
トヨタ・ダイナミックフォースエンジン
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ダイナミックフォース・エンジンとはトヨタ自動車のトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)戦略の下に開発されたエンジン。
概要
高効率、低燃費を徹底的に追求すると同時に、ダイレクト感があり、滑らかで気持ちの良い加速性能を目指し、走りと環境性能を両立させるエンジンとして、トヨタ社内で放置されていた膨大な量の基礎研究やレースで得た知見を詰め込んで開発された。基本的には現在流行のダウンサイジングコンセプトよりも『ライトサイジング』の考え方であり、ターボではなく自然吸気を主眼としている[1]。
具体的には空気吸入量の増大のためのタンブル流(縦渦)の改善を主眼に、①バルブ挟角の拡大②ボア・ストローク比のロング化③ポート端部形状の変更とシート内径の拡大④新D-4S(マルチホールインジェクター)採用などを行い、「高速燃焼」を実現[2]。カムリのハイブリッドモデルに採用されたM25A-FXSでは燃焼効率41%を達成している。またエンジンのみのグレード(いわゆるコンベンショナルモデル)においても安定した低燃費を実現しており、消費者からは不評な声も多いアイドリングストップ機能の撤廃に繋がっている[3]。
開発生産においてもTNGA戦略に基づく完全新設計となる。これまで排気量や各国の規制対応に比例して膨大な数になったエンジン規格を整理し、燃焼形式・共通形状の部品・生産工程のモジュール化・相似形化を増やした上で、1気筒あたり排気量500ccを基本とし、気筒数を増減することで車両サイズに対応することで生産性の向上とコスト削減を図る、いわゆる『モジュラーエンジン』である。
2017年6月にカムリに搭載されたA25A型を皮切りに、V35A型、M20A型が登場している。また、2019年10月16日には4代目ヤリス(日本向け仕様は初代扱い)に先行搭載が予定されているトヨタオリジナルの新型直列3気筒DOHC12バルブガソリンエンジンのM15A型が公式発表された[4]。
なおこのダイナミックフォースエンジンシリーズからは、エンジン型式命名規則も変更されている。
ダイナミックフォーススポーツエンジン
ダイナミックフォース・スポーツ・エンジンは、ダイナミックフォースエンジンのスポーツ版として開発されたエンジンの呼称。ダイナミックフォースエンジンと同様の効率のよさがあり、それがパワーを引き出すことにつながっているとする。2020年の東京オートサロンでの世界初公開に先駆け、WRC(世界ラリー選手権)に参戦するヤリスをベースとするスポーツカーとして位置付けられているGRヤリスのプロトタイプに、M15A型に排気量拡大とターボチャージャー(ボールベアリングターボターボチャージャー)を組み合わせて強大なトルクとパワーを叩き出す拡張を行った直列3気筒 1.6リッターターボエンジンを搭載していることが2019年12月に公表され[5]、2020年1月10日に開幕した東京オートサロン2020にて、形式は「G16E-GTS」と発表された[6]。
系譜
- エンジン型式一覧の自動車用エンジンの系譜を参照。
バリエーション一覧
M15A型
M15A-FKS
- 名称:Dynamic Force Engine 1.5
- 種類:直列3気筒DOHC12バルブ
ガソリン車専用エンジン - 排気量:未公表
- 内径×行程:80.5mm×97.6mm
- 圧縮比:未公表
- 主要燃費向上策
- 出力・トルク
- 未公表
- 搭載車種
M15A-FXE
- 名称:Dynamic Force Engine 1.5
- 種類:直列3気筒DOHC12バルブ
ハイブリッド車専用エンジン - 排気量:1490cc
- 内径×行程:80.5mm×97.6mm
- 圧縮比:14
- 主要燃費向上策
- VVT-iE,ミラーサイクル
- 出力・トルク
- 搭載車種
- ヤリス(4代目・日本仕様初代)
- ヤリスクロス
G16E型
G16E-GTS
- 種類:直列3気筒DOHC12バルブ
ガソリン車専用エンジン - 排気量:1618cc
- 内径×行程:87.5×89.7mm
- 圧縮比:10.5
- 主要燃費向上策
- 出力・トルク
- 200kw
- 搭載車種
- トヨタ・GRヤリス(搭載予定)
M20A型
M20A-FKS
- 名称:Dynamic Force Engine 2.0
- 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
ガソリン車専用エンジン - 排気量:1986cc
- 内径×行程:80.5×97.6mm
- 圧縮比:13
- 主要燃費向上策
- D-4S,VVT-i,ミラーサイクル
- 出力・トルク
- 128kW/6600rpm•209N•m/5200rpm
- 搭載車種
M20A-FXS
- 名称:Dynamic Force Engine 2.0
- 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
ハイブリッド車専用エンジン - 排気量:1986cc
- 内径×行程:80.5×97.6mm
- 圧縮比:14
- 主要燃費向上策
- D-4S,VVT-iE,ミラーサイクル
- 出力・トルク
- 107kW/6000rpm•188N•m/4400rpm
- 搭載車種
A25A型
A25A-FKS
- 名称:Dynamic Force Engine 2.5
- 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
ガソリン車専用エンジン - 排気量:2,487cc
- 内径×行程:87.5mm×103.4mm
- 圧縮比:13
- 主要燃費向上策
- D-4S,VVT-i,ミラーサイクル
- 出力・トルク
- 搭載車種
A25A-FXS
- 名称:Dynamic Force Engine 2.5
- 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
ハイブリッド車専用エンジン - 排気量:2,487cc
- 内径×行程:87.5mm×103.4mm
- 圧縮比:14
- 主要燃費向上策
- D-4S,VVT-iE,ミラーサイクル
- 出力・トルク
- 130kW(177PS)/5,700rpm・220N・m(22.5kgf·m)/3,600 - 5,200rpm
- 135kW(183PS)/6,000rpm・221N・m(22.5kgf·m)/3,800 - 5,400rpm
- 搭載車種
- カムリ(AXVH70) - 横置き
- ダイハツ・アルティス(AXVH70N) - 横置き
- RAV4(5代目) - 横置き
- クラウン(AZSH2#) - 縦置き
- レクサス・ES(AZXH10) - 横置き
- カムリ(AXVH70) - 横置き
V35A型
V35A-FTS
- 名称:Dynamic Force Engine 3.5
- 種類:V型6気筒DOHC24バルブ
- 排気量:3,444cc
- 内径×行程:85.5mm×100.0mm
- 圧縮比:10.5
- 主要燃費向上策
- D-4S,VVT-i
- 出力・トルク
- 310kW(422PS)/6,000rpm・600N・m(61.2kgf·m)/1,600 - 4,800rpm
- 搭載車種
- レクサス・LS(VXFA50/55)
脚注
- ^ Motor fan illustrated vol.155 2019年8月10日 三栄書房刊
- ^ Dynamic Force EngineYou Tube トヨタ自動車株式会社 2016年12月5日
- ^ 例えば車重1290kg・2WDのカローラツーリングの1.8Lモデル(旧型2ZRエンジン)はWLTCモード総合14.6km/Lなのに対し、車重1570kg・4WDのRAV4(M20A型ダイナミックフォースエンジン)は15.2km/Lと上回っている
- ^ トヨタ、新型「ヤリス」世界初公開。12月中旬国内発表、2020年2月中旬発売 TNGAの「GA-Bプラットフォーム」に新開発1.5リッターエンジン搭載(Car Watch) - インプレス 2019年10月16日閲覧。
- ^ 【試乗インプレ】トヨタ、「GR ヤリス プロトタイプ」。市販予定、WRCに直結した3気筒 1.6リッターターボのスーパー4WDマシン(Car Watch) - インプレス 2019年12月20日閲覧。
- ^ 2020年01月10日TOYOTA、新型車GRヤリスを初公開-GRヤリスの特別仕様車 RZ“First Edition”とRZ“High-performance・First Edition”の先行予約を開始-