スタニスラフスキー・システム

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スタニスラフスキー・システムStanislavski System)は、ロシア・ソ連の演劇人(俳優演出家コンスタンチン・スタニスラフスキーが提唱した演技理論。その背景には、フロイト心理学の影響があると言われる。

リアリズム演劇を本格化させるため提唱された理論で、1934年ソヴィエト連邦によって公認された。20世紀の演劇人たちに多大な影響を与えた。

システムの原形は1911年に確立し、ネミローヴィチ=ダンチェンコがこれを正式なモスクワ芸術座の稽古方法にした。また、モスクワ芸術座団員であったリチャード=ボレスラフスキーとマリア=ウスペンスカヤが1923年に実験室劇場という学校をつくったため(モスクワ芸術座の理論の劇団をアメリカに作るためか、とリーはいう)リー=ストラスバーグはそこで学び、後のメソッド演技法へとスタニスラフスキーシステムの理論が受け継がれていく。この考えに忠実だった著名な映画俳優マーロン・ブランドがあげられる。

システムの概要[編集]

内面に向かい:心と想像力で役の人物の思想や感情を作る


外面に向かい:内面で作り上げたものを身体で表現

これを基本とし、演技は技の組み合わせであるためそれぞれ分けて練習していく。


1.身体行動


・心を開くことと筋肉の弛め→緊張に気づく、自分でどこが緊張しているか気づけるように、バランスと重心を意識

・特殊な動作を行う時の正しい筋肉の使い方を意識

・複数で協力し合う行動

・目的と正当化→体の状態、姿勢は目的をこしらえることで正当化

・行動→有機的行動(習慣的な動作)に気づく


   心理的に単純な行動と‐‐‐‐複雑な行動 (例)部屋を掃除すること‐‐‐‐突然亡くなった親友の部屋の掃除をする

                                 



2.精神行動

・焦点と集中力→五感を使った集中練習、複数の対象への集中、生活を観察することは創造の源泉

・想像力→劇の始まる前を想像

・サブテキスト→内面のモノローグ(こころの中で体験する考え方、誰かしゃべってる時、会話中の間)、内的イメージ(こころの中で見る画像)    例)家はどんな家か

・情緒の記憶→(五感の)過去の経験に基づく記憶を起こすはずの状況を即興でやってみる=自分自身の人生体験を思い起こすことで感情、反応が深められる

     

    

3.心と体   =連動する

・心理的状態が行為や行動に与える影響

・体の状態が心理的行動に与える影響

・個人の生活環境が行動に与える影響

・外からの刺激が行動に与える影響(音など)



4.相互作用

・コミュニケーションの基本要素→内容、感情や考え、手段、対象

・コミュニケーション行為の構造→相手を選ぶ、相手に注意を集中してこちらに相手の注意をひく、相手をみてその人がどういう精神状態にあるのか、声や仕草や表情豊かに自分の思いを伝える  

・コミュニケーションの形態→身振り、 精神性(まっすぐ伝わっている時は大概目を見ている時 スタニスラフスキー:放射とよんだ)

・適応→相手にあわせる

・テンポ・リズム→外(動き)と内(心)の

・言語行動→句読点、間、強勢

・身体的な役作り  例)違ったやり方で歩く

・正当化→その人の外側だけでなく、生活全般から来る根拠からの特徴を正当化

・総合した演技行動→超課題(課題のゴール)、一貫した行動←→反射行動 (例 ヒーロー←→悪役)

⇒上演になじむ体の状態     [1]

フロイトとの関係[編集]

スタニスラフスキーシステムは人の心理面に働きかける演技法であるため、フロイトとの関係があると言われる。両者ともに即興による効果を指摘し、スタニスラフスキーの即興は負荷をもつ記憶を再活性化することに限定したのに対しフロイトは患者を治療するため経験(=過去)を喚起することにつとめた。また他にも演劇による精神治療を目的としたJ・L・モレノサイコドラマとの関係も指摘される[2]

日本語文献[編集]

  • コンスタンチン・スタニスラフスキー俳優の仕事 第一部 俳優教育システム』 岩田貴、堀江新二浦雅春安達紀子訳、未來社2008年6月30日、574ページ(日本語)。ISBN 978-4-624-70090-4。ASIN 4624700902
  • コンスタンチン・スタニスラフスキー 『俳優の仕事 第二部 俳優教育システム』 堀江新二、岩田貴、安達紀子訳、未來社、2008年10月30日、654ページ(日本語)。ISBN 978-4-624-70091-1。ASIN 4624700910
  • コンスタンチン・スタニスラフスキー 『俳優の仕事 第三部 俳優の役に対する仕事』 堀江新二、岩田貴、安達紀子訳、未來社、2009年7月15日、476ページ(日本語)。ISBN 978-4-624-70093-5。ASIN 4624700937
    ※旧版山田肇訳『俳優修業』(同社で1975年5月に翻訳出版)、第一部(ISBN 978-4-624-70023-2)/第二部(ISBN 978-4-624-70024-9)。山田訳はアメリカ版(英訳)からの重訳であったが、新訳版は、原著たるロシア語版より訳され、山田訳では収録されなかったエピソードも追加され、また割愛されていた原註および草稿も訳出された。
  • グリゴーリイ・クリースチ 『スタニスラーフスキイ・システムによる俳優教育』野崎韶夫、佐藤恭子訳、白水社1971年
  • ジーン・ベネディティ 『演技 創造の実際 スタニスラフスキーと俳優』高山図南雄、高橋英子訳、晩成書房、2003年
  • ジーン・ベネディティ 『スタニスラフスキー入門』松本永実子訳、而立書房、2008年
  • リー・ストラスバーグ『メソードへの道』 劇書房 1989年
  • ジェイコブ・レヴィ・モレノ『サイコドラマ 集団精神療法とアクションメソッドの原点』 白揚社 2006年

脚注[編集]

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  1. ^ 『演技 創造の実際 スタニスラフスキーと俳優』. (2003年). 
  2. ^ サイコドラマ 集団精神療法とアクションメソッドの原点. (2006年). 

関連項目[編集]