ハキリアリ

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ハキリアリ
Leafcutter ant.jpg
ハキリアリ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハチ目(膜翅目) Hymenoptera
亜目 : ハチ亜目(細腰亜目) Apocrita
上科 : スズメバチ上科 Vespoidea
: アリ科 Formicidae
亜科 : フタフシアリ亜科 Myrmicinae
和名
ハキリアリ
英名
Leaf cutting ant

ハキリアリ(葉切蟻)は、ハチ目(膜翅目)・アリ科・フタフシアリ亜科に属するアリ

葉を切り落とす
切られた葉
自分より大きな葉を運ぶ
行進する葉
障害物を乗り越える
ロープの上も運んでいく
アリタケを植え付ける
ハキリアリの被害を受けた木

生息[編集]

北アメリカ東南部から、中南米熱帯雨林帯を中心とした地域に広く分布している。

特徴[編集]

体色は赤褐色、体長は3~20mmと各アリの大きさに非常にばらつきが目立つのが特徴で、最大は女王アリから、大型兵隊アリ、大型働きアリ、中型兵隊アリ、中型働きアリ、小型兵隊アリ、小型働きアリ、そして繁殖に生まれるオスアリなどといった具合に、多くのバリエーションに分かれるのは、後述する生態から生まれたこのアリが持つ特色が持つものである。

生態[編集]

他のアリには見られない特異な生態を持つ事で有名で、働きアリは列を成して、様々な木に登り、そこにある葉を切り落として次々と巣へと運んでいく。その姿は葉が独りでに歩いているように見える光景になる。そして切り落とした葉を巣へ持ち運ぶが、この葉をエサにする訳ではなく、地下の巣の広大なスペースに葉を運んで、その葉に特殊な菌類を植え付ける。これはアリタケと呼ばれ、植物の葉を栄養源にして菌類は増殖し、育っていくが、その為にアリ達は葉を運び、この菌類をエサにしている。地下のこの菌類を栽培するスペースは、生育に適した温度と湿度が保たれ、アリ達はその環境を維持するために葉を運び続ける。そしてアリタケもハキリアリがいなければ生息と増殖が出来ない相利共生の関係にある。

また、養分の尽きたいわゆるごみとなった葉はそこから運び出され、特定の場所に捨てられ、そこでゴミの山のように積もっていく。なお寿命が尽きたり、身体欠損などで生きられなくなったハキリアリもここへ運ばれ、そこで一生を終える。

大中小の様々な大きさのアリがいるのは、硬い大きな葉を切り落として運んだり、巣の拡張や、葉を運ぶ運搬路確保の土木工事を行う大型の働きアリ、大型アリの切り落とした葉が大きすぎた場合に分断し、運びやすい大きさにして運んだり、大型アリに出来ない作業をこなす中型の働きアリ、更に細かい作業で活躍する小型働きアリという分業体制になっている。大型の兵隊アリは巣を警備したり、外敵から守る役割を持ち、中型の兵隊アリは葉を運ぶ働きアリをガードし、小型の兵隊アリは働きアリに並行して、絶えずに回りを警戒する。警備アリと呼ばれる小さいアリは巣に運ばれる葉の上に乗っているが、これはハキリアリに卵を産み、幼虫と共に伝染病を送る寄生バエ警戒の為で、小型警備アリはこのハエが近付くと大きく顎を開いて追い払う。巣の中でも中小の様々な働きアリ達が働いており、女王や幼虫、蛹の世話をするヘルパーアリ、アリタケを栽培する作業に従事する農耕アリ、巣から出たゴミを処分するアリなどが動いている。

硬い葉を切り落とす作業では片側の顎をカギ状にして体を支え、もう一方の顎をカッターナイフのような具合で葉に当てて切れ目を入れ、てこの原理を応用している。寿命は女王アリが10~20年と昆虫類としては長寿なのに対し、その他のアリは半年程度しか生きられないという。女王の死後は、巣は衰退し、生き残ったアリ達の活動も鈍くなり、やがて死滅する。

人間との関係[編集]

葉を切り落とし、それを運ぶ姿が面白い事からよくテレビの自然番組などで紹介される。海外ではキノコを栽培し、それを利用する習性から「農業をするアリ」とも呼ばれ、節足動物でこのような生態を見せるのは本種以外には殆ど見られない事でも注目される。

現地ではコーヒー農園にも現れ、そこの葉を切り落として、数に物を言わせて木を丸裸にしてしまう事もあることから、重要な農業害虫にもされており、木に登れなくする薬品や防護袋なども設けているように歓迎されない面もある。

しかし、本種が葉を切り落とすことで、熱帯雨林の新陳代謝も高められ、巣から出た大量のゴミも分解され、熱帯雨林の栄養価の高い土壌を生み出すのに一役買っている有益な一面があるのも無視できない。

種類[編集]

ハキリアリ属(Atta)と、ヒメハキリアリ属(Acromyrmex)の2属に分かれ、32種にも分かれる。

  • Acromyrmex ambiguus Emery, 1888
  • Acromyrmex ameliae De Souza, Soares & Della Lucia, 2007
  • Acromyrmex aspersus F. Smith, 1858
  • Acromyrmex balzani Emery, 1890
  • Acromyrmex biscutatus Fabricius, 1775
  • Acromyrmex coronatus Fabricius, 1804
  • Acromyrmex crassispinus Forel, 1909
  • Acromyrmex diasi Gonçalves, 1983
  • Acromyrmex disciger Mayr, 1887
  • Acromyrmex echinatior Forel, 1899
  • Acromyrmex evenkul Bolton, 1995
  • Acromyrmex fracticornis Forel, 1909
  • Acromyrmex heyeri Forel, 1899
  • Acromyrmex hispidus Santschi, 1925
  • Acromyrmex hystrix Latreille, 1802
  • Acromyrmex insinuator Schultz, Bekkevold & Boomsma, 1998
  • Acromyrmex landolti Forel, 1885
  • Acromyrmex laticeps Emery, 1905
  • Acromyrmex lobicornis Emery, 1888
  • Acromyrmex lundii Guérin-Méneville, 1838
  • Acromyrmex niger F. Smith, 1858
  • Acromyrmex nigrosetosus Forel, 1908
  • Acromyrmex nobilis Santschi, 1939
  • Acromyrmex octospinosus Reich, 1793
  • Acromyrmex pubescens Emery, 1905
  • Acromyrmex pulvereus Santschi, 1919
  • Acromyrmex rugosus F. Smith, 1858
  • Acromyrmex silvestrii Emery, 1905
  • Acromyrmex striatus Roger, 1863
  • Acromyrmex subterraneus Forel, 1893
  • Acromyrmex versicolor Pergande, 1894
  • Acromyrmex volcanus Wheeler, 1937

参考文献[編集]

  • 『大昆虫記』 海野和男 データハウス ISBN 4887182406
  • 『世界昆虫記』 今森光彦 福音館書店 ISBN 4834001792
  • 『世界珍虫図鑑』 川上洋一 上田恭一郎 柏書房 ISBN 476013168X