サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ

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サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ
ビートルズ楽曲
収録アルバム サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
リリース 1967年6月1日
録音 アビー・ロード・スタジオ
1月19、20日
1967年2月3、10日
ジャンル サイケデリック・ロック
時間 02秒
レーベル パーロフォン
EMI
プロデュース ジョージ・マーティン
その他収録アルバム

レアリティーズ Vol.2

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 収録曲
A面
  1. サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
  2. ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ
  3. ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ
  4. ゲッティング・ベター
  5. フィクシング・ア・ホール
  6. シーズ・リーヴィング・ホーム
  7. ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト
B面
  1. ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー
  2. ホエン・アイム・シックスティー・フォー
  3. ラヴリー・リタ
  4. グッド・モーニング・グッド・モーニング
  5. サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (リプライズ)
  6. ア・デイ・イン・ザ・ライフ
  7. サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ

サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」(Sgt. Pepper Inner Groove)は1967年に発表されたアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の最終曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の最後の部分に収録された「犬にしか聞こえないほどの高音とビートルズによる意味不明のおしゃべり」である。

解説[編集]

「サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」という名前はオリジナル・タイトルではなく、ビートルズの公式発表曲でもない。1967年に発表されたアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は米キャピトルでも英国オリジナルと同じ曲目・曲順で発売されたが、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の後の部分だけはカットされていた。

1980年、米キャピトルが編集盤『レアリティーズ Vol.2』を発売した際にこのカットされていた『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の最後の部分を単独で収録した。その際に便宜的に付けられたタイトルが「サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」である。なお『レアリティーズ Vol.2』の日本盤の表記は「サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」であった。

構成[編集]

アルバムの最終曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の演奏終了後に、15キロヘルツの高周波の音が流れる。これは、ジョン・レノンの「犬を困らせてやろう」という発案により加えられた[1]。この音が鳴り終わった後、逆回転させた笑い声と「I never could see any other way,never could see any other way...」[2]と言う声、それに対してジョン・レノンが「Been so high」と返答する声が繰り返されるというもの[3]。この「I never could see any other way,never could see any other way...」は、気の利いた言葉が思いつかなかったために、「これ(同じ言葉の繰り返し)しか思いつかなかったんだよ」と、自己申告しているものと訳すことが出来るという。ポール・マッカートニーはこの無限ループを「マントラのようなもの」と語っている。

ポールによると、この「超高音と意味不明のおしゃべり」は、演奏終了後針を戻さない限り永遠に最後の溝の部分(ランアウト・グルーヴ)に針が当って雑音を出し続けるアナログ盤プレーヤーのデメリットを逆手に取り、その最後の溝の部分におまけとして音声を入れようというジョン・レノンの発案によって始められた。録音が行われたのは1967年4月21日。発案からすぐにレコーディングが開始された(10分もかからなかったと言われている)。2トラックテープの両面に1回ずつ計2回録音され、切り刻んで1本のテープにまとめた後、逆回転して仕上げたという。ポールは「(レコードはもうこれでお終いという意味での)『これ以上はもうないよ』を逆回転したもの」と証言している[4][5]

ミキシング[編集]

ランアウト・グルーヴへの音声挿入は78回転のSPレコード時代にはたびたび行われていたが、1967年にはその作業工程ももうすっかり過去の物となっていたため、英国EMIのディスク・カッターにとってはまったく未知の作業であり、アルバム中で最も困難を極めたという。イギリス盤LPでは、針を戻さない限り永遠に続く。なお、日本盤LPではランアウト・グルーヴではなく「本溝」部分に刻まれたため、1回のみで終了する。

1987年の初CD化時には、プロデューサーのジョージ・マーティンは「意味不明のおしゃべり」が十数回続いたのち(約23秒程)フェード・アウトする手法を用いて、ビートルズが行った実験を後世に残している。CDでは20kHz以上の音は切り落とされるため、最初の超高音は人の耳に聴こえるように意図的に加工してある。

影響[編集]

このエンドレスで繰り返される意味不明の言葉は当時様々な憶測を呼び、これを単なる遊び心に満ちた実験ととらえていたビートルズの思惑を超えていった。

たとえば、「『サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ』を逆回転するとポール死亡説のキーとなる言葉が現れる。」といったものから、ビートルズ・マニアとして知られるシャロン・テート事件を起こしたチャールズ・マンソンが、このおしゃべりに勝手な解釈を施し、ビートルズが殺人の啓示を与えたと思い込んだということもあった。また、「サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」の喋りの部分のループを逆回転させると、「I was fucking like'n Superman - スーパーマンのように犯してやる」と聞こえるという指摘もある[6]

脚注[編集]

  1. ^ Womack, Kenneth (2007). Long and Winding Roads: The Evolving Artistry of the Beatles. Continuum. p. 182. ISBN 978-0-8264-1746-6. 
  2. ^ 香月利一著『ビートルズソング研究読本』
  3. ^ Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians: Revolver Through the Anthology. Oxford University Press. p. 122. ISBN 978-0-19-512941-0. https://books.google.com/books?id=eTkHAldi4bEC. 
  4. ^ マーク・ルイソン著『ビートルズ・レコーディングセッション』
  5. ^ ポール・マッカートニー著 『MANY YEARS FROM NOW』
  6. ^ Julien, Olivier (2008c). “'A lucky man who made the grade': Sgt. Pepper and the rise of a phonographic tradition in twentieth-century popular music”. In Julien, Olivier. Sgt. Pepper and the Beatles: It Was Forty Years Ago Today. Ashgate. p. 164. ISBN 978-0-7546-6708-7. https://books.google.com/books?id=vZ-SB57WBo8C.