ツェントラル鉄道Deh120形電車

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導入当時のDeh4/6 904号機、3基の台車のうち中央のものにラック式駆動装置が搭載される
歴史的車両として動態保存されているDeh4/6 914号機(新形式Deh120 011-2号機)、同じく動態保存されている旧型客車を牽引した列車、マイリンゲン駅、2013年
Deh4/6 914(Deh120 011-2)号機、原形の緑色塗装に復元、車体側面の窓配置は左右で若干異なる、マイリンゲン駅、2013年
粘着区間専用に改造されたDe110 005-6号機、 ツェントラル鉄道塗装、ラック式のDeh120形では正面窓周りが赤となる、マイリンゲン駅、2006年
De110 002-3号機、 ツェントラル鉄道塗装、車体側面の窓配置は左右で若干異なる、インターラーケン・オスト駅、2009年

ツェントラル鉄道Deh120形電車(ツェントラルてつどうDeh120がたでんしゃ)は、スイス中央部の私鉄であるツェントラル鉄道Zentralbahn (ZB))で使用されていた山岳鉄道用ラック式荷物電車である。なお、本項ではDeh120形を粘着区間専用に改造したDe110形荷物電車についても記述する。

概要[編集]

2005年1月1日にルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道[1]と統合してツェントラル鉄道となったスイス連邦鉄道(スイス国鉄)の唯一の1m軌間の路線で、途中にリッゲンバッハ式ラック区間を有するブリューニック線は、1888-89年にルツェルン - ブリエンツ間が、1916年にブリエンツ - インターラーケン・オスト間が非電化で開業し、蒸気機関車客車貨車を牽引する列車で運行されていた。しかし、その後第二次世界大戦の影響による石炭の価格高騰により1941年11月18日ルツェルン - マイリンゲン間が、1942年12月24日にマイリンゲン - インターラーケン・オスト間がそれぞれ電化され、これに際して1941-42年にスイス国鉄がFhe4/6形の901-916号機として16両を導入したラック式の荷物電車が本形式であり、その後の称号改正によって1962年にDhe4/6形[2]1974年にDeh4/6形[3]となり、1993年には新しいUIC方式の形式名であるDeh120形となっている。

ブリューニック線は途中ブリューニックの峠超え区間であるギスヴィール - メイリンゲン間のうち約16kmが最急勾配128パーミルのラック区間であるが、その他の約50km以上の粘着区間はほとんどが最急勾配20パーミル以下の勾配の緩やかな路線であり、蒸気機関車による運行であった際にはG3/4形などの粘着区間専用機と、HG3/3形などのラック区間兼用機とを併用していたが、Fhe4/6形は運行の効率化を図るため1機種で全線の運行を賄うこととしている。そのため、粘着区間では最高速度、定格速度を確保し、ラック区間での牽引力を確保しつつ定格速度を低く設定する目的で、当時フルカ・オーバーアルプ鉄道[4]HGe4/4Iなどの中形電気機関車にも採用されていた2軸ボギー台車にラック用ピニオンと粘着動輪とを同一の主電動機で駆動する駆動装置を2基組込んで車軸配置をBo'zzBo'zzとする方式ではなく、粘着動輪のみの2軸ボギー台車の間にラック区間用ピニオンを搭載したピニオン台車を配置する方式の車軸配置Bo'2'zzBo'としているのが特徴となっている。

製造は車体、機械部分、台車をSLM[5]、電機部分、主電動機をBBC[6]SAAS[7]およびMFO[8]が担当しており、高圧タップ切換制御により1時間定格出力920kW/970kW、牽引力62.4/129.0kN(粘着区間/ラック区間)を発揮する強力機[9]であり、最大勾配120パーミルで60tの列車を牽引可能な性能を持つ。なお、それぞれの機番と製造年、製造所、SLM製番、UIC形式・機番の履歴は下記の通りであり、当初の計画ではBBC製の電機品を搭載する機体を901-907号機、MFO製のものが908-912号機、SAAS製のものが913-916号機となる予定であったが、工期の都合によりBBC製とSAAS製とで一部機番が変更となっている。

  • 901 - 1941年8月6日 - SLM/BBC - 3727 - Deh120 006-2
  • 902 - 1941年9月27日 - SLM/BBC - 3730- Deh120 007-0
  • 903 - 1942年2月11日 - SLM/SAAS - 3733 - De110 000-7
  • 904 - 1942年3月31日 - SLM/BBC - 3736 - Deh120 008-8
  • 905 - 1942年5月2日 - SLM/BBC - 3739 - De4/4 121(LSE) - De110 021
  • 906 - 1942年5月9日 - SLM/SAAS - 3741 - De110 001-5
  • 907 - 1942年6月22日 - SLM/MFO - 3742 - Deh4/4 122(LSE) - De4/4 122(LSE) - De110 022-1
  • 908 - 1941年10月11日 - SLM/BBC - 3729 - De110 002-1
  • 909 - 1941年11月29日 - SLM/MFO - 3732 - Deh120 009-6
  • 910 - 1942年3月17日 - SLM/MFO - 3735 - De110 003-2
  • 911 - 1942年4月27日 - SLM/MFO - 3738 - Deh120 010-4
  • 912 - 1942年6月12日 - SLM/MFO - 3740 - De110 004-9
  • 913 - 1941年10月4日 - SLM/SAAS - 3728 - De4/4II 913 - De110 005-6
  • 914 - 1942年2月2日 - SLM/BBC - 3731 - Deh120 011-2
  • 915 - 1942年3月13日 - SLM/BBC - 3734
  • 916 - 1942年3月23日 - SLM/SAAS - 3737 - Deh120 012-0

(称号改正:製造時Fhe4/6→1962年Dhe4/6→1974年Deh4/6→1993年以降Deh120)

仕様[編集]

車体[編集]

運転台、丸形ハンドルのマスターコントローラーが設置され、立って運転する形態
  • 車体は両運転台式でスイス国鉄Re4/4I電気機関車やレーティッシュ鉄道Ge4/4I電気機関車と同様の軽量車体で、列車の荷物車を省略するために機関車とせず、車内に荷物室を設けて荷物電車としている。正面は貫通扉付の丸妻、側面には開口幅1100mm、開口高さ1680mmの荷物扉を片側2箇所配置し、側面窓のうち、片側の側面の中央部の機械室部分の2枚の窓を空気取入用のルーバーとしている。なお、荷物室扉は外吊式であるが、車体中央の機器室部の車体幅が扉の厚さ相当分だけ広くなって前後の運転室および荷物室部の車体幅2550mmに対して機械室部は2652mmとなっており、この部分の側面と扉が同一面となっているほか、屋根もこの機械室部の幅に合わせてあるため前後部では左右に荷物室扉の厚さ分だけ張出している。また、車体は床面高1130mm、屋根高3261.5mm[10]であるが、前位側の集電装置および高圧引込線設置個所は屋根高3201.5mm[11]の低屋根構造となっている。荷物室内には折畳式の荷物棚および小型の郵便仕分棚が設置されており、製造当初は郵便仕分棚部を除く窓には保護棒が設置されていた。
  • 室内は前位側から長さ1323mmの運転室、3400mmで面積7.5m2[12]の荷物室、4200mmの機械室、3400mm、7.5m2の荷物室、1323mmの運転室の配置となっており、機械室部の車両左側は幅458mmの通路となっており、前後の荷物室をつないでいる。
  • 運転室は左側運転台で、運転席は立って運転する形態で折畳式の補助席のみが設置されており、運転台中央にはスイスやドイツで一般的な円形のハンドル式のマスターコントローラーが設置され、その左側に列車用自動空気ブレーキ弁とピニオン用直通ブレーキ弁、右側には動輪用直通ブレーキ弁と運転モード切換、粘着牽引力調整用の2つのハンドル、奥側にはスイッチ盤と電流計と電圧計が計4基設置されている。また、運転台左壁面には圧力計と速度計、反運転台側機器箱に手ブレーキハンドルが設置され、運転室横の窓は下落とし式となっており、乗務員室扉は設置されていない。
  • 正面は貫通扉付の3枚窓のスタイルで、貫通扉上部と前面下部左右の3箇所に丸型の前照灯が設置されており、上部のものは標識灯との縦2連になっている。連結器は台車取付で本形式から新たに採用された+GF+式[13]ピン・リンク式自動連結器となっており、ブレーキ用空気管1本を同時に連結できるほか、従来のブリューニック線車両が装備していたピン・リンク式連結器とも連結が可能であった。また、同じく先頭部には電気暖房用の電気連結器とブレーキ用の空気連結器、大型のスノープラウが設置されている。なお、電気暖房はインターラーケン・オストで接続する同じ1000mm軌間の私鉄であるベルナーオーバーラント鉄道[14]との客車の直通を考慮し、通常交流1000Vとしているスイス国鉄の標準軌の車両と異なり、交流1500Vを使用している。
  • 車体塗装
    • 製造時はスイス国鉄標準の車体は緑色で手すり類が黄色、車体側面中央下部にスイス国鉄の紋章とその両側に「SBB」および「CFF」のレタリングが入り、正面左下に機番が入る。屋根および屋根上機器が銀もしくはライトグレー、床下機器と台車はダークグレーである。
    • 1980年代には車体がスイス国鉄の新しい標準色となった赤色となり、側面中央のスイス国鉄の紋章の代わりに側面左下にスイス国旗に矢印をアレンジしたスイス国鉄のシンボルマークが入れられ、正面の機番が貫通扉下部に移された。
    • その後正面左側に"Brünig"のレタリングが入り、機番が正面右側に移されている。
    • ツェントラル鉄道では側面下部を白として、左側に赤丸をベースとしたZBのシンボルマークをデザインしたものとなった。側面中央下部にはZBのマークとロゴが、左側下部にはツェントラル鉄道の主要株主[15]であるSBBのマークとロゴが入り、正面は左側にツェントラル鉄道のマークが、右側に機番が入る。
    • 室内は運転室内が薄緑色、荷物室内がベージュである。

走行機器[編集]

ラック式駆動装置が搭載される中間台車
  • 車体中央の機械室内に油冷式の主変圧器、タップ切換器、オイルポンプとオイルクーラー、主電動機冷却ファン、空気ブレーキ用の機器ラック等の主要機器が、屋根上の前位側に菱形の集電装置と主回路用フューズもしくは空気遮断器を使用した主開閉器、残りの部分全長に渡ってブレーキ用抵抗器が、床下のピニオン台車脇に蓄電池とスクリュー式の電動空気圧縮機、空気タンクが設置されている。
  • 制御方式はAe8/14形電気機関車で採用された高圧タップ切換制御を採用しており、主変圧器の連続定格出力は走行用1000kVA、列車暖房用AC1500V 16 2/3Hz、200kVA、補機用AC220V 16 2/3Hz、35kVAとなっている。
  • 走行装置は粘着駆動用の2基の台車の間にラック機構と支持車輪を設けた台車を設置して軸配置をBo'2zz'Bo'とし、台車枠の車端側に設置された連結器と台車間を連結する連結棒とで引張力を伝達する方式とした。なお、軸重は前位側から10.0/9.8/7.2/7.2/9.8/10.0t(運転整備時)もしくは10.75/10.55/7.2/7.2/10.55/10.75t(最大積載時)に設定されている。
  • 粘着駆動台車はプレス鋼の溶接組立て式で軸距2500mm、動輪は車輪径900mmのスポーク式車輪で軸箱支持方式は円筒案内式、牽引力伝達は台車枠の下を通る車体支持梁と台車枠横梁間のセンターピン間で伝達されて左右各30mmの横動量が設定されており、枕ばねは重ね板ばね、軸バネはコイルばねとしている。主電動機は台車枠に装荷され、ギヤ比は5.31で1段減速されて吊掛け式の駆動装置で動輪に伝達されるほか、基礎ブレーキ装置は両抱式の踏面ブレーキでブレーキシリンダは車体装荷、車端側動輪に砂撒き装置と台車枠に砂箱が設置されている。
  • ピニオン台車は内側台枠の鋼板組立て台車で、両端に車輪径710mmで左右各140mmの横動量が設定された支持車輪があり軸距は3440mm、その内側に有効径860mmのピニオン軸が設置されており、軸距は2350mmである。主電動機は台車上に装架され、ブレーキドラム付の中間軸を経て2段減速でピニオンに伝達され、ギヤ比は11.42である。なお、ラック方式はラックレールがラダー型1条のリッゲンバッハ式である。ピニオン台車の牽引力は前後の台車に連結棒で伝達されるため心皿は無く、台車の前後端部に枕木方向に設けられた重ね板バネにより車体荷重がかかる仕組みとなっている。また、基礎ブレーキ装置として主電動機とピニオン間の中間軸にドラムブレーキが設置されるほか、支持車輪にも片押式の踏面ブレーキが設置され、いずれもブレーキシリンダは台車装荷となっている。
  • 主電動機はいずれも交流整流子電動機で、1時間定格出力は粘着駆動用が出力230kW×4台、ピニオン駆動用が255kW×2台となっており、粘着区間走行時は粘着駆動用主電動機を2S2Pに接続して920kW、ラック区間走行時は粘着駆動用主電動機を4Sに接続した460kWとピニオン駆動用主電動機を2Sに接続した510kWの計970kW、連続定格は同様に粘着区間は836kW、ラック区間は880kWとなる。また、ラック区間走行時は運転台の粘着牽引力調整ハンドルで粘着用駆動装置の牽引力を31-55%に調整可能であるほか、いずれの電動機も冷却は冷却ファンによる強制通風で、機械室内の1台の冷却ファンから床内の風洞を通じて冷却気が送風される。
  • ブレーキ装置として以下の5系統のブレーキを装備している。
    • 主電動機、主制御器と屋根上のブレーキ用抵抗器による発電ブレーキ
    • 列車用の自動空気ブレーキ、粘着動輪、ピニオン台車の支持車輪、ラック用ピニオンおよび牽引する列車全体に作用。
    • 粘着動輪に作用する直通ブレーキ
    • ピニオンに作用する直通ブレーキ。
    • 粘着動輪及びピニオンに作用する手ブレーキ
  • 発電ブレーキは主電動機の界磁を6台直列に接続して蓄電池で励磁し、電機子の発生電圧とブレーキ用抵抗器でブレーキ力を確保するラック区間専用のもので、電動空気圧縮機と主電動機冷却ファンを駆動することができるほか、運転台の粘着牽引力調整ハンドル粘着用駆動装置の牽引力を35-50%に調整可能となっている。

主要諸元[編集]

  • 軌間:1000mm
  • 電気方式:AC15kV 16.7Hz 架空線式
  • 最大寸法:全長14600mm、車体幅2652mm、屋根高3261.5mm、全高3886.5mm(パンタグラフ折畳時)
  • 軸距、車輪径
    • 粘着駆動台車:2500mm、車輪径900mm
    • ピニオン台車:支持車輪3440mm/車輪径710mm、ピニオン2350mm/有効径860mm
    • 減速比:5.307(動輪)、11.42(ピニオン台車)
  • 台車中心間距離:4700mm×2
  • 自重:54.0t
  • 荷重:3.0t
  • 荷室面積:15.0m2
  • 走行装置
    • 主制御装置:高圧タップ切換制御
    • 粘着駆動用主電動機:交流整流子電動機×4台
    • ピニオン駆動用主電動機:交流整流子電動機×2台
  • 牽引トン数:240t(18パーミル・粘着区間)、60t(120パーミル・ラック区間)
  • ブレーキ装置:発電ブレーキ、空気ブレーキ、手ブレーキ
Deh120形性能一覧
項目 定格 連続定格 1時間定格 最大[註 1]
粘着/ラック 粘着区間 ラック区間 粘着区間 ラック区間 粘着区間 ラック区間
粘着区間用
駆動装置
電圧 332V 185V 332V 185V 465V 235V
電流 725A 800A 1150A
出力(主電動機軸) 209kW 104.5kW 230kW 115kW -
主電動機回転数 1690rpm 845rpm 1610rpm 815rpm 2350rpm 1030rpm
動輪周上牽引力 54.1kN 62.4kN 98.1kN
ラック区間用
駆動装置
電圧 - 365V - 365V - 465V
電流 725A 800A 1150A
出力(主電動機軸) 231kW 255kW -
主電動機回転数 1890rpm 1820rpm 2300rpm
ピニオン周上牽引力 57.9kN 66.7kN 104.9kN
粘着+ラック 電流 725A 800A 1150A
出力 836kW 880kW 920kW 970kW -
動輪/ピニオン周上牽引力 54.1kN 111.9kN 62.4kN 129.0kN 98.1kN 202.9kN
速度 54km/h 27km/h 51.5km/h 26km/h 75km/h 33km/h
発電ブレーキ電流 - 760A - 900A
  1. ^ 各項目はそれぞれリンクしない

De110形[編集]

概要[編集]

粘着式専用に改造され、シャトルトレインとして運行されるDe110 005号機、正面の斜めの手摺や標識灯が増設され、窓回りが黒となっている、スイス国鉄塗装、ヘルギスヴィール駅
De110形とともシャトルトレインとして運行される制御客車のABt 901号車、スイス国鉄塗装、ヘルギスヴィール駅
  • HGe101形の導入に伴い、Deh4/6形の一部を区間列車の牽引用に転用することとなり、軽量化と保守作業の軽減を目的として、1987年に913号機のR3と呼ばれる大規模修繕に併せてピニオン台車を撤去する改造を実施して粘着区間専用のDe4/4II形の913号機としている。この改造ではピニオン台車とそれに関する機器類を撤去し、前後の台車を連結棒とリンクで接続して牽引力を伝達するようにし、ラック区間専用であった発電ブレーキ機構を撤去しているが、屋根上のブレーキ用抵抗器が残されるなど、ピニオン台車の撤去以外に外観上の大きな変化はない。
  • その後スイス国内の列車がパターンダイヤ化されたBahn+Bus 2000計画によってブリューニック線の区間列車をシャトルトレイン化することとなり、1992-1993年にかけてTyp III系客車の1/2等車を先頭車化改造したABt 900-905号車を用意するとともに、Deh4/6 903、906、908、910、912号機が粘着区間専用に改造されてDe110 000-004号機となり、併せてDe4/4II 913号機も同様の改造を行った上でDe110 005号機に改番されている。主な改造内容は以下のとおり。
    • ピニオン台車を始めとするラック区間用の機器、電機品の撤去
    • 制御車からの遠隔制御用に重連総括制御装置および61芯の電気連結器、放送用の電気連結器の追加
    • シャトルトレインの先頭となる前位側の運転台の機器更新、座って運転する形態への改造、運転室側面窓へのバックミラーの追加、前面下部左側の前照灯横への標識灯への追加
    • 台車軸ばねへのオイルダンパの設置
    • 電気配線の更新
    • 主制御装置のタップ切替器の更新とタップ切替時のショック対策の実施、マイクロプロセッサーを使用した制御装置への改造
    • 粘着区間での発電ブレーキ回路とサイリスタを使用した励磁装置の追加
    • 側面中央部の冷却気導入口を雨水、風雪の侵入防止対策を強化したものに交換
  • なお、改造はシュタッドラー[16]によってマイリンゲン工場で実施され、さらに、2000年頃には前位側の正面貫通扉横の手摺を扉横の縦型のものから大型のものを斜めに設置するように追加改造をし、2004年には信号装置をZSI 127に変更している。
  • De110形への改造に併せて粘着区間専用の機体は正面の窓周りを黒色に塗装してラック式のDeh120形との識別としており、これはツェントラル鉄道塗装となった後も継続されている。
  • Deh4/6形およびDe4/4II形からDe110形への改造年は以下の通り
    • Deh4/6 903 - De110 000-7 - 1993年
    • Deh4/6 906 - De110 001-5 - 1992年
    • Deh4/6 908 - De110 002-3 - 1992年
    • Deh4/6 910 - De110 003-1 - 1992年
    • Deh4/6 912 - De110 004-9 - 1992年
    • De4/4II - De110 005-6 - 1992年

主要諸元[編集]

  • 軌間:1000mm
  • 電気方式:AC15kV 16.7Hz 架空線式
  • 最大寸法:全長14600mm、車体幅2652mm、屋根高3261mm、全高3886mm(パンタグラフ折畳時)
  • 軸距:2500mm
  • 車輪径:900mm
  • 減速比:5.307
  • 台車中心間距離:9400mm
  • 自重:42t
  • 走行装置
    • 主制御装置:高圧タップ切換制御
    • 主電動機:交流整流子電動機×4台(1時間定格出力:230kW、連続定格出力:210kW)
  • 性能
    • 牽引力:1時間定格62kN、最大102kN
    • 牽引トン数:240t(18パーミル・粘着区間)
    • 定格速度:51.6km/h(1時間定格)、54km/h(連続定格)
  • 最高速度:75km/h
  • ブレーキ装置:空気ブレーキ、手ブレーキ

譲渡[編集]

元ルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道のDe4/4 121号機、ツェントラル鉄道塗装、2010年まで車体中央に白帯と機番が入る、シュタンスシュタート駅、2007年
  • ブリューニック線と同様にBahn+Bus 2000計画によってパターンダイヤ化されるルツェルン近郊区間の運行用として、1990年にHGe101形電気機関車の導入によって余剰となった905、907号機がルツェルン-スタンス-エンゲルベルク鉄道に売却され、それぞれ1991年、1992年に粘着区間専用のDe4/4 121号機およびピニオン台車を残したDeh4/6 122号機となった。
  • 塗装は車体は赤をベースに正面窓周りが黒で車体裾部に白帯が入り、側面および正面左側の白帯部にLSEのロゴが、正面右側の白帯部に機番が入るものとなった。
  • その後121号機は1992年に、122号機は1994年にスイス国鉄の機体と同様のシャトルトレイン対応化改造が実施されたが、スイス国鉄のDe110形とは両端の運転台とも改造が実施されている、正面下部の前照灯横の標識灯が左右共に追加されているなどの差異がある。また、122号機は同時にピニオン台車を撤去して粘着区間専用に改造され、De4/4 122号機となった。
  • ツェントラル鉄道塗装となった後も旧LSEのこの2両については白帯と正面の機番が残ったものとなっていたが、2010年には白帯と機番が撤去されて、正面窓周りの黒塗装の端部が斜めに処理されている以外は他の機体と同一の塗装となったほか、軸ばねへのオイルダンパの追加改造も実施されている。

運行・廃車[編集]

ブリューニック線、手前の列車を緑色塗装のDeh120形が牽引、アルプナッハシュタット駅、2000年
インターラーケン・オストからスイッチバック式のマイリンゲンに到着したDe110 002-3号機が牽引する列車、2009年
  • ブリューニック線は全長74.0km、高度差566m、最急勾配25パーミル(粘着区間)もしくは126パーミル(ラック区間)、最高高度1002m、高度差567mでルツェルン-インターラーケン間を結ぶ山岳路線で、ルツェルン湖からレマン湖に抜けるゴールデンパスラインの一部であり、スイス国鉄の唯一の1m軌間の路線であった。
  • 本形式は1941年11月18日のルツェルン - マイリンゲン間の電化開業に合わせてまずFhe4/6 901、902、908、913号機の4機が運行を開始し、11月29日にはFhe4/6 909号機が運行に入っている。その後翌1942年6月までに全16機が導入されてマイリンゲンに配置され、12月24日の全線電化開業後はルツェルンとインターラーケン間全線で旅客列車、貨物列車の牽引に使用されている。
  • Deh4/6形は1941年以降ブリューニック線唯一の本線用機として使用され、最大12両程度の客車を3重連で牽引することもあったが、1954年HGe4/4I形電気機関車が製造された後も同機が2両と少なく、不調気味であったこともあり、引続き主力として使用された。基本的な旅客列車の編成は以下の通り。
    • Deh4/6形 + 旧型鋼製客車3両(66t、定員180人)
    • Deh4/6形 + 軽量客車4両(66t、定員270人)
    • Deh4/6形 + Deh4/6形 + 軽量客車7両(120t、定員470人)
    • Deh4/6形 + Deh4/6形 + Deh4/6形 + 軽量客車10両(170t、定員680人)
    • HGe4/4I形 + Deh4/6形 + 軽量客車10両(170t、定員680人)
  • 915号機が1990年に事故廃車となっている。
  • 1986年にはラック区間で280kNの最大牽引力、粘着区間で100km/hの最高速度を発揮可能な新しいラック式電気機関車であるHGe4/4II形の試作機2機が導入され、その量産機であるHGe101形電気機関車が1989-1990年に8機導入され、主力として使用されるようになると次第に区間列車などを主に担当するようになった。
  • 1992-1993年に粘着区間専用に改造されたDe110形はルツェルン - ギスヴィール間およびマイリンゲン - インターラーケン・オスト間の、ルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道に譲渡されたDe4/4形はルツェルン - ヘルギスヴィール - ヴォルフェンシーセン間(ルツェルン - ヘルギスヴィール間はブリューニック線へ乗入)でシャトルトレインの牽引に使用されている。スイス国鉄では先頭車化改造されたABt 901-905号車および同じTyp III系の2等車をシャトルトレイン用に改造したB 501-512号車で編成を組み、ルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道では従来形の客車、制御客車で編成を組んでいる。なお、旧ルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道線のラック区間は最大261パーミルの勾配が連続するものであるため、高速/低速の2段切換式の駆動装置を持つBDeh4/4形電車が専用で使用されており、同鉄道へ譲渡当初ピニオン台車を残していたDeh4/6 122号機も粘着区間専用機として運行されていた。
  • 2004-05年に粘着区間専用の部分低床式電車であるABe130形が10編成導入され、ダイヤ面でもスイス国内の列車がパターンダイヤ化されたバーン2000計画による 旅客列車の運行系統の整理による運行効率化によって、ブリューニック線およびルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道でも2004年12月12日のダイヤ改正より昼間時間帯を中心に1時間ごとのパターンダイヤ化され、同時にルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道のルツェルン - シュタンス間およびブリューニック線のルツェルン - ギスヴィール間がそれぞれルツェルンSバーンのS4系統とS5系統に指定されると、同区間およびマイリンゲン - インターラーケン・オスト間の区間列車はABe130形が主力として運行されるようになり、De110形は一部の区間列車の牽引およびマイリンゲン - インターラーケン・オスト間のインターレギオの牽引に使用されるようになった。
  • 2006年初頭でも7機のDe110形が運行されていたが、その後も徐々に廃車が進み、2009年以降現在に至るまでは001-003号機の3機に旧ルツェルン-シュタンス-エンゲルベルク鉄道所属であった021-022号機の2機を加えた計5機が残存しており、2010年夏以降は全機がブリューニック線で運行され、特に2010年12月のエンゲルベルクトンネル開業後はHGe101形が新たにエンゲルベルク方面のレギオエクスプレスの牽引にも使用されるようになったため、マイリンゲン - インターラーケン・オスト間のインターレギオやレギオエクスプレスの牽引には本機がほぼ専用で使用されている。その後2012-13年に、旧型化した客車列車の置換用に、客室内にバーカウンター1箇所を設けた7両編成のABeh150形(通称ADLER[17])4編成と、3両編成のABeh160形(通称FINK[18])6編成が導入され、2013年冬ダイヤで同線の列車がこの両形式とABe130形、HGe101形と従来型の客車、制御客車によるシャトルトレインに置き換えられ、De110形は2014年までに全機が廃車となっている。
  • スイス国鉄でラック区間用のまま残った機体は称号改正により7機がDeh120 006-012号機となったが、その後廃車が進み、1997年頃には006、008、010-012号機の計5機が多客時の増発列車用として、2005年頃には008、011号機の2機がツェントラル鉄道塗装となって予備や事業用として運行されていた。その後2008年には旧Deh4/6 914号機であった011号機がスイス国鉄の歴史的機体に指定され、2009年に緑色塗装に復元されているほか、Deh120 012号機がマイリンゲン工場に残存している[19]。なお、アルプナハシュタットで旧Deh4/6 909号機であるDeh120 009号機がブリューニック線車両の保存団体であるブリューニック保存鉄道[20]によって静態保存されている。
  • 各機体の機番(旧機番)と廃車年月は以下の通り
    • De110形
      • De110 000-7(Deh4/6 903) - 1994年2月
      • De110 001-5(Deh4/6 906) - 2014年
      • De110 002-3(Deh4/6 908) - 2014年
      • De110 003-1(Deh4/6 910) - 2014年
      • De110 004-9(Deh4/6 912) - 2005年
      • De110 005-6(Deh4/6 913) - 2007年
      • De110 021-3(Deh4/6 905) - 2014年
      • De110 022-1(Deh4/6 907) - 2014年
    • Deh120形
      • Deh120 006-2(Deh4/6 901) - 2003年12月
      • Deh120 007-0(Deh4/6 902) - 1994年2月
      • Deh120 008-8(Deh4/6 904) - 2011年
      • Deh120 009-6(Deh4/6 909) - 1994年2月(静態保存)
      • Deh120 010-4(Deh4/6 911) - 2000年8月
      • Deh120 011-2(Deh4/6 914) - 歴史的車両として動態保存
      • Deh120 012-0(Deh4/6 916) - 保留車

脚注[編集]

  1. ^ Luzern-Stans-Engelberg-Bahn(LSE)
  2. ^ 形式記号のうち、荷物室を表す記号が"F"から"D"へ変更された
  3. ^ ラック式の電車の形式記号のうち、ラック式を表す"h"と電車を表す"e"の表記順をラック区間用ピニオンと粘着動輪とを装備する電車の場合"eh"、粘着動輪を装備せずラック区間用ピニオンのみを装備するラック区間専用電車の場合"he"として区別した
  4. ^ Furka-Oberalp bahn(FO)、現マッターホルン・ゴッタルド鉄道(Matterhorn-Gotthard-Bahn(MGB))
  5. ^ Schweizerische Lokomotiv- und Maschinenfablik, Winterthur
  6. ^ Asea Brown Boveri AG, Baden
  7. ^ SA des Ateliers de Sechéron, Genève
  8. ^ Maschinenfabrik Oerlikon, Zürich
  9. ^ 同時期の1940-1956年に製造されたフルカ・オーバーアルプ鉄道のHGe4/4I形ラック式電気機関車は1時間定格出力911kW、牽引力112.7kN、日本国鉄のED42形は1時間定格出力510kW、牽引力91/137kN(粘着区間/ラック区間)
  10. ^ 3261mmとする形式図もある
  11. ^ おなじく3201mmとする形式図もある
  12. ^ 7.6m2とする形式図もある
  13. ^ Georg Fisher, Sechéron
  14. ^ Berner Oberland Bahn(BOB)、暖房用電源として架線電圧の直流1500Vを使用している
  15. ^ ツェントラル鉄道の株式の66.0%を保有している
  16. ^ Stadler AG, Bussang
  17. ^ ドイツ語での意
  18. ^ Flinke, Innovative Niederflur-Komposition、ドイツ語でフィンチの意
  19. ^ 旧Deh4/6 916号機であった同機が歴史的車両とされているとする資料もあるが実際にはDeh4/6 914号機の標記の機体が歴史的車両となっている
  20. ^ Brünig Nostalgie Bahn(BNB)、他にもHGe4/4I形などがエンゲルベルク駅隣接の同鉄道車庫他で保存されている

参考文献[編集]

  • 加山 昭 『スイス電機のクラシック 15』 「鉄道ファン (1988)」
  • F. Steiner 『Brünigbahn-Gepäcktriebwagen Fhe4/6 der SBB』 「Schweizerische Bauzeitung (Vol.117/118 1941 )」
  • Claude Jeanmaire 「 Die Schmalspurige BrünigBahn(SBB)」 (Verlag Eisenbahn) ISBN 3 85649 039 6
  • Hans Schneeberger 「Die elektrischen und Dieseltriebfahrzeuge der SBB 1904 - 1955」(MINIREX) ISBN 978-3-90701422-6
  • Hans Waldburger, Martin Senn 「Die BrünigBahn SBB auf Schmar Spur」 (MINIREX) ISBN 3-907 014-01-4
  • Walter Hefti 「Zahnradbahnen der Welt」 (Birkhäuser Verlag) ISBN 3-7643-0550-9
  • Dvid Haydock, Peter Fox, Brian Garvin 「SWISS RAILWAYS」 (Platform 5) ISBN 1 872524 90-7
  • Hans-Bernhard Schönborn 「Schweizer Triebfahrzeuge」 (GeraMond) ISBN 3-7654-7176-3
  • 「SBB Lokomotiven ind Triebwagen」 (Stiftung Historisches Erbe der SBB)

関連項目[編集]