レッサーパンダ

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レッサーパンダ
レッサーパンダ
レッサーパンダ Ailurus fulgens
保全状況評価[1][2][3]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 EN.svgワシントン条約附属書I
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: レッサーパンダ科
Ailuridae Gray, 1843[4]
: レッサーパンダ属
Ailurus F. Cuvier, 1825[4]
: レッサーパンダ A. fulgens
学名
Ailurus fulgens F. Cuvier, 1825[4][5]
和名
レッサーパンダ[6][7][8]
英名
Lesser panda[6][8]
Red panda[3][5][6][8]

分布域

レッサーパンダ(Ailurus fulgens)は、哺乳綱食肉目レッサーパンダ科レッサーパンダ属に分類される食肉類。本種のみでレッサーパンダ属を構成する。

分布[編集]

インド北東部、中華人民共和国四川省西部)、ネパールブータンミャンマー北部[3]ラオスでの報告例はあるが、確実性に乏しいとされる[3]甘粛省貴州省青海省陝西省では絶滅したと考えられている[3]

形態[編集]

頭胴長(体長)50 - 63.5センチメートル[6]。尾長28 - 48.5センチメートル[6]体重3 - 6キログラム[6]。全身は長く柔らかい体毛で被われ、足裏も体毛で被われる[5][6]。背面は赤褐色で、腹面や四肢・耳介外側は黒い[5][6][7]。鼻面や唇、頬、耳介の外縁は白い[5][6]。尾には淡褐色の帯模様が入る[5]

耳介はやや大型で三角形[5][6]。指趾の数は5本[5]。爪はやや引っ込めることができる[5][6]。前肢の種子骨が指状の突起に変化し、指と向かい合っているため物をつかむことができ、頭から樹を降りることが出来る[5]。肛門の周辺ならびに足の裏に臭腺(肛門腺)がある[5][6]

後破裂孔内に頸動脈が開く[9]。後口蓋孔は上顎口蓋縫合よりも後方にある[9]。歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上顎6本、下顎8本、大臼歯が上下4本で計38本[5]。裂肉歯内側に咬頭(錐)が2つあり、歯根が3本[9]。胸椎の数は13 - 14個、腰椎の数は4 - 6個、仙椎の数は3個[9]盲腸がない[5]

出産直後の幼獣は体長15センチメートル、体重100 - 130グラム[5]。全身は体毛で被われているが、眼は開いていない。乳頭の数は8個[5]

分類[編集]

スカンク科Mephitidae

レッサーパンダ科Ailuridae

アライグマ科Procyonidae

イタチ科Mustelidae

Sato et al.(2009)より核DNAの5遺伝子座の塩基配列を決定し最大節約法・最尤法・ベイズ法全てで支持されたイタチ上科内の系統図[8]

属名Ailurusは「ネコ」、種小名fulgensは「光輝く」の意[8]

形態の比較ではクマ科に近縁、アライグマ科に近縁、クマ科と鰭脚類からなる系統に近縁、イタチ上科Musteloidea内でも原始的とする説などがあった[8]。1980年代にはジャイアントパンダがクマ科に近縁とする説が主流だったこともあり、アイソザイムや染色体の解析からジャイアントパンダとの類縁性は否定される説が有力となった[8]。1980年代後半以降はミトコンドリアDNAの分子系統解析も行われることも増えたが、2000年代にかけても解析手法により結果は一定しなかった[8]。1990年代後半にはイタチ科とアライグマ科からなる単系統群に近縁であることが示唆され、2000年にはアライグマ科・イタチ科・スカンク科と本科でイタチ上科Musteloideaを形成する説が提唱されたが上科内の系統は不明なままであった[8]。複数の核DNAの分子系統解析では上科内ではスカンク科に次いで分岐した系統だと推定されている[8]

イタチ上科のレッサーパンダ科に分類されることとなった[10][11][要検証]

形態から以下の2亜種に分ける説があり[5]、亜種を独立種とする説もある[8]。一方で分子系統学的解析では、亜種間で遺伝的差異はないとされる[8]

Ailurus fulgens fulgens F. Cuvier, 1825 ネパールレッサーパンダ[5]またはニシレッサーパンダ[12]
インド北東部、ネパール、ブータン[5]
Ailurus fulgens styani Thomas, 1902 シセンレッサーパンダ[5]
中華人民共和国南部、ミャンマー北部[5]
基亜種より大型で、額が高い[5]。体色が濃色[5]日本の動物園で飼育されているほとんどはシセンレッサーパンダである[13][要検証]

生態[編集]

標高1500 - 4800メートルにある温帯・亜熱帯の森林や竹林に生息する[3]。インドのMeghalaya高原では標高700 - 1400メートル(200メートルでの報告例もあり)の亜熱帯・熱帯の森林にも生息する[3]。樹上棲と考えられている[6]夜行性もしくは薄明薄暮性で昼間は休むが[5]、夏季には昼間も活動する[6]。縄張りを形成して生活すると考えられ、オスは臭腺による臭い付けや一定の場所に排便することで縄張りを主張する[7]

タケタケノコを食べるが小型哺乳類、鳥類の卵、昆虫、動物の死骸、果実地衣類なども食べる[3][6][7]

繁殖様式は胎生。妊娠期間は90 - 150日だが、受精卵の着床が遅滞する期間が含まれる[5][6]。樹洞や岩の隙間などで1回に1 - 4頭(主に2頭)の幼獣を産む[5][6][7]。授乳期間は5か月[6][7]。18 - 20か月で性成熟する[6][7]。寿命は8 - 10年[5]。飼育下の寿命は17年6か月の例がある[6]。日本国内における飼育下の寿命は、京都市動物園で生まれ2007年に王子動物園で死亡した洋々ヤンヤンの22年4か月や2018年1月に秋吉台自然動物公園で死亡した宝宝バウバウの23歳5ヶ月の例がある[14][15]

人間との関係[編集]

宅地開発や農地開発・薪採集のため森林伐採・単一種の植林・焼畑・放牧などによる生息地の破壊、毛皮・ペット目的の密猟や狩猟による混獲などにより生息数は減少している[3]。生息地に侵入した犬からの、犬ジステンパーでの感染死も懸念されている[3]。1975年のワシントン条約発効時には附属書IIに、1995年からはワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]1994年における中華人民共和国での生息数は2500頭、ネパールでの生息数は300頭、ミャンマーでは確認されていない[6]1999年における、シッキム州での生息数は2500頭以上と推定されている[6]

日本では1976年に、釧路市動物園で飼育下繁殖例がある[16]飼育下でも繁殖は可能であり、現在、世界中の動物園で繁殖が行われている。シセンレッサーパンダに関しては特に日本で人気が高く、2015年の時点で全世界での飼育数の7割に当たる258匹が飼育されている[17][要検証][18]

名称[編集]

1915年が初版の字書『中華大字典』には「熊猫」の語が収録

パンダの名前は1825年に西洋人がヒマラヤで発見したレッサーパンダの名前を現地人に尋ねたところ、「竹を食べる者」と言う意味の「ネガリャポンヤ」だと答え、「ポンヤ」が「パンダ」に変わったとされる[19]

初めはレッサーパンダは単に「パンダ」と呼ばれていたが、後にジャイアントパンダが発見されて有名になると、単に「パンダ」といった場合はジャイアントパンダの方を指すようになってしまい、英語においては、従来のパンダの方に「小さい方の」という意味の英語「レッサー」(lesser)や毛色から赤「レッド」(red)を付けて、レッサーパンダまたはレッドパンダと呼ぶようになった[20]。いわゆるレトロニムの例である。

このため古い日本語の図鑑などでは「Ailurus fulgens」の和名をパンダとしている場合がある。また、漢字表記をそのまま読んだクマネコが別名とされていることもある[21]が、ビントロング別名クマネコ(熊猫)と区別がつかないことになる。

英語ではLesser Panda[22]やRed Panda以外にも、Wah(チベット語キツネを意味するwaに由来)やファイヤーフォックス(Firefox)など多数の別名がある。

中国語では、ジャイアントパンダのことを「大熊猫」(大熊貓 / 大熊猫dàxióngmāo; ダー シィォン マオ)と記すのに対し、レッサーパンダは「小熊猫」(小熊貓 / 小熊猫xiăoxióngmāo; シァォ シィォン マオ)と呼ばれる[23]。「パンダ」同様本来「熊猫」はレッサーパンダを指す。

流行[編集]

風太
Red panda fuuta.jpg
別名・愛称 風太くん
生物 レッサーパンダ
品種 シセンレッサーパンダ
性別 オス
生誕 2003年7月5日
日本平動物園[24]
著名な要素 直立する姿がテレビで話題となり、日本中にレッサーパンダブームを巻き起こした。
飼い主 千葉市動物公園(2004年3月から)
風々(2003年6月死去)
楢(2012年3月死去)[25]
チィチィとの間にオス5頭メス3頭[26]
名の由来 父親から一文字取った。
直立した姿

2005年5月、千葉市動物公園で飼育されているオスの「風太」(ふうた、報道などでは「風太くん」とも称される)が、30秒程度の間、後ろ足二本で直立する、と内外のマスコミで取り上げられた。

レッサーパンダは元来、周囲の様子をうかがうときに直立することがあるが、当時の朝日新聞紙面にて紹介された風太の写真は人間のような立ち姿に見え話題となった。園の担当者によると、風太は生後まもなく母親に誤って尻尾を噛みちぎられたが、おかげで尻尾が邪魔にならず美しく背骨を反らすことができたという[27]。その後、風太の祖父や母も直立することがわかった。また、よこはま動物園ズーラシアの「デール」や佐世保市亜熱帯動植物園の「海」のように、二足で数歩歩く個体もいる。

これを機に、各地の動物園で、後ろ足で立つレッサーパンダが取り上げられ、「風太」がJT缶コーヒーCMに起用されるなど、話題が過熱したため、旭山動物園北海道旭川市)や世界自然保護基金などから、商用目的でレッサーパンダへ過剰な負担をかけることへの疑問や懸念が表明された[28]。また、ブームの発端となった千葉市動物公園では、ラジオ番組の電話インタビュー[どこ?]において、「当初地方紙のみの記事であったはずが、いきなり全国的に取り上げられたため、その過熱ぶりに困惑気味であった」と語っている。二足で歩くズーラシアのデールに対しても「無理やり芸を仕込んでいる」という誤解に基づくバッシングも一部で起こっていた。

ブーム下においては、直立したレッサーパンダの縫いぐるみなどのグッズが多数商品化され、ハピネットの『動物大百科』のソフビ人形は直立形態を前提に造形され、エポック社からは『レッサーパンダが立ちました』という名のフィギュア(カプセルトイ)が商品化された(ただし、二本足で直立という状態は、基本的にレッサーパンダにとっては頻繁に行う行動ではない)。

風太は2018年7月に15歳を迎え、人間の年齢でいうと70歳の高齢となり、寝ている時間が増えほとんど自分から立ち上がることはないが、餌の時間には立ち姿が見えることがあるという[27][29]

出典[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (downroad 09/04/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Ailurus fulgens. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 09/04/2020)
  3. ^ a b c d e f g h i j Glatston, A., Wei, F., Than Zaw & Sherpa, A. 2015. Ailurus fulgens (errata version published in 2017). The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T714A110023718. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T714A45195924.en. Downloaded on 09 April 2020.
  4. ^ a b c W. Christopher Wozencraft, "Order Carnivora". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 532-628.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 中里竜二 「パンダ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、67-69頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 小原秀雄 「レッサーパンダ(アカパンダ)」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、24-25、145頁。
  7. ^ a b c d e f g James K. Russel 「その他のアライグマ科」渡辺弘之訳『動物大百科 1 食肉類』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、120-121頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l 佐藤淳、Wolsan Mieczyslaw 「レッサーパンダ(Ailurus fulgens)の進化的由来」『哺乳類科学』第52巻 1号、日本哺乳類学会、2012年、23-40頁
  9. ^ a b c d 今泉吉典 「食肉目総覧」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、14-15頁。
  10. ^ John J. Flynn et al. (2000-11). “Whence the Red Panda” (PDF). Molecular Phylogenetics and Evolution 17: 190-199. オリジナルの2013-08-28時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20130828194047/http://www.msb.unm.edu:80/mammals/publications/Flynn2000.pdf. 
  11. ^ Manuel J. Salesa et al. (2005). “Evidence of a false thumb in a fossil carnivore clarifies the evolution of pandas.” (PDF). Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. オリジナルの2007-09-30時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20070930222116/http://www.pnas.org/cgi/reprint/0504899102v1.pdf. 
  12. ^ 熱川バナナワニ園” (日本語). www.bananawani.jp. 2019年11月18日閲覧。
  13. ^ 動物園と水族館電子図鑑”. 2013年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月20日閲覧。
  14. ^ 宝宝(バウバウ)おじいちゃん、ありがとう[飼育員のブログ]”. www.safariland.jp. 2019年7月29日閲覧。
  15. ^ 王子動物園/思い出のアルバム/166”. ojizoo.jp. 2019年7月12日閲覧。
  16. ^ 板山聖子・志村良治 「レッサーパンダの誕生」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、182-185頁。
  17. ^ 絶滅危機のレッサーパンダ、飼育は日本が世界一 「風太」が知名度や繁殖で貢献 huffingtonpost 2016年06月28日
  18. ^ レッサーパンダの現状|レッサーパンダの聖地 静岡市” (日本語). レッサーパンダの聖地 静岡市. 2019年11月18日閲覧。
  19. ^ ジャイアントパンダについて > 知られざるパンダ 上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト(更新日不明)2018年1月2日閲覧
  20. ^ 「ボクが元祖!!」レッサーパンダ : 動物たちのヒミツ箱 : 初めてのこだわり : 新おとな総研”. YOMIURI ONLINE(読売新聞) (2011年6月22日). 2013年8月11日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年8月11日閲覧。
  21. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年、p.539。607。
  22. ^ Lesser Panda, Red Panda, Red Cat-bear - Ailurus fulgens : WAZA : World Association of Zoos and Aquariums”. 2019年1月30日閲覧。
  23. ^ 三宅裕之(監修・執筆). “【発音付】みんなが大好きな「パンダ」は中国語で何と言う?” (日本語). 中国ゼミ [最速で中国語をマスターするサイト]. 2019年11月18日閲覧。
  24. ^ レッサーパンダ日本平動物園HP
  25. ^ 家系図静岡市
  26. ^ 家系図BayWave
  27. ^ a b 今も立てるんです レッサーパンダ風太、5日で15歳に”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社 (2018年7月4日). 2020年2月21日閲覧。
  28. ^ 過剰な負担かけないで レッサーパンダでWWF”. 47NEWS (2005年6月8日). 2014年8月18日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年11月21日閲覧。
  29. ^ 立つレッサーパンダ・風太くんの今! 人間年齢70歳でも可愛さは健在”. AbemaTIMES. AbemaTV (2018年12月1日). 2020年2月21日閲覧。

関連項目[編集]