ソウルドロップの幽体研究

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ソウルドロップの幽体研究』(ソウルどろっぷのゆうたいけんきゅう)は、上遠野浩平著の小説。祥伝社のレーベル・NON NOVELで発刊されているソウルドロップシリーズの第1作。イラストは斎藤岬が担当している。

幻冬舎の雑誌『コミックバーズ』に漫画版が連載されていた。作画者は秋吉風鈴。全3巻。


注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。


概要

「生命と同等の価値ある物を盗む」という予告状が、巨大な権力を持つ東澱家の祖である東澱久既雄の影武者の元に送られる。三日後に彼の影武者は殺害され、部屋にすえられていたキャンディーが盗まれた。そしてその前日には、今はなきカリスマ歌手であるみなもと雫のトリビュートライブ会場にも同様の予告状が送られている。

サーカム保険会社の調査員である伊佐俊一と千条雅人は、これらを「どうだっていいとしか思えない物しか盗まず、同時に誰かの命を奪う」という怪盗ペイパーカットの犯行と認定、足取りを追うためにライブ会場の大ホールへと向かう。

登場人物

伊佐 俊一(いさ しゅんいち)
サーカム保険会社のオプ(調査員)を勤める青年。普段は紫外線を遮断するサングラスを掛けている。元は警察官だった。
冷静な思考の持ち主で、極めて優れた洞察力と判断力を併せ持つが、内面の奥深くには義侠心を秘めており、それは彼の行動原理の源ともなっている。正義感を発揮した場合でもそれに振り回されず、沈着冷静な行動を取れる極めて優秀な人物。千条雅人のパートナー、また監視、教育役として行動を共にする。
警察官時代に着いていた要人警護の際に、「見てはならない存在」であるペイパーカットを見てしまい失明してしまった彼は、直後サーカムにスカウトされ、オプとしてペイパーカットが関与したと思われる事件を追跡する事となる。ペイパーカットを目撃した唯一人の人間である。
本作は彼と千条雅人の視点から、事態の流れを追う事となる。
千条 雅人(せんじょう まさと)
サーカム保険会社のオプで伊佐のパートナーを勤める青年。物腰は柔らかいが相手の心情等は理解せず、また「場の空気を読む」という機微も持ち合わせない、機械的な雰囲気を漂わせている。表情の変化などもほとんどなく、喜怒哀楽を露わにする事も皆無に等しい。
正体はサーカムがペイパーカット追跡の為に作り上げた「ロボット探偵」であり、その素体となった人間は伊佐の護衛対象であった女性の弟である。伊佐が視力を失ったその事件の現場に居合わせた彼は一度は命を失いかけたが、サーカムによって回収され、脳内に情報処理チップが埋め込まれ、改造人間としての特性と得る事になった。生前の記憶は全て失われているほか、痛覚、心理的不安などを感じる事は無いため、伊佐に「人としての様子」を監督されているのに近い形で、彼と行動と共にしている。
身体能力、情報処理、収集能力は恐ろしく高く、人間の能力を大きく超えた怪力や反射神経、分析能力のほか、更にモーションデータには榊原玄という不世出の天才武道家のものが組み込まれている。しかし肉体的限界を自らで判断する事が出来ない事や、人間心理の理解は不得手であるため、多くの人間の心理が関わる事態・事件に置ける推理を行う事は出来ない。全ての普遍情報(その際の人間心理を含む)が出揃った後ならば、ハイテクノロジーの産物であるロジカル・サーキット(論理回路)を起動、リミッター(良心制御)を解除し、あらゆる被害を省みず速やかに事態の解決に全ての能力を発揮する事となる。
東澱 奈緒瀬(ひがしおり なおせ)
国立大学女子大生であり、東澱家直系の家系で後継者候補でもある若く美しい女性。華やかな容姿と強い求心力、更に優秀な頭脳と判断力、行動力を持ち合わせる。東澱の頂点に立つ祖父の久既雄を深く敬愛しており、今生きている人間の中で、久既雄の正体を知るただ一人の人間。祖父の持つ圧倒的なバイタリティに畏敬しながらも、強く惹かれている彼女の行動原理はそれを己のものとする事であり、極めて強い「ゴッドファーザー・コンプレックス」を内在している。
公私の区別が口調や態度でハッキリ現れており、「公」の相手には男言葉で、親しい相手には丁寧な口調で話す。
祖父からの命でペイパーカットの対処を一任され、その足取りを追う初期の段階でサーカムの伊佐と千条に目を付けた彼女は、彼らにコンタクトを計り共同で追跡活動を行う事となる。
相良 則夫(さがら のりお)
本作において始めに飴屋と関わりを持った人物。不運からバイトをクビになった帰りに事件に巻き込まれ、飴屋と出会う。両親から「負債」として譲り受けたマンションをどうしてよいか分らず、現在は彼女の久美子とそのマンションで同棲中。
沢城 久美子(さわしろ くみこ)
相良の彼女。はっきりとしない性格の則夫に怒りながらも付き合いは続いている。みなもと雫の大ファン。
東澱 久既雄(ひがしおり くきお)
日本を裏から操ると言われる「東澱」の現在の長。奈緒瀬の祖父。怪盗ペイパーカットが自分ではなく影武者を狙ったことで強い興味を抱く。
御厨 千春(みくりや ちはる)
みなもと雫の追悼ライブのスタッフ。メガネとバンダナが特徴の活発な女性。調査に訪れた伊佐と千条の案内役を務める。
釘斗博士(くぎとはかせ)
伊佐の目の診察と、千条の「メンテナンス」を担当する医師。肌が異様に白く、亜麻色の髪は伸び放題で無精ひげだらけの変人ドクター。知識・技術はすごいのだが、自分名義で論文や研究を発表したことが無いため無名の存在。彼の所属する病院は上遠野の他シリーズにも登場している(しずるさんシリーズブギーポップシリーズ『ホーリィ&ゴースト』『ヴァルプルギスの後悔』)。
ジェット
追悼ライブに参加するアーティストの一人で、「灰かぶり騎士団」というバンドのメンバー。彼の名前もしずるさんシリーズで見る事が出来る。
石川 謙一(いしかわ けんいち)
一見何の特徴も無い中年の男だが「始末屋」として裏の世界で暗躍する凄腕の殺し屋。数年前に自分を見捨てた弟子のことを今でも引きずっている。
偕矢 亮平(かいや りょうへい)
ギタリスト。みなもと雫のバックバンドを担当していたが彼女の死後、突如音楽活動を休止する。追悼ライブには参加していない。
寺月 恭一郎(てらづき きょういちろう)
巨大企業MCEの社長。本作品中では故人。追悼ライブの会場である「パラディン・オートリアム」はMCE系列の企業所有の建物の一つ。
楢崎 不二子(ならさき ふじこ)
ブギーポップシリーズ『ジンクスショップへようこそ』の登場人物の一人。奈緒瀬の電話の話し相手として名前だけ登場。
みなもと 雫(~しずく)
数年前他界した伝説の国民的歌手、シンガーソングライター。高いカリスマ性を持ち、死後もその影響力は根強く残っており、ファンやスタッフからは「神さま」と呼ばれている。彼女が作る曲、歌の影響力は尋常なものではなく、それは才能も情熱も持っていた他の歌手達を打ちのめし、「決して適わない」と思わせてしまう"毒"ともなってしまう。そういったアーティスト達はまた彼女に心酔し、傾倒していくが、時折それに立ち向かおうとする姿勢を見せる人間も存在している。なお、彼女の遺した詩は上遠野の他作品でも見る事が出来る。
飴屋(あめや)
目的、容姿、性別、性格、年齢すべてが不明で存在するかも分からない人物。飴屋は自称となっている。多くの人間には認識不可能な存在で、見る事ができた人間によってその姿や印象は様々に受け取られる。シリーズを通し共通して登場する姿では銀髪の青年の姿である事が多い。緑色の紙切れを持ち歩いている。
その正体は同作者のブギーポップシリーズに登場する『天から降りてきた者たち』の一人である。


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