万川集海

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万川集海

万川集海(まんせんしゅうかい、ばんせんしゅうかい)とは、延宝4年(1676年)に伊賀国、郷士で藤林長門守の子孫である藤林左武次保武(保義)が著した忍術書である。都合上から「万川集海」とも表記されるが、古書では旧字の萬を用いた『萬川集海』が外題である。

概要[編集]

延宝4年(1676年)丙辰 仲夏5月に藤林保義による序があり、そこに書名は「細い川もたくさん集めれば海になる」という意味でつけられ、すべての忍術の流儀をまとめ上げたものである。

戦乱が落ち着いた徳川時代に大成した忍術技術書で、甲賀伊賀の各流派を超えて一子相伝とされた忍びの技術をまとめたことから、写本や類本が各流派に跨り残った。

写本は大原勝井家本などがある。また、甲賀の大原数馬・上野八左衛門・隠岐守一郎らが寛政元年(1789年)4月に幕府の寺社奉行松平輝延)を通じて江戸幕府に献上した内閣文庫本が有名である。

内容[編集]

仁義忠信を守る「正心」を第一においており、正心篇・将知篇・陽忍篇・陰忍篇・天時篇・忍器篇(有名な水蜘蛛など忍器について)などや「陰人ノ上手十一人」の記述もある。書中に「口伝あり」、「鍛錬によるべし」を一部残すが、技術を詳細に説明する方針が貫かれている。

万川集海の内容[1]
名称 名称
第一巻 正心 上 正心篇 第十一巻 城営忍 上 陰忍篇
第二巻 正心 下 正心篇 第十二巻 城営忍 下 陰忍篇
第三巻 忍宝の事 将知篇 第十三巻 家忍の事 陰忍篇
第四巻 期約の事 将知篇 第十四巻 開戸の事 陰忍篇
第五巻 忍者招抱の次第 将知篇 第十五巻 忍夜討の事 陰忍篇
第六巻 不人謀の事 上 将知篇 第十六巻 上 遁甲日時の事 天時篇
第七巻 不人謀の事 下 将知篇 第十七巻 下 天文の事 天時篇
第八巻 上 這入の事 陽忍篇 第十八巻 登器 忍器篇
第九巻 中 近入の事 陽忍篇 第十九巻 水器 忍器篇
第十巻 下 見利の事 陽忍篇 第二十巻 開器 忍器篇
見分の事 陽忍篇 第二十一巻 火器 一 忍器篇
間見の事 陽忍篇 第二十二巻 火器 二 忍器篇

備考[編集]

  • 巻第十三隠忍三に記される身を隠す咒(じゅ)に「隠形之大事」があり、その横にサンスクリットがあるが、サンスクリットを熟知している人物が書いたとは思えない書であり、忍者が修験道に影響を受けつつも確実に理解していたとはいえなかったことがわかる[2]

書籍[編集]

  • 藤林保義『完本 万川集海』中島篤巳訳、国書刊行会、2015年5月22日(原著1676年)。ISBN 978-4336057679。
  • 藤林保義『万川集海 現代語 第四巻 陽忍篇』石田善人 監修、柚木俊一郎訳、誠秀堂、滋賀県 甲賀市 甲賀町隠岐394(原著延宝4年(1676年))。ISBN 9784915459047。
  • 藤林保義『萬川集海 原書復刻版』誠秀堂、滋賀県 甲賀市 甲賀町隠岐394(原著延宝4年(1676年))。

関連するフィクション[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 「萬川集海」の内容.甲賀市くすり学習館.13.2019年9月15日確認
  2. ^ 山田雄司 『忍者の歴史』 角川選書 2016年 ISBN 978-4-04-703580-5 p.86.

関連項目[編集]