ネーム・アンド・シェイム

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ネーム・アンド・シェイム英語: Name and shame名指し非難[1]名指しと恥さらし[2])とは、"何らかの不正を犯した個人・集団・企業体を公表すること[注 1]"或いは"違法行為を働いた者又は個別の基準に達しなかった者を公表すること[注 2]"である 。

概要[編集]

この手法は国内外を問わず履行され、しばしば人権蹂躙の糾弾に用いられる[5]

特に、人権条約不遵守を名指しで批判され名誉や評判が毀損されうることは、名誉ある地位を占めることを希求する日本国をはじめ、自由民主主義国に対しては有効な牽制となることが期待される[1]

ネーム・アンド・シェイムによって残虐行為が減少し、汚名を与えられた政府が人権問題を改善する兆候を示す事例は、複数挙げられる[6][7][8][9]。一方で、ネーム・アンド・シェイムに意図されている効果があるかどうかを疑問視する研究者もいる[10]

公共政策での実施例[編集]

ネーミング(恥をかかせること(shame)を企図した、悪事を働いた個人や企業の名前の公表)は、コンプライアンスを促進あるいはコンプライアンス違反によって引き起こされる弊害の是正を目的とした公共政策の手段として用いられることがある。

事例としては以下のものが挙げられる:

  • イギリス政府は、従業員に最低賃金を支払うことができなかった企業を公表するスキームを2010年に確立した。政府声明によると、この施策が採用されたのは、「一部の雇用者が、金銭的な抑止力よりも、支払い慣行の詳細が公表されることで生じる社会的・経済的制裁に反応する可能性が高いことを政府が認識している[11]」からであるとしている。
  • 2013年、英国市民相談サービス英語版は、消費者に影響を与える悪しき慣行の是正に失敗した事業者にネーム・アンド・シェイムを与えるために、取引基準の規制当局による行動によって消費者権利章典英語版はバックアップされるべきであると勧告した[12]
  • バラク・オバマ政権下のアメリカ合衆国において、中華人民共和国による米国へのサイバー攻撃について官民からの名指し非難(2013年2月にマンディアント社英語版が報告書で中国人民解放軍61398部隊を名指し。2014年6月のカリフォルニアでの米中首脳会談では、オバマ米大統領が中国の習近平国家主席に直接懸念をぶつけた。2014年5月には米国司法省が5人の中国人民解放軍の軍人らを指名手配し、被疑者不在のまま起訴すると発表。)がなされたが、その後中国の攻撃は継続され、効果はなかったとされる[2]
  • 2018年12月、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は、イングランドウェールズでは34%、スコットランドでは46%に相当する、労働裁判所が裁定した賃金が未払いのままであったという政府調査の発表を受け[13]、裁定に従わずに支払いを怠った雇用主に風評圧力英語版をかけるために「ネーミング・スキーム」を導入した[14]
  • 2020年、日本国内での新型コロナウイルス感染症の流行を受け、感染拡大防止の為の自粛要請に従わず営業を続けるパチンコ店の店名を公表する動きが自治体に広がっている[15]
  • 2020年10月から日本において施行された改正建設業法では、著しく短い期間を工期とする請負契約の締結が禁止され、必要に応じて違反した発注者を公表することが規定された[16]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ "to publicly say that a person, group, or business has done something wrong[3]"
  2. ^ "say publicly who is responsible for something illegal that has happend, or who has not achieved a particular standard[4]"

出典[編集]

  1. ^ a b 寺谷, 広司 (2019年). “人権一般条約の実効性と公証性”. 日本国際問題研究所. 2020年5月3日閲覧。
  2. ^ a b 土屋大洋 (2015年11月30日). “効き目がなかった米国の対中サイバー交渉戦術”. Newsweek日本版. 2020年10月6日閲覧。
  3. ^ NAME AND SHAME | meaning in the Cambridge English Dictionary” (英語). dictionary.cambridge.org. ケンブリッジ大学出版局. 2020年5月3日閲覧。
  4. ^ Longman Dictionary of Contemporary English. Pearson Education. (2014). p. 1210. ISBN 978-1447954200 
  5. ^ Rousseau, Elise (2018-11-01). “Power, Mechanisms, and Denunciations: Understanding Compliance with Human Rights in International Relations” (英語). Political Studies Review 16 (4): 318–330. doi:10.1177/1478929918768979. ISSN 1478-9299. 
  6. ^ DeMeritt, Jacqueline H. R. (2012-11-01). “International Organizations and Government Killing: Does Naming and Shaming Save Lives?”. International Interactions 38 (5): 597–621. doi:10.1080/03050629.2012.726180. ISSN 0305-0629. 
  7. ^ Krain, Matthew (2012-09-01). “J'accuse! Does Naming and Shaming Perpetrators Reduce the Severity of Genocides or Politicides?” (英語). International Studies Quarterly 56 (3): 574–589. doi:10.1111/j.1468-2478.2012.00732.x. ISSN 0020-8833. https://academic.oup.com/isq/article/56/3/574/1796865. 
  8. ^ Hafner-Burton, Emilie M. (October 2008). “Sticks and Stones: Naming and Shaming the Human Rights Enforcement Problem” (英語). International Organization 62 (4): 689–716. doi:10.1017/S0020818308080247. ISSN 1531-5088. 
  9. ^ Hendrix, Cullen S.; Wong, Wendy H. (July 2013). “When Is the Pen Truly Mighty? Regime Type and the Efficacy of Naming and Shaming in Curbing Human Rights Abuses” (英語). British Journal of Political Science 43 (3): 651–672. doi:10.1017/S0007123412000488. ISSN 0007-1234. 
  10. ^ Snyder, Jack (undefined/ed). “Backlash against human rights shaming: emotions in groups” (英語). International Theory 12: 109–132. doi:10.1017/S1752971919000216. ISSN 1752-9719. 
  11. ^ Department for Business, Energy and Industrial Strategy, National Minimum Wage Law: Enforcement, published November 2017, accessed 3 January 2019
  12. ^ BBC News, Name firms that mistreat consumers says Citizens Advice, published 12 June 2013, accessed 3 January 2018
  13. ^ Department for Business, Energy and Industrial Strategy (2018), Naming Scheme for Unpaid Employment Tribunal Awards, published 17 December 2018, accessed 28 December 2018
  14. ^ Taylor, M. (2017), Good Work: The Taylor Review of Modern Working Practices, page 62, accessed 28 December 2018
  15. ^ 「怖いと思いながら打ってる」パチンコ、相次ぐ店名公表”. 朝日新聞デジタル (2020年4月28日). 2020年5月2日閲覧。
  16. ^ 改正建設業法が施行/著しく短い工期契約禁止”. 電気新聞ウェブサイト (2020年10月1日). 2020年10月6日閲覧。