プレドニゾン

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プレドニゾン
Prednisone.svg
Prednisone3Dan.gif
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com monograph
MedlinePlus a601102
胎児危険度分類
  • C
法的規制
  • 処方箋のみ
投与方法 経口, 鼻, 直腸, 注射, 点滴静注
薬物動態データ
生物学的利用能 70%
代謝 プレドニゾロン(肝臓)
半減期 1 時間
排泄 腎臓
識別
CAS番号
53-03-2 チェック
ATCコード A07EA03 (WHO) H02AB07 (WHO)
PubChem CID: 5865
DrugBank DB00635 チェック
ChemSpider 5656 チェック
UNII VB0R961HZT ×
KEGG C07370  チェック
ChEBI CHEBI:8382 チェック
ChEMBL CHEMBL635 チェック
別名 Deltasone, Liquid Pred, Orasone, Adasone, Deltacortisone, Prednisonum, Prednisolone
化学的データ
化学式 C21H26O5
分子量 358.428 g/mol
プレドニゾン長期連用後の脂肪肝顕微鏡写真。三色染色英語版

プレドニゾン(Prednisone)は免疫抑制作用を持つ合成副腎皮質ホルモン剤である。一部の炎症性疾患(中等度のアレルギー反応等)の治療に用いられるほか、高用量での治療に用いられることもあるが、副作用が多い。免疫系を抑制するため、患者は易感染性となる。

プレドニゾンはそれ自身では作用を持たず、肝臓でプレドニゾロンに代謝(C環のケトン水酸基に変化)されて活性を示す[1]。日本ではヒト用医薬品としては承認されていない。

適応[編集]

プレドニゾンは様々な疾患に用いられる。喘息COPDCIDPリウマチ性疾患、アレルギー疾患、潰瘍性大腸炎クローン病副腎不全、癌性高カルシウム血症甲状腺炎、喉頭炎、重症結核蕁麻疹皮疹)、脂質性肺炎心膜炎多発性硬化症ネフローゼ症候群狼瘡全身性エリテマトーデス)、重症筋無力症漆かぶれぶどう膜炎メニエール病臓器移植時の拒絶反応防止レジメンの一部、片頭痛群発頭痛、重症口内炎等である[2]

プレドニゾンはそのほか、抗悪性腫瘍薬としても用いられる[3]急性リンパ性白血病非ホジキンリンパ腫ホジキンリンパ腫多発性骨髄腫、その他ホルモン感受性腫瘍に、他の抗がん剤と組み合わせて用いられる。サルコイドーシスの治療にも使われる。

プレドニゾンは梅毒治療中等に起こるヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応の抑制にも適用され、またデュシェンヌ型筋ジストロフィーの進行抑止にも使われる。症状の進行阻止の作用機序は判っていない。副腎を抑制する事から、先天性副腎過形成症の治療にも用いられる。

プレドニゾンの腎臓での利尿作用は、特にループ系利尿薬多量投与に不応性の非代償性心不全の治療に活用することもできる[4][5][6][7][8][9]糖質コルチコイドとしてのプレドニンの作用機序は、心房性ナトリウム利尿ペプチドに対する腎の反応性向上、すなわち腎臓内部の髄質集合管でのA型ナトリウム利尿ペプチド受容体の発現増加によると説明できる[10]

副作用[編集]

短期的な副作用として挙げられる物は、他のステロイド同様、血糖増加(特に糖尿病患者あるいはタクロリムス等の血糖上昇作用のある薬物を服用中の患者に注意)ならびに体液貯留等の鉱質コルチコイド作用である[11]。プレドニゾンの鉱質コルチコイド作用は弱く、副腎機能不全には用いられない。

うつ病抑うつ症状不安の原因となることもある[12][13]

長期投与時の副作用として挙げられる物は、クッシング症候群認知症様症状、中心性肥満骨粗鬆症緑内障白内障2型糖尿病等である。急な減量または中止は抑うつ症状を誘発し得る[要出典]

頻度の高い副作用[14][編集]

頻度の低い副作用[14][編集]

依存性[編集]

副腎抑制はプレドニゾンを7日以上服用すると発現する。体内でのコルチコステロイド(特にコルチゾール)合成能を一時的に喪失するためである。そのため、プレドニゾンを7日間以上投与した後に投与中止する時は、漸減すべきである。漸減には数日を掛けるべきで、長期投与の患者の場合は週・月単位の時間を要する[要出典]。突然投与を中止すると、アジソン症状を呈する。長期治療の患者に対しては、隔日投与をする事によって副腎機能を保護し、副作用を低減できる[15]

糖質コルチコイドは、視床下部および脳下垂体前葉に負のフィードバックを掛け、それぞれ副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)と副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を減少させる。これによりプレドニゾン等の糖質コルチコイド類縁物質は、体内の糖質コルチコイドの生成を抑制する。この機序により短期間に依存が形成され、投与中止時に危険が生ずる。体内でCRHとACTHの合成が再開されて副腎機能が回復するためには時間を要する。

投与中止[編集]

コルチコステロイド投与中止時の投与量の漸減法は、患者毎に疾患の再燃可能性、投与期間等によって個別に決定する。段階的なコルチコステロイド全身投与の終了に当たっては、下記の各項目を考慮する。

  • 40mg/日(相当)以上または1週間以上の投薬
  • 夕刻の服用
  • 3週間以上の治療
  • 直近の繰り返し投与歴(特に3週間以上)
  • 直近1年以内に長期治療を中止してステロイドを短期間投与した場合
  • 他の副腎抑制の可能性

疾患増悪の可能性が低く、投与が3週間以内であり、患者が上記に該当しない場合は即座に中止して良い。

コルチコステロイド投与中止期間中は、速やかに生理学的濃度まで減量(プレドニゾロン7.5mg/日相当)し、その後緩やかに減量する。疾患が再燃しないよう注意して観察する必要がある[16]

工業用途[編集]

プレドニゾン20mg錠

米国薬局方(USP)で溶出試験の稼働性能確認試験(Performance Verification Test)にプレドニゾン標準製剤が用いられる。

歴史[編集]

プレドニゾンおよびプレドニゾロンの最初の単離と構造決定は1950年になされた[17][18][19][20]コルチゾンCorynebacterium simplex により酸化されてプレドニゾンになったのである。同様のプロセスで、プレドニゾロンからヒドロコルチゾンが生成した[21]

これらの化合物の鉱質コルチコイド作用が増強されていることがマウスを使った実験で確かめられた[22]

プレドニゾンおよびプレドニゾロンはそれぞれMeticortenおよびDelta-Cortefとして米国で販売された[23]。現在は米国では多数のジェネリック薬が入手可能である。

出典[編集]

  1. ^ Medline drug information for prednisone
  2. ^ Prednisone”. The American Society of Health-System Pharmacists. 2011年4月3日閲覧。
  3. ^ [U.S.] National Library of Medicine, Medical Subject Headings. Antineoplastic Agents, Hormonal (2009). Retrieved 9-11-2010
  4. ^ RIEMER, AD (1958年4月). “Application of the newer corticosteroids to augment diuresis in congestive heart failure.”. The American journal of cardiology 1 (4): 488–96. doi:10.1016/0002-9149(58)90120-6. PMID 13520608. 
  5. ^ NEWMAN, DA (1959年2月15日). “Reversal of intractable cardiac edema with prednisone.”. New York state journal of medicine 59 (4): 625–33. PMID 13632954. 
  6. ^ Zhang, H; Liu, C; Ji, Z; Liu, G; Zhao, Q; Ao, YG; Wang, L; Deng, B; Zhen, Y; Tian, L; Ji, L; Liu, K (2008年9月). “Prednisone adding to usual care treatment for refractory decompensated congestive heart failure.”. International heart journal 49 (5): 587–95. doi:10.1536/ihj.49.587. PMID 18971570. 
  7. ^ Liu, C; Liu, G; Zhou, C; Ji, Z; Zhen, Y; Liu, K (2007年9月). “Potent diuretic effects of prednisone in heart failure patients with refractory diuretic resistance.”. The Canadian journal of cardiology 23 (11): 865–8. doi:10.1016/s0828-282x(07)70840-1. PMC 2651362. PMID 17876376. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2651362/. 
  8. ^ Liu, C; Chen, H; Zhou, C; Ji, Z; Liu, G; Gao, Y; Tian, L; Yao, L; Zheng, Y; Zhao, Q; Liu, K (2006年10月). “Potent potentiating diuretic effects of prednisone in congestive heart failure.”. Journal of cardiovascular pharmacology 48 (4): 173–6. doi:10.1097/01.fjc.0000245242.57088.5b. PMID 17086096. 
  9. ^ Massari, F; Mastropasqua, F; Iacoviello, M; Nuzzolese, V; Torres, D; Parrinello, G (2012年3月). “The glucocorticoid in acute decompensated heart failure: Dr Jekyll or Mr Hyde?”. The American journal of emergency medicine 30 (3): 517.e5-10. doi:10.1016/j.ajem.2011.01.023. PMID 21406321. 
  10. ^ Liu, C; Chen, Y; Kang, Y; Ni, Z; Xiu, H; Guan, J; Liu, K (2011年10月). “Glucocorticoids improve renal responsiveness to atrial natriuretic peptide by up-regulating natriuretic peptide receptor-A expression in the renal inner medullary collecting duct in decompensated heart failure.”. The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 339 (1): 203–9. doi:10.1124/jpet.111.184796. PMID 21737535. 
  11. ^ アーカイブされたコピー”. 2012年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月3日閲覧。 gihealth.com
  12. ^ Prednisone Information from Drugs.com
  13. ^ Prednisone: MedlinePlus Drug Information
  14. ^ a b http://www.mayoclinic.com/health/steroids/HQ01431 Mayo Clinic
  15. ^ Therapeutic and Adverse Effects of Glucocorticoids”. Bello CS, Garrett SD. U.S. Pharmacist Continuing Education Program no. 430-000-99-028-H01, August 1999. 2014年11月13日閲覧。
  16. ^ http://www.medicinescomplete.com/mc/bnf/current/PHP4341-withdrawal-of-corticosteroids.htm[リンク切れ]
  17. ^ Wainwright, M. “The secret of success: Arthur Nobile's discovery of the steroids prednisone and prednisolone in the 1950s revolutionised the treatment of arthritis”. Chemistry in Britain. 2011年6月15日閲覧。
  18. ^ National Inventors Hall of Fame”. 2012年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月13日閲覧。
  19. ^ New Jersey Inventors Hall of Fame”. 2014年11月13日閲覧。
  20. ^ Merck Index, 14th Edition, p.1327. Published by Merck & Co. Inc.
  21. ^ H.L. Herzog et al. Science, Vol. 121, p 176 (1955).
  22. ^ H.L. Herzog et alTemplate:Check quotation" Science, Vol. 121, p 176 (1955).
  23. ^ Drugs@FDA: FDA Approved Drug Products
  • International Journal of Immunopharmacology, Vol. 7, Issue 5, 1985, pp 731–737