サイレント津波

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サイレント津波(サイレントツナミ、Silent Tsunami)は、人類にとっての日々慢性的な脅威である貧困飢餓、食料価格の高騰(こうとう)、高い死亡率後天性免疫不全症候群(AIDS)、マラリア紛争等を意味する。21世紀初頭、ミレニアム開発目標(MDGs)のジェフリー・デヴィッド・サックス委員長が定義した言葉である[1]

ジェフリー・デヴィッド・サックス委員長による英語「Silent Tsunami」(サイレント・ツナミ)を「サイレント津波」と訳しているのは、日本国外務省外交官薮中三十二[2]、行政独立法人国際協力機構(JICA)理事長緒方貞子[3][4]らである。国際連合世界食糧計画(WFP)日本事務所は「静かな津波」と訳している[5]。他、「静かなる津波」[6]「沈黙の津波」[7]等に訳出されている。

概要[編集]

2004年スマトラ島沖地震[編集]

2004年12月、インドネシア西部スマトラ島沖で地震が発生(2004年スマトラ島沖地震)、地震が引き起こした津波(Tsunami)により22万人以上が死亡、500万人が被災者となった。

津波の翌月となる2005年1月、国際連合事務総長コフィー・アッタ・アナンの諮問機関であるミレニアム開発目標(MDGs)のジェフリー・デヴィッド・サックス委員長は、感染症、飢餓、死亡率等の「Silent Tsunami」への注意を喚起した。委員長は、アフリカで毎月約15万人が死亡しているマラリア等のサイレント津波は予防可能であるとし、サイレント津波に対し、スマトラ沖地震を端緒とする前月の津波災害時の支援に匹敵する支援の必要性を説いた。[1]

2005年世界経済フォーラム[編集]

2005年1月の世界経済フォーラムダボス会議)では、2004年12月の津波災害を踏まえ、津波被害で国際社会が示した援助を必要とするアフリカの貧困とAIDSに話題が集中し、「サイレント津波」という言葉で多くの有識者により語られた。サハラ砂漠以南のアフリカでは、半数の人々が1日1ドル以下の生活で、10人に1人は1歳未満で死亡、毎日数千人がAIDSで死亡するという状況での会議であった。

イギリスの首相アンソニー・チャールズ・リントン・ブレアは、アフリカでのAIDSや貧困による死亡を指摘し、同年イギリスで開催される第31回主要国首脳会議での最重要課題であると発言した。

フランスの大統領ジャック・ルネ・シラクは、飢餓と感染症、さらに暴力や暴動を「サイレント津波(静かな津波)」(フランス語: Tsunamis Silencieux、ツナミ・シランシュー)と明言、国際課税の検討を提言した。

日本の外務審議官薮中三十二(役職は当時)は、サイレント津波の現象に各国が支援額を大幅に増大する中、日本としても政府開発援助(ODA)の大幅増が必要であると、会議を振り返る。

会議と同時期、マイクロソフト社のウィリアム・ヘンリー・ゲイツ三世会長は、ワクチン支援としておよそ800億円の拠出を表明した。

- 以上「2005年世界経済フォーラム」の出典は脚注「 [2] [8] [9] 」による。

2005年アジア・太平洋地域エイズ国際会議[編集]

2005年7月、神戸市でのアジア・太平洋地域エイズ(AIDS)国際会議[10]で、国際連合エイズ合同計画(UNAIDS)は、現時点で800万人のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者がいるアジア太平洋地域での、今後5年間で600万人の感染回避への緊急対策を明かした。UNAIDSのアジア・太平洋地域事務所長J・V・R・プラサダ・ラオは、アジア・太平洋地域のAIDS問題を「静かな津波(サイレント津波)」であると認識を示した。[11]

2007年-2008年の世界食料価格危機[編集]

サイレント津波が再び大きく取り上げられたのは、2007年から2008年にかけての食料価格の高騰である(2007年-2008年の世界食料価格危機)。国際連合世界食糧計画(WFP)日本事務所によると、世界で8億5000万人の飢餓人口が、今回の食料価格高騰のあおりを受け、1億人以上増加した。WFP設立45年最大の危機であるという。ジョゼッテ・シーラン事務局長[12]は「静かな津波(サイレント津波)」として、人類の飢餓への警告を発表した。[5][13]

指標一覧[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b Tsunami 社団法人日本貿易会 常任理事 稲畑産業株式会社 社長 稲畑武雄 社団法人 日本貿易会(JFTC) 巻頭言 2005年3月号
  2. ^ a b (私の視点)アフリカ支援 サイレント津波にODAを 薮中三十二 2005.02.17 朝日新聞朝刊 14頁 オピニオン2 財団法人 日本国際交流センター(JCIE)世界基金支援日本委員会(FGFJ)
  3. ^ column I-1 「人間の安全保障」と貧困削減への新たな取組 - 国際協力機構(JICA)緒方貞子理事長 日本国外務省
  4. ^ 2005年 国際平和講演会『国際協力の現場から』講演(要約) テーマ「貧困への挑戦と国際平和」 国際協力機構理事長 緒方貞子 横浜市オフィシャルサイト
  5. ^ a b 食糧価格高騰 「静かな津波」に立ち向かう WFP日本事務所 食糧支援ニュースレター 2008年7月28日
  6. ^ 国際連合児童基金(UNICEF)の国内委員会である財団法人日本ユニセフ協会による。( www.unicef.or.jp/library/pdf/nenji08_01.pdf 「ユニセフ年次報告2008」)
  7. ^ Monthly Message(2008年6月) 世界を襲っている飢餓の津波 迫り来る「食料危機」に、今、問われる隣人としての生き方 NGO 日本国際飢餓対策機構(JIFH)
  8. ^ インド洋津波大惨事とその後の国際協力 国際協力機構(JICA)監事(前エチオピア大使)庵原宏義 財団法人 地球産業文化研究所(GISPRI) ニュースレター2005年2号
  9. ^ 世界経済フォーラム年次総会(衛星中継による大統領演説) 在日フランス大使館
  10. ^ ICAAP KOBE 2005 会議概要 第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議
  11. ^ HIV抗体検査どう促進 神戸・エイズ国際会議から 神戸新聞社 2005年7月13日
  12. ^ アメリカ合衆国経済・実業・農業担当国務次官
  13. ^ 食料価格の高騰が貧困国の子どもを直撃、国境なき医師団 フランス通信社 2008年4月26日
  14. ^ データはシカゴ・マーカンタイル取引所の一次資料ではなく、La Nación紙アルゼンチン)等による。

その他文献[編集]