タッピング奏法

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タッピング奏法
ブライアン・メイ

タッピング奏法とはギターおよびエレクトリックベースの奏法の1つで、指板上のを指で叩き付けて押弦したりそのまま横に弾いたりして音を出す。

単にタッピング(Tapping)とも言う。

概要[編集]

ギターにはフィンガリングを行う指で弦を指板に叩き突けるように勢い良く押下するハンマリング・オンと、押弦している指を弦に引っ掻けるようにして離脱させる事で発音させるプリング・オフの2つの奏法がある。基本的にこの2つを間断なく繰り返して2音を反復することをトリル奏法と呼ぶ。そしてこのトリル奏法を拡張したのがタッピング奏法である。イタリア人のヴィットリオ・カマーデスは、タッピング奏法をイタリアのテレビで披露したことがある[1]

  • 片手タッピング

2音間に留まらず、3音以上の旋律をハンマリングとプリングで行う奏法。レガートな音になるため、ピッキング奏法と合わせて速弾きに表情を付けられる。

  • 両手タッピング

両手タッピングは上述のトリル奏法を拡張したもので、文字通り両手でハンマリングとプリングを行う奏法。この奏法により指板を広く使う音域の広い旋律を演奏できるようになり、鍵盤楽器向けの楽曲もギターで演奏できるようになる。この奏法をスタンリー・ジョーダンの言葉の通りに"タッチスタイル"と呼ぶことも多い。

両手タッピングという奏法自体は古くから存在し、ギターメーカーのグレッチ社に在籍していたギターデザイナーであり、ジャズ・ギタリストであるジミー・ウェブスターによって既に1950年代に確立され、彼は教則本まで執筆した。しかしこの奏法が一般に受け入れられるまでは20年以上の時間を要した。チャップマン・スティックの演奏はこの奏法が基本となっている。

歴史[編集]

エリック・モングレインのラップタッピング

「ライトハンド奏法」は日本独自の呼称であり、これをさして現在ではタッピングという定義が一般的である。タッピングの歴史は古く、戦前には早くもジャズ・ギタリストのロイ・スメックがタッピング奏法を披露していた。戦後は50年代にジャズ・ギタリスト、バーニー・ケッセルもタッピングを試みた。ロックの時代となった60年代にはキャンド・ヒートのハーベイ・マンデル[2]や、ディープ・パープルのリッチー・ブラックモアが、タッピング奏法を見せていた[3]。1978年、 ヴァン・ヘイレンのギタリストであるエドワード・ヴァン・ヘイレンがデビューアルバム『炎の導火線』収録の「暗闇の爆撃」で披露したタッピング奏法がライトハンド奏法としてギター雑誌等で紹介され、タッピング奏法をライトハンド奏法と呼ぶ誤使用が続くことになった。

しかしそれ以前に、ジェネシススティーヴ・ハケットが既にタッピングによる奏法を行っており、クイーンブライアン・メイも右手でハーモニクス・ポイントに触れて倍音を出すタッチ・ハーモニクス奏法(「タッチ・ハーモニクス奏法」もエディの発明とされるのは虚偽である(この奏法はクラシックギターの技法でフラジオレットと呼ばれるものと同じとみられる))と併せて行なっていたり、ゴング時代からアラン・ホールズワースも行なっていた。またZZ TOPのビリー・ギボンズもタッピング奏法をおこなっており、スティーヴ・ハケットもジェネシスの1971年のアルバム『怪奇骨董音楽箱』(The Musical Box及びThe Return of the Giant Hogweed)において演奏している(当時の映像からも確認できる)ので、一概に誰が最初に演奏したかを決めるのは難しいと思われる。 また、ジャズ・ギターではタッチと呼ばれて比較的よく使われる技法でもあった(タッチ自体はトリルに応用されるテクニックではない)。

左手とともに右手も押弦に使用することは誰でも思い付き得ることで、以前に誰かが思い付いて実行していたと考えてもよい。ライトハンド奏法が独立した奏法として扱われるに至った理由はいくつか考えられる。主なものは弦の太さなどが考えられる。

エレクトリックギターに於いてはライトゲージと呼ばれる細めの弦が好んで用いられる。ジミ・ヘンドリックスエリック・クラプトン登場以来ロック・ギターに於いてはチョーキングを多用するのが当たり前となったことで、よりチョーキングのしやすい細い弦が好まれるようになっていたと見られる。しかし半音下げチューニングでトーンの変更、張力のドロップは行っていたようでこのようなセッティングは後のブルース系ギタリストの標準となる。もしくは以前からこのようなスタイルが存在していたということも考慮に入れられるだろう)。実際、今でもチョーキングをあまりしないオーソドックスなジャズ・ミュージシャンの多くは太いゲージの弦を使っている。これは、歪ませないギター・サウンドに於いてはその方がコードバッキングの際にリッチなサウンドになるからである。一方フォークギタークラシックギターは太い弦を用いるのが普通であり、特にフォークギターは張力も強いため指板上で指を叩き付ける程度の力では大きな音を出しにくい。エレキ・ギターは、強く歪ませると小さな音でも拾われやすいためピッキングとハンマリング・プリングの音量差が出にくくなり、奏法として使いやすくなる。

両手の親指を除く全ての指を用いて鍵盤楽器のようにタッピングを行う両手タッピングについては、1960年代後半に考案されていたチャップマン・スティックが楽器としては元祖であり、奏法自体は1950年代に前述したウェブスターによって既に完成していた。それをスタンリー・ジョーダンなどがギター奏法に置き換えたものである。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Roberto Angelini Official Page (2013-07-02), Vittorio Camardese ospite a "Chitarra Amore Mio" (RAI-1965) LA NASCITA DEL TAPPING, https://www.youtube.com/watch?v=UmTQYquqxSY 2018年8月11日閲覧。 
  2. ^ http://harveymandel.com/
  3. ^ Ritchie Blackmore, Interviews”. www.thehighwaystar.com. 2018年8月11日閲覧。