万人の万人に対する闘争

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万人の万人に対する闘争」(ばんにんのばんにんにたいするとうそう、: bellum omnium contra omnes, : the war of all against all)とは、トマス・ホッブズ1642年の『市民論』(De Cive)、及び1651年の『リヴァイアサン』(Leviathan)での思考実験において、彼が考える自然状態における人間の有様を表すために持ち出した表現を言う[1]

「万人の万人に対する戦い闘い)」、「万人の万人に対する戦争」などとも訳される。

詳細[編集]

主著として有名な『リヴァイアサン』で書かれたフレーズと勘違いしている者も多いが、ラテン語による「bellum omnium contra omnes」のフレーズ自体は、ラテン語で書かれた前著『市民論』(De Cive)内で用いられたものである[2]

Ostendo primo conditionem hominum extra societatem civilem (quam conditionem appellare liceat statum naturae) aliam non esse quam bellum omnium contra omnes; atque in eo bello jus esse omnibus in omnia.

(英語訳: I show in the first place that the state of men without civil society (which state may be called the state of nature) is nothing but a war of all against all; and that in that war, all have a right to all things.

(日本語訳: 私がまず最初に示したことは、市民社会無き人間の状態(それは自然状態と呼ばれるべきかもしれないが)は「万人の万人に対する闘争」でしかなく、その闘争においては、万人が全てについての権利を有するということである。)

『リヴァイアサン』においては、意味としては変わらないが、

...such a war as is of every man against every man.

(日本語訳: 全ての人間の全ての人間に対するかのような闘争

といった表現で記述されている[3]

背景[編集]

これらの著書が書かれた当時は、清教徒革命の真っ只中であり、その野蛮で混乱した社会状況が、ホッブズのこのような人間観に影響を与えたと考えられる。

脚注・出典[編集]

  1. ^ ホッブズは、この万人の万人に対する闘争状態がもたらす堪え難い暴力と不安を取り除くために、すべての個人は、それ自身の行動の自由を完全に放棄し、国家、つまりリヴァイアサンという人為的な存在を作り上げることにしたのだ、と説いた。
    • P.G.ヴィノグラドフ 『法における常識』 末延三次,伊藤正巳(共訳)、岩波文庫、1972年。 p.31
  2. ^ De Cive - Prefatio (前書き)
  3. ^ Leviathan - of the natural condition of mankind as concerning their felicity and misery

関連項目[編集]