バラン (ダイの大冒険)

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バラン(Baran)は、三条陸(原作)と稲田浩司(作画)による漫画、およびそれを原作とするアニメ『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の登場人物(声:石塚運昇)。

概要[編集]

魔王軍の超竜軍団長。一般に「竜騎将バラン」と呼ばれる。その正体は最後の純血の「竜の騎士」にして主人公・ダイ(本名ディーノ)の父親である。当初より魔王軍において最強と目されており、物語中では竜の騎士であることが公になる以前から人間として扱われていなかった。人間でいうところの、壮年から中年期の男性のような風貌をしている。柄に竜の意匠が施された専用の剣「真魔剛竜剣」を武器として使用。左目には「竜の牙(ドラゴンファング)」という飾りを付けており、これを使用して竜の騎士の真の姿である「竜魔人」に姿を変えることができる。

人間達の迫害が元で妻のソアラを失い、愛する息子とも生き別れて絶望していたところを大魔王バーンからの誘いを受け、自分の配下である「竜騎衆」と共に魔王軍に加わる。その後消息不明だった息子のダイと再会を果たすも、敵同士であったために骨肉の死闘を演じることとなった(後述)。

性格・人物[編集]

一人称は「私」。基本的には、弱者を必要以上に傷つけたり、卑怯な戦い方をすることを好まない[1]武人気質の持ち主であり、若い頃は自分が殺されるとわかっていても、相手を殺すことはおろか傷つけることすら躊躇う、優しく献身的な性格であった。
しかし、竜の騎士ゆえの生来の気性の激しさに、人間らしい優しさと労わりの心が結果的に妻を死に追いやった過去の悲劇が加わって、竜の騎士として守るべき存在である人間に対し強い憎しみを抱くようになってしまい、自分を怒らせたり邪魔したりする者に対しては徹底的に容赦しない冷酷非情な性格へと変わってしまった。

人間を憎む一方で、自分と境遇を同じくするものたちへの共感は人間・魔族問わず深い。魔族と交わったというだけで周囲の人間から迫害され母親を失った過去を持つ竜騎衆のラーハルトからは父のように慕われており、バランもまた彼に残した手紙の中で「もう1人の息子」と記すほどに、彼へ深い愛情を持っている。純粋な人間のヒュンケルに対しても、人間の手によってモンスターである育ての父を奪われたという過去を持つ点から一方的に敵視することなどはなく、正々堂々とした武人気質の姿勢を認めて一目置いている。高い実力と武人としての誇り高さを兼ね備えた者に対しては、人間・魔族問わず敬意を払い、六軍団中、まっとうな武人としての気質と実力を兼ね備えたクロコダインを一番買っている[2]

元来の能力が非常に高い上に、代々の竜の騎士が蓄積してきた戦闘経験を生まれつき持っていることから戦士として極めて高い実力を有しており、消耗していたとはいえヒュンケルやクロコダインなどの実力者を相手にしても一方的に叩きのめし、キルバーンとの闘いでも何もさせず一瞬で胴斬りにする等の桁違いの実力を発揮した。実力で上回っているバーンも「ハドラーに代わって魔軍司令を任せてもよい」と評する一方、「自分に逆らいうる地上唯一の男」として竜の騎士が持つ潜在的な力を警戒していた。だが圧倒的な実力を持つ故か、フェンブレンの奇襲攻撃に手こずり、超魔生物となったハドラーの実力を甘く見積もっていたりするなど、自身の強さを過信するあまり格下と見た相手の戦いにおいてはやや詰めや読みの甘い面がある。一方、単身襲撃をかけてきたポップを「見かけによらず強力な呪文を使う」、「決死の覚悟で抵抗する人間は手強い」と部下たちにアドバイスしており、指揮官としての立場に立った場合は普段とは逆に慎重になる。実際にこの台詞の後にポップと戦った際は彼のメガンテを受けかけてしまっている。

ソアラとの新婚生活ではダイの欲求が読めず、子守りに失敗しては彼女に叱られていた過去を回想しており、日常生活での子育てでは彼も人間の父親同様に「苦戦」していたことがうかがえる。戦うことを運命付けられた「竜の騎士」とはいえ、家庭を持ち戦いから離れれば1人の「父親」であり、「夫」であった。なお「竜の騎士」は「死期が迫ればその魂は聖母竜が宿す次代の騎士に還り、先代から竜の紋章を受け継いで生まれた子供は生みの親を持たないため地上の人間に育てられて成人する」という特殊な過程を経て世代交代するため、竜の騎士そのものにとって、我が子を育てる経験自体が皆無に等しかったとみられる。またバラン自身は自分が子供を授かったことに驚いている。

竜魔人[編集]

竜の騎士の最強戦闘形態(マックスバトルフォーム)。バランが左目の「竜の牙」を握り締めて上空に掲げ、雷をその身に受けることにより、竜・魔族・人の3つの力を持つ「竜魔人」にその姿を変えることができる。その際、血の色が人の赤から魔族の青へと変化し、姿も怪物的となり背中に竜の羽を持つ人型の魔獣と化す。その力は究極生物の名に恥じぬもので、他の生物を寄せ付けない強さを見せ、超魔生物となったハドラーすら赤子同然に扱っていた。超常的な強さを誇り、大魔王バーンの魔法力すらも跳ね返すことができる。

この形態においては竜の騎士は理性を保てなくなり、目の前の敵を殺すことだけを考える。バランも魔法力が尽きたうえ負傷しているポップを容赦なく背後から撃ち抜き、実の息子であるダイの前では一時的に沈静化したものの戦闘が激化すると平然と殺そうとする魔獣と化した。竜魔人に変身すると相手が全員死ぬまで元に戻れないようであるが、作中ではバランが戦闘継続不能になった時点で元に戻っている。

竜の肉体に魔族の魔力を兼ね備えた究極の戦士であるが、バラン自身は今わの際に人間の心が足りなかったと懐述している。最終決戦で老バーンはダイに対し、その戦闘力について「たとえ竜魔人と化しても余と戦える相手ではないだろう」と述べている。真・バーンも「あらゆる面で竜魔人より双竜紋ダイが上」と述べた上で敵に対する殺意の点で及ばないことを認めている。一方、バランと死闘を演じた冥竜王ヴェルザーは戦意喪失中のダイを見て、老バーンを圧倒した双竜紋ダイが彼に遠く及ばないと述べている。だがバーンにはこの台詞が理解できていなかったらしく哄笑をあげて否定していた。

劇中での軌跡[編集]

ハドラーが魔王として地上を席巻していた頃、地上の平和を乱す者が現れた時、人類の守護者として現れるはずの竜の騎士は現れずハドラーを倒したのはアバンであった。何故ならその頃バランはより強大な相手である冥竜王ヴェルザーと魔界で死闘を繰り広げていたからである。(劇中では、ヴェルザーに比べればハドラーなど黙殺してもやむを得ない小者とされている。)ヴェルザーとの闘いを終えて地上に戻ったバランは消耗しきっていたが、生死の狭間で人間の娘ソアラと出会い救われ、彼女と恋に落ちる。アルキード王国の王女であるソアラに招かれ王宮に入った彼は国王からも気に入られ、次期国王として順風満帆の人生を歩むかと思われた。だが彼を快く思わぬ王宮の者たちは王に彼が得体の知れない化物であると讒言し、それを信じた王との争いを避けるために一人アルキードを去ろうとした。直後にソアラに子を宿していると打ち明けられたバランは彼女と駆け落ちを決意する。潜伏生活の中で息子ディーノ(ダイ)が生まれしばし親子3人の暮らしとなるが、国王自ら率いる追討軍に追いつかれ妻と息子を巻き込まないために二人の生命の保証と引き換えに自ら投降し、国王も化物が父とはいえ、自分の孫であるダイの命を保障することを約束する。愛する息子や妻の安全と幸せのため、バランはそのまま甘んじて死ぬことを受け入れる。

しかし、処刑のために放たれた呪文は突如バランをかばって立ちはだかったソアラに命中し、泣き崩れるバランの腕の中でソアラは息絶えてしまう。思いもがけない事態にアルキード王は激高し娘を罵倒するが、その態度に激怒したバランは竜の力を開放して王国を大地ごと消滅させてしまう。流刑に処されたディーノを乗せた船は途中で難破しており再会は叶わなかった。守るべき人間に裏切られた末に愛する人と我が子を奪われ、絶望の淵にいた彼はバーンの呼びかけに応えて人間を滅ぼすことを決意し、これに加担する。

バーンの魔王軍に抵抗する勇者ダイこそ息子ディーノだと知ったバランは、彼に共に人間を滅ぼしてソアラの仇を取ろうと持ちかけるも拒まれた。一度は紋章の共鳴を利用して記憶を消して味方につけようとする。(アニメでは打ち切りの都合上、記憶喪失を耐え抜いたダイのアバンストラッシュを受けて一時撤退した)過去を知ったヒュンケルたちの説得も虚しく、逆上して竜魔人となり暴走してしまう。ポップの犠牲により記憶を取り戻し再び敵となったダイとの激闘の果てに、正気に戻ったバランは息子の成長を認め、その立場を尊重する形で身を引いた。

バーンの目的が地上界の消滅にあると知ると、当初は単身で自分の命と引き換えにバーンに向かい、決戦を挑もうとしていた。しかし、ハドラー親衛騎団の僧正・フェンブレンに襲われるチウを気まぐれで助けた後、ヒュンケルとクロコダインに遭遇する。この際、クロコダインから共に戦うよう説得を受けるが拒否。バランの部下・ラーハルトに鎧の魔槍を託されたヒュンケルとの一騎討ちを行うが、アルビナスが突如として介入してくる。ヒュンケルがとっさに攻撃の標的をアルビナスへ切り替えて撃退したものの、無防備でバランの攻撃を受けたヒュンケルは「二度と戦えない」とバランが評するほどの重傷を負う。ヒュンケルの覚悟を見たバランは、彼に何を報えばいいのかとクロコダインに問いかけ、ヒュンケルの心意気を汲んで欲しいと懇願される。

その後、彼らの意を汲んだバランは一時的にダイたちの仲間に加わり、ダイと共にバーンパレス(大魔宮)でハドラーと対峙する。序盤の段階でハドラーに黒の核晶(コア)が埋め込まれているのを見つけ、その首をはねれば核晶はすぐには作動しないと考えたバランは一騎討ちを仕掛け、ハドラーの必殺技・超魔爆炎覇を封じ、必殺のギガブレイクを放つ。しかし、キルバーンを斬った時の影響で剣の切れ味が鈍っていたため、首を落とすことができなかった。そのためカウンターを喰らいそうになるが、ダイがかばい重傷を負う。覚悟を決めたバランはダイを眠らせると竜魔人と化し、ハドラーを全く寄せ付けないほどの強さを見せ付け、さらにバーンの魔力による黒の核晶の爆破も阻止するが、ミストバーンが至近距離で黒の核晶に魔力を放った[3]ことで核晶は作動を開始。核晶の爆発規模を抑えるため、全竜闘気をドルオーラの要領で放出させ規模を抑えることに成功するも、それが元で致命傷を負い、ダイたちに看取られて命を落とす。最期には「父さん」と呼ばれ、バランは父として息子を護り、そして人間たちを護って死んでいった。ダイがバランの手を握った際にバランの竜の紋章は彼に受け継がれ、後に双竜紋となる。また、死後もその魂はダイと共にあった。バーンと息子の最終決戦時には真魔剛竜剣と共に彼の前に現れバーンの弱点を伝え共に戦った。

装備[編集]

真魔剛竜剣
柄の部分に竜の意匠が施された、竜の騎士に代々伝わる片刃の長剣。神々が作ったとされる伝説の名剣であり、ロン・ベルクはこの剣を超える剣を作ることが生涯の目標だった。
オリハルコン製であるため絶大な切れ味と強度を誇り、竜の騎士の全力の竜闘気にも耐え得る。また折れたり腐食した場合でもある程度の時間が経過すれば自動的に修復する特性も持つが、完全に修復しないうちは切れ味は落ちてしまう。
竜の牙(ドラゴンファング)
バランが左眼に片眼鏡のように着用している装飾品。いくつもの小さい刃が連結して輪を成した形状をしている。これで手を傷つけることが竜魔人に変身するための儀式となっている。また接近戦用の武器としても使うことができる。

呪文・技[編集]

ギガブレイク
『最強剣』の異名を取る竜騎将バラン最大の必殺剣。上級電撃呪文ギガデインの雷撃を大上段に構えた剣に落として突進、膨大な電気エネルギーを纏った剣を右上段の構えから相手に叩き込む、魔法剣としては最高のものである。ライデインを使った劣化版であればダイも一度使用したことがある。
連載時の公式解説で、竜魔人形態になると威力は倍増するとあったが、劇中では一度も放っていない(ダイとの闘いでは魔法力が足りずライデインを使用していた)。バラン自身も「この形態でのギガブレイクの威力は想像がつかない」といっているので過去にも放ったことはないらしい。
竜闘気砲呪文(ドルオーラ)
竜の騎士最大最強の切り札。魔法力により竜闘気を極限まで圧縮して両手から破壊光線として放つ呪文。その威力たるや一国すら灰燼と化す戦略兵器級の代物である。闘気圧縮に魔法力を使用しているものの撃ち出すのは竜闘気そのものであるため、マホカンタ等でも反射できない。その余りの反動ゆえに竜の騎士といえども竜魔人状態でなければ使用できないよう無意識下のストッパーがかかっている(ただし双竜紋ダイなら使用可能)。また消耗も激しく最大2発までしか撃てない。
紋章閃
竜の紋章に竜闘気を集束して光線として放つ技。軽く放っても敵を貫通する威力があるが、全力で放てば山をも吹き飛ばすという。ダイも使用可能。
竜闘気(ドラゴニックオーラ)
竜の騎士がその身に纏う闘気のこと。肉体を鋼鉄並みの強度と化し、あらゆる呪文を弾くなど絶大な防御能力を有する。また竜闘気で与えたダメージは暗黒闘気のそれと同様、回復呪文でも回復しづらいという特性がある。

このほか、幾つかの回復呪文や催眠呪文ラリホーマなどの補助呪文、ライデインやバギなど幾つかの攻撃呪文を使用できる。

脚注[編集]

  1. ^ 人間でも女性は極力攻撃しない主義であり、レオナ、クロコダインのタッグと交戦した際には、最終的に竜魔人となった際にレオナをバギの呪文で切り刻んで戦闘不能に追いやっているが、変身前はライデインで攻撃を開始する前には警告を与えて、逃げるチャンスを与えている。
    また、記憶を失ったダイが自分に近づいてきた際、「息子に出会い人間の心が強く表に出ている今がチャンスだ」と述べ、手出しをせず退くようポップたちに促しもしている。
  2. ^ 一連の思慮深さや武人気質を間近で見たポップは自身の父ジャンクと比較して理知的と称していたが、当時のダイにとっては竜魔人の方が印象に残っていたために野獣のような父に映っていた。
  3. ^ バーン以外の者では、たとえ至近距離からでも、竜闘気(ドラゴニックオーラ)に守られた核晶に魔力を注入することなど絶対にできないのだが、とある理由から、ミストバーンだけはそれが可能だった。