一人親家庭

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一人親家庭(ひとりおやかてい)とは、母親または父親の片方いずれかと、その児童)とからなる家庭をいう。単親世帯(たんしんせたい)ともいう。

母と児童の家庭を母子世帯(ぼしせたい)あるいは母子家庭(ぼしかてい)、父と児童の家庭を父子世帯(ふしせたい)あるいは父子家庭(ふしかてい)という。また、そのような家庭の親は、母親の場合はシングルマザー: single mother、略称:シンママ)、父親の場合はシングルファーザー: single father)と称される。なお、英語に由来する「シングルマザー(略してシンママとも)」(single mother)という呼称は、池上千寿子の著書「シングル・マザー 結婚を選ばなかった女たちの生と性」(1982年)によって、日本社会では認知されていった。[要出典]本項目では、特筆のない限り「日本における一人親家庭」について記載する。

日本の単親家庭[編集]

未婚の20歳未満の子供を持つ単親家庭数(推計)は、2016年において母子世帯が123.2万世帯、父子世帯が18.7万世帯であり[1]、昭和58年と比較すると両世帯ともに増加傾向にある(それぞれ71.8万、16.7万)[2]。単親家庭が世帯構造に占める割合は、2017年度では7.2%であり、1986年の5.1%から漸次的増加を示している[3]。母子家庭の方が多い理由としては、例えば子供がいる夫婦が離婚する時に、母親が親権者になり子供を引き取る場合が多いことが挙げられる。1960年(昭和35年)は父親が親権者になる割合が47%であったが、1996年(平成8年)は母親が親権者になる割合が78%となっている[4]

発生原因[編集]

母子世帯になった理由では、配偶者との死別以外の理由が9割を超えている[5]。一般的に、ひとり親が発生する原因としては、以下のような理由が挙げられる。

  • 父母の離婚
  • 父母の一方が子の出生後に死亡
  • 父親の死亡後に子が出生
  • 父母の一方が行方不明(蒸発)
  • 父母の一方が法令の規定により拘禁されている
  • 父母の一方が精神障がいにより措置入院させられている
  • 父母の一方に重度の障がいがあるために他方が養育している
  • 父母の一方による虐待・遺棄などにより他方が養育している
  • 婚姻関係を結ばず出生
  • 捨て子などで、母が懐胎したときの事情が不明

ただし、父母のいずれかが単身赴任等の理由により「生活拠点が一時的に、家庭とは別に置かれている場合」は含まれない。

一人親家庭の貧困[編集]

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査[6]によれば、一人親家庭のうち、厚生労働省公表の貧困線を下回った世帯の割合は、母子家庭で51.4%、父子家庭で22.9%であり、二人親家庭の5.9%に比べて大きな差がある。さらに、可処分所得が貧困線の50%に満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が 13.3%、父子世帯が 8.6%、ふたり親世帯が0.5%となっている。また、母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。

「有子世帯の所得格差は、過去15年間で拡大傾向にあり、とくに独立母子/父子世帯内部で所得格差が大きい」「高学歴化によりひとり親の教育水準が急速に向上したものの、ひとり親世帯の低学歴層への偏りは安定的に維持されている」「要因分解法の推定結果より、世帯所得の学歴間格差が独立ひとり親世帯の所得格差の拡大に寄与しているが、他の成人親族との同居はひとり親世帯の階層差を緩衝させる役割を持っていた」とする分析があり[7]、ひとり親家庭の貧困は親の性別や学歴、同居形態によって実態が異なる。

厚生労働省は「子ども虐待対応の手引き」[8]において、未婚を含むひとり親家庭を児童虐待のリスク要因の1つとしてあげている。とある保育園に通う児童虐待や虐待が疑われる家庭の半数以上が一人親家庭であるとする調査[9]や、育児放棄が低出生体重児のいる家庭やひとり親家庭で発生する確率が比較的高いとする考察[10]などがある。

一人親の貧困は貧困の悪循環に陥る危険があり、行政支援をはじめとした公的支援のほか、子ども食堂[11][12]や無料塾の開催[13]などの民間支援も行われている。

行政支援[編集]

一人親家庭には地方自治体が主体となって育児医療等に対し助成金などの種々の支援が行われている。また就業支援職業訓練などの各施策が行なわれている。また、一人親家庭だけを対象としたものではないが、経済的に窮乏状態(=貧困)の家庭に対しては生活保護や就業相談、子育ての相談窓口などを設けている。さらに行政機関ではないものの、母子寡婦福祉連合会が行政機関と連絡をとって支援を行っている。

一人親家庭への手当、減免・補助制度、サービス[編集]

母子家庭・父子家庭のために様々な制度が行政により設けられている。

  • 児童手当 - 日本国内に住む0歳以上中学校卒業(=義務教育課程修了)までの児童が対象となる手当て。
  • 児童扶養手当 - 父母が離婚するなどして父又は母の一方からのみ養育を受けられない一人親家庭などの児童のために、地方自治体から支給される手当て。児童1人の場合月額41,720円。
  • 児童育成手当 - 18歳未満の児童を扶養するひとり親家庭が対象。児童1人につき月13,500円。
  • 生活保護 - 経済的に困窮しているときに、その状況に応じて生活保護費が支給される。(生活扶助・住宅扶助・教育扶助・医療扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助、介護扶助)
  • 住宅手当 - 自治体で支給条件が定められている。
  • 所得税住民税の優遇減免 - ひとり親控除や住民税非課税世帯。
  • 国民年金国民健康保険(税)の免除 - ともに所得が低い場合は軽減・免除される。
  • 交通機関の割引制度 - 一人親家庭への割引制度がある。例えば児童扶養手当を受給している世帯は、JRの通勤定期乗車券が3割引きで購入できる。
  • 自治体によっては公営交通(路線バス、地下鉄、路面電車)や民営の路線バスが無料で乗車できるフリーパスが交付されるところもある。
  • 上下水道の減免制度 - 自治体によっては減免されることもある。
  • 公営住宅の家賃の減額/免除
  • 粗大ごみなどの処理手数料の減免制度
  • 保育料の減額/免除
  • 給食費の減額/免除
  • 公立高校授業料の減額/免除
  • ひとり親家族等医療費助成制度 - 18歳まで、医療費の一部を助成する。
  • 子供の医療費助成制度 - 近年はどこの自治体でも充実している。
  • 利子非課税制度(マル優)
  • 母子福祉貸付制度 - 連帯保証人が必要であるが、無利子で貸付が受けられる。連帯保証人が立てられない場合は有利子で貸付が受けられる。
  • 母子寮(母子生活支援施設) - 子どもが20歳未満であれば収入に応じた負担で入居することができる。生活保護住民税免除世帯は無料。
  • ヘルパーの派遣 - 冠婚葬祭急病人が出た場合、就労を継続するのが困難な時、保護者の傷病などにより一時的に家事援助が必要な場合にホームヘルパーを派遣してもらえる。
  • ひとり親休養ホーム - 自治体によっては保養施設の利用を補助してもらえる。
  • ファミリーサポートセンター - 急用等の時に子供を預かってくれる。
  • ショートステイ(子育て短期支援事業) - 行政が短期間子供を預かってくれる。
  • 自治体によっては公営住宅に優先的に入居できたり、抽選倍率が優遇される。
  • 自治体によっては家賃保証会社の利用を条件に公営住宅の入居に必要な連帯保証人の免除、DV被害者を対象に連帯保証人を免除や連帯保証人の人数を減らすところもある。

父子家庭と母子家庭における公的支援の格差[編集]

日本政府、主な管轄機関:厚生労働省)・地方自治体による支援制度は、父子世帯と比べて経済的に苦境(=貧困)にあることの多い母子世帯を中心として構成され、これに父子世帯の子育てサポート制度が備わる。母子及び父子並びに寡婦福祉法では母子家庭の定義に「等」を付け加えることで父子家庭を含むとしている。

さらに同法では母子家庭等を未成年者(20歳未満)の子がいる家庭に限定している。子が20歳になった時、母子家庭の母だった女性は「寡婦」として引き続き支援を受けられるが、父子家庭の父だった男性は支援の対象になっていないなど、母子家庭や寡婦に比べて父子家庭や寡夫への支援は薄い。

父子家庭については従来、経済的な支援よりも家事や子育ての相談などの支援の方がニーズが高いとされ、従来から経済的支援以外の支援は行われていた。一方で父子家庭にも、栃木県鹿沼市千葉県野田市東京都港区などでは児童扶養手当(父子家庭には受給権無し)相当の手当を独自に設定していた事例があり、支援の必要性が訴えられていた[14]。その結果、2010年8月からは児童扶養手当の支給対象に父子家庭も含まれることになった。

脚注[編集]

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  1. ^ 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告”. 厚生労働省. 2020年3月15日閲覧。
  2. ^ 厚生省. 昭和58年度全国母子世帯等調査. 厚生省 
  3. ^ 厚生労働省政策統括官(統計・情報政策、政策評価担当) (2018.12). 平成29年国民生活基礎調査. 厚生労働省政策統括官 
  4. ^ 第1編 第1部 第2章 第3節 4 離婚・再婚”. 平成10年版厚生白書. 厚生労働省 (1988年6月15日). 2006年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月30日閲覧。
  5. ^ 平成29年版厚生労働白書 -社会保障と経済成長-”. 厚生労働省. 2019年3月8日閲覧。
  6. ^ https://www.jil.go.jp/press/documents/20191017.pdf
  7. ^ 斉藤知洋「ひとり親世帯の所得格差と社会階層」『家族社会学研究』第30巻、日本家族社会学会、2018年、 44-56頁、 doi:10.4234/jjoffamilysociology.30.44
  8. ^ https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/dl/130823-01c_004.pdf
  9. ^ 伊東克実「児童虐待と保育園の支援の課題」『札幌学院大学人文学会紀要』、札幌学院大学総合研究所、2020年2月、 133-144頁。
  10. ^ 周燕飛「母親による児童虐待の発生要因に関する実証分析」『医療と社会』第29巻第1号、公益財団法人 医療科学研究所、2019年、 119-134頁、 doi:10.4091/iken.2019.001
  11. ^ (日本語) “食堂活動” の可能性, (2018-03-16), doi:10.15099/00018341, https://doi.org/10.15099/00018341 2020年4月22日閲覧。 
  12. ^ 増え続けるこども食堂 過去最大の年間1,400ヶ所増で全国3,718ヶ所に(湯浅誠) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2020年4月22日閲覧。
  13. ^ INC, SANKEI DIGITAL. “貧困の子供に学習支援 民間団体が「無料塾」の試み” (日本語). 産経ニュース. 2020年4月22日閲覧。
  14. ^ “児童扶養手当「父子家庭にも」の声広がる”. しんぶん赤旗. (2008年7月17日). http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-07-17/2008071702_04_0.html 

関連項目[編集]