セガAIコンピュータ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
セガAIコンピュータ
メーカー セガ・エンタープライゼス
種別 CAI用ホームコンピュータ
発売日 日本の旗 1986年
アメリカ合衆国の旗 1987年
CPU V20
GPU V9938
対応メディア ICカード型ROM/カセットテープ
コントローラ入力 方向パッド(本体)、トリガーボタン(本体)、タッチパネル(本体)
キーボード(ケーブル接続)
次世代ハードウェア キッズコンピュータ・ピコ
テンプレートを表示

セガAIコンピュータは、1986年に日本で発売された幼児・児童向けの家庭用知育コンピューターである。当時のいわゆるホビーコンピューターと異なり、3~8歳児を対象としたコンピュータ支援教育(CAI)用途に特化している[1]。人工知能言語とも呼ばれたPrologを内蔵し、「人工知能(AI)搭載」をセールスポイントとした。

概要[編集]

1986年丸紅からソフトウェア知育教材「くもん わんだぁすくーる」とセットで販売された。設計開発はセガ・エンタープライゼス(後のセガゲームス)とCSK総合研究所とで行われ、約10億円の開発費を要したとされる[2]。教材は公文教育研究会が監修した[3]

当初の一括販売価格は168,990円で、内訳は教材(全18巻)81,490円、本体が87,500円である。この本体価格は当時のパーソナルコンピューターとしてはローエンドの価格帯とされる[1]

当時のセガで技術開発部門を担当していた佐藤秀樹(元セガ代表取締役社長)の述懐によれば、セガAIコンピュータのプロジェクトは結果として「大失敗」だった。しかしその経験が後のヒット商品であるキッズコンピュータ・ピコに生かされたという[4]

ハードウェア[編集]

ハードウェア仕様を以下に示す(米国Electronics英語版誌の記事[1]および販売パンフレットより)。

仕様一覧[編集]

  • CPUNEC V20(16bitマイクロプロセッサー V30のデータバス8bit版)
  • ROM:128KB(SEGA PROLOG OS 内蔵)
  • RAM:128KB
  • VDPヤマハ V9938
  • VRAM:64KB
  • サウンドLSI:SN76489(セガの家庭用ゲーム機、いくつかのホビーパソコンに搭載された音源LSI)。外付けのオプションとしてFM音源LSIと増設メモリーを内蔵する「AIサウンドボックス」が設定される。
  • 入出力
    • JISキーボード:外付け、標準付属。
    • タッチタブレット:感圧式、B5サイズ。タブレット上に交換可能な「パターンシート」を敷くことで様々な入力に対応する。同様なシートは後のキッズコンピュータ・ピコにも存在した。
    • カーソルコントローラ:円形の方向パッドと、2個の入力ボタンを持つ。
    • マイク入力端子
    • カセットドライブ:転送速度9600bps。主にデータ用ドライブであるが、音声にも使われる。
  • スロット
    • ICカードスロット:アプリケーションROMカード(最大128KB)を挿入する。
    • 汎用バス端子

ソフトウェア[編集]

基本ソフトウェアとして「SEGA PROLOG」インタープリターを搭載する(「セガ プロログ」とも表記される)。アプリケーションは「コースウェア」と呼ばれ、幼児教育のみでなくホームコンピューターとしての様々な発展がコンセプトとしては存在していた。[3]

SEGA PROLOG[編集]

基本ソフトウェアとして、CSK総合研究所が開発したPrologインタープリター。128KBの内蔵ROMに納めるため、基本的な40のコマンドに限定された仕様となっている。[5]

Prologは1970年代に考案された非手続き型論理プログラミング言語で、当時コンピューターによる推論機能(人工知能)の実現に有効とみなされていた。1982年に立ち上がった国家プロジェクト「第五世代コンピュータ計画」における開発にも、Prologの派生言語(Prologにオブジェクト指向を取り入れたESPと呼ばれた言語)が用いられた。

セガAIコンピュータは、第五世代コンピュータ計画との直接の関連はないが、当時の報道によれば Prolog(のサブセット)の採用により人工知能の特色的な機能が実現され、児童の学習理解度の把握、入力した文章などの不確かな部分を推測するなど、柔軟な対応が可能であるとされた[6]。販売パンフレットにおいては、機械教育を人工知能で補完する「知的CAI」で「家庭学習(個々のペースによる学習)」「能力別学習(能力に応じた課題の提供)」「対話型学習(自然言語によるインターフェース)」が可能になったと説明されている。

コースウェア[編集]

教材アプリケーションは「コースウェア」と呼ばれ、ICカードで供給される。パンフレットによれば、コンセプトとしては幼児から高校生までの教育支援、健康管理プログラム、ワープロなど、ホームユースのアプリケーションが想定されていたが 、実際に供給されたコースウェアは幼児向け知育プログラム「わんだぁすくーる」シリーズのみであった。 以下は販売開始当初のパンフレットに記載された「くもん わんだぁすくーる(全18巻)」のタイトル一覧である[3]。実際に供給された内容とは異なる場合がある。

  • アリス・ワールド
  • ロビンソン・ランド
  • エジソン・ラボ
  • シンデレラ・ラビリンス
  • ガリバー・ポケット
  • モーツァルト・アカデミー
  • アンデルセン・ドリーム
  • アラビアン・ナイト
  • リンカーン・フリーダム
  • グリム・ハウス
  • ホームズ・ミステリー
  • アンネ・ダイアリー
  • コロンブス・エッグ
  • 宝島・パイレーツ
  • スペース・ファンタジー
  • サファリ・ファンタジー
  • オーシャン・ファンタジー
  • マザーズブック

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c Charles L Cohen (1986-07-24). “CHILDREN'S COMPUTER BRINGS AI INTO THE HOME”. Electronics英語版 (McGraw-Hill社) 59. 
  2. ^ “丸紅が幼児用学習機(新製品)”. 朝日新聞 東京朝刊 (朝日新聞社): 8面. (1986年7月10日) 
  3. ^ a b c セガによる販売パンフレットにおける記載
  4. ^ 清水洋/金東勲/鴫原盛之/山口翔太郎 (2018年2月1日). “佐藤秀樹第3回インタビュー前半:ゲームにおけるハードとソフト”. 一橋大学イノベーション研究センター. p. 6. 2019年1月31日閲覧。
  5. ^ “Software that takes games seriously”. New Scientist (Reed Business Information社) 113. (1987-03-26). 
  6. ^ “家庭教師は電算機 人工知能が個別指導、幼稚園児も操作可能”. 朝日新聞 東京朝刊 (朝日新聞社): 1面. (1986年3月30日) 

関連項目[編集]