ハーバード大学本源氏物語

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ハーバード大学本源氏物語(ハーバードだいがくほんげんじものがたり)は、源氏物語の写本の一つ。現在アメリカ合衆国ハーバード大学の所蔵となっていることからこの名称で呼ばれている。現在はハーバード大学の東洋文化に関する文物を収蔵しているアーサー・M・サックラー美術館(Arthur M. Sackler Museum)に収蔵されている。

概要[編集]

明治以降大量に日本国外へ流出した日本の文物の中には、少なくない源氏物語写本が含まれていると考えられているが、その実態はほとんど未調査である。21世紀に入るとわずかながら調査は進展しており、本写本の他に「米国議会図書館本源氏物語」の存在などが明らかになっているが[1]まだまだ不明な点が多い。そのような中でこの「ハーバード大学本源氏物語」は正規の研究機関に所蔵されておりかつ詳細な学術的調査がなされている数少ない写本の一つであり、2010年現在でも日本国外にある源氏物語の写本としては主要な源氏物語の校本に採録されている唯一の写本である。

本写本は鎌倉時代の比較的早い時期の書写と見られるもので、伝承筆者は、鎌倉時代天台宗僧侶慈円久寿2年4月15日1155年5月17日) - 嘉禄元年9月25日1225年10月28日))とされている。墨流しによる下絵装飾や吹き絵による料紙装飾が見られる華麗な写本である。本文は陽明文庫本保坂本に近い別本を持つ写本である。

本写本の僚巻[編集]

本写本は須磨蜻蛉の2帖のみ現存する零本であるが、現在以下のようないくつかの僚巻が確認されている。

影印・翻刻[編集]

翻刻のみ

  • 上野英二「ハーバード大学美術館所蔵 源氏物語須磨巻・蜻蛉巻について(乾)--付翻印須磨巻」成城大学大学院文学研究科『成城国文学論集』通号第25号、1997年(平成9年)3月、pp.. 49-110
  • 上野英二「ハーバード大学美術館所蔵 源氏物語須磨巻・蜻蛉巻について(坤)付・翻印蜻蛉巻」成城大学大学院文学研究科『成城国文学論集』通号第26号、1999年(平成11年)3月、pp.. 49-99

影印・翻刻

  • 伊藤鉄也編『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』新典社、2013年(平成25年)10月。 ISBN 978-4-7879-0631-1
  • 伊藤鉄也編『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』新典社、2014年(平成26年)6月。 ISBN 978-4-7879-0632-8

校本への収録[編集]

源氏物語別本集成続の既刊分に、写本記号「ハ」として対校本文の一つとして須磨が収められている。

  • 『源氏物語別本集成 続 第3巻』おうふう、2006年9月。 ISBN 4-2730-3403-4

参考文献[編集]

  • 大内英範「ハーバード大学美術館本蜻蛉巻とその本文」国士舘大学国文学会『国文学論輯』第28号、2007年(平成19年)3月、pp.. 1-11。 のち『源氏物語鎌倉期本文の研究』おうふう、2010年(平成22年)5月、pp.. 55-65。 ISBN 978-4-2730-3562-4

脚注[編集]

  1. ^ 国語研究所における研究会のご案内
  2. ^ 伊藤鉄也「中山本『源氏物語』(国立歴史民俗博物館蔵)」人間文化研究機構国文学研究資料館編『立川移転記念特別展示図録 源氏物語 千年のかがやき』思文閣出版、2008年10月、p. 94。 ISBN 978-4-7842-1437-2
  3. ^ 田中重太郎『源氏物語断簡』東風社、1964年
  4. ^ 大内英範「さまざまな『源氏物語』」鈴木一雄監修伊井春樹編集『国文学解釈と鑑賞 別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 28 蜻蛉』至文堂、2003年4月10日) pp.. 84-85。
  5. ^ 小林強「源氏物語関係古筆切資料集成稿」伊井春樹編『本文研究 第6集 考証・情報・資料』和泉書院、2004年5月、pp.. 左1-85。 ISBN 978-4-7576-0265-6