タガメ

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タガメ
タガメ
伊丹市昆虫館での展示
保全状況評価
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト
Status jenv VU.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目 : カメムシ亜目(異翅亜目)
Heteroptera
下目 : タイコウチ下目 Nepomorpha
上科 : タイコウチ上科 Nepoidea
: コオイムシ科 Belostomatidae
亜科 : タガメ亜科 Lethocerinae
: タガメ属 Kirkaldyia
: タガメ K. deyrollei
学名
Kirkaldyia deyrolli
(Vuillefroy, 1864)
和名
タガメ(田亀、水爬虫)
英名
Giant water bug

タガメ(田鼈、水爬虫)は、カメムシ目(半翅目)コオイムシ科のタガメ亜科(Lethocerinae)に分類される水生カメムシ類の総称[1]、またはそのうちの1種 Kirkaldyia deyrolli [注 1]を指す和名である[1]。本項目では後者について扱う。

カメムシおよび水生昆虫としては日本最大級で[1][RL 1][注 2]、日本の一般的な水生昆虫で学術的にも貴重な種だが、現在は絶滅が心配される昆虫となっている[RL 1]

名称[編集]

「田にいる亀」が名前の由来(語源)であるほか[書籍 2][書籍 3]江戸時代には胸の形が高野聖が被っていた編み笠に似ていたことから[書籍 3]高野聖」の異名で呼ばれる場合があった[2]。このほか「ミズガッパ」「カッパムシ」「ドンガメムシ」などの異称がある[書籍 2]

分布[編集]

日本では日本列島各地(北海道・本州・四国・九州・南西諸島)に分布するが、北海道では古い記録がない一方で近年になって増加しているため、人為的な移入の可能性がある[書籍 4]琉球列島では沖縄本島石垣島西表島から記録されていたほか、最近では与那国島からも発見されたが[RL 1]、繁殖例は確認されておらず飼育個体の遺失による可能性も指摘されている[RL 3]

日本国外では台湾朝鮮半島中国 - インドシナまでの東南アジアロシア連邦極東南部に分布する[書籍 4]

特徴[編集]

タガメ

成虫の体長は48ミリメートル(mm) - 65mm[RL 1]。♀の方が大型で[RL 1]、♀は体長60mm以上の個体も少なくないが、♂は最大でも57mm - 58mm程度で、通常は体長55mm以下の個体が多い[書籍 5]

体色は灰褐色 - 褐色で[RL 1]、極めて太い捕獲脚になった前脚の先端には1本の爪があり[RL 1][注 3]、その爪で獲物を挟みつけて捕食する[書籍 6]。また後脚は遊泳脚になっており、特に脛節は偏平で幅広く長毛が密に列生する[RL 1]

口吻は短く[RL 1]、先端が鋭利な鞘状になった口吻の中には細い針上の「口針」という注射器・ストローのような器官が収納されている[書籍 6]。腹端には伸縮自在の呼吸管があり[RL 1]、成虫・幼虫とも水中に潜りながら呼吸する際には呼吸管を伸ばして水面上に突き出して呼吸する[書籍 7]

翅は発達し、不透明な白色で大きな後翅を持つ[RL 1]。前翅・後翅は飛行中に前翅裏側の縁にあるフック状の器官で連結されることにより1枚の大きな翅のようになり、力強く飛翔することができる[書籍 8]。また翅の裏には水をよく弾く毛が密に生えており、呼吸時には呼吸管を通じて取り込んだ空気を毛の中の隙間に取り入れ、腹部前方(翅の下)の気門から体内に取り入れる[書籍 7]。なお幼虫時には翅が発達していないが腹側に成虫の翅の下と同じく毛が密生しており、その毛の中に空気を貯蔵して毛の下にある気門で呼吸するため、水中では幼虫の腹が白く光って見える[書籍 7]。なお幼虫は水面が揺れているとうまく呼吸ができず、水に入れた状態で運ぶと死亡する恐れがある[書籍 7]

幼虫[編集]

1齢幼虫は孵化して数時間で独特の縞模様[注 4]が現れるが[書籍 9]、脱皮して2齢幼虫に変態するとほとんど消え、3齢幼虫になると完全に消える[書籍 10]。1齢幼虫が縞模様を有する理由についてはよくわかっておらず、タイワンタガメ・アメリカコガタタガメの1齢幼虫は縞模様がなく黒っぽい色をしている点から、市川憲平・北添伸夫(2009)は「縞模様よりも体が黒っぽいこと(保護色)が重要なようだ。タガメは大きくなれば天敵はほとんどいないが、1齢幼虫時には天敵が多いため水底にいることが多く、泥の上で目立たないように黒っぽい体色になっている」と考察している[書籍 10]。2齢幼虫 - 終齢幼虫(5齢幼虫)は全身が淡緑色である[RL 1]

市川・北添(2009)は6月に飼育した際の幼虫期間の記録として「1齢幼虫は2 - 3日、2齢幼虫は3 - 4日、3齢幼虫は4 - 6日、4齢幼虫は約1週間、5齢幼虫は約2週間。水温が低かったり餌が少なかったりするとさらに日数がかかる」と述べている[書籍 11]。5齢幼虫は羽化直前(3,4日前)は餌を食べなくなり、薄緑色だった体が次第に赤みを帯びるようになる[書籍 12]

近縁種との区別[編集]

後述するタイワンタガメと類似しているが本種の方が一回り小型であるほか[書籍 13]、複眼・前胸背の形状で区別できる[RL 1]。また同じコオイムシ科のコオイムシはタガメに比べはるかに小型で[注 5]、タガメと異なり巻貝を食べることから体調に比してかなり長い口吻を持つ点・成虫になっても前脚の爪が2本ある点から区別できる[書籍 15]

生態[編集]

主に水田・水田脇の堀上など生物の生息密度が高く[書籍 16]水草が豊富な止水域に好んで生息する[書籍 17]。池沼にも生息するが[書籍 18]、タガメなど獲物を待ち伏せて捕食する水生昆虫にとっては水深が5cm - 20cm程度の浅い水深の方が適している[書籍 16]

タガメはカブトムシなどと同様に純自然的な環境ではなく、むしろ人の手の加わったいわゆる里山で繁栄してきた昆虫である。彼らにとって、自然の河川や湖沼は流速や水深がしばしば過剰であり、獲物となる適当な大きさの水生小動物も相対的に少ないため、人工的な水域である水田・堀上(温水のための素掘りの水路)・用水路などに最も好んで生息する。

行動[編集]

魚類・ゲンゴロウ類などのように素早く泳ぐことはできず、水草・杭・流木などの足場に斜め下向きか逆向きの状態で掴まって静止していることが多い[書籍 19]。自然下において人間が接近しても逃げたり隠れたりはせず・広げていた前脚を縮めてそのままじっとしていることが多く、直接体に触れたり、足場となっている水草を動かしたりすると慌てて逃げ出す[書籍 19]。都築(2003)はこのタガメの生態を「枯葉のような体形・地味な色をしたタガメは下手に泳いで鳥類などの天敵から逃げ隠れるより、周囲に紛れてじっとしているほうが天敵に発見されにくいためだろう」と推測しており[書籍 20]、実際に自然下で越冬した個体は全身に泥・藻類が付着していることが多い[書籍 20]

夜行性で、昼間は体を半分ほど泥の中に潜らせてじっとしていることが多いが、夜間は体を水面に浮かせて獲物を待ち伏せたり、繁殖のために動き回っているため、昼より夜の方が観察しやすい[書籍 21]

飛翔行動[編集]

タガメは6月中旬以降から飛翔するようになるが、日中に飛翔した記録がないため「おそらく夜間にしか飛ばない」と考察されている[書籍 22]。冬眠から覚めて陸地から水辺に移動する際、餌・繁殖相手を求め別の池・水田へ移動する際、稲刈りの準備で水田の水がなくなった際、越冬場所の陸地へ移動する際などに飛翔し、一夜で3キロメートル(km)ほど移動するほか、前年夏に背番号を着けたタガメが翌年の夏に7km先の小さな山を越えた隣町で捕獲された記録もある[書籍 22]。急に飛翔することはできず、草など足場に登って胸部を前後に動かす準備運動が必要となる[書籍 23]

強い正の走光性を持ち、タガメが多数生息する地域では野球場のナイター照明・パチンコ店・大型スーパーマーケットなど強い光源へ飛来することが多い[書籍 8]。降り立った先がグラウンドなどの場合はしばらくして再び飛翔して水辺へ戻る場合が多いが、パチンコ店駐車場・街灯・道路脇の自動販売機などへ飛来した個体は車に轢かれて死亡(ロードキル)するものも少なくない[書籍 8]。実際にタガメの生息地がごくわずかしか残っていない大韓民国(韓国)では最大の生息地付近で水田から遠く離れた住宅地の水銀灯へタガメが多数飛来しており、現地の研究者が「元の水辺に戻れないのではないか?」と懸念しているほか、市川・北添(2009)も「周囲に安全な水辺が多くない場所では強すぎる照明がタガメの生存を脅かす可能性がある」と指摘している[書籍 8]

日本でも徳島県徳島市内では1960年代ごろから各地に水銀灯が設置されたが、眉山徳島駅前のバスターミナルなどでは照明が設置されるとしばらくは付近から大量のタガメが飛来してそこで死亡し、踏みつけられたタガメの死体が山のようになっていたほどだった[RL 5]。しかしわずか1 - 2年で付近のタガメ個体群が絶滅状態になったことでその現象もなくなったほか、山間部でも街路灯・および学校校庭に設置された照明装置がタガメの激減・絶滅の要因となった[RL 5]

摂食活動[編集]

成虫・幼虫とも獲物を待ち伏せて襲い掛かり捕食する肉食性昆虫で、目の前で動いている捕獲可能なもの[書籍 24](捕食可能な大きさの獲物)[書籍 25]ならば何でも襲い掛かって捕食する[書籍 24]。かつてはドジョウフナなど淡水魚が水田におけるタガメの重要な餌となっており[書籍 26]、1980年代ごろまでは日本各地の棚田でドジョウのいる水田が残っていたため、そのような水田ではタガメに食い殺されたドジョウの死体を多数目にすることができたが[書籍 24]、ドジョウ・フナが水田から姿を消した近年ではカエル類がタガメにとって最も重要な餌となっており[書籍 26]、その種類はトノサマガエルシュレーゲルアオガエルニホンアマガエルなどである[書籍 25]。このほか水田に餌が少ない時はカブトエビを捕食したり、小川の水草の中に潜んで川の小魚[書籍 26]カワムツ)などを捕食する場合もあるほか、ギンヤンマの幼虫など大型のヤゴ類を含めた水生昆虫も食べる[書籍 24]

これらのような無脊椎動物・魚類両生類だけでなく[書籍 24]ヘビ[書籍 24][書籍 25][書籍 27][3][注 6]カメ爬虫類)をも捕食する場合がある[書籍 29]。陸生の肉食性昆虫には他の昆虫・クモ類を捕食するカマキリ・スズメバチなどがいるが、魚類・両生類ばかりか時には爬虫類といった脊椎動物を常食する昆虫はタガメ類以外にはほとんど例がない[書籍 24]

獲物を捕食する際にはイネなどに留まって獲物を待ち伏せ、獲物が接近すると大きな前脚で襲い掛かる[書籍 26]。鎌状の前脚で獲物を捕獲するとその直後に針状の口吻を突き刺し[書籍 24]、口吻内に収納された口針を伸ばして消火液を注入する[書籍 6]。この消化液は肉質を溶かすだけでなく骨までボロボロにしてしまうほど強力なもので[書籍 30]、毒性分も含まれているため[書籍 26]、大きなトノサマガエルでもタガメに捕まってから数分で動かなくなる[書籍 24]。そして「吐き出した消化液で獲物の肉を消化液で溶かして液状にする」という「体外消化」を行い、溶けた肉質を吸収する[書籍 24]。獲物を仕留めた後、タガメは時々口吻を刺す場所を換えつつ1,2時間程度でカエル・魚を食べ尽くす[書籍 24]

「獲物の血を吸う」という表現がなされる場合があるが、決して血液のみを吸っているわけではなく[書籍 24]、タガメに食べられた生物の死骸は小さなものでは溶けかかった骨・皮膚しか残らず、大型の獲物も溶かされた肉質が流れ出しそうなほど柔らかくなる[書籍 30]。そのため、タガメの生息地調査をする際にはふやけたカエルの死骸が目印となる[書籍 26]。あまり小さな生き物には関心を示さず[書籍 24]、1齢幼虫は自分よりはるかに大きな小魚でも集団で襲い掛かり捕食するほどである[書籍 31]

その獰猛さから「水中のギャング」とも呼ばれ、かつて個体数が多かった1950年代 - 1960年代ごろまでの書籍では「錦鯉などの養魚池に大きな被害をもたらす害虫」と記載されていた[書籍 25]。実際に市川・北添(2009)は「1980年代に岐阜県の錦鯉養殖池を観察した際、タガメに食い殺された錦鯉の幼魚の死体が水面に多数浮いていた」と述べている[書籍 25]

繁殖[編集]

繁殖は5月下旬に始まり[書籍 32]、産卵場所は大気中の植物の表面である[書籍 33]。繁殖期の成虫は日が暮れて周囲が薄暗くなると急に動き出し、時々植物などに留まっては♂もしくは♀が中脚を屈伸させて波を起こし[書籍 32]求愛行動を行う。その波を感じ体制花見を送り返すが、これにより♀が近くにいることを知った♂は産卵場所を決めると激しく中脚を屈伸させて合図を送り、♂が止まっている植物に♀が近づいてくる[書籍 32]。やがて♂が♀に重なり、♂が後脚で♀の体側をこすると雌が交尾器を突き出して交尾を開始する[書籍 32]

雌雄は水面下で30 - 60分程度の長時間にわたる交尾を計1,2回行うとともに何度か植物の茎などを登り、産卵場所を確認する[書籍 32]。産卵場所を確認すると♀はそのまま水中に降りず♂を待ち、♂が水中から登ってきて数分間の短い交尾をしては水中に降りる行為を数回繰り返す[書籍 32]。そして♀は産卵管(交尾器)から白い泡とともに最初の卵を植物の茎に産み付けるが、♂はその後も数分間隔で♀の下へ上ってきては交尾を繰り返し、♀は♂が水中へ降りている間に3 - 10個程度の卵を産み付ける行為を繰り返し、最終的に産卵される卵の数は80 - 100個に達する[書籍 32]。このように頻繁に交尾を繰り返す理由は「♂が自身の精子で♀の卵を受精させる確率を高くするため」とされている[書籍 32]

卵は長径4.4mm・短径2.3mmの大きさである[書籍 33]。タガメに限らずコオイムシ科昆虫の卵は十分な酸素・水がないと生育できず、コオイムシ類の場合は♂成虫の背中に産み付けられた卵を水中の酸素濃度が高い場所へ持っていくことで水中の溶存酸素を取り込んで生育できるが、よりサイズが大きいタガメの卵は水中で必要な量の酸素を得ることができない[書籍 34]。そのためタガメは濃い虫類と異なり卵を空気中に産むこととなったが、水生昆虫として進化したタガメの卵は他の空気中に産卵する昆虫の卵と異なり卵の表面に乾燥を防ぐワックス層が失われていたため、生育には♂の世話が必要不可欠となる[書籍 33]

♀は産卵後にその場から飛び去るが[書籍 32]、♂はそのまま卵のそばに留まり、空気中にある卵が乾燥死しないよう孵化するまで卵に水を与えながら育てる[書籍 35]。♂の親成虫は夜間に数回以上植物などを登り、卵塊に覆いかぶさることで体表に付着した水・自身が飲み込んできた水を卵に与える[書籍 32]。この時、♂親は時々覆いかぶさる場所を変えて異なる卵に吐き出した水を与えるほか、卵塊がある場所に直射日光が当たる場合は炎天下でも数時間以上卵塊に覆いかぶさることで卵の乾燥を防ぐ[書籍 32]。産卵後に卵塊を♂親から離して放置すると卵は乾燥死してしまうが、親から引き離してもスポイトなどを用いて1日に4,5回水をかけ続ければ無事に孵化させることができる[書籍 32]

卵の中の胚は♂親から与えられた水を吸収して成長し、繁殖期初期には約2週間・梅雨明け後は約1週間ほどで孵化する[書籍 32]。孵化は通常夜間 - 早朝に行われ[注 7]、まず先端部分が半球状に割れて黄色い幼虫の頭部が押し出されると、やがて体のほとんどが卵殻から抜けたところで脚が固まるまでしばらく休む[書籍 32]。そして脚が固まると幼虫たちは水面へ散るように落ちていく[書籍 32]

卵塊破壊行動[編集]

タガメは雌雄ともひと夏に数回繁殖行動を行うが、卵の孵化期間は高温ほど早くなる上、どの温度帯でも♀が次に産卵可能になるまでの期間は卵の孵化期間より短い[書籍 37]。そのため、産卵準備のできた♀が♂との交尾を求めても♂は卵を保育している最中となり、♂が不足する事態となる[書籍 37]。そのため、♀は限られた期間中に自身の子孫を確実に残す目的で繁殖目的の♂を手に入れる必要があることに加え、仮に♂が先に保育している卵が先に幼虫へ孵化した場合、自分が産卵した卵が孵化した際には先に孵化したその幼虫たちにより共食いされるリスクを抱えることとなる[書籍 38]。それらのリスクに対処し、自身の子孫を残すため♀は♂が保育している卵塊を破壊する「子殺し行動」を取る[書籍 38]。タガメ以外にも「子殺し行動」はライオンハヌマンラングールなど他の動物でも見られるが、その行動理由は「種の繁栄・保存のため」ではなく「自分自身の子孫数を最大にするため」である[書籍 39]

体内の卵が成熟した♀は日没後に♂を探して泳ぎ回り、卵の世話をしていない♂と遭遇できればそのオスと交尾できるが、保育中の♂は♀が接近すると前脚を振り上げて♀を追い払おうとする[書籍 37]。しかしタガメは通常♀の方が♂より大きいため、前脚を使った争いでは♂を圧倒して追い払うと卵塊のある場所まで登り、それまで♂が守っていた卵塊を前脚で破壊する[書籍 37]。♂は卵を守ろうと懸命に抵抗するが、通常は♀より小柄であるためほとんどは失敗に終わり水中へ降ろされてしまい、その間に卵塊を破壊される[書籍 37][注 8]。♀が卵塊を破壊し続けている間、♂はその♀と交尾する場合もある[書籍 37]。卵数が10個以下になると♂は保護行動を断念してその場でその♀と交尾し、♀も破壊活動を中止して自分の卵を産み付け、♂に保護させる[書籍 37]

ただしすべてのタガメ類が卵塊破壊を行うわけではなく、アメリカ合衆国産のタガメの一種 Lethocerus medius の場合は♂が1匹目の♀の産卵した卵を保護している最中に別の♀へ求愛行動を行い、その♀は既存の卵塊を破壊せずその直近に自らの卵塊を産み付け、♂がそれら2個の卵塊を同時に並行して保護する行動が観察されている[書籍 40]。この「子殺し行動」とは正反対の「2卵塊並行保護」行動はアメリカタガメ Lethocerus americanus でも観察されたほか、日本でも市川憲平が1997年に鹿児島県内の池で「2卵塊並行保護」と思しき卵塊を観察している[書籍 40]。市川はその後、休耕田を活用して造成したタガメ保全用ビオトープで1999年6月に2個の卵塊を並行して同時に保護しているタガメの♂成虫を観察した[書籍 40]。しかしこの時は2個の卵塊の位置が上下で離れており、♂は下の卵塊に水を与えただけで水中に降りることが多く、上にあった卵塊は下にあった卵塊(56卵すべて孵化・孵化率100%)と異なり80卵中47卵(孵化率58.75%)しか孵化しなかった[書籍 40]

幼虫[編集]

幼虫は5回の脱皮を繰り返し、40-50日で成虫となる。

越冬・寿命[編集]

冬になると陸に上がり、草の陰や石の下など水没しない場所を選んで成虫越冬をする。越冬の様式は、水中で緩慢な代謝活動を続けつつ春を待つ個体と、上陸して落葉や石などの下で完全に活動を停止させて過ごす場合がある。この内、どちらかといえば、後者のほうがケースとしてメインであると考えられている。

都築裕一は寿命に関して「自分たちが屋外で飼育している個体は最低2年は生き、3年生きる個体も珍しくない。このことから自然下のタガメも約2,3年は生きると考えられるが、室内飼育の場合は1年で死んでしまう場合も多い」と見解を述べている[書籍 41]。一方で海野和男・高嶋清明・筒井学(1999年)は「野生下では羽化した翌年に繁殖を済ませてその年の秋に死んでしまう1年の寿命の成虫が多いと考えられるが、飼育下では2年越しで繁殖を行う個体がいるほか、稀に2回越冬して3年生存する個体もいる」と解説している[書籍 42]

天敵[編集]

成虫の天敵はサギなどの鳥類で、かつてトキコウノトリツルが日本の水田に多数いた時代には彼らもまたタガメの天敵だった[書籍 43]。また近年ではオオクチバスブラックバス)・ブルーギルウシガエルといった侵略的外来種もタガメにとって脅威となっているが、ウシガエルはオタマジャクシの際にタガメに捕食される[書籍 44]

また1齢幼虫にはかなり多くの天敵がおり、同種間で盛んに共食いするほか、タイコウチを筆頭にミズカマキリコオイムシマツモムシといったタガメと同じ水生カメムシ類ギンヤンマの幼虫(ヤゴ)・ゲンゴロウの幼虫などの水生昆虫たちに捕食される[書籍 45]。特に最大の脅威となるタイコウチが多数生息する水田ではタガメは1齢幼虫段階で多くが捕食されてしまいほとんど生育できないが、2齢幼虫に変態するとタイコウチに襲われることは少なくなる[書籍 45]

3齢幼虫まで成長すれば同じタガメ以外に天敵はいなくなるが、2齢幼虫以降は同種間の共食いが激しくなり、野生下でも大型の幼虫が小型幼虫を捕食したり、成虫が幼虫を捕食する事例が頻繁に観察されている[書籍 45]。このことから繁殖期間中にタガメが頻繁に飛翔移動する理由については「同じ場所で繰り返し繁殖すると、新しい幼虫たちがそれより前に生まれた幼虫たちに捕食されるリスクが高いためだろう」と考察されている[書籍 45]。特にコンクリート製水路に流されると隠れる場所がほとんどないため高確率で共食いする[書籍 45]

保全状況[編集]

タガメは日本において人間が稲作のために作り上げた水田・ため池用水路などを主な生活場所としており、人間が開墾して水田面積を広げるとともにその生息域を拡大してきた[書籍 41]

かつてはタガメに多くの地方名が存在することからも伺い知るように日本人にとってはなじみ深い昆虫の一種であり[書籍 41]、ゲンゴロウと並んで田んぼを代表する昆虫だったが[書籍 17]、第二次世界大戦後に農薬散布・圃場整備が盛んにおこなわれたことにより急速に生活場所を奪われていった[書籍 41]。特にタガメは以下の国立環境研究所による研究結果が示すように農薬に極めて弱くその直接的・間接的な悪影響を受けており[書籍 41]BHCピレスロイド系などの農薬は一度の使用でタガメの復活を困難にしてしまう[書籍 17]

  • 農薬により96時間以内にタガメ1齢幼虫が半数死亡する濃度(LC50)は以下の通り[書籍 41]
  • また、上記のような農薬1ppm溶液に1時間暴露したグッピーをタガメの1齢幼虫に与えると1回の摂食ですべての幼虫が死亡することも確認された[書籍 41]

農薬・洗剤などによる化学的水質汚染にはかなり耐性が低い一方で有機的な水質汚染にはかなり強く、清流域にはむしろほとんど見られない一方で「化学的汚染物質が流れ込まず、かつ生物相が豊かな水域」である水田・水田脇の藻が生えた堀上・流れが緩やかで淀んだ用水路などでは多くの個体が観察できる[書籍 30]

現代日本の淡水域は「山間部など一部を除いてほとんどが殺虫剤除草剤・合成洗剤といった化学的汚染物質で汚染されている」という状態であるほか、大型耕作機械導入を目的とした土地改良・圃場整備により年間を通じて湿田状態だった水田は乾田化され、それまで生物相が豊富だった素掘りの用水路は流れが速く隠れ場所もないことから生き物がほとんど生活できない三面コンクリート張りに改修されたことでタガメをはじめ、ドジョウ・カエル(オタマジャクシ)などタガメの餌となる生物を含む多くの生物が生活場所を奪われた[書籍 46]

止水域における食物連鎖の頂点に近い位置にいるタガメにとっては餌となる生物たちの減少は種の存続を脅かす問題であり、タガメたちが生き続けていくために汚染されていないきれいな水質・豊富な餌が揃った環境が必要で[書籍 19]、環境省は本種を平地の湖沼における指標昆虫に指定している。さらに近年はタガメ・ゲンゴロウなどに限らず日本の水辺の在来生物にとってはブラックバス・ブルーギル・アメリカザリガニ・ウシガエルなど侵略的外来種による生態系破壊も大きな脅威となっている[書籍 19]

また農薬・農地改良(圃場整備)・侵略的外来種の存在だけでなく道路照明が増加したことにより照明に飛来して路面に落ち死亡する個体が増加したことも生息数激減の要因とされているほか[RL 6]、インターネット上で売買されるなど採集圧が高まっていることも要因となっている[RL 7]

現在の生息地は山間部の池・水田にほぼ限られており[書籍 17]、本種は2018年時点で絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト)に分類されているばかりか[RL 8]、都府県によっては絶滅危惧I類、もしくは既に絶滅種に指定している自治体もある[書籍 17]

近縁種[編集]

タイワンタガメを揚げた料理(バンコク)

かつて本種が分類されていた属 Lethocerusをはじめタガメに近縁な水生昆虫たちは寒帯を除く世界中に分布しているが、特に南アメリカ東南アジアアフリカなど熱帯には大型種が多数生息しており、それらの地域では今後もさらに新種が発見される可能性が高い[書籍 47]

タガメ・ゲンゴロウ類など肉食性水生昆虫は外国産のカブトムシクワガタムシと異なり植物防疫法による日本国内への輸入の制約はないが、輸入時にはカブトムシ・クワガタムシと同様に植物検疫所で正規の審査を受ける必要があるほか、国によっては輸出を禁止している場合があるため、現地で採集などして生態を入手する場合は事前に現地の法律・条例を調べておく必要がある[書籍 47]

タイワンタガメ L. indicus
東南アジアに広く分布し[書籍 48]、日本でも沖縄県八重山諸島与那国島で捕獲された記録があるが長年確認されていない[書籍 4]。日本本島のタガメより大型で90mm近くにまで成長する種で、♂の成虫には「キンモクセイに似た芳香がある」とされ、ベトナムタイ王国(タイ)などでは食用にされる[書籍 48]
飼育は日本産のタガメより難しいがナンベイオオタガメよりは容易で、外国産タガメの中では比較的日本国内で入手しやすい部類に入る[書籍 49]
ナンベイオオタガメ Lethocerus grandis
アマゾン熱帯雨林を中心とした南アメリカに分布する世界最大のタガメで、その体長は100mm以上にも達する[書籍 50]。南米およびキューバには本種と同様に100mm以上にまで大型化する巨大種L. maximusが分布し、こちらも「ナンベイオオタガメ」の通称で呼ばれるほか「体長30cmに達する巨大タガメが生息する」ことも噂されていたが正式な報告はない[書籍 50]
両種は酷似しているが、前脚の縞模様はL. grandisが斜め方向・L. maximusが縦方向である点で区別できる[書籍 50]。両種とも日本のタガメと比べると圧倒的な大きさであるが前脚は小さく、あまり大きな獲物を捕らえることは日本のタガメほど得意ではない[書籍 50]。その一方で2種とも後脚が大きく発達しており、都築裕一は「その大きさ・重量感は昆虫よりカニなど甲殻類に近い印象」と述べている[書籍 50]
2種とも環境変化に弱く、長期飼育・繁殖・累代飼育はかなり難しい[書籍 50]。飼育時には日本のタガメよりさらに大きい60cm以上の容器を使用して内部温度を27℃以上に保つなど、生息地である熱帯地域の気候を再現することが最低条件であるほか、前脚が小さいため水深は15cm程度を目安として小さめの餌を多めに与える必要がある[書籍 50]。なお原産国の1つであるブラジルでは熱帯魚以外の輸出が禁止されているため日本国内への入荷は不安定でかなり少ない[書籍 50]
ナンベイタガメ L. annvilipes
南アメリカに生息する大型種で90mm内外。身体の大きさに比べ、やや細身の体型。
アメリカタガメ L. americanus
和名通りアメリカに住む。80mmほどで、タイワンタガメに似た形状。
フロリダタガメ L. grisens
フロリダ半島(アメリカ合衆国フロリダ州)に生息する体長45mm - 60mm程度のタガメで、前脚は小さく溝がない[書籍 49]。アメリカタガメよりやや小さい。
メキシコタガメ L. uhneil
アメリカ合衆国の中央部 - 東部・メキシコにかけて生息する[書籍 49]。体長は日本産タガメより小型の40mm - 50mm程度でスマートな体形だが、前脚は日本産タガメと同様に体長の割に大きく、複眼も日本産タガメのように逆ハの字型になっている[書籍 49]
オーストラリアタガメ L. insulanus
オーストラリア北部に生息。止水域を住処とし、体長60mmと日本のタガメと同じ位の大きさ。
アフリカタガメ L. cordfonus
アフリカケニアナイロビに分布する。タイワンタガメと同じくらいのサイズ。

人間との関わり[編集]

後述のようにペットとして飼育されるほか、江戸時代幕末には旧因幡国(現在の鳥取県東部)で子どもが好んでタガメの卵を火で炙って食べていた[書籍 51][書籍 52]。タガメの卵は稲の茎などに帯状に産み付けられるため当時は「イナゴの卵」と信じて食べられていたようだが、タガメの卵であることがわかってからは食べる人が減った[書籍 51][書籍 52]

また三宅恒方が1919年(大正8年)に取りまとめた『食用及薬用昆虫に関する調査』(農事試験場特別報告第31号)では「千葉県・静岡県・京都府・岡山県で卵を炙って食べていた」と記録されているほか[書籍 53]民間療法における利用に関しても「茨城県・長野県で本種を焼いたり、乾燥した卵塊を噛み砕いたりして傷・疳などへの薬として用いる」と記録されている[書籍 54]。このほか「地方によりイナゴの卵と称し炙って醤油をかけて食べていた」「栃木県那須地方では卵を油で炒めておやつ代わりに食べたほか、同地方のコイマス養魚場では稚魚の害虫だったタガメの成虫を捕獲し、味噌と一緒にすり潰し焼いて食べていた」という記録がある[書籍 51]

なお中国では漢方薬の原料として用いられるほか、国内では佃煮にされていた地方もあった。

飼育[編集]

「大型で迫力があり大型のカエルまで捕食する獰猛さ」「希少さ」からペットとして人気が高い昆虫であり、近年では環境問題を考えるための教材として小学校などで飼育・観察される場合がある[書籍 55]。しかしタガメの生態を踏まえた適切な飼育方法を知らずに飼育する飼育者も多いため、適切な飼育方法がわからないまま早死にさせたり、ペットショップでもタガメがプラスチックケースに水とわずかな水草を入れただけで販売されている場合がある[書籍 55]

飼育下では適切な方法で飼育すれば約2,3年は生きる昆虫であり、春 - 晩秋にかけて長期間にわたり活動するほか、飼育容器(水槽)内に本来の生息地に近い環境を整えればタガメ本来の生態を観察したり、採卵・幼虫飼育などによる累代飼育を楽しんだりできる[書籍 55]

タガメはゲンゴロウなどゲンゴロウ類とは違い繁殖期を除いて水槽内を頻繁に泳ぎ回ることはないため、繁殖期以外は10cm - 15cm程度の小型容器でも飼育可能だが、長期飼育の場合は生息環境を考慮して単独飼育の場合で最低30cm以上、複数飼育(2,3頭)の場合は最低45cm以上の飼育容器を使用することが望ましい[書籍 20]。また時期によっては活発に動き回ったり飛翔行動をとるため、脱走を防ぐため飼育容器には蓋をする必要がある[書籍 20]

水深は単独飼育の場合は多少深くても構わないが、複数飼育の場合は5cm - 15cmほどにして餌を捕らえやすくしないと共食いが起こりやすくなる[書籍 56]。タガメ属は熱帯・亜熱帯由来の南方系の昆虫であるが、飼育下における死亡率が高い季節は冬季ではなく春先・晩秋の気温が不安定な時期や夏季である場合が多いため、飼育時の水温は30℃以下を目安に管理し、1日の温度変化が少なく直射日光の当たらない場所に飼育容器を設置することが望ましい[書籍 30]

水質に関しては農薬・洗剤など化学的な水質汚染はともかく有機的な水質汚染に強いことから神経質になる必要はないが、汚染状態がひどい水で飼育していると口吻周辺にミズカビが生えてくる場合があることや、餌用の魚・水草を状態良く飼育する意味も含めてある程度きれいな水質(餌用の魚類が状態良く飼育できる程度)を維持する必要がある[書籍 30]。ミズカビは直接死亡の原因になることがなくても生体に悪影響を及ぼす可能性があるため、ミズカビが発生したら濃度0.5%程度の食塩水で円水浴をすることが好ましい[書籍 30]。なお都築裕一は「実験的にある種のコケ防止剤(錠剤・液剤)を使用してみたところ直接的な影響はなかった」と述べているが[書籍 30]、一方でカルキ抜き剤などに関しては「容量を間違えると水生昆虫に悪影響が出る可能性がある上、魚用の病気治療剤・コケ防止剤も多くのものが水生昆虫生体に影響を与えるため、いずれも使用しない方が無難。もし使用する場合は直接メーカーに問い合わせて安全性を確認した上で使用すべき」と解説している[書籍 57]。獲物の肉を溶かして食べる生態に加えて多量の尿酸を含む液体の排泄物を多量に排泄することから水質悪化が早いため、タガメを飼育する際は濾過装置を使用して水質を維持することが推奨される[書籍 30]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ タガメ亜科は従来Lethocerus 属1属のみに分類とされており、本種の学名もLethocerus deyrolli とされていたが、近年になって本種(タガメ)はLethocerus 属から分離され新たにKirkaldyia 属として分類された[書籍 1]ITISの登録データにおいても「L. deyrolliK. deyrolli のシノニムである」と記載されている[論文 1]
  2. ^ 「日本国内で記録されたことがある水生昆虫類」としては1957年に南西諸島八重山列島与那国島(沖縄県)で初記録されたタイワンタガメ(体長65mm - 80mm)がいるが、1970年代以降は記録されていない。記録された範囲を「日本本土」(北海道本州四国九州)に絞るかもしくは「2019年現在まで継続的に生息が確認されている水生昆虫類」に限れば本種が「日本最大の水生昆虫」となる[RL 2]
  3. ^ 前脚の爪は幼虫期は2本だが、羽化する際にその片方が極端に短くなり成虫では1本になる[書籍 6]
  4. ^ 1齢幼虫の縞模様は「暗褐色」[RL 1]もしくは「黄色と黒」と形容される[RL 4]
  5. ^ コオイムシは体長17mm - 20mmと小さく、やや大型のオオコオイムシでも体長22mm - 25mmである[書籍 14]
  6. ^ ヒバカリヤマカガシの幼体[書籍 25]マムシの成体など[書籍 28]
  7. ^ 正常に発育した卵は深夜・早朝に数時間以内で孵化し、孵化率も高い[書籍 36]。一方で状態の悪い卵塊は日中にも孵化するが、卵は時間をかけてバラバラに孵化する上に孵化率も悪い[書籍 36]
  8. ^ ただし雌雄間の体格差が小さい場合、♂が♀を撃退して卵の保護に成功する場合もある[書籍 37]
  9. ^ 東京都区部多摩地域のいずれにおいても1970年代の記録を最後に確認されておらず「絶滅種」とされている[RL 9]
  10. ^ 県内には生息可能な水域が現存せず少なくとも1980年代以降の確実な記録がないため「絶滅種」に指定されている[RL 10]
  11. ^ 1930年代には県内各地の湖沼などに生息していたが、1981年を最後に約30年間にわたり確認記録がなく再発見も期待できないため2015年度改訂版の昆虫類第2次レッドリストで「絶滅種」となった[RL 12]
  12. ^ 長野県内では1960年以前こそ県下至る所のため池・小川に生息していたが、同県は高冷地の田畑が多いことから農薬が多く使用され、農薬禍により1960年代にほぼ姿を消した[RL 13]。2004年発行のレッドデータブックでは「絶滅種」に指定されている[RL 13][RL 15]
  13. ^ 県内産の個体は1951年に小松市丸ノ内で採集された個体が現存しているのみで、1970年代まではかほく市輪島市に生息していたが、2009年のレッドデータブックでは「近年は北陸3県(福井県・石川県・富山県)でもほとんど確認されていない」として「絶滅種」となっている[RL 4]
  14. ^ 県内では1970年以降40年以上にわたり生息確認がなく、2018年10月刊行のレッドデータブックでは「絶滅種」となった[RL 16]。2000年 - 2002年の間に2件の目撃情報があったほか、2002年以降も目撃情報があった地点の近辺・隣接する愛媛県側の実地調査を行ったが、いずれも生息は確認できなかった[RL 16]
  15. ^ 県内ではかつて津軽地方を中心に生息していたが平川市石郷(1978年)・三戸郡新郷村西越(1980年)を最後に採集例がなく、2010年改訂版レッドデータブックでは「最重要希少野生生物Aランク」(環境省の絶滅危惧I類に相当)に指定されている[RL 17]
  16. ^ 県内では北魚沼郡守門村(現:魚沼市)の守門村守門中学校(現:魚沼市立守門中学校)にて1979年6月23日に得られた記録が最後で「絶滅危惧I類」に指定されている[RL 18]
  17. ^ 県内では2012年時点で過去40年以上にわたり記録されておらず「絶滅危惧I類」に指定されている[RL 19]
  18. ^ 県内では2001年発行のレッドデータブックで「県内で生息が確認されているのはわずか1か所のみと、産地が非常に局地的で個体数も少ない」として「絶滅危惧I類」に指定されており[RL 5]、さらに2013年改訂版レッドデータブックでは「近年確認されていない」として「絶滅危惧IA類」に指定されている[RL 20]
  19. ^ 県内ではかつて普通種だったが強力な農薬の使用で激減して1970年代までにほとんど姿を消した上、かつてあまりにも普通に生息していたためか、記録・標本が1950年(昭和25年)に採集された1例しか残っていない[RL 22]。2004年3月刊行のレッドデータブックでは「絶滅危惧I類(CR+EN)」に指定されている[RL 22]
  20. ^ 県内では農薬・耕作放棄・圃場整備・乱獲などにより激減し、2005年までは西予市(1996年 - 2005年)・北宇和郡鬼北町でそれぞれ生息・繁殖が確認されていたが、前者生息地は耕作放棄により陸地化し、後者も圃場整備を行って以降は確認できなくなり現在は確実な生息地が確認できないことから「絶滅危惧1類(CR+EN)」に指定されている[RL 23]。西予市の生息地では2005年時点の個体群は極めて脆弱で、確認できた卵塊は通常の3割程度の卵数しかなかった[RL 23]

出典[編集]

書籍出典

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論文出典

環境省および各都道府県のレッドデータブック・レッドリスト

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報道記事

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その他出典

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参考文献[編集]

環境省などの発表[編集]

書籍[編集]

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  • 今森光彦『水辺の昆虫』18、山と渓谷社〈ヤマケイポケットガイド〉、2000年3月20日、初版第1刷、178-183頁。ISBN 978-4635062282。
  • 内山りゅう『田んぼの生き物図鑑』山と渓谷社〈ヤマケイ情報箱〉、2005年7月1日、初版第1刷。ISBN 978-4635062596。
    • 内山りゅう『増補改訂新版 田んぼの生き物図鑑』山と渓谷社、2013年3月5日、初版第1刷、112-115頁。ISBN 978-4635062862。
  • 内山りゅう『今、絶滅の恐れがある水辺の生き物たち タガメ・ゲンゴロウ・マルタニシトノサマガエルニホンイシガメメダカ』山と渓谷社〈ヤマケイ情報箱〉、2007年6月5日、初版第1刷、51-68,160-163。ISBN 978-4635062602。 - 内山は編集・写真を担当、文の執筆は市川憲平。
  • 三橋淳『世界昆虫食大全』八坂書房、2008年11月25日、初版第1刷。ISBN 978-4896949209。
  • 市川憲平、北添伸夫『タガメ』農山漁村文化協会〈田んぼの生きものたち〉、2009年3月20日、初版第1刷。ISBN 978-4540082313。
  • 三橋淳『昆虫食 古今東西』工業調査会、2010年2月20日、初版第1刷。ISBN 978-4769371755。
  • 三橋淳『昆虫食文化事典』八坂書房、2012年6月20日、初版第1刷。ISBN 978-4896949971。
  • 市川憲平『タガメとゲンゴロウの仲間たち』4、サンライズ出版琵琶湖博物館ブックレット〉、2018年3月27日、初版第1刷。ISBN 978-4883256341。

論文[編集]

関連項目[編集]