ムーンサルトプレス

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コーナー最上段からムーンサルト・プレスを仕掛けるクリストファー・ダニエルズ
コーナー最上段からムーンサルト・アタックを仕掛けるショーン・マイケルズ
コーナー最上段から場外へムーンサルト・アタックを仕掛けるショーン・マイケルズ。

ムーンサルト・プレスMoonsault Press)は、プロレス技の一種である。日本名は月面水爆(げつめんすいばく)。

概要[編集]

リング四方に存在するコーナーポストによじ登り、リングのマットに対して背中を向けた状態からジャンプし、バック転をしながらリング上に横たわっている対戦相手めがけてボディ・プレスを仕掛ける。技を仕掛ける側の円弧を描くような動きが技の名称の由来となっている。

技を仕掛ける側にもリスクを伴い、着地をする際に両膝がマットに打ちつけられることや、不安定なロープを踏み台にしてバック宙を決める動作が人間の膝関節が本来持っている動きと反してしまうことなどから、膝の半月板を損傷しやすいという問題点がある。

1980年ジョージ高野がテレビマッチにて初めて使用したが、その時はセカンドロープから仕掛けたものである[1]。最初にトップロープから仕掛けたのは初代タイガーマスクとされる。しかし佐山は膝を痛めるのを嫌い、バック転しながら繰り出す縦回転式は新日本離脱直前の数試合で使用した以外はほとんど使わず、あえて旋回式にしたと話している[2]

ムーンサルトプレスをプロレス界に広めた使い手として知られる武藤敬司はフロリダ修行時代「この技だけで食っていた」と述懐しているが[3]グレート・ムタギミックで参戦していたWCW時代に多用したため、武藤の膝は変形して満足に歩けないまでに傷んでしまった。小橋建太も若手時代に多用したため、膝を痛めて、5度の手術を繰り返している。

空中技の中では見栄えも良いことから使用者は多いが、使うレスラーによって技の見た目には個人差がある。多くのレスラーは大きな弧を描くように跳躍して体全体で上から叩きつける。

名称の変遷[編集]

この技にはムーンサルト・プレスラウンディング・ボディ・プレスの二つの名前が存在する。ラウンディングボディプレスは初代タイガーマスクが使っていた斜め回転式[4]の技の名称である。古館伊知郎が実況で名付けたために、多くのプロレスマスコミはラウンディングボディプレスという名称で統一していたが、月刊ゴングだけはムーンサルトプレス(当初はムーンソルトプレス)という名称で表記し続けた。同誌の記者小林和朋が命名したこの技名は浸透しなかった。数年後に武藤敬司が縦回転式を使用するようになっても、プロレスマスコミの多くはラウンディングボディプレスとして呼び続けるが、ここでも週刊ゴングだけは頑なにムーンサルトプレスという名前で使い続けた。決めては同じく記者の小林が名付けた「月面水爆」という和名のインパクトでスポーツ紙などが使い始め、最終的にムーンサルトプレスという名前が浸透していったという[5]

ちなみに初代タイガーマスクが縦回転式のものを使用した際には実況アナウンサーの古舘伊知郎が「ムーンライト・コースター」と叫んでいる[6]。しかし古館は、初代タイガーマスクの全く別の技でもムーンライトコースターの技名を使ってしまっており[7]、武藤が使用するまで縦回転式の正式な名称はなかったといえる。

後に古舘の後釜である実況アナウンサーの辻よしなりが武藤の縦回転式のみを「ラウンディングボディプレス」と呼称したため、武藤本人でさえも名称がいまいち定かではなくなっている。

アメリカではムーンサルト・プレスを広めたのは武藤(グレート・ムタ)であるため、和製英語であるムーンサルトという技名がそのまま使われている。

派生技[編集]

アラビアン・プレス[編集]

サブゥーが開発したリバウンド式ムーンサルトプレス。リング内からリング外に向かって高くジャンプしてトップロープに尻餅をつき、両腿をトップロープにバウンドさせて後方へバック転ムーンサルトプレスを決める。サブゥーはパイプ椅子や机をリング内に持ち込み、それを踏み台にして敢行するなど多彩なバリエーションを持つ。技のプロセスに類似点が多いロブ・ヴァン・ダムハリウッド・スター・プレスとは元来区別されていたが(アラビアン・プレスが直接トップロープに飛び座り込むのに対し、ハリウッド・スター・プレスはコーナー上へ立ってから座り込む)、最近は両者が仕掛けるバリエーションの増加などの事情から異名同技として扱われている。

ハリウッド・スター・プレス[編集]

ロブ・ヴァン・ダムが考案したリバウンド式ムーンサルト・プレス。コーナー前でリング内に背を向けて立ち、コーナーを登ってコーナー最上段に尻餅をつき、同時にトップロープに両腿をバウンドさせるようにして後方へバック転しながら飛び、ムーンサルト・プレスを敢行する。ジョン・モリソンは、横360度回転のアラビアンプレスをスターシップ・ペインという名称で使用している。ドラゴン・キッドは、ジーザスという名前で使っている。金丸義信もよく使用する。本来は、サブゥーアラビアン・プレスとは似ているが違う技(アラビアン・プレスが直接トップロープに飛び座り込むのに対し、ハリウッド・スター・プレスはコーナー上へ立ってから座り込む)であった。最近は両方とも同じ技として扱われる場合が多い。

スカイ・ツイスター・プレス[編集]

チャパリータASARIが開発した捻りを加えた伸身ムーンサルトプレスである。後方に270度、横に540 - 720度回転している。現在の主な使い手はジミー・ヤンが、ヤンタイムという名で使用している他、くいしんぼう仮面が下記カンクーン・トルネードを文字った関空トルネードの名で使用。ただし、元祖であるASARIを含め後方回転をほとんど行わずに飛ぶ使い手が多い。なお、前向きから飛ぶ一回半捻りプレスもスカイ・ツイスター・プレスと呼称していた(当時、ASARIからTAKAみちのくが直接指導を受け使用していた)。神風レッスル夢ファクトリーに所属していた時代にすでにカミカゼ・トルネードを完成させている(神風の場合はヘビー級の体格で飛ぶために見ごたえがある)。

フェニックス・スプラッシュ[編集]

ひねりを加えながら離陸し、その後は前方一回転してのプレス。計、縦450度、横180度回転。ハヤブサの必殺技。初代タイガーが「タイガー・トルネード・プレス」の名で考案したが、試合で使用したことはない。こちらを正調のムーンライト・コースターであるとする説もある。獣神サンダー・ライガーが「スターダスト・プレス」の名で、試合で初めて試みたが失敗に終わった(後述)。

離陸後すぐに180度ひねり、体を前に向けてからの450スプラッシュとするのが難易度的に低く、基本である(見た目的には振り返ってからの450スプラッシュ)。飯伏幸太がこの形のフェニックス・スプラッシュを得意としている。その後、ハヤブサがひねりを加えずに離陸し、90度後方回転してから180度ひねりと360度前方回転を同時に行う(途中からひねりが入るため、体の向きを基準とする前後の回転方向が入れ替わる)という難易度の高いフェニックス・スプラッシュを完成させている。このタイプの場合観客に「何がどうなっているのか分からない」といわれるほどの不思議な回転を見せる。その後はこのタイプのフェニックス・スプラッシュをDRAGON GATEB×Bハルクがハヤブサから直接指導を受け使用している。

カンクーン・トルネード[編集]

ムーンサルト・プレスのようにコーナーポスト上段から後方1回宙返り2回捻りの要領で体固めに移行する、技の手順はムーンサルトと同じだが伸身で1回宙返りを行いながら2回捻ることから、脚力と腕力に勢いが必要であり、難易度が高い、主な使い手にはウルティモ・ドラゴン、初代えべっさん(現:菊タロー、開運トルネードの名称で使用)やハヤブサなど空中殺法が得意な選手が使用することが多い。上記、スカイ・ツイスター・プレスと混同されることが多く、後方回転を行う正調版・行わないスカイ・ツイスター・プレスも含めてこの名称で呼称されることが多い。NINTENDO64のプロレスゲーム、闘魂炎導2ではある方法でこの技を習得しゲーム中で使用することができる。

スターダスト・プレス[編集]

獣神サンダー・ライガーが金本浩二戦で一度だけ披露した技。当初は名称だけが先に伝わり、技の全貌が明らかでない時期があったため「幻の必殺技」とも呼ばれた。リング外を向いたまま後ろ向きにジャンプし、体を左方向180度捻った後、270度前方回転し更に180度左方向に錐揉み回転させてプレスする。元々ライガーが『獣神ライガー』を名乗る前にすでにスターダスト・プレスを完成させていたが、プロレス誌の記者一人に新日本の道場内でしか見せた事が無かった。しかし、ライガーが披露するより前に、他団体のハヤブサが同形の技を披露してしまったため、また違った形のスターダスト・プレスを編み出したという経緯がある。金本との試合後にライガーは「僕の(スターダスト・プレス)はこれでいいです」と語り、ハヤブサのフェニックス・スプラッシュと区別を付けた。ライガーが使用して以来長らく使い手が現れなかったが、同じ新日本の後輩にあたる内藤哲也が会得しここ一番の大技として使用する。元々は初代タイガーマスクが練習中に披露したが当時は未完成で、タイガーが一時引退したためそのまま未公開に終わった。タイガー曰く「タイガー・トルネード・プレスとでも名付けましょうか」とのこと。

ヴァルキリー・スプラッシュ[編集]

KAORUが開発したムーンサルト・プレスに180度ひねりを加え、セントーンの形で相手の上に背中から落下する技。ミラノコレクションA.T.が使用するアルマニッシュ・エクスチェンジは、ライオンサルトの形から同様にひねりを加えて、相手の上に背中から落ちる技である。なお、金本浩二が「ライガーのスターダスト・プレスは不細工だ。俺の方が技にキレがある」と発言し、ヴァルキリー・スプラッシュと同型の技を一度だけ使用している。

ラ・ケブラーダ[編集]

エプロンサイドから場外にいる相手にするムーンサルト。エプロンから仕掛けるのでコーナーからではなくロープの反動で回転する。技名の由来はメキシコ・アカプルコにある、飛び込みのパフォーマンスが行われることでも知られる断崖の名前。また英語圏では開発者であるウルティモ・ドラゴンの本名である「浅井」を冠して、アサイ・ムーンサルトの名称で呼ばれ、WWEをはじめとするプロレス団体でもアサイ・ムーンサルトの呼称が多用されている。ルチャリブレではペチョ・コン・ペチョ(胸と胸)とも呼ばれる。

この技にさらに後方1回転加え、630度回転するものをジャック・エバンススタンティン101として使用した。

WWE移籍後の紫雷イオの場合、エプロンから場外へのムーンサルトもアサイ・ムーンサルトと呼称されている。

ラ・ブファドーラ[編集]

ラ・ブファドゥーラとも呼ばれる。ラ・ケブラーダとは逆にリング内にいる選手に、セカンドロープを使いムーンサルト・アタックを行う技である。クリス・ジェリコライオンサルトミラノコレクションA.T.エンポリオ・アルマニッシュは、同じ要領で寝ている相手にプレスする技を使用する。丸藤正道はコーナー付近のトップロープで反動をつけて、さらに直角方向にあるロープで2段階式で反動するブファドーラ(ゲームでは名称はトライアングル・ブファドーラとされている)を一時期使用していた。ハヤブサは試合中、この技を失敗、頚椎を損傷し一時は全身不随になる重傷を負った。

なお、名称の由来はメキシコバハカリフォルニア州の都市、エンセナーダにあるラ・ブファドーラ岬から。

ムーンサルト・フット・スタンプ[編集]

ムーンサルト・プレスにもう90度余計に回転を加え、ダブル・フット・スタンプで相手の腹部に落下する。福岡晶が開発し、現在はスコーピオ紫雷イオなどが使用している。

ムーンサルト・ムーンサルト[編集]

飯伏幸太のオリジナル。一回目のムーンサルトはコーナートップからのムーンサルトで、この技を相手がよけた時にその場飛びのムーンサルトを出しフォールするという形をとる。一回目で着地した時には武藤のラウンディング・ボディ・プレスと同型だがさらにその場で次を出すと言うところにポイントがある。その他の利用者にリコシェがいる。

ダブル・ローテーション・ムーンサルト・プレス[編集]

リコシェのオリジナル。通常のムーンサルトより1回転多く、コーナートップから630度後方に回転してプレスする(フォームなどは通常のムーンサルトと同一)。ラ・ケブラーダの形や、ケージ上からの630度回転であれば前述の通りジャック・エバンスが使っていたが、コーナートップからリング内に向けて成功させたのはリコシェが初。

ちなみに、PS2のゲーム「オールスタープロレスリングII」では、ゲームオリジナルキャラクター有里優作が使用する「レボリューションサルト」という、この技と同型の技が存在する。

脚注[編集]

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  1. ^ さよならムーンサルトプレス 武藤敬司35年の全記録 61頁
  2. ^ さよならムーンサルトプレス 武藤敬司35年の全記録 62頁
  3. ^ 武藤敬司25周年記念 特別インタビュー第1弾
  4. ^ リングに背を向けた状態でコーナー最上段から上半身を右方向へと軽く捻って顔をリングの方へと向いて体を右方向へと90度水平旋回するようにジャンプして仰向けになった相手の上に腹部から落下する技である
  5. ^ さよならムーンサルトプレス 武藤敬司35年の全記録”. イースト・プレス. 2019年5月12日閲覧。
  6. ^ これが、現在一般的に使われている縦回転式での最初の呼び名である。しかし、初代タイガーマスクが使用したのは新日本プロレス時代の最後の試合になった対寺西勇戦など、数回のみである。ちなみに、対寺西勇戦では技を、かわされて失敗に終わっている。その際に、実況アナウンサーの古館伊知郎が「ムーンライト・コースター自爆」と叫んでいる。
  7. ^ 仰向けになっている相手にエプロン外からトップロープを掴んで前転で相手にボディプレスする技。