スターティング・ハンドル

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1948年式ブリティッシュ・ユナイテッド・トラクション英語版(BUT)・9641T英語版(ロンドン交通博物館所蔵)のエンジン・ルーム英語版に収められたスターティング・ハンドル。

スターティング・ハンドル (: starting handle) は、運転者が腕の力を使って内燃機関を始動するための機構であり、エンジンクランクシャフトを手回しするためのクランク型の金属棒(ハンドル)そのものを示す用語でもある[1]。主に自動車用エンジン英語版で用いられていた機構であるが、小型船舶第二次世界大戦前後の戦車航空機用レシプロエンジンでも用いられていた[2]

英語圏ではハンド・クランクドイツ語版(: hand crunk[2]クランキング・ハンドル(: crunking handle)、日本では単にクランク棒と呼ばれる場合もあり[3]旧日本軍などでの日本語訳としては始動転把(しどうてんぱ)という名称[注釈 1][4][5]が用いられた[6]

なお、スターター・ハンドル(: starter handle)と呼ばれる場合もあるが、この呼称は今日では小型の汎用エンジン始動装置英語版である、リコイル・スターターの構成部品(ロープの先端に取り付けられたT字型の握把)を示す場合の方が多い事に留意されたい[7]

概要[編集]

スターティング・ハンドルは、エンジンのクランクシャフトの先端にクランク型の棒を差し込み、クランクシャフトを直接回転させることでエンジンを始動させる、人力のエンジン始動装置である。人力による始動という意味ではオートバイにおけるキック・スターターと同じだが、キック・スターターはエンジンに固定されたペダルである事がほとんどで、その操作を足で行うのに対して、スターティング・ハンドルはその操作を腕で行う。

1917年式フォード・モデルTのエンジン英語版の模式図[8]。スターティング・ハンドルはクランクケースと一体化した台座に取り付けられ、コイルばね英語版によりスターター・ドッグから引き離すばね圧力が常時掛けられている。
スターティング・ハンドルの一例、フォードソン英語版トラクター(スコットランドA74(M74)自動車道英語版グレトナ・グリーン・サービスエリア英語版所蔵)

スターティング・ハンドルの実装形態は、1920年代前後は車体やエンジンなどに固定装備として取り付けられており、フロントグリルに常時ぶら下がった形態であったが、1930年代に入るころには着脱式となり、ホイールナットレンチ等の車載工具と共に(あるいはホイールナットレンチやジャッキハンドルとの共用部品として)車両に備え付けられる予備装備となっていった。日本車では、1965年前後頃まではスターティング・ハンドルが車載工具として備え付けられていた例が多かったが、1970年代には姿を消していった[9]。農業用トラクターなどでは、カー・ウインドウの窓ガラスを手動操作するレギュレータ・ハンドルドイツ語版に似た、ごく短いスターティング・ハンドルが用いられている事が多かったが、変わったところではポーランドウルスス・ファクトリー英語版製トラクターは、ステアリング・ホイールをコラムシャフトごと車体から引き抜いてスターティング・ハンドルとしても利用する[注釈 2]という形態が採られていた[10]

腕力による始動という意味では汎用エンジンにおけるリコイル・スターターと同じだが、リコイル・スターターはクランクを回転させるためにを用いており、プーリー[注釈 3]を介することで1回の始動操作でエンジンの出力軸が数回転するように回転力が増速されているが、スターティング・ハンドルは多くの場合クランクシャフトと等速回転しかしないため、エンジンが始動しにくい場合、オペレーターはハンドルを何回転も回し続けなければならない。

1908年式ホルスマン英語版ハイ・ホイーラー英語版のスターティング・ハンドル。ハンドル側の噛み合い部にもドッグクラッチを用いている例。

スターティング・ハンドルとクランクシャフトの連結部には、噛み合いクラッチ機構[11]が用いられており、一般的にはスターティング・ハンドルの軸先端に横棒を差し込んでT型とし、クランクシャフトの末端にコの字型の切り込みを入れて先端同士を噛み合わせる事で駆動力の伝達を行っている場合が多い[12]

大雨の中、スターティング・ハンドルでのエンジン始動を試みる女性(1926年8月撮影)。スターティング・ハンドルでの始動は、腕力の弱い女性にとっては大変な危険を伴う重作業であった。

通常、クランクシャフトの先端にはクランク・プーリー英語版が取り付けられている事が多いため、プーリーの固定ボルトをスターティング・ハンドルの差込口付きのボルトに交換する[13]ことでスターティング・ハンドルでの始動機能が実装される。こうしたエンジン側の受け口は、スターター・ドッグ(: starter dog)や[13]スターター・ジョー(: starter jaw)[14]などの名称で呼ばれている。スターター・ドッグの前方にラジエーターバンパーが存在する場合は、スターティング・ハンドルが差し込める穴が予め開けられている必要もある。

なお、ねじ式ジャッキも同じような形状のハンドル・バーを用いているものが多いが、スターティング・ハンドルはねじ式ジャッキと異なり、コの字型の切り込みが螺旋を描くように刻まれている(スパイラル・ポジティブ・クラッチ[15])。これは、スターティング・ハンドルで回転出来る方向を1方向に制限して、クランクシャフトが逆に回転する事を予防するフール・プルーフ英語版の効果と、エンジンの始動に成功してクランクシャフトがスターティング・ハンドルよりも高速で回転し始めたとき、自動的に噛み合いが外れて共回りする事を防ぐワンウェイクラッチとしての効果を持たされている[15]。スターティング・ハンドル、クランクシャフト双方の先端をドッグ・クラッチ英語版形状とする場合もあるが[12]、この場合も双方の噛合部は螺旋形状とする事で、ワンウェイクラッチとしての効果を持たされている[15]1910年代頃の自動車では、スターティング・ハンドルでのエンジン始動には運転席でチョーク弁アクセルペダルを微調整する運転手の他に、スターティング・ハンドルを回す作業員の2名の人員が要求された。この作業員は運転助手(うんてんじょしゅ)と呼ばれており、運転助手が座っていた座席は助手席[注釈 4]、運転助手がスターティング・ハンドルを回す際に着用した厚手の手袋を入れていた小物入れはグローブボックスとして、今日の自動車にもその名を残している。なお、運転助手は基本的に腕力が強い事が要求されたため、運転助手に女性はほとんど存在しなかったとされる[16]

利点と欠点[編集]

ハンドル有り
スターティング・ハンドルが差し込まれた1951年式A40デヴォン。
ハンドル無し
スターティング・ハンドルを外した1949年式A40デヴォン。
スターティング・ハンドルの一例、オースチン・A40デヴォン英語版。バンパーにハンドルを挿入する穴が開いており、必要に応じてハンドルを差し込んで手動始動を行える設計である。
1957年式日産・C型エンジン
1957年式日産・C型エンジン英語版日産エンジン博物館所蔵品。
GAZ-21のM21直列4気筒エンジン
GAZが1956年から1970年に掛けて製造したGAZ-21英語版M21直列4気筒エンジン。
クランク・プーリーにスターター・ドッグを持つエンジンの例
1951年式シボレー・アドバンス・デザイン英語版・1屯積ダンプトラック。フロントグリルにスターティング・ハンドルを通す穴が開けられている。

スターティング・ハンドルはキック・スターターと同じように、作動に電力が必要なセルモーターとは異なり、人力のみで始動操作を行なうことができた。このため、点火プラグへの給電を鉛蓄電池に頼らないマグネトー方式を採用するエンジンであれば、バッテリーを搭載しないことも可能であり、キャパシター・ディスチャージド・イグニッション(CDI)のようにバッテリーを用いる点火装置でも、スターティング・ハンドルのみを装備してバッテリーの容量(重量)を必要最小限にすることも可能であった。また、セルモーターとスターティング・ハンドルの両方を装備していれば、万一セルモーターが作動しない場合の予備として、スターティング・ハンドルを使うこともできた。

しかし、スターティング・ハンドルはキック・スターターとは異なり、1911年チャールズ・ケタリングヘンリー・リーランドデイトン・エンジニアリング・ラボラトリーズ社(現・デルコ・エレクトロニクス)によって、実用的なセルモーターの米国特許を取得され[17]、1912年式キャデラック・モデル30英語版に採用されて以降、始動装置としては急速に廃れていってしまった。フォード・モデルTは1919年式まではスターティング・ハンドルのみを搭載していたが、1920年式でセルモーターが初めて標準装備され、米国以外でも主要な大衆車は概ね1920年代中にはセルモーターの標準装備を完了した。

1914年にセルモーターの自製に成功したボッシュによる解説では、1910年代後半よりセルモーターの開発や標準装備が急がれた要因の一つとして、欧米における自動車所有の傾向が大衆化し、お抱え運転手や運転助手の存在が必須であるショーファー・ドリブン・カーではなく、オーナー自らが一人で運転するドライバーズ・カーの需要が高まる中で、運転助手を雇えないオーナーの多くが「自力でエンジンを始動できない」トラブルに悩まされていた事例を挙げている[18]

1971年式4フルゴネット
1971年式4フルゴネット
1973年式4L
1973年式4L
ルノー・4のスターティング・ハンドル実装状況の変遷。1971年式(左)にはバンパーに穴があるが、1973年式(右)には穴が無い。

しかし、初期のセルモーターは消費電力や回転トルクといった性能面での信頼性が十分ではなかったため[注釈 5]1940年代まではスターティング・ハンドルが予備装備として車両に備え付けられて販売される事が珍しくなかったが、第二次世界大戦後の大衆車ではフォルクスワーゲン・タイプ1は1950年式[19]でスターティング・ハンドルの予備装備を廃止し、ルノー・4は1972年式にはバンパーからスターティング・ハンドルの差し込み穴が無くなっていた[20]ヒルマン・インプ英語版1976年シトロエン・2CV1990年の生産終了までスターティング・ハンドルを搭載し続けた。横置きエンジンBMC・ミニの場合、メーカーはスターティング・ハンドルでの始動を想定していなかったが、1960年代当時のイギリスは市井で販売されるバッテリーの品質があまり高くなかったため、複数のカー用品サードパーティーがミニにスターティング・ハンドルでの始動を可能にするためのカスタムパーツを販売していた[21]が、どの国の大衆車でも概ね1960年代を境にスターティング・ハンドルでの始動は車の機能から省略されていった。

1991年式ラーダ・ニーヴァ(VAZ-2121)。バンパーとフロントフェイスにスターティング・ハンドルを通す為の穴が設けられている[22]。1600ccのニーヴァはVAZ-2101VAZ-2103英語版VAZ-2106英語版などと共通のスターター・ドッグを持ち、極寒のシベリアでもスターティング・ハンドルを用いて始動が可能であった。

それでも、オフロード極寒冷地などの特殊な環境における最後の始動方法としてスターティング・ハンドルの予備搭載が継続された例もあり、レンジローバー・クラシック英語版は1986年式まで[23]三菱・ジープ1998年の生産終了まで[24]バンパーにスターティング・ハンドルの穴が残されていた。シベリアでの使用を想定されたラーダ・ニーヴァは、1600ccキャブレターエンジンが廃止される1993年式までは、極寒冷下におけるスターティング・ハンドルでの始動要領が取扱説明書に明記されており[25]、その後少なくとも1999年式まではバンパーにスターティング・ハンドルの穴が残されており[26]、キャブレター車であればスターティング・ハンドルでの始動が可能であった[27]

スターティング・ハンドルが予備装備としても備え付けられなくなった理由としては、セルモーターなどの電装系の信頼性が向上した事以上に、時には死亡事故に発展しかねないほどの重大な危険性が存在した事が挙げられる。歴史上の人物では、バイロン・J・カーターがスターティング・ハンドルでのエンジン始動に失敗した事による負傷が原因で死亡した人物として著名である。

スターティング・ハンドルでの始動操作(後述)の際、勢いが不足してハンドルが中途半端な位置で止まると、ピストンが圧縮上死点を越えられず、それまでの圧縮力が逆作用してクランクシャフトが逆転し、その力でスターティング・ハンドルが勢いよく逆回転する現象が起こる [28]。これを俗に「ケッチン[注釈 6][29]」「キックバック(Kick-back)」などと呼び、圧縮比が高いエンジンや、気筒あたりの排気量が比較的大きいエンジンほど、始動に要する腕力も強いことが要求され、同時にキックバック発生の危険性も高くなる。

スターティング・ハンドルにはスパイラル・ポジティブ・クラッチ構造が備えられており、エンジンが始動して従動軸側に当たるクランクシャフトの回転速度が駆動軸側に当たるスターティング・ハンドルの回転速度を越えると自動的に両者の噛み合いが外れるようになっているが、ひとたびキックバックが発生してクランクシャフトが逆回転を起こすと、駆動軸と従動軸が逆になるためにスターティング・ハンドルの手動回転速度がクランクシャフトの回転速度を上回らなければ、両者の噛み合いが外れなくなってしまう。その為、多くの場合スターティング・ハンドルはクランクシャフトとの噛み合いが外れないまま高速で撥ね上げられ、オペレーターの上半身に衝突する事で骨折脱臼などを含む重大な傷害を引き起こすことになる[30]

前腕橈骨を骨折する様態の一つである「橈骨茎状突起骨折」は、別名「ショーファー骨折」とも呼ばれるが[31]、これは交通事故の際にステアリング・ホイールのキックバックによるものの他、スターティング・ハンドルによる始動の際のキックバックも主要な原因の一つであった事に由来する[16]上腕の骨折[32]橈骨遠位端骨折(手首骨折)や、肩関節脱臼英語版などもスターティング・ハンドルでの典型的な負傷の一つであった。

また、スターティング・ハンドルを握る際に親指をハンドル・バーに掛けるように握ると、キックバックの際に親指が外側に強く引かれてしまうため、母指MP関節靱帯損傷英語版、所謂スキーヤーズ・サムを引き起こしやすくなる。これを防ぐためには、親指をスターティング・ハンドルに掛けずに握る、所謂モンキー・グリップドイツ語版を励行する必要もあった[33]

通常、点火時期は始動時には圧縮上死点付近かそれよりもやや遅らせ気味にする(遅角させる)事が多く、フォード・モデルA(1927–31年)英語版などの戦前の自動車や[34]農業用トラクターなど[35]では、手動で点火時期を調整できる機構が備えられたりしていたが、こうした手動進角機構の操作ミスやディストリビューターやマグネトーのガバナーの故障、あるいは整備士の点火時期の調整ミスや経年使用に伴う調整の狂いなどで、点火時期が上死点より大きく早まった(進角した)ままの状態でピストンが圧縮上死点を越え損ねると、圧縮圧力の反発に加えて点火プラグの火花によって圧縮されていた混合気に引火してしまい、瞬間的に「エンジンの逆回転」が発生することで、スターティング・ハンドルの撥ね上がりがさらに高速になり、キックバックによる傷害がより深刻なものとなる場合もあった[36]。これを防ぐため、戦前の自動車の中には点火時期を正しく遅角させた状態でなければ、スターティング・ハンドルを車体に差し込む事が出来ない安全機構が備えられている車種も存在していた[37]

レーシングカートのエンジン始動(2007年)。レーシングカーの中にはセルモーターを持たない構造も見受けられるが、今日ではそのほとんどが写真のような手持ち式のセルモーターで始動を行う。

なおエンジンの構造の特性上、スターティング・ハンドルによるキックバックが発生した際の危険度が非常に大きいものは、キックバックに起因するエンジンの逆回転が1回転だけで終わらず、所定の停止操作を行うまで逆回転状態が継続し続ける事があり得る機械式噴射ポンプディーゼルエンジンと、リードバルブを吸気弁に持つ形式の2ストローク機関である。このような形式で、もしもスターティング・ハンドルでの始動中に逆回転状態でエンジンが始動してしまうと、スターティング・ハンドルとクランクシャフトの連結が外れないまま、ハンドルが高速で逆回転し続けることとなる[38]

圧縮比が非常に高い大型ディーゼルエンジンを搭載した車両では、スターティング・ハンドルによる人力での始動は大変な難作業であった為、小型のガソリンエンジンの力を用いてクランクシャフトを回転させる、航空機におけるハックス・スターター(後述)に類似した始動装置も用いられた[39]。 また、フォーミュラ1[40]インディ・カー[41]などのフォーミュラ・カーレーシング・カートなどのモータースポーツ用エンジンでは、軽量化の為にセルモーターが搭載されておらず、クランク・プーリーなどにスターター・ドッグが取り付けられている場合があるが、非常に高い圧縮比の為にスターティング・ハンドルによる人力での始動作業は現実的ではない事から、手持ち式のセルモーターを用いて始動を行っている。エンスージアストによるDIYレストアでは、このレース用の手持ち式セルモーターの概念を応用して、スターティング・ハンドルの代わりに電動式ドリル英語版スクリュー・ガン英語版を用いてエンジンの始動を行う例も見受けられる。

エンスージアストによる工作事例では、航空機などで用いられていた慣性始動装置(後述)を手持ち式として複製し、シトロエン・11CVトラクシオン・アバンのスターター・ドッグに噛み合わせて始動装置として用いている例もある[42][43]

一般的な操作方法[編集]

1908年式ブラッシュ・モーターピックアップトラックのスターティング・ハンドルでのエンジン始動。縦置きエンジン後輪駆動車の場合、通常はこの様に運転助手と運転手が共同でエンジンの始動操作を行った。角材を車止めの代用として車両の逸走を予防している点にも注目されたい。
1912年式インターナショナル・ハーベスター英語版オート-ワゴン英語版のスターティング・ハンドルでのエンジン始動。横置きエンジンの場合、車体側面からスターティング・ハンドルを差し込むことになる。
フォード・モデルTのスターティング・ハンドルでのエンジン始動。なお、無事に始動できてはいるが、操作員のハンドルの握り方は親指をバーに掛けており、本来は禁忌とされるものである事に留意されたい。
農業用トラクターでのスターティング・ハンドルでのエンジン始動。なお、操作員のハンドルの握り方は親指をバーに掛けている上に、野球のバットを握るように順手と逆手の両方で握るという、絶対的な禁忌を二つとも犯しているものである事に留意されたい。
フォード・モデルTを駆り、リオ・デ・ジャネイロからワシントンD.C.までの15,000マイルを9年掛かりで走破した3名のブラジル人技師を迎え、車体のスターティング・ハンドルを手にする駐米ブラジル大使英語版オズヴァルド・アラニャ英語版(1937年)。アラニャ駐米大使のハンドルの握り方は親指をバーに掛ける禁忌を犯しており、充分な知識が無い人間に、安易にスターティング・ハンドルによる手動始動を実施させてはいけない事を示す典型的な一葉であるとも云える。
オースチン・7・チャミィ・ツアラーのエンジンをスターティング・ハンドルで始動を試みるオーストラリア乳幼児(1928年クイーンズランド州カブルチャー)。なお、この写真のように乳児子供に安易にスターティング・ハンドルによる手動始動を実施させる行為も絶対の禁忌である事は云うまでもない。
自動車骨折のX線写真
自動車骨折のX線写真。コーレス骨折との差異として、「手首の変形が無く、捻髪音英語版聴診が困難で、手首の機能障害が限定的」である事をあげており、コーレス骨折とは明確に区別すべきである事。予防策として「スターティング・ハンドルの操作手順に細心の注意を払う事」の2点が提言されている。
自動車骨折のスケッチ
自動車骨折のスケッチ。このスケッチは転倒時にを地面に強く突いた際に受傷しやすいコーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)との病態の差異を説明する目的で掲載された。
米国の医学雑誌英語版『インターステート・メディカル・ジャーナル(IMJ)』1909年版に掲載されたスターティング・ハンドルのキックバックが原因の「自動車骨折(橈骨茎状突起骨折)」のX線撮影スケッチ
スタンダードフライング・12ドイツ語版をベースとしたティリー英語版のエンジンを、スターティング・ハンドルにて始動を試みる英国婦人補助空軍(WAAF)の女性兵士(ベッドフォードシャーカーディントン英語版1939年-1945年)。本稿で引用した写真の中で、唯一彼女のみが「親指を人差し指に添えて4指で握る、理想的なモンキー・グリップを励行している」点に注目されたい。

実際に後述の操作方法を試みる前に、下記の2点について十分に理解しておく事が望ましい。

  • セルモーター装備で、スターティング・ハンドルが予備装備とされている車種の場合は、セルモーターでの始動に失敗する原因はバッテリーの劣化やバッテリー上がりが殆どで、稀に極度の高湿度による燃料系統や点火系統の不調が要因であるケースが見られる程度であるため、可能な限り救援車によるブースターケーブルでのセル始動(ジャンプ・スタート)や、それが難しい場合でも周辺の人員に作業助手としての助力を依頼して車両を押してもらったり、下り傾斜を利用した空走の勢いを利用する押しがけでの強制始動の実施(バンプ・スタート)を試みる事を基本とし、スターティング・ハンドルでの始動は飽くまでも最終手段である事を理解しておくのが重要であるとされる[33]1990年代までスターティング・ハンドルの予備搭載を続けたラーダ・ニーヴァですら、公式にはハンドルの使用は後述のコールド・スタート・クランキングの操作を行うまでに留めており、摂氏マイナス25度を下回る気温であったとしても、始動自体はセルモーターで実施する事を原則としている[25]
  • また、スターティング・ハンドルによる手動始動はどのような場合であっても、胴体や四肢の損傷、眼球の損傷、四肢の骨折、各種の創傷擦過傷打撲といったリスクと常に隣り合わせの行為である事を深く認識し、厚手のオーバーオールや手袋、頑丈なゴーグル安全靴などの着用で身体を保護してから望むこと、充分な始動訓練を受けていない人間に、安易にスターティング・ハンドルによる手動始動を実施させてはいけない事も理解しておく必要があるとされる[44]

エンジンの形式に関わらず、スターティング・ハンドルによるエンジンの始動操作はおおむね次の通りである。

  1. 平坦な位置で車両や機器を停止させ、周囲(特にスターティング・ハンドルの回転方向と直列する位置)に第三者がいない事を確認する[38]
  2. 変速機を中立(ニュートラル)としてサイドブレーキを掛け、車両の空走の予防を図る[33]。場合によっては車止めも併用する。
  3. ガソリンエンジンの場合はイグニッション・スイッチ英語版を切った状態、ディーゼルエンジンの場合はデコンプ機構を開いた状態にしておき[45]、「エンジンが絶対に始動しない」状況を作った上で、スターティング・ハンドルでクランクシャフトを数回回転(クランキング)させ、オイルポンプによりエンジン内にエンジンオイルを行き渡らせる(コールド・スタート・クランキング)。キック・スターターにおけるコールド・スタート・キックと同じ操作であり、多くの場合はエンジンオイルが行き渡る毎にクランキングに必要な力が軽くなっていく[9]
  4. ガソリンエンジンの場合は燃料コックを開け、点火時期を手動調節出来る車両の場合は点火時期を遅角させ、必要ならティクラーやチョークを効かせておく[34]。機械式燃料ポンプの手動操作が可能な場合には、手動レバーを操作して燃料を十分にフロート室に送り込み[25]、キャブレターに加速ポンプが付いている車種の場合は、アクセルペダルを強く踏みつけてインテークマニホールド内に燃料を噴射する[9]。ディーゼルエンジンの場合にはグロープラグの予熱を十分行うといった事前操作を確実に行なっておく。
  5. ガソリンエンジンの場合はスターティング・ハンドルをゆっくり回していき、単気筒エンジンの気筒、多気筒エンジンならいずれかの気筒の圧縮上死点までクランクシャフトを回しておく。上死点に近づくとハンドル・バーは次第に重くなり、到達した状態では軽く引く程度ではハンドル・バーは容易には動かなくなる。この時、スターティング・ハンドルのクランクが真下(6時の位置)を向いた状態で停止していることが望ましい[9]
  6. ガソリンエンジンの場合はイグニッション・スイッチを入れる。古い車両の場合には点火警告灯の点灯を目視確認する。燃料ポンプが電動式の場合はキャブレターのフロート室が燃料で満たされてポンプが停止するまで待つ[33]
  7. ガソリンエンジンの場合はスターティング・ハンドルを12時の位置に向けて一気に引き上げる[9]。ディーゼルエンジンの場合にはスターティング・ハンドルを勢いよく何回も回転させながら、クランクシャフトの回転に速度が付いたところでデコンプを一気に閉じる[46]
  8. エンジンが始動したら速やかにスターティング・ハンドルを引き抜く[38]。スターター・ドッグはエンジンが始動すればスターティング・ハンドルとの噛み合いが自動的に外れる構造ではあるが、稀に噛み合いが外れない事故が発生する事例も存在する為である。こうなった場合、スターティング・ハンドルはクランクシャフトと共に高速で回転しつづけたり[47][48]遠心力で噛み合いが外れた結果、あらぬ方向にハンドルが吹っ飛んでいく危険性がある[44]
  9. エンジンの安定した回転を確認した後は、チョークを戻し、点火時期を適正に進角させた後に運転や作業に移行する[34]

以下は操作上の注意点など。

  • 初めに、始動操作員の命を守る為にも絶対に守らねばならないのは以下の2点である[49]
    • 親指の致命的な負傷を防ぐ意味でも、スターティング・ハンドルを握る際には絶対に親指を掛けて握ってはならない。親指は人差し指に添えて四指で掴む、モンキー・グリップを励行する[33]
    • 始動(ホット・スタート・クランキング)の際には、必ずスターティング・ハンドルを「下から上に引き上げる」ように操作し、「上から下に押し込む」方向に力を掛けて操作することは絶対にしてはならない。後者のような操作を行った場合、上半身をスターティング・ハンドルに覆い被せるような格好で力を掛けねばならないため、万一キックバックが発生した場合、逆転したスターティング・ハンドルが上半身を直撃する事になってしまう為である[49]
      • 掌を掛ける向きは、理想的には重量挙げクリーン・アンド・ジャーク英語版のように、「スターティング・ハンドルを上から掴んで引き上げる」順手での動作を行う事が望ましいが、始動操作員の腕力の都合上順手での引き上げ動作が難しい場合には、「親指を人差し指の付け根に密着させた上で、スターティング・ハンドルの下から掌と親指をバーに添えて持ち上げる」動作を行うようにする。逆手で掴む場合でも後者のような姿勢であれば、万一キックバックが発生した場合でも掌が弾かれるのみで済む[49]
      • トラクター等のようにスターティング・ハンドルの取っ手が短く、両手での保持が出来ないような場合には、利き手を用いて「順手でスターティング・ハンドルの下から掌と親指をバーに添えて持ち上げる」操作を行うことが推奨されている[50]。片手でしか保持できないハンドルの場合、利き手と反対の手でバンパーやボンネットなど、車体の頑丈な部分を保持して確実に利き腕の腕力を発揮できる姿勢を取る必要もあるが、1920年代以前の自動車はフロントグリル自体がラジエーターであるケースも多かったため、掌の火傷を防ぐ意味でも厚手の革手袋等が必要であった[51][52]
      • 排気量が大きいランドローバー・シリーズ英語版の例では、右利きの場合には10時から12時の位置にスターティング・ハンドルを位置させた上で(ハンドルのクランクが上向きになる)、スターティング・ハンドルの右側に立ってハンドル・バーを掴み、2時方向に一気に引き寄せる方法が推奨されている[53]左利きの場合には5時から6時の位置にスターティング・ハンドルを位置させた上で(ハンドルのクランクが下向きになる)、ハンドル・バーの左側に立って7時方向に引き寄せる形となる。十分にエンジンが暖気出来ている場合の再始動では、6時の位置から上方に引き上げるだけで始動できるとされているが、この車種の場合でも基本的には「ハンドル・バーを引く」動作で始動することが重要で、決して「ハンドル・バーを押す」動作を行ってはならないとされる[54]
      • エンジンの回転方向を事前に確認しておき、時計回りの場合には差し込んだスターティング・ハンドルに対して左側、反時計回りの場合はスターティング・ハンドルに対して右側に立って引き上げ動作を行う。こうした位置取りであれば、万一キックバックが発生してハンドルが吹き飛んだ場合でも、自分自身への直撃だけは避けられる可能性が高い。間違っても、スターティング・ハンドルの回転半径内に胴体を晒した姿勢で操作を行ってはならない。
      • クランクシャフトの出力軸が始動操作員のよりも高い位置にあるトラクターのような車両の場合、クランクシャフトの回転軸と平行になるよう、スターティング・ハンドルの側面ではなく、正面側に横向きに立つ位置取りを選択する場合もある。このような車両でキックバックが発生した場合、スターティング・ハンドルの側面側に立っていると、頭部にハンドル・バーの直撃を受ける危険性が高いためである[55]
      • 何れの例においても、両手でハンドル・バーを掴む際には順手・逆手[56]を問わず鉄棒を掴むように両手の甲の向きを揃えて掴むことが重要である。間違っても、野球バットテニスラケットを握るように、「順手と逆手を組み合わせて掴む(opposing grip)」事は絶対行ってはならない[44]
  • ディーゼルエンジンの場合には、デコンプを閉じる直前までの空転操作は力を込めて勢いよく回し続ける事が重要である。回転速度が中途半端な場合、デコンプを閉じた瞬間に圧縮圧力によるキックバックが発生し、最悪の場合はそのままエンジンの逆転が始まってしまう為である。ディーゼルエンジンが逆転した場合、吸気口から排気煙が出てくるため、仮に始動に成功した場合でも排気管から正常に排気煙が出ているか」を必ず目視確認してから運転や作業へ移行する事。万一逆転状態のまま機器の運転を始めると、変速機の指示方向と実際の動作が逆転してしまう為大変危険である[38]
  • 何度も始動に失敗して体力を浪費するのを防ぐ意味もあり、始動性を高める目的で冷間始動でなくてもチョークなどを効かせる場合も多い[45]。ただし、温間時にチョーク弁を閉じると混合気が過濃となり、始動できない場合もある。
  • ピストンの圧縮上死点を探すのは、車種やエンジンによってその方法やコツが異なる。多くの場合はスターティング・ハンドルの操作力が重くなった位置、といった曖昧なものである為[33]、反復練習をして体感で覚える他無い。クランク・プーリーにはタイミングライト英語版による点火時期調整の為、上死点の位置を示す打刻がされている場合もあるので、練習の際にはこれを目視確認することも良い方法である。
  • キックバックを防ぐためには、スターティング・ハンドルを引き上げる際には力を込めて、一気に引き上げる。エンジンの調整が万全な個体で、コールド・スタート・クランキングなどの予備動作を確実に行っていれば、クランクシャフトを半回転させるだけでも十分始動は可能である。
  • クランクシャフトの慣性重量が重い車種や、極めて低温の環境の場合はスターティング・ハンドルでのクランキングの力を少しでも軽減するために、クラッチペダルを踏み込んだままにしておくのも良い方法である[25]。特に平均気温がマイナス25度を下回る極めて厳しい寒冷地の場合、ラジエーターやフロントグリルに防寒カバー英語版を取り付けたり[25]、エンジンにブロック・ヒーター英語版(プレ・ヒーター)を取り付ける、エンジンオイルを十分に脱蝋処理英語版が施された低温流動性の高い防寒型のものに入れ替えておくなどの、十分な冬支度英語版を行っておくことも、クランキングを僅かでも軽くするためには必要な事である。
  • 数回以内のホット・スタート・クランキングで始動できなかった場合は、デコンプを操作するか、しばらく放置してシリンダー内の混合気が抜けるまで待ってから再挑戦する。キック・スターターのハーレー・ダビッドソンの例では、混合気がシリンダー内に大量に残っていると、混合気への引火を伴った強烈なキックバックが起こりやすくなる[57]とされる為である。また、再挑戦の際には面倒でもイグニッション・スイッチを切ってコールド・スタート・クランキングからやり直し、十分な圧縮圧力を確保してからホット・スタート・クランキングを再試行することが望ましい[53]
  • スターティング・ハンドルの操作は通常、始動操作員が全力を掛けて回す事が普通であるため、バンパーなどスターティング・ハンドルの軸受となる箇所にも大きな負荷が掛かりやすい。シトロエン・2CVのような小排気量の車種では、軸受部分の損傷を防ぐためにスターティング・ハンドルの中間部分を左手で掴みながら、右手でハンドル・バーを回す方法が推奨されている[58]
  • スターティング・ハンドルのT字シャフト部、スターター・ドッグの噛み合い部分は共に非常に強い力が掛かるために変形や偏摩耗を起こしやすい。両者のいずれかに異常な変形や摩耗が見られた場合には直ちに修正や部品交換を実施することが望ましい。仮に双方の段付き摩耗箇所同士が噛み合ってしまった場合、エンジン始動後もスターティング・ハンドルとスターター・ドッグの噛み合いが外れなくなってしまう恐れがある。
  • スターター・ドッグを脱着する際には、1番気筒が上死点となった際にスターティング・ハンドルが正しく6時付近の位置から回転させられるように、締め付け角度を考慮して取り付けることが望ましい。
  • フォード・モデルTなどセルモーター普及以前に製造された車両であっても、チェーンドライブ等を介してスターター・ドッグを回転させる構造の、後付式のセルモーターがアフターパーツとして販売されていた例があった。こうした部品を解体屋部品取り車、あるいは新古部品英語版経由で入手して取り付けを行うのも良い方法である[59]
  • ディーゼルエンジンにて、何度試行してもスターティング・ハンドルでの始動に失敗する場合、噴射ポンプをはじめとする燃料系統に気泡が混入(エア噛み)した可能性を疑うことも重要である。とりわけ燃料フィルターや燃料ホースの交換、燃料コックのストレーナーの清掃、或いはガス欠を起こした後に給油した直後の場合には、機器の所定の手順に従い燃料系統のエア抜きを実施することが望ましい[60]

軍事[編集]

支那事変下の帝國陸軍の97式戦闘機発動機始動車(1938年)。ハックス・スターターはスターティング・ハンドルでの始動をそのまま補助エンジンやパワー・テイクオフ(PTO)で行う機構に置き換えたものであるが、運用可能な場所が限定されていることが欠点でもあった。
天山一二型試作機(B6N2)のプロペラを手で回転させる帝國海軍の地上要員。イナーシャ・スターターによるエンジン始動の予備動作であると同時に、下部シリンダーへのオイル滞留によりクランクシャフトが流体固着現象英語版を起こしていないかを確認する意味もあった。
ベル・P-39 エアラコブラ「サーガ・ボーイ II号」(アメリカ陸軍航空軍第357戦闘航空群英語版所属機)のアリソン・V-1710エンジンをイナーシャ・ハンドルで始動を試みる2名の整備兵(1943年、ハミルトン陸軍飛行場英語版)。P-39は既に旧式化していた機体であったが、英軍が開発した後述の始動補助機器の他、様々な冬季始動用の補助装備が備えられていた[61]

軍事用途で用いられる航空機や軍用車両では、第二次世界大戦前後までスターティング・ハンドルを用いて始動を行うレシプロエンジンが多く見られた。

ガソリンを燃料とするレシプロエンジンの航空機の場合、第一次世界大戦前後までは地上要員が手で直接プロペラを放り上げるように回転させたり、スターティング・ハンドルで直接エンジンのクランクシャフトを回転させて始動を行っていたが、多気筒化や大排気量化が進んだことにより、人力では直接クランクシャフトを回転させる事が難しくなってきたため、別の小型ガソリンエンジンの動力を用いてプロペラのスピナーを回転させる、ハックス・スターター英語版が用いられるようになった。旧日本軍では大日本帝國陸軍のみが導入し、発動機始動車(はつどうきしどうしゃ)と呼んでいた[62]

しかし、ハックス・スターターは多くの場合トラックなどの比較的大型の貨物車両[注釈 7]に搭載して運用する形態が採られたため、広大な敷地を持ち、周辺道路などのインフラストラクチャーがある程度以上整備された陸上の飛行場以外では運用が困難であるという問題も抱えていた[62]。これは、元より車両を置くだけの余剰空間が期待できない海軍航空母艦の他、陸軍が侵攻した敵地(とりわけ山間部)や海兵隊が上陸占拠した離島など、周辺の交通事情が必ずしも良好とは言えないような場所の、比較的平坦な地形に急造された飛行場などで航空機を運用せざるを得なくなった場合に大きな問題となったため、1926年アメリカ合衆国エクリプス・マシーン・カンパニードイツ語版により、フライホイール(はずみ車)の遠心力を利用して回転力を増幅させる、慣性始動機(かんせいしどうき、イナーシャ・スターター、: inertia starter)が発明された[63]

慣性始動機は人力による回転力を遊星歯車機構とはずみ車を用いて200倍程度に増速させ、スターター・クラッチを介してエンジンのクランクシャフトに伝達する事で始動を行う機構で、この慣性起動機を人力で回転させる際にスターティング・ハンドルに極めて類似したハンド・クランク(イナーシャ・ハンドル)が用いられた。慣性始動機は作動に電力や燃料を用いないため、兵站が劣悪な敵地においても人員さえいればエンジンの始動が可能である点が評価され、戦間期には大日本帝國ナチス・ドイツを初め、世界の列強国の多くでライセンス生産が行われた[64]

帝國陸軍の一式戦闘機大日本帝國海軍零式艦上戦闘機を例に取ると、整備兵などの地上要員はまず手でプロペラをゆっくり回転させる事でクランクシャフトを数回手動回転させ、エンジン内の油圧を高める[注釈 8]。油圧の上昇により十分な圧縮圧力が得られたところで、地上要員数名でイナーシャ・ハンドルを用いて慣性始動機を全力で手動回転(概ね毎分80-100回転程度[65])させ、回転数が12,000rpm程度まで増速されたところで、操縦士(飛行兵)か地上要員のどちらかがスターター・クラッチを操作してクランクシャフトに慣性始動機からの回転力を伝達する事でエンジンの始動が行えた。実践では回転力が増速されてくると慣性始動機からサイレンに似た唸り音が上がり始めるため、この音を合図として整備兵は操縦士へ始動操作の号令[注釈 9]を送ると同時にスターター・クラッチの連結を行い、操縦士は整備兵からの号令と同時に操縦席の始動押鋲(イグニッション・スイッチ)を押し込みながら点火開閉器のレバー[注釈 10]を操作することでエンジンの始動が行えたのだが[64]、地上要員によるスターター・クラッチの連結操作と操縦士のスイッチ操作のタイミングが適正でないと一発で始動を行うこと自体がなかなか難しかった[66]。一応操縦席にもスターター・クラッチのレバーは付いていたが、操縦士は始動押鋲と点火開閉器の両方を操作する必要があった為、一人で始動操作を行うことも現実的ではない設計であったという[注釈 11][66]。帝國陸軍の三式戦闘機では、慣性始動機を操作する地上要員は1人でも良くなり、必要な回転数も毎分20回転程度で済むようになっていたが、エンジンオイルの低温流動性が良くなかった事も相まって、学徒兵などの未成年男子にとっては始動作業は大変な重労働であった事が証言されている[67]

慣性始動機は航空機ばかりでなく、大型トラックなどの輸送車両[68]や、戦車などの戦闘車両の大排気量ディーゼルエンジンの始動装置としても盛んに用いられており、有名なところではドイツ国防軍V号戦車パンター[69]ティーガーI[70]ティーガーII[71]などでも用いられていたことが知られている。戦車の場合も、車体外部から整備兵や歩兵などの補助要員がイナーシャ・ハンドルで慣性始動機を勢いよく回転させ、唸り音を合図に操縦手(戦車兵)がスターター・クラッチとデコンプを操作して始動を行った。

しかし、慣性始動機は信頼性が高い反面、最低でも操縦士と地上要員1名の計2名の人員が必要となる事[注釈 12][72]や、どんなに熟練した地上要員と操縦士の組み合わせでも、エンジンの始動完了まで最低でも20-30秒程度掛かるという即応性の低さが弱点でもあった[73]。後年には電動機と組み合わされた電動慣性始動機(: electric inertia starter)や、電動・手動併用型慣性始動機(: combined inertia starter)なども実用化されており[74]メッサーシュミット Bf109[75]フォッケウルフ Fw190[76]などにおいては、操縦士単独で始動出来るような仕組みとなっていった。電動慣性始動機における電動機はクランクシャフトを直接回す必要が無いため、セルモーターほど大きなトルクは必要なかったが、なまじ電動機出力が低い分、電動機単独での慣性始動機の完全なスピンアップには手動とさほど変わらない時間が必要[注釈 13][77]であり、始動に要する人員が削減される以上の利点が存在しなかった。これらの欠点は対潜戦などにおける緊急発進が必要な護衛空母での航空機の運用や、襲撃機などの急襲が想定される地域での戦車部隊の展開の際に問題となった為、日本やナチス・ドイツなどの枢軸国が慣性始動機を広く採用した一方で、米国やイギリスなどの連合国では減速機を併用してのセルモーターの性能向上の他、即応性に特に優れたコフマン・エンジンスターターといった火薬式の始動装置を広く採用し、枢軸国を次第に圧倒していくようになった。

特にイギリス空軍では、第二次大戦初期の時点ではスーパーマリン スピットファイア初期型英語版を始めとする機体の多くが、機体のバッテリーのみでは冷間始動に必要なセルモーターの駆動力を得ることが難しい状況であったが、英軍は即応性に優れたセルモーターの利点を生かすために様々な手段を用いて始動性の向上の努力を行った。1937年SAE Internationalの国際会議にてアメリカ人軍属により概念が発表されていた滑油希釈装置(: oil-dilution system)[78]を、カナダの民間航空会社であるカナディアン・エアウェイズ英語版での冬季実証試験を経て空軍機にも導入。滑油希釈装置は冷間始動の時のみエンジンオイルに航空燃料を混和して低温流動性の改善を図るもので、エンジンが始動して油温が上昇すると混和された航空燃料が先に蒸発し、低下した粘度が元に戻るという仕組みを利用したものであった[79]が、操作を誤ると過度の燃料希釈英語版を引き起こして[80]エンジン内を異常摩耗させたり[81]双発機や四発機などに於いては、飛行中何らかの理由で一部のエンジンがストールを起こして再始動を図る際にエンジンの火災を誘発する危険性も存在するものであった[82]。また、更なる寒冷下での始動性の向上対策の為、エンジンカウル内に強力な温風を送り込むサラマンダー・ヒーター英語版を搭載したコマー英語版・Q2ライトバン除氷バン(: De-icer van)として採用[83]、最終的にはこれらと併用する形で手押し式の外部電源装置であるトロリー・アキュームレーター(: Trolley accumulator)を機体に接続してセルモーターでの始動を補助(ジャンプ・スタート)した。エンジンの始動に外部デバイスを必須とする構成は運用面で種々の制約が生じるが、始動の即応性を重視した事による選択でもあった。英空軍は1944年に入るとイギリス車の1926年式ボクスホール・30-98英語版で採用実績のあった手動式冷間始動用燃料噴射装置であるKi-Gass英語版も導入、スターティング・ハンドルを用いた航空用エンジンの始動はイギリスでは過去のものとなっていった。

イギリスは多種多様な機材の開発でセルモーターでの始動の徹底を図ったが、ソビエト連邦では兵士達の個々の判断でエンジンオイル注入口から燃料を流し込み、エンジンルーム内に燃料を振り撒いて火を付けるという荒っぽい手法で、厳冬期におけるスターティング・ハンドルを用いたエンジンの始動性を担保していた[84]。一方、満州国に展開した帝國陸軍飛行戦隊では、厳冬期の満州やシベリアでの展開に備え、星型エンジンのシリンダーをすっぽり被える構造の巨大なハクキンカイロを予熱機材として採用した[85]。帝國陸軍の戦車もシベリアでの展開を見越して統制型一〇〇式発動機をはじめとする空冷ディーゼルエンジンを採用していた為、八九式中戦車の空冷ディーゼル搭載型の時点でセルモーターのみで十分始動が可能な状況となっており、スターティング・ハンドルの予備搭載も廃止されていたが、それでも北満州では厳冬期は車体の下に穴を掘ってエンジンの真下で焚き火を行わなければ冷間始動が困難であるという苦労を伴っていた。

なお、戦時体制下での市井の燃料不足に伴い、参戦国の多くで木炭自動車が製造されたが、日本ではこうした車両のエンジンの始動の際にもスターティング・ハンドルが用いられる事が殆どで、大戦後期になってくると青年学校などでの学校教練の一環として生徒や児童たちもスターティング・ハンドルでのエンジンの始動を練習したという証言も残されている。この教習を受けて修了証が交付されると、自動車学校での免許講習時間が半分になったため、当時の徴兵前の学生や青年の多くが受講したという[86]

帝國陸軍で用いられた軍用トラックも例外ではなく、九四式六輪自動貨車(後2軸駆動英語版)や九五式小型乗用車(四輪駆動)など、多くの車両がスターティング・ハンドルを用いて始動を行っていた[87]。戦後発足した陸上自衛隊では、帝國陸軍の軍用トラック技術から発展した六輪駆動トラックのいすゞ・TS/TW1951年より採用したが[88]、陸自のいすゞ製大型トラックも少なくとも1960年代初頭まではスターティング・ハンドルでの始動機能が実装されており[89]、冬季や早朝の冷間始動に於いてはセルモーターでの始動が許可されず、部隊の自衛官が総出でスターティング・ハンドルを回して始動を行っていたという証言も残されている[90][91]

写真集[編集]

消防[編集]

オハイオ州ポーツマス英語版の消防署で用いられていたアメリカン・ラ・フランス製消防自動車。

1905年、アメリカのノックス・オートモーティブ・カンパニー英語版がガソリンエンジンのトラックに消防ポンプを搭載する消防自動車を史上始めて開発して以降、それまで人力ピストン・ポンプ英語版蒸気消防車英語版などを配備していた世界各国の消防組織は、次々に自動車をベースとした消防車の導入を行った。明治維新以降、欧米の消防装置英語版の導入による近代化を推し進めていた日本の消防署に於いてもそれは例外ではなく、1911年に大阪市ドイツ帝国からメルセデス・ベンツ製の消防ポンプ車を輸入したのを皮切りに[97]、主要都市の多くで消防自動車の導入が進んでいった。自動車の歴史と同様に、戦前の消防車も大半はスターティング・ハンドルによる始動を行う車種であった[98]

日本の消防車は戦間期は日本ゼネラル・モータース等の米国系企業がノックダウン生産するアメリカ車[99]、戦後はいすゞ・TX日産・ファイアーパトロール[100]トヨタ・ジープBJ型[101]などの、スターティング・ハンドルによる始動も可能な車種が配備される事が多く、消防本署から消防機材の払い下げを受ける地方の消防団に於いても[102]、少なくとも1970年代に至るまでは消防士や消防団員の日常訓練の一環として、「緊急出動の際、セルモーターで始動できなかった場合に備えて、スターティング・ハンドルによる始動の演練を実施する」事が行われていた。火災発生時の即応性に直結しうる事項であるため、当時の消防隊員の間ではスターティング・ハンドルでの始動性が良好な車種の配備が切望されたという逸話も残されている[103]

また、1971年シェブロンによりディーゼルエンジン用のマルチグレード・エンジンオイルが実用化されるまでは[104]、ディーゼルエンジンのオイルの粘度(SAE粘度)は単一(シングルグレード)である事が当たり前であり、冬季には不寝番の消防署員が消防車のオイルパンの下を常時予熱しておかねばならず[105]、スターティング・ハンドルによる手動始動と併せて、大変な労苦であった事が証言されている。なお、オイルパンの予熱という行為自体は戦前の帝國陸軍でも珍しいものではなく、厳冬期の満州に駐留する関東軍兵士や[87]、戦後のシベリア抑留に遭遇した日本兵の間で[106][107]七輪練炭を用いたトラックのオイルパン予熱が実施されていた事が証言されている。

電装系の信頼性向上[注釈 14][108]と共に、エンジンオイルの改良なども進んでいき、1970年代以降はディーゼルエンジンの冷間始動性も大きく向上した為、こうした光景も過去のものとなっていったが、1970年代に製作された日本の映像作品で、消防署や消防隊員を題材としたものにはしばしば「スターティング・ハンドルによる消防車のエンジン始動」がテーマとなったもの[注釈 15]が存在しており、スターティング・ハンドルによるエンジンの始動が昭和40年代後半頃までの消防士の典型的な姿であった事が偲ばれる。

なお、ZiL製の旧ソ連軍の軍用トラックを転用した消防車を数多く運用していた東側諸国(旧共産圏の東欧)では、未だに日常訓練でスターティング・ハンドルによるエンジンの始動が行われている例も見受けられる[109]

写真集[編集]

船舶[編集]

ディーゼルエンジン搭載の小型動力船における、スターティング・ハンドルでのエンジン始動(ミャンマーインレー湖)

船舶に於いては、水上で万が一セルモーターや空気始動装置英語版といった正規の始動装置を用いたエンジンの始動が行えなくなった場合、そのまま漂流などの海難事故に直結する恐れがあるため、人力でクランクシャフトを回す事が可能な程度の排気量の船外機船内外機を備えた小型の動力船艇和船[114]船内機を搭載したモーターヨットなどでは、リコイル・スターターやロープ・スターター、或いはスターティング・ハンドルといった人力での始動手段が提供されている事が多い。

ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン共にスターティング・ハンドルでの始動は、車両におけるスターティング・ハンドルでの操作手順(前述)に準ずるが[115]、船舶のみの特殊事情としては、ディーゼルエンジンの場合油水分離器 (船舶)英語版の排水作業や、荒天時の燃料タンクの横揺れにより燃料系統にエア噛みを起こす可能性が高いため[116]、スターティング・ハンドルでの始動が必要となった際には、念のため燃料系統のエア抜きも実施しておく事が望ましい。また、潤滑油の油圧が不足している場合もエンジンが始動できない構造となっている事が多いのにも留意が必要である[117]

鉄道[編集]

内大臣森林鉄道で使用されていた1961年式野村組工作所(現・新高知重工)式4.8tディーゼル機関車(監物台樹木園所蔵)。フロントグリル下にスターティング・ハンドルの差し込み穴が設けられている。

鉄道では内燃機関を搭載する気動車が広まり始めた1920年代は、既に自動車ではセルモーターへの移行が進んでいた時期であり、自動車と比べても排気量が非常に大きな事から、日本国有鉄道で国産化が行われたガソリン機関車ではセルモーター、ディーゼル機関車では空気始動装置が装備される事が一般的であった。

しかし、森林鉄道などの軽便鉄道ではスターティング・ハンドルを用いて始動を行う小型の気動車が1960年代までは珍しい存在ではなく[118][119]、第二次世界大戦中のオークニー諸島に収容されたイタリア人捕虜により建設されたイタリアン・チャペル英語版の記録では、一人のイタリア人捕虜が軽便鉄道のディーゼル機関車をスターティング・ハンドルにより始動を試みたところキックバックが発生、頭部にハンドルが直撃して頭蓋骨を骨折し、島内の病院に救急搬送されるも治療の甲斐無く死亡したという事故事例が報告されている[120]

  • 映像 - YouTube - Engine Hand Cranking experiments - (ルーマニアダチアによるルノー・12のノックダウン生産車である、ダチア・1300英語版のスターティング・ハンドルの構造が詳細に撮影されている。1960年代頃までの日本車も概ねこの車両と類似した構造であった。)
  • 映像 - YouTube - The Best Of Diesel Tractor Start Compilation รถไถนาเดินตาม - (東南アジア諸国で2010年代現在も広く用いられている、ヤンマークボタ製ディーゼルエンジン搭載の耕運機(ティーラー)のスターティング・ハンドルでの始動風景をまとめた映像。)
  • 映像 - YouTube - Manual hand crank starting Yanmar 1GM10 engine - (ヨットなどで使用される事が多いヤンマー・1GM10英語版型ディーゼルエンジンのスターティング・ハンドルでの始動要領。船舶の船内機は陸上で用いられる車両のエンジンと比較しても手動始動が難しい事が多いとされる為、日頃から練習を行っておくことが望ましい。)

関連項目[編集]

脚注・注釈[編集]

脚注

  1. ^ スターティング・ハンドルとは - オートモーティブ・ジョブズ
  2. ^ a b hand-cranked inertia starter
  3. ^ キーやボタンよりもアジがある! クランク棒でエンジンスタート! - グーネット
  4. ^ 栄(ハ25、ハ115)エンジン - 一式戦闘機「隼」研究所
  5. ^ 自動車用語を日本語で表現したら ( 自動車 ) - みみことRの部屋 - Yahoo!ブログ
  6. ^ 岡田三郎「技術分析の構想」『島根大学論集 教育学関係 4巻』島根大学、1954年3月31日、44頁。
  7. ^ T540 XPチェーンソー取扱説明書 - ハスクバーナ
  8. ^ Pagé, Victor Wilfred (1916), The Model T Ford car, its construction, operation and repair, New York, New York, USA: Norman W. Henley, LCCN 18-2807, https://books.google.com/books?id=70mJeb_q19EC&pg=PA7#v=onepage&f=false. Subtitle "A complete practical treatise explaining the operating principles of all parts of the Ford automobile, with complete instructions for driving and maintenance." 、42ページ。
  9. ^ a b c d e 【車屋四六】懐かしのクランク棒 - WEBカーアンドレジャー
  10. ^ 映像 - YouTube - Start eines URSUS C451
  11. ^ かみあいクラッチとは - コトバンク
  12. ^ a b Starting Handles - M.G. Judd Ltd
  13. ^ a b ランドローバー『Land Rover Series III Service Manual』12-31ページ。
  14. ^ Bulletin 66-4: 1725cc Crankshaft End Play - Tigers East/Alpines East
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  16. ^ a b 昔はエンジンをかけるだけでも命がけだった!? - 交通事故防止サイト
  17. ^ アメリカ合衆国特許第1,150,523号 - Engine-starting device.
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  20. ^ Renault 1972 - Classic Car Catalogue
  21. ^ Don’t get me started by Wheelnut - British Motor Heritage
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  23. ^ 1986 Range Rover Turbo D - VIN CA (UK) - Released: April 1986 - Range Rover 1980's - Range Rover Classic.com
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  28. ^ 映像 - YouTube - Tractor crankhandle backfire - Wallis 20 30 - (ウォリス・トラクター・カンパニー製の1929年式20-30トラクターのスターティング・ハンドルでの始動失敗事例。キックバックの発生により、スターティング・ハンドルが部屋の天井まで飛ばされてしまった。)
  29. ^ 田中重芳「「現場俗語」について一般社団法人生産技術振興協会『季刊 生産と技術 Vol.17』、1965年、36頁。
  30. ^ クランク棒 - Jeep改め「ランクル70と365日仕事」、Yahoo!ブログ、2006年8月26日。(キックバックによる負傷写真が掲載されている事に注意。)
  31. ^ ショーファー骨折=橈骨茎状突起骨折 - 福岡弁護士による後遺障害・等級認定サポート
  32. ^ 島村英紀が撮ったシリーズ「不器量な乗り物たち」生活圏編 - 島村英紀のホームページ
  33. ^ a b c d e f Using a starting handle, and other ways to start an engine. - Classic cars & articles on vehicle restoration at OldClassicCar.
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  39. ^ A most hazardous practice - Flickr
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  42. ^ 映像 - YouTube - 01 Inertia starter for Citroën 11 CV Traction-Avant Mise en place
  43. ^ 映像 - YouTube - 02 Inertia starter for Citroën 11 CV Traction-Avant Lancements
  44. ^ a b c SAFE WORKING PROCEDUREHand Start Diesel/Petrol Engines - コーンウォール協議会英語版、2004年4月。
  45. ^ a b 耕耘機使い方 No8 - 野菜日記(農健クラブ)- JUGEMブログ
  46. ^ 耕耘機使い方 No9 - 野菜日記(農健クラブ)- JUGEMブログ
  47. ^ 映像 - YouTube - Ursus Tractor Starting Fail - (ウルスス・C-45英語版トラクターのスターティング・ハンドルでの始動後の事故。始動自体には成功したが、スターティング・ハンドルの噛み合いが外れず、高速で回転し続けてしまった。)
  48. ^ 映像 - YouTube - My hand getting slapped by a hand crank starter on a 1928 Dodge - (1928年式ダッジ・スタンダード・シックスドイツ語版のスターティング・ハンドルでの始動後の事故。始動自体には成功したが、スターティング・ハンドルの噛み合いが外れず、高速で回転し続けてしまった。)
  49. ^ a b c ケッチン - くろべえ JG1BGT の受け狙い人生 - Blogger
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  51. ^ ビクター・M・ペイジ『The Model T FORD CAR - Including Fordson Farm Tractor, F.A. Starting and Lighting: A Complete Reference on the Universal Car Truck and Tractor (1920 Edition: Revised and Englarged)』 The Norman W. Henley Publishing、1920年、138ページ。
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  53. ^ a b 映像 - YouTube - Hand Krankin' "The Gronk" - Starting handle video - (撮影者は計2回の試行で始動に成功しているが、スターティング・ハンドルを強く引き寄せると同時にハンドル・バーから手を離すような動作を行っている事。最初に始動に失敗した際、圧縮圧力の反発でスターティング・ハンドルが勢いよく逆回転している点に注目されたい。)
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  55. ^ 映像 - YouTube - How to (safely) start a handcrank start tractor - (1940年式ファーマル英語版・A型トラクターを安全に始動する為の操作要領)
  56. ^ 順手と逆手について - 地体力向上デジタル教材サイト GOAL.D - 大阪教育大学
  57. ^ キックが怖い…ケッチンを恐れずハーレーをキックするには? - GUTS CHROME
  58. ^ クランク棒の持ち方 - 2cvに乾杯! - FC2ブログ
  59. ^ Accessory Starters - Model T Ford Forum
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  71. ^ 映像 - YouTube - Starting a Tiger II at Militracks 2018 " Hand Crank Engine Start Up " - (2名の補助要員で始動を試みた事例であるが、始動まで概ね1分10秒前後を要している。)
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  74. ^ アメリカ連邦航空局Airframe & Powerplant Mechanics Powerplant Handbookアメリカ合衆国運輸省ジェプセン・サンダーソン英語版、1976年、263ページ。
  75. ^ 映像 - YouTube - Messerschmitt Me 109 engine start (original sound) - (Me109G-4と解説されているが、実際はマンヒング英語版のメッサーシュミット博物館所蔵のイスパノ HA-1112-M1Lである。戦後に製造された機体であるが、電動機のスピンアップから始動まで概ね15秒前後を要している。)
  76. ^ 映像 - YouTube - FW190 A5 BMW801 Engine startup - (フライング・ヘリテージ・コレクション所蔵のFw190A-5/U3の始動事例。電動機のスピンアップから始動まで概ね20秒弱を要している。)
  77. ^ 映像 - YouTube - Guiberson radial diesel engine, M3 Stuart Tank - (M3軽戦車で用いられたギバーソン・T-1020ディーゼルエンジン英語版での始動事例。始動装置をライト R-3350用の強力な電動慣性始動機に換装しているが、それでも電動機のスピンアップから始動まで概ね7秒弱掛かっている。)
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注釈

  1. ^ 単に転把と呼ばれる事もあるが、ステアリング・ホイールも同じ訳が当てられたため、両者を区別する場合にはステアリング・ホイールを走行転把と呼ぶことで区分した。
  2. ^ 円形のハンドルであっても、機械要素としてのクランク軸は成立する。
  3. ^ キック・スターターの場合は歯車
  4. ^ なお、英語圏では助手席の事をパッセンジャー・シートと読んでいるが、直訳すると旅客席となる。
  5. ^ セルモーターを駆動する自動車用バッテリー英語版のコールド・クランキング・アンペア(CCA)といった絶対性能や耐久性、信頼性が今日と比較して大きく劣っていた事も一因である。1950年代までは多くの車は6ボルト電圧の電気系統を採用しており、今日広く見られる12ボルト電圧の電気系統が広まるのは1950年代から60年代以降であった。
  6. ^ 蹴返しを意味するKickingが外来語として入った際に訛ったものであるとされる。
  7. ^ 帝國陸軍の発動機始動車は、1.5屯積平荷台のトヨダ・GB型トラック英語版を用いており、ノモンハン事件等における97式戦闘機の展開に活用された記録が残る。
  8. ^ 自動車用エンジンに於けるコールド・スタート・クランキングと同じ操作であるが、旧日本軍の星型エンジンの場合、工作精度の問題によりエンジンの真下に位置する下向きのシリンダー内にエンジンオイルが滞留しやすかった為、溜まったエンジンオイルによりピストンが上昇できずにクランクシャフトが固着する現象の有無を確認する意味もあった。
  9. ^ 帝國海軍の場合は接触、連結を意味する「コンタクト」の号令を用いた。
  10. ^ 航空用エンジンの多くは1つのシリンダーに2本の点火プラグを持つツインプラグ英語版構成の為、2系統のマグネトーの何れか片方のみを使うか、両方同時に使うかを点火開閉器で選択する仕組みが備えられており、旧日本軍の場合冷間始動の際には「右→左→両」の順番で切り替え操作を行った。
  11. ^ なお、第二〇一海軍航空隊の元整備下士官によると、「予め機外のスターター・クラッチのレバーに紐を取り付けておき、慣性始動機の回転を上げてから素早く操縦席に飛び乗り、両手で操縦席の始動押鋲と点火開閉器を操作しながら足の指でスターター・クラッチの紐を引く事により、一人で始動を行う。」という曲芸じみた始動法を考案したが、余りに奇抜な技法の為自分以外に誰も真似ができなかったという証言を残している。
  12. ^ 坂井三郎は戦後記述した戦記において「ガダルカナル島からの帰途、不時着した僚機の操縦士に対して自身がイナーシャ・ハンドルを空中投下した事により、操縦士は自力でエンジンを始動して無事帰還できた。」と記したとされるが、前述の構造上の問題から史実であったかは疑わしい。
  13. ^ セルモーター並に強力な電動機を用いた場合はその限りではないが、それ程強力な電動機が製造可能であれば、そもそも電動慣性始動機を採用する意味が無い。
  14. ^ バッテリーの性能向上の他、貼り付け式の強力な電熱ヒーター(オイルパン・ヒーター)の実用化なども緊急出動時の始動性向上に貢献している。
  15. ^ 1977年テレビアニメヤッターマン』の主役メカであるヤッターワンは、消防車がモチーフとなったメカであるが、このメカを起動する際は主人公自らがスターティング・ハンドルでエンジンの始動を行う設定となっていた。また、ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』の初期(荒井注が脱退する1974年以前)には消防署をモチーフにしたコントが度々行われており、スターティング・ハンドルでの消防車のエンジンの始動がコントの落ちとなっている放送回があった。