フルディア

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フルディア
生息年代: 505 Ma
20191208 Hurdia victoria mouthpart anterior.png
フルディアの復元図
分類
: 動物界 Animalia
上門 : 脱皮動物上門 Ecdysozoa
階級なし : 汎節足動物 Panarthropoda
: (ステムグループ)[1]
節足動物門 Arthropoda
: †(和訳なしDinocaridida
: 放射歯目 Radiodonta
亜目 : アノマロカリス亜目 Anomalocarida
: フルディア科 Hurdiidae
: フルディア属 Hurdia
学名
Hurdia
Walcott1912

フルディアHurdia)は、カンブリア紀に生息したフルディア科アノマロカリス類の1属。頭部に大きな甲皮を持ち、カンブリア紀の海に広く分布したアノマロカリス類である[2]

形態[編集]

フルディアは、カンブリア紀の海において巨大な生物の一つである[3]。完全化石の体長はおよそ20(0.66フィート)に達するが、散在する化石部位の大きさから推測すると、およそ50㎝にも及ぶと推測される[4]

頭部[編集]

フルディアの前部付属肢と口の位置に対する2つの解釈、それぞれ基部(1枚目)と前方(2枚目)に備わるとされる。

頭部は3枚の巨大な甲皮(head carapace complex)、大きな複眼、熊手状の前部付属肢、および放射状の口器(oral come)がある。2009年[2]と2013年[5]の記述によると、化石の保存状態に基づいて、頭部の左右には3対の短い櫛状の構造体があり、甲皮はその正面から突き出し、口と前部付属肢はその基部の腹側に備わるとされる。しかしこれは保存過程による変形の可能性があり、頭部はむしろ大きくて甲皮に包まれ、口と前部付属肢はその前端付近に備わるではないかという提唱もある[6]

甲皮と眼[編集]

雫形の甲皮(H-element)

多くのフルディア科のアノマロカリス類と同様、頭部には大きな甲皮らしい構造体「head carapace complex」がある。この甲皮は全長の半分を占めるほど大きく、頭部の背側を覆う雫形の「H-element」と、尖った前端をお互い繋がりながら左右を覆う「P-element」という3つのパーツからなる[5]。一部の化石において、この甲皮には網目状の構造体が見られる。H-elementとP-elementの後端の境目は、併せて太い眼柄を囲む窪みとなり、大きな複眼はそこから突き出している。

前部付属肢[編集]

前部付属肢の内突起

口の前方には1対の短い前部付属肢を持つ。通常は9節からなるとされるが、1節とされる基部に関しては2節からなる可能性がある[7]。次の8節のうち前の5節の下側に5本の発達したブレード状の内突起がある。その内突起の前側は、更に数個の鉤状の棘が並んでいる[6]。ブレード状の内突起は内側に向かって湾曲していることから、左右の前部付属肢は併せて物を掴む籠のような構造になると考えられる[6]。残りの3節のうち前の2節は短いブレード状の内突起があり、最後の節は上向きに湾曲した1本の爪がある[5]

口(歯)[編集]

アノマロカリス(A)、ペユトイア(B)、およびフルディア(C)のoral cone。後者は開口部の奥に多重のノコギリ状の構造体(水色)をもつ。

oral cone」という口器は、パイナップルの輪切りのような造形をした典型的な「ペユトイア口」である。口は32個の歯に囲まれ、そのうち最も発達した4つの歯は十字に並び、残りの28個の細い歯はそれぞれの間隔に7個ずつ並ぶ。加えて、開口部の奥には4つのノコギリ状構造は十字に並び、5層まで積み重ねる。このように口の奥に備わる多重構造は、本属とCambroraster のみに見られ[6]アノマロカリスペユトイアの口には見当たらない特徴である[5]

胴部[編集]

フルディアの旧復元図。鰭は節ごとに1対で、垂直に近い角度で胴部の左右に備わるように描かれた。

断面は楕円形で、上下に扁平とされる多くのアノマロカリス類とは異なり、フルディアの胴部は厚みのある円柱状であった考えられる。7-9つの体節ごとに短い鰭(ひれ)および鰓として考えられる一例の櫛状構造「setal blade」が対になって備わり、尾端には1対の尾鰭がある。2009年[2]と2013年[5]の記述による復元では、鰭は垂直に近い角度で胴部の側面に備わり、setal bladeがその外縁に繋がると考えられた[5]。しかし2015年の再検討によると、setal bladeはむしろ他のアノマロカリス類のように背側に備わり、エーギロカシスの様に体節ごとに背腹2対の鰭を持つことが示唆される[8]

生態[編集]

フルディアは捕食者もしくは腐肉食者であったと考えられている。抱き合わせたような前部付属肢の構造とアノマロカリスよりも発達した歯にあることから、フルディアはより大型の底生性動物を捕食できると考えられる[9]。甲皮の機能に関しては、海底の獲物を逃がさずに覆し、前部付属肢と併せて獲物を確保するのに用いられるという説がある[10]

バージェス頁岩からのみならず、アメリカ中国ヨーロッパなどからも同様にフルディアの化石が発見されており、世界中に分布した属であることを示唆する[2]

分類[編集]

フルディア科アノマロカリス類(上:エーギロカシス、左下:ペユトイア、右下:フルディア

フルディアは、フルディア科Hurdiidae)というアノマロカリス類の一グループの模式属である。このに属するアノマロカリス類はフルディアの他にも、ペユトイアシンダーハンネススタンレイカリスエーギロカシスなどが挙げられる。

フルディア属は、H. victoriaH. triangulata の2種が認められる[5]

  • Hurdia victoria Walcott1912
    本属のタイプ種H. triangulataに比べて、本種の甲皮の「H-element」は比較的に縦長くて幅狭い[5]
  • Hurdia triangulata Walcott1912
    H. victoriaに比べて、本種の甲皮の「H-element」は比較的に丸くて幅広い[5]

復元の歴史[編集]

フルディアは、1909年にアメリカの古生物学チャールズ・ウォルコットがバージェス頁岩のカタログを製作していた際に断片的な化石より初めて記述された[11]。しかし、彼はバラバラになった部位をそれぞれ別の生物であると誤解し、アノマロカリスペユトイアと同様、クラゲナマコとしてバラバラに誤って分類された。

1990年代後期、当時ロイヤルオンタリオ博物館学芸員であったデズモンド・H・コリンズ (en)によってフルディアの要素がつなぎあわされ、非公式な論文において彼の考えを提示した[12][13]。2009年になってようやく、3年間の苦心の研究の結果、完全な生物が復元された[2][14][15][16]。フルディアの69個の標本は、Greater Phyllopod bed(葉脚類のベッド)と呼ばれる群集の0.13パーセントからなることが知られている[17]

フルディアの頭部による硬い部位は、他のアノマロカリス類のと混同される経緯があった。ペユトイアの前部付属肢はフルディアのによく似ていて、同種の変異と見なされる時期があった[5]アノマロカリスのものとして考えられた口も、該当種の新たな発見[18]によりペユトイアのものであると判明し、口の奥にある多重構造も、アノマロカリスペユトイアに欠けているフルディアの特徴であると明らかになった[5]。従来にはフルディアのものとされた一部の甲皮の「P-elements」も、後に別のアノマロカリス類Pahvantia のものであると判明した[19]

脚注[編集]

  1. ^ 詳しくはアノマロカリス類#分類を参照。
  2. ^ a b c d e “The Burgess Shale Anomalocaridid Hurdia and Its Significance for Early Euarthropod Evolution”. Science Magazine 323 (5921): pp. 1597-1600. (3 2009). doi:10.1126/science.1169514. 
  3. ^ 巨大な頭を持つ奇妙な捕食動物を発見”. ナショナルジオグラフィック・ニュース (2009年3月23日). 2010年12月22日閲覧。
  4. ^ Hurdia - Fossil Gallery - The Burgess Shale
  5. ^ a b c d e f g h i j k Daley, Allison; Budd, Graham; Caron, Jean-Bernard (2013-10-01). “The morphology and systematics of the anomalocarid Hurdia from the Middle Cambrian of British Columbia and Utah”. Journal of Systematic Palaeontology 11. doi:10.1080/14772019.2012.732723. https://www.researchgate.net/publication/263406650_The_morphology_and_systematics_of_the_anomalocarid_Hurdia_from_the_Middle_Cambrian_of_British_Columbia_and_Utah. 
  6. ^ a b c d Moysiuk J.; Caron J.-B. (2019-08-14). “A new hurdiid radiodont from the Burgess Shale evinces the exploitation of Cambrian infaunal food sources”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 286 (1908): 20191079. doi:10.1098/rspb.2019.1079. PMC: PMC6710600. PMID 31362637. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2019.1079. 
  7. ^ Pates, Stephen; Daley, Allison C.; Butterfield, Nicholas J. (2019-06-11). “First report of paired ventral endites in a hurdiid radiodont”. Zoological Letters 5 (1): 18. doi:10.1186/s40851-019-0132-4. ISSN 2056-306X. PMC: PMC6560863. PMID 31210962. https://doi.org/10.1186/s40851-019-0132-4. 
  8. ^ Van Roy, Peter; Daley, Allison C.; Briggs, Derek E. G. (2015). “Anomalocaridid trunk limb homology revealed by a giant filter-feeder with paired flaps”. Nature 522 (7554): 77–80. doi:10.1038/nature14256. ISSN 0028-0836. PMID 25762145. 
  9. ^ De Vivo, Giacinto; Lautenschlager, Stephan; Vinther, Jakob (2016-12-16). Reconstructing anomalocaridid feeding appendage dexterity sheds light on radiodontan ecology. https://www.researchgate.net/publication/325343898_Reconstructing_anomalocaridid_feeding_appendage_dexterity_sheds_light_on_radiodontan_ecology?_sg=P_ye_Bn7fmnB7DgQLP33J9kYXUY7mXn4XWVwcJCtOIR_pkQDPirOccnc8EIJNW9mVM7xd2ifEI8hQOw. 
  10. ^ Cong, Peiyun; Daley, Allison C.; Edgecombe, Gregory D.; Hou, Xianguang (2017-08-30). “The functional head of the Cambrian radiodontan (stem-group Euarthropoda) Amplectobelua symbrachiata” (英語). BMC Evolutionary Biology 17 (1). doi:10.1186/s12862-017-1049-1. ISSN 1471-2148. PMC: PMC5577670. PMID 28854872. https://bmcevolbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12862-017-1049-1. 
  11. ^ Probably named for Mount Hurd nearby, itself commemorating Major Hurd, a Canadian Pacific Railway engineer and explorer.
  12. ^ D. Collins, in North American Paleontological Convention, Chicago, Abstracts with Programs, S. Lidgard, P. R. Crane, Eds. (The Paleontological Society, Special Publication 6, Chicago, IL, 1992), p. 66, 11.
  13. ^ D. Collins (1999). Rotunda 32: 25. 
  14. ^ Fossil fragments reveal 500-million-year-old monster predator.
  15. ^ New animal discovered by Canadian researcher.
  16. ^ Scientists identify T-Rex of the sea
  17. ^ “TAPHONOMY OF THE GREATER PHYLLOPOD BED COMMUNITY, BURGESS SHALE”. PALAIOS (SEPM Society for Sedimentary Geology) 21 (5): pp. 451-465. (10 2006). doi:10.2110/palo.2003.P05-070R. 
  18. ^ Daley, Allison; Bergström, Jan (2012-04-05). “The oral cone of Anomalocaris is not a classic ‘‘peytoia’’”. Die Naturwissenschaften 99: 501–4. doi:10.1007/s00114-012-0910-8. https://www.researchgate.net/publication/223958266_The_oral_cone_of_Anomalocaris_is_not_a_classic_. 
  19. ^ Lerosey-Aubril, Rudy; Pates, Stephen (2018-09-14). “New suspension-feeding radiodont suggests evolution of microplanktivory in Cambrian macronekton” (英語). Nature Communications 9 (1). doi:10.1038/s41467-018-06229-7. ISSN 2041-1723. https://www.nature.com/articles/s41467-018-06229-7. 

関連項目[編集]