入った金が現れる。俊太郎が密かに移しておいたものだったが、これで再建できると主人は狂喜した。駅にいた梅子は俊太郎不在のまま、現れた映画監督の二川に映画に出すと誘われ、ともに列車で街を去る。
刑務所で服役する俊太郎が独房から活弁を披露していた頃、梅子が面会に訪れていた。梅子は俊太郎に会わないまま、ハンカチにくるんだキャラメルを残して刑務所を後にした。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
- 染谷俊太郎
- 演 - 成田凌(幼少:牛尾竜威[5])
- 本作の主人公。偽弁士から代理を経て本物の活動弁士になる。
- 栗原梅子(沢井松子)
- 演 - 黒島結菜(幼少:藤田りんか[6])
- 子供の頃に俊太郎と親しくなるが、家業の都合で転居し離れていた。「沢井松子」の芸名で女優となる。
- 山岡秋声
- 演 - 永瀬正敏[7]
- 映画館「青木館」に所属する活動弁士。幼い頃の俊太郎が憧れていた。「青木館」では往年の名声はなかったが、俊太郎に弁士の心得を説く。
- 茂木貴之
- 演 - 高良健吾[7]
- 山岡と同じ映画館に所属する活動弁士。「青木館」の看板弁士だが「タチバナ館」への移籍に靡いており、人気者となった俊太郎をライバル視する。
- 安田虎夫
- 演 - 音尾琢真
- インチキ興行師として俊太郎らを使って窃盗を働いていた。のち、橘重蔵の手先となり、「青木館」潰しの実行を請け負う。
- 牧野省三
- 演 - 山本耕史[8]
- 映画監督。二川文太郎とともに日本映画の黎明期を支えた。
- 二川文太郎
- 演 - 池松壮亮[8]
- 映画監督。日本映画の黎明期を支えた無声映画演出のパイオニア的存在。
- 青木富夫
- 演 - 竹中直人
- 山岡や茂木が所属する映画館「青木館」の館主。「青木館」は老舗の芝居小屋だったが、「タチバナ館」の攻勢の前に切歯扼腕する。
- 青木豊子
- 演 - 渡辺えり
- 青木富夫の妻。「青木館」創業者の血筋で、入り婿の夫を叱咤することもある。
- 橘琴江
- 演 - 井上真央
- 「青木館」のライバル映画館である「タチバナ館」の館主である橘重蔵の娘。俊太郎が梅子を助けに訪れたときに、顔にキスマークをつける(あとでそれを見た梅子は誤解して俊太郎を平手打ちした)。
- 橘重蔵
- 演 - 小日向文世
- 映画館「タチバナ館」の館主。安田などの悪党を使って「青木館」潰しを企む。
- 木村忠義
- 演 - 竹野内豊
- ニセ活動弁士逮捕に執念を燃やす刑事。活動写真好きで、有名弁士となった俊太郎を訪ねたときにはその技量を称賛した。
- 定夫
- 演 - 徳井優
- 俊太郎が働いている「青木館」の楽士(三味線)。俊太郎が隠していた金を持ち逃げし、料亭で散財した。
- 金造
- 演 - 田口浩正
- 俊太郎が働いている「青木館」の楽士(鳴り物)。
- 耕吉
- 演 - 正名僕蔵
- 俊太郎が働いている「青木館」の楽士(管楽器)。
- 浜本祐介
- 演 - 成河[8]
- 俊太郎が働いている「青木館」の映像技師。
- 内藤四郎
- 演 - 森田甘路
- 俊太郎が働いている「青木館」の汗かき活動弁士。
- 梅子の母親
- 演 - 酒井美紀[8]
劇中無声映画の登場人物[編集]
- 無声映画「南方のロマンス」ヒロイン
- 演 - シャーロット・ケイト・フォックス[9]
- 本作のために作られた無声映画である「南方のロマンス」のヒロイン。
- お宮
- 演 - 上白石萌音[9]
- 無声映画「金色夜叉」の登場人物。
- アルマン
- 演 - 城田優[9]
- 無声映画「椿姫」の登場人物。
- マルギュリット
- 演 - 草刈民代[9]
- 無声映画「椿姫」の登場人物。
- お千
- 演 - 椎名慧都
- 本作のために作られた無声映画である「火車お千」の主人公。
スタッフ[編集]
- 監督:周防正行
- 脚本・監督補:片島章三
- 音楽:周防義和
- エンディング曲:奥田民生「カツベン節」
- 製作:村松秀信、木下直哉、亀山慶二、水野道訓、藤田浩幸、間宮登良松、宮崎伸夫、小形雄二
- 企画:桝井省志
- エグゼクティブプロデューサー:佐々木基
- プロデューサー:天野和人、土本貴生
- アソシエイトプロデューサー:八木征志、堀川慎太郎
- キャスティングプロデューサー:福岡康裕
- 宣伝プロデューサー:寺嶋将吾
- 撮影:藤澤順一
- 照明:長田達也
- 美術:磯田典宏
- 装飾:平井浩一
- 録音:郡弘道
- 編集:菊池純一
- 記録:松澤一美
- 助監督:金田健
- VFXスーパーバイザー:野口光一
- タイトルデザイン:赤松陽構造
- アシスタントプロデューサー:吉野圭一
- プロデューサー補:島根淳
- 活動弁士監修:片岡一郎、坂本頼光
- 特別協力:マツダ映画社
- 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
- 配給:東映
- 企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
- 製作協力:東映東京撮影所
- 製作:「カツベン!」製作委員会(東映、木下グループ、テレビ朝日、ソニー・ミュージックエンタテインメント、電通、東映ビデオ、朝日新聞社、アルタミラピクチャーズ)
受賞歴[編集]
- 第43回日本アカデミー賞
- 優秀監督賞(周防正行)
- 優秀脚本賞(片島章三)
- 優秀撮影賞(藤澤順一)
- 優秀照明賞(長田達也)
- 優秀音楽賞(周防義和)
- 優秀美術賞(磯田典宏)
- 優秀録音賞(郡弘道)
- 新人俳優賞(黒島結菜)
- 第70回芸術選奨文部科学大臣賞
- 映画部門(長田達也)
脚注[編集]
- ^ “カツベン! 作品情報”. 映画.com. 2020年10月9日閲覧。
- ^ “「カツベン!」12月13日に公開決定、周防正行が北海道から全国キャンペーン開始”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2019年6月13日) 2019年8月30日閲覧。
- ^ a b c d “成田凌、周防正行監督作で映画初主演に抜てき ヒロインは黒島結菜”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年9月28日) 2019年8月30日閲覧。
- ^ 夢の巨匠対談が実現!映画『カツベン!』パンフレットに掲載
- ^ “【牛尾竜威】12月13日 映画「カツベン!」出演情報!”. オスカープロモーション. 最新ニュース (2019年12月13日). 2020年1月11日閲覧。
- ^ CHARM☆GROUP/チャームキッズの2018年11月14日のツイート、2020年1月11日閲覧。
- ^ a b “成田凌、周防正行監督4年ぶり新作で映画初主演! 黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾ら豪華布陣結集”. 映画.com. (2018年9月28日) 2019年8月30日閲覧。
- ^ a b c d “成田凌×周防正行監督『カツベン!』に池松壮亮、成河、酒井美紀、山本耕史が出演”. Real Sound (blueprint). (2019年7月23日) 2019年8月30日閲覧。
- ^ a b c d “『カツベン!』劇中無声映画キャストに城田優、草刈民代、上白石萌音ら”. CINRA.NET. (2019年8月29日) 2019年8月29日閲覧。
外部リンク[編集]
- 周防正行監督最新作 映画『カツベン!』公式サイト
- カツベン! - allcinema
- カツベン! - KINENOTE
- 映画『カツベン!』公式 (@suofilm) - Twitter
- 映画『カツベン!』公式 (katsuben1213) - Instagram
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