セルロースファイバー

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セルロースファイバー: Cellulose insulation; セルロース断熱材)は、木質繊維を使用して製造されたエコロジーな断熱材・防音材である。近年、天然系断熱材として注目されている。断熱性能は住宅用グラスウール24k・32k相当で、熱伝導率は0.038W/mk前後である[1]

セルロースファイバーの粉末
床面への施工(乾式)
壁面への施工(乾式)
セルロースファイバー施工に必要な機器

目次

製造

日本国内では古新聞またはダンボールを原料に製造される。原料は廃品回収で集めたものではなく、製造したものの市場には流通しなかった余剰品が用いられる。原料を裁断・攪拌して防火・防虫の為にホウ酸を散布して製造される。製造には原料のほかにはホウ酸と電力が必要なのみであり、グラスウールポリスチレンのように石油化学物質や燃料は必要とせず、極めて環境負荷が少ない断熱材である。

施工

湿式と乾式があるが、いずれも専用の機材を必要とする。双方とも床や天井にも施工できる。

湿式

微量の接着剤と水を混入し、スプレーガンで構造体や壁に吹き付け自然乾燥させる。施工には時間がかからないが、乾燥に時間がかかり、また一度に施工できる厚みに限度があるために、住宅ではあまり施工されず、鉄骨~RCなどの大型建築などで使用される。ウレタン吹きつけと違い、余剰分はそぎ落とし、再度使用することができる。乾式のように粉塵は発生しない。勾配天井には施工しにくい。

乾式

柱と柱の間に透湿防水シートを張り、その内部にブロアーでセルロースファイバーを圧送し充填する。理論的に施工する厚みには限度はないが、自重による沈降を防ぐために、規定の圧力で吹き込む必要がある。規定の圧力で吹き込みが実施されていれば沈降は発生しない[2]。また、非木質系の繊維を混入させることにより、長期の沈下に対して材料を改質したものもある。吹き込み後の密度は60kg/m³にもなる。施工時に粉塵が舞うのが欠点。勾配天井にも施工できる。

特徴

利点

  • ホウ酸を添加しているため難燃性である。ガスバーナーで直接加熱しても、表面が炭化するのみで燃えない[3]。またその際にも黒煙や悪臭[4]や、有害物質を放出しない。以上より防火性に優れている。準不燃材料として認定を受けている[5]
  • ホウ酸を添加しているために、防虫作用がある。木材腐朽菌、シロアリ、ゴキブリ、ダニ、その他の食材昆虫を寄せ付けない[6]
  • ホウ酸を添加しているために撥水性があり、水を吸収しない。水を吸って潰れたり、重くなることもない[7]。雨漏りをした場合も、セルロースファイバーが水を吸収しないので、直ぐに天井に漏れることになり、早期発見できる。
  • 水蒸気を透過するために、壁内結露の原因とならない。またセルロースファイバー自体に調湿作用がある。
  • 重量がある(16kのグラスウールの3倍以上)ために、防音効果が極めて高い。硬質石膏ボード2枚と10cm厚のセルロースファイバーで構成された壁で-60dBの防音作用[8]がある。
  • 壁での施工では、コンセントや筋交いがあっても、隙間なく施工できる。配管や配線、ダウンライトなどがある天井であっても、天井にセルロースファイバーを隙間なく降り積もらせて施工することにより、高い気密性と防音性をもたせることができる。これにより気密テープと接着剤の使用量を減らすことが出来る。
  • グラスウールロックウールのように接着剤が添加されていないので、シックハウス症候群の心配がない。
  • グラスウールのようにカビが発生しない[9][10]
  • グラスウールロックウールのように皮膚への刺激作用がないので、施行時に皮膚や口腔の違和感が少ない。
  • 結露しないので、防湿シートや防湿層が不要である[11][12]

欠点

  • 施工単価が高い。施工に専用機材を必要とし、正確な施工には実技指導会などの講習が必要である。
  • 利点でもあるが、断熱材の重量があるために、家が重くなる傾向がある。
  • 天井に吹き積もらせる場合は、屋内配線がセルロースファイバーに埋もれてしまい、リフォーム時に手間がかかる。
  • 施工時にセルロースファイバーの粉末が舞い、あと始末に手間がかかる
  • 壁の部分で充填が不完全だと、自重で沈降して、上部に隙間が出来てしまう(規定どおり充填されていれば30年相当の過酷な加振動試験でも沈降は発生しない)。
  • 天井断熱をするなら、ダウンライトに密閉型の製品が必要である。

その他

  • 「専用機材が必要」・「手間がかかる」という点が倦厭され、日本の大手ハウスメーカーでは大和ハウスが天井断熱で使用する程度であるが、施工側が大変なだけで、施主側にとっては「単価が高い」以外には特にデメリットが無い断熱材である。そのため海外ではグラスウールロックウールよりも頻繁に使用される。アメリカにおいて住宅用断熱材として35%を占め、シェアナンバーワン[13]とされるが、別の機関が実施した統計[14]ではシェアナンバーワンはグラスウール(79%)とされ、セルロースファイバーの使用量はきわめて少ないとされている。
  • ホウ酸の添加について安全性を疑う見解も存在するが、ホウ酸の致死量は成人15~20g[15]と、かなり多量であり、これより少量の致死量である薬品は住宅に多種類使用されている(ホルマリンの致死量は5~10g)。また半数致死量で比較すると、2000~4000mg/kgであり、解熱鎮痛剤であるアスピリンより多く、塩化ナトリウム(食塩)よりやや少ない[16]程度である。ホウ酸の蒸気圧は非常に低く(砂糖や食塩より低い)、蒸気としてホルマリンのように吸入摂取する心配もない[17]とされ、ホウ酸の添加の安全性は問題ないとされている。
  • 過去に悪質な業者が、指定の吹き込み量を遵守せず、後々に壁内部のセルロースファイバーの沈下が問題になった事例がある。

脚注

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  1. ^ 北海道立北方建築総合研究所 第15-158号
  2. ^ 「吹き込み用セルローズファイバーの沈降試験」 依試第 6H 65922号 [平成9年3月14日] 財団法人 建材試験センター
  3. ^ セルロースファイバーの防火性能試験 受付第05A1136号 [平成17年7月15日] 財団法人 建材試験センター
  4. ^ 色々な断熱材の燃焼実験(動画)
  5. ^ JIS A 1321に規定する難燃3級の表面試験に合格
  6. ^ 山本 順三 「無垢材・無暖房の家―断熱・防音・透湿!奇跡の工法」 (単行本) ISBN-10: 4778201167
  7. ^ 「セルローズファイバーの試験性能(はっ水性)」受付第05A1257号 [平成17年7月29日] 財団法人 建材試験センター
  8. ^ 2x6パネルに、約400mm間隔で千鳥(交互)に2x4スタッドを割り付け、厚約16mmの石膏ボードを両面に貼り付けた壁で、1500HZ以上の帯域で-60dBの減衰がある
  9. ^ 「セルローズファイバーの性能試験(防カビ性)」受付第05A1263号 [平成17年8月1日] 財団法人 建材試験センター
  10. ^ 大阪市立工業研究所 大江研報第621号
  11. ^ 月刊建材試験情報 財団法人建材試験センター発行 平成14年5月1日
  12. ^ 月刊 建築技術 No.648 2004 January
  13. ^ インターセル調査;日本セルローズファイバー工業会
  14. ^ グラスウールの特長 - ナンバーワン 旭ファイバーグラス株式会社 掲載
  15. ^ Schillinger, B. M., Berstein, M., et al.:Boric acid poisoning. Am. Acad. Dermatol., 7:667,1982
  16. ^ 塩化ナトリウムの半数致死量は3000~3500mg/kgである
  17. ^ 角田邦夫(京都大学木質科学研究所)「ホウ素化合物の木材保存剤としての利用」木材保存、Vol.25.2(1999)

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