サイモン・ウィンチェスター

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サイモン・ウィンチェスター
SimonWinchester2014.jpg
サイモン・ウィンチェスター(2014年3月29日撮影)
誕生 (1944-09-28) 1944年9月28日(74歳)
イギリスの旗 イギリス
ロンドン
職業 ジャーナリスト著作家
最終学歴 オックスフォード大学
代表作博士と狂人英語版
世界を変えた地図英語版
公式サイト www.simonwinchester.com
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サイモン・ウィンチェスターOBE英語: Simon Winchester , 1944年9月28日 - )は、イギリスロンドン出身のジャーナリスト著作家ガーディアンの下で働いた時期に血の日曜日事件ウォーターゲート事件などの事件を取材した。

完成まで70年もの歳月を費やした「オックスフォード英語辞典」(OED)の編集主幹ジェームズ・マレーと彼に協力した狂人の関わりについて詳述した『博士と狂人英語版』(1998年)と、世界初の地質図を作成しながら晩年まで報われぬウィリアム・スミスの波乱の生涯に焦点を当てた『世界を変えた地図英語版』(2001年)は「ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト」入り書籍となっている。

生い立ち[編集]

ウィンチェスターはイギリスロンドンにて出生し、少年期はドーセットにある数校のボーディングスクールに通学した[1]アメリカ合衆国内をヒッチハイクしながら1年過ごした後[2]1963年地質学の勉強のためにオックスフォード大学セント・キャサリンズ・ カレッジ英語版に入学し、1966年に卒業した[1]。大学卒業後にカナダに本社を置く鉱山会社のファルコンブリッジ社英語版アフリカ支社に入社した彼はウガンダで地質学者として銅鉱床を探索する作業に携わるようになった[1]

経歴[編集]

ジェームズ・モリス英語版エベレスト初登頂英語版に成功したイギリス登山隊による1953年のエベレスト遠征英語版について詳述した『Coronation Everest』のコピーを読んだウィンチェスターはその直後にジャーナリストになることを決意する[1]

1969年からガーディアンで働くようになり、まず最初にニューカッスル・アポン・タインに拠点を置く地域特派員として、次いで北アイルランド担当の特派員となった[1]。北アイルランド時代のウィンチェスターは血の日曜日事件ベルファストにおける血の金曜日事件などの北アイルランド問題関連の事件も取材した[3][4]1971年にイギリスで起こった北アイルランドの報道をめぐる論争にも関与し、イギリス軍兵士によるバーニー・ワットの射殺を正当防衛によるものだとする見解を示した[5]

1972年バングラデシュ独立戦争を取材するためにカルカッタに特派員として数ヶ月派遣された後はワシントンD.C.でその後の4年間の大半を過ごし、第37代アメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンの辞任に繋がるウォーターゲート事件ジミー・カーターが第39代アメリカ合衆国大統領に選出される1976年アメリカ合衆国大統領選挙の取材も担当した[1]

ウィンチェスターはガーディアンを去った後にサンデー・タイムズで働いたが、1982年アルゼンチンによるフォークランド諸島進攻を取材した際にイギリスのスパイであると疑われて捕まり、囚人同然の生活を3か月間送った[6]BBCが1992年に放送したフォークランド紛争を取り上げたテレビ映画アン・ジェントルマンリー・アクト英語版』ではポール・ジェフリーがウィンチェスターを演じた[7]

1985年フリーランスライターとなり、香港を旅行した[1]。ウィンチェスターは旅行雑誌コンデナスト・トラベラー誌のアジア太平洋地域エディターに任命された[8]。その後の15年間でナショナルジオグラフィック誌やスミソニアン英語版誌などのいくつもの旅行雑誌のために取材活動を行った[6]

最初の著書『In Holy Terror』(1975年)では混乱極まるアルスターで取材を行った時期に遭遇したトラブルについて報告している[6]。3冊目の著書『Prison Diary』(1983年)ではティエラ・デル・フエゴでの自身の獄中生活について詳述している[6]

ウィンチェスターが最初に大きな成功を収めた著書は『博士と狂人英語版』(1998年)である。最終的に完成まで70年の歳月を費やすことになる「オックスフォード英語辞典」(OED)を編纂するプロジェクトを主導したジェームズ・マレーと彼に日々手紙を送り続ける謎の協力者ウィリアム・チェスター・マイナー英語版(その正体は精神病院に収容された狂人であった)の間の20年におよぶ親密ながら奇妙な関係を詳述し[9]、「ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト」入り書籍となった[10]。なお、1998年にメル・ギブソンがこの作品の映画化権を買い取ったが[11]、映画の製作はその後も開始されぬまま現在に至っている。

世界初の地質図を作成したものの、その業績が認められずに苦難の日々が続き、晩年になってようやく報われることになるウィリアム・スミスの波乱の生涯に焦点を当てた『世界を変えた地図英語版』(2001年)[12]は第二の「ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト」入り書籍となった[13]。その後はオックスフォード英語辞典を編纂する物語についての続編『オックスフォード英語大辞典物語英語版』(2003年)[14]、歴史上最悪の大噴火となった1883年のクラカタウの噴火が地球上に及ぼした影響を検証した『クラカトアの大噴火英語版』(2003年)[15]、アメリカ史上最悪の自然災害となった1906年のサンフランシスコ地震を地質学的な視点も含めて包括的かつ詳細に描いた『世界の果てが砕け散る』(2005年)[16]、生涯を通じて中国に魅了され続けたジョゼフ・ニーダム伝記『The Man Who Loved China』(2008年)[17]、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)の生涯や業績、『不思議の国のアリス』のモデルとなったアリス・リデルとの関係を描いた『The Alice Behind Wonderland』(2011年)[18]などの著書を発表している。

著書[編集]

  • In Holy Terror (1975年) (ISBN 978-0571106288)
  • American Heartbeat: Notes from a Midwestern Journey (1976年) (ISBN 978-0571108787)
  • Prison Diary, Argentina (1983年) (ISBN 978-0701127480)
  • Stones of Empire: The Buildings of the Raj (1984年) (ISBN 978-0192114495) - 写真を提供。著者はジャン・モリス英語版
  • Their Noble Lordships: Class and Power in Modern Britain (1984年) (ISBN 978-0394524184)
  • Outposts: Journeys to the Surviving Relics of the British Empire英語版 (1985年) (ISBN 978-0340337721)
  • Korea: A Walk Through the Land of Miracles英語版 (1988年) (ISBN 978-0135166260)
  • Pacific Rising: The Emergence of a New World Culture (1991年) (ISBN 978-0138077938)
  • Hong Kong: Here Be Dragons (1992年) (ISBN 978-1556702495) - リッチ・ブラウン、ジェームズ・マーシャルとの共著
  • Pacific Nightmare: How Japan Starts World War III : A Future History (1992年) (ISBN 978-1559721363)
    - 鈴木主税によって日本語翻訳『太平洋の悪夢 日本に再び原爆が投下される日』 (1992年) (ISBN 978-4870311190)
  • Small World: A Global Photographic Project, 1987-1994. (1995年) (ISBN 978-1899235056) - マーティン・パー英語版が写真を提供
  • The River at the Center of the World: A Journey Up the Yangtze, and Back in Chinese Time英語版 (1996年) (ISBN 978-0805038880)
  • The Surgeon of Crowthorne: A Tale of Murder, Madness and the Making of the Oxford English Dictionary (1998年) (ISBN 978-0670878628)
    - 鈴木主税によって日本語翻訳『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話英語版』 (1999年) (ISBN 978-4152082206)
  • The Fracture Zone: A Return to the Balkans (1999年) (ISBN 978-0670889556)
  • The Map That Changed the World: William Smith and the Birth of Modern Geology (2001年) (ISBN 978-0060193614)
    - 野中邦子によって日本語翻訳『世界を変えた地図 ウィリアム・スミスと地質学の誕生英語版』 (2004年) (ISBN 978-4152085795)
  • Krakatoa: The Day the World Exploded (2003年) (ISBN 978-0670911264)
    - 柴田裕之によって日本語翻訳『クラカトアの大噴火 世界の歴史を動かした火山英語版』 (2004年) (ISBN 978-4152085436)
  • The Meaning of Everything: The Story of the Oxford English Dictionary (2003年) (ISBN 978-0198607021)
    - 苅部恒徳によって日本語翻訳『オックスフォード英語大辞典物語英語版』 (2004年) (ISBN 978-4327451769)
  • Lonely Planet Simon Winchester's Calcutta (2004年) (ISBN 978-1740595872)
  • A Crack in the Edge of the World: America and the Great California Earthquake of 1906 (2005年) (ISBN 978-0060571993)
    - 柴田裕之によって日本語翻訳『世界の果てが砕け散る サンフランシスコ大地震と地質学の大発展』 (2006年) (ISBN 978-4152087850)
  • The Man Who Loved China: The Fantastic Story of the Eccentric Scientist Who Unlocked the Mysteries of the Middle Kingdom (2008年) (ISBN 978-0060884598)
  • Atlantic: Great Sea Battles, Heroic Discoveries, Titanic Storms,and a Vast Ocean of a Million Stories (2010年) (ISBN 978-0061702587)
  • The Alice Behind Wonderland (2011年) (ISBN 978-0195396195)
  • Skulls: An Exploration of Alan Dudley's Curious Collection (2012年) (ISBN 978-1579129125)
    - ニック・マンが写真を提供。堀口容子によって日本語翻訳『スカル アラン・ダドリーの驚くべき頭骨コレクション』 (2014年) (ISBN 978-4766125948)
  • The Men Who United the States: America's Explorers, Inventors, Eccentrics and Mavericks, and the Creation of One Nation, Indivisible (2013年) (ISBN 978-0062079602)

栄誉と帰化[編集]

ウィンチェスターは「2006年新年の栄誉リスト英語版」でジャーナリズム文学に対する貢献が称えられ、イギリス女王エリザベス2世より大英帝国勲章のオフィサー章を授与されている[1]

また、2009年10月にはオックスフォード大学セント・キャサリンズ・ カレッジの名誉フェローの称号を授与されている[1][19]

2011年7月4日の『コンスティチューション』号の式典に参加してアメリカ合衆国の市民権を獲得した[2]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i Simon Winchester Bio” (英語). Simonwinchester.com. 2015年4月26日閲覧。
  2. ^ a b Simon Winchester (2011年6月26日). “My Turn: Simon Winchester on Becoming an American Citizen” (英語). Newsweek.com. 2015年4月26日閲覧。
  3. ^ Simon Winchester (1972年1月31日). “13 killed as paratroops break riot” (英語). TheGuardian.com. 2015年4月26日閲覧。
  4. ^ Simon Winchester (1972年7月22日). “11 die in Belfast hour of terror” (英語). TheGuardian.com. 2015年4月26日閲覧。
  5. ^ Eamonn McCann. “The British Press and Northern Ireland「3 The Press & the British Army」” (英語). Ulster.ac.uk. 2015年4月26日閲覧。
  6. ^ a b c d Simon Winchester” (英語). BritishCouncil.org. 2015年4月26日閲覧。
  7. ^ An Ungentlemanly Act (1992 TV Movie) Full Cast & Crew” (英語). IMDb.com. 2015年4月26日閲覧。
  8. ^ Simon Winchester” (英語). RolfPotts.com. 2015年4月26日閲覧。
  9. ^ The Professor and the Madman” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  10. ^ The Surgeon of Crowthorne. A tale of murder, madness and the love of Words” (英語). Amazon.com. 2015年4月26日閲覧。
  11. ^ Mel Gussow (1998年9月7日). “The Strange Case of the Madman With a Quotation for Every Word” (英語). NYTimes.com. 2015年4月26日閲覧。
  12. ^ The Map That Changed The World” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  13. ^ The Map That Changed the World: William Smith and the Birth of Modern Geology” (英語). Amazon.com. 2015年4月26日閲覧。
  14. ^ The Meaning of Everything” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  15. ^ Krakatoa” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  16. ^ A Crack in the Edge of the World” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  17. ^ The Man Who Loved China” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  18. ^ The Alice Behind Wonderland” (英語). SimonWinchester.com. 2015年4月28日閲覧。
  19. ^ Honorary Fellows” (英語). StCatz.ox.ac.uk. 2015年4月26日閲覧。