三岐鉄道601系電車

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三岐鉄道601系電車
601系607編成(保々駅・2009年1月)
601系607編成
保々駅・2009年1月)
基本情報
製造所 西武所沢車両工場
主要諸元
軌間 1,067(狭軌) mm
電気方式 直流1,500V架空電車線方式
車両定員 160人(座席58人)
車両重量 37.5 t
全長 20,000 mm
全幅 2,930 mm
全高 4,140 mm
台車 TR14A
主電動機 直巻整流子電動機 MT10・MT15[1]
主電動機出力 100kW
駆動方式 吊り掛け駆動
歯車比 25:63 (2.52)
制御装置 電空カム軸式抵抗制御 CS5
制動装置 AMAE電磁自動空気制動
備考 数値はクモハ601形601 - 605
(導入当時)
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三岐鉄道601系電車(さんぎてつどう601けいでんしゃ)は、かつて三岐鉄道三岐線に在籍した通勤形電車

概要[編集]

三岐線の輸送力増強ならびに車両大型化を目的として、1981年昭和56年)以降、西武鉄道より451系電車ならびに571系電車を譲り受けたものである。

先行して導入された501系(元西武501系電車)が西武在籍当時の車両番号(車番)のまま導入されたのとは異なり、本系列の導入に際してはクモハ601形-クハ1601形という新たな形式区分が付与された。各車の車番末尾はクモハ601-クハ1602・クモハ603-クハ1604といった具合に通し番号となっており、クモハ601形は全車奇数車番を、クハ1601形は全車偶数車番をそれぞれ称した。

なお、本系列によって代替されたのは自社発注車モハ120形・モハ130形・クハ210形の各形式であったが、同形式はいずれもカルダン駆動の新性能車であり、それらが吊り掛け駆動の旧性能車である本系列に代替されるという珍しい事例となった[2]

1981年(昭和56年)12月から翌1982年(昭和57年)3月にかけて451系電車を種車とする601 - 605編成(2両編成3本)が、1988年(昭和63年)2月には571系電車を種車とする607編成(2両編成1本)がそれぞれ導入され[3]、前者のグループは1997年平成8年)10月まで、後者は2009年(平成21年)2月までそれぞれ在籍した。

仕様[編集]

車体[編集]

4編成いずれも切妻形状の前面を有する20m級3扉車体という点は共通しているものの、451系電車を種車とする601 - 605編成では行先表示器を前面向かって左側の窓内側に装備していたのに対し、571系電車を種車とする607編成では前面向かって左側幕板部に独立した行先表示窓を有した点が異なる。また、屋根上ベンチレーターの種類、連結面貫通路幅、乗務員扉の形状・材質、乗務員扉部手すりの形状等にも、種車の違いに起因する相違点を有した。

主要な相違点
  クモハ601 - 605
クハ1606
クハ1602・1604 クモハ607
クハ1608
種車 元西武451系 元西武571系
ベンチレーター ガーランド型 グローブ型
行先表示器 前面窓内側に装備 車体側に独立して装備
連結面貫通路 狭幅(扉あり) 広幅(扉なし)
乗務員扉 鋼製・大窓 ステンレス製・小窓
乗務員扉部手すり 露出型 埋込型

導入に際しては前照灯を三岐式の大型ケースタイプのものへ改造し、車体塗装をイエロー地に車体裾周りをオレンジとした三岐標準塗装へ変更した他は大きな改造は施工されていない。なお、607編成ならびにクハ1602・1604は、西武在籍当時は側面アルミサッシが無塗装仕上げとなっていたが、塗装変更時にサッシ部分も車体同色に塗り潰されている。

主要機器[編集]

601 - 605編成は制御器・主電動機ともに国鉄制式の電空カム軸式CS5制御器・MT10もしくはMT15主電動機[1]を搭載する。台車はクモハ601形がTR14A、クハ1601形がTR11Aといずれも省形釣り合い梁式台車である。これらは全て西武在籍当時からの装備であり、導入に際して一切手を加えられていない。

一方、607編成では制御器はCS5、主電動機はMT15[1]と主要機器は西武在籍当時のままであったものの、台車については三岐への納入時に装備していた住友金属工業製のペデスタル式空気ばね台車FS40を、譲渡後の整備に際してクモハ607はTR14Aへ、クハ1608は小田急電鉄2400形電車の廃車発生品である住友金属工業製のアルストムリンク式台車FS30[4]へそれぞれ換装した[5]

導入後の変遷[編集]

601系607編成の走行音
(三岐線伊勢治田 - 東藤原間)

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601 - 605編成は1984年(昭和59年)3月に台車を京王帝都電鉄デハ1900形電車の廃車発生品である日立製作所製上天秤式ウィングバネ台車KBD-107へ換装され、乗り心地の改善が図られた。さらにクハ1604は1988年(昭和63年)に小田急2400形電車の廃車発生品であるアルストムリンク式台車FS330[4]に、クハ1606は1993年(平成5年)に西武701系列の廃車発生品であるペデスタル式ウィングばね台車FS342にそれぞれ台車を換装した。また、607編成は導入後間もなくクハ1608の台車をFS330に換装したのち、1989年(平成元年)にはクモハ607の台車をKBD-107へ換装し、他編成と台車の仕様が統一された。

その他、603・605編成は西武より購入した解体発生品を活用する形で客用扉のステンレス無塗装扉化・側窓サッシの無塗装化・乗務員扉のステンレス小窓化が順次施工された。607編成についても客用扉のステンレス無塗装扉化が実施されている。一方で601編成は乗務員扉のステンレス小窓化が実施されたのみで、比較的導入当時の原形を保ったまま運用された。

その後冷房車101系(元西武401系電車)の導入に伴い、601編成が1992年(平成4年)5月20日付で本系列初の廃車となった。603・605編成についても、801系(元西武701系電車)導入に伴って1997年(平成9年)6月15日付で603編成が、同年10月12日付で605編成が相次いで廃車となり、西武451系電車を出自とするグループは全廃となった。なお、605編成は除籍前日の1997年(平成9年)10月11日に、「鉄道の日」記念イベントの一環としてさよなら運転が実施された。

唯一残存した607編成は他系列とともに一般の運用に継続使用されたほか、三岐線に在籍する唯一の吊り掛け駆動車という希少性から各種イベントにおいても重用された[6]1998年(平成10年)にはクハ1608の台車がクハ1606の廃車発生品であるFS342に交換されるなど、手を加えられつつ運用された。しかし、751系(元西武新101系電車)の導入に伴って廃車の方針が決定し、2009年(平成21年)2月1日に実施されたさよなら運転を最後に翌2月2日付で廃車となった。607編成はパンタグラフ等を取り外した状態で伊勢治田駅に留置されていた。

607編成の除籍をもって本系列は形式消滅し、同時に三岐鉄道は三岐線に在籍する全車両のカルダン駆動化、ならびに冷房化率100%を達成した。

車歴・編成[編集]

形式 車番 旧番 新製 譲渡 廃車
クモハ601形
(Mc)
クモハ601 西武クモハ451 1959年11月 1982年3月 1992年5月
クモハ603 西武クモハ453 1959年11月 1982年3月 1997年6月
クモハ605 西武クモハ471 1960年6月 1981年12月 1997年10月
クモハ607 西武クモハ577[7] 1962年9月 1988年2月 2009年2月
クハ1601形
(Tc)
クハ1602 西武クハ1488 1962年12月 1982年3月 1992年5月
クハ1604 西武クハ1490 1962年12月 1982年3月 1997年6月
クハ1606 西武クハ1472 1960年6月 1981年12月 1997年10月
クハ1608 西武クハ1578[7] 1962年9月 1988年2月 2009年2月
 
編成呼称 クモハ601形
(Mc)
クハ1601形
(Tc)
601編成 601 1602
603編成 603 1604
605編成 605 1606
607編成 607 1608

脚注[編集]

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  1. ^ a b c MT10は当時の鉄道院デハ63100形電車の新製に際してメーカー各社に100kW級の主電動機を競作させた際に東洋電機製造が納入した主電動機に付された制式型番で、メーカー型番はTDK-502である。MT15は前述の経緯で競作された各社の主電動機のうち、特に使用実績が良好であった日立製作所製MT7(メーカー型番RM-257)を基本とし、そこへMT10を始めとした他社設計の主電動機の利点を反映する形で鉄道院の制式主電動機として量産モデル化されたものである。両者とも端子電圧675V時定格出力100kW, 定格回転数653rpmのスペックは同一であり、クモハ601・603がMT10を、クモハ605・607がMT15をそれぞれ搭載した。
  2. ^ その他、豊橋鉄道において1997年(平成8年)に実施された同社渥美線の架線電圧1,500V昇圧に伴って、1900系電車(カルダン駆動車)が7300系電車(昇圧に際して名古屋鉄道より譲り受けた吊り掛け駆動車)に代替された事例がある程度である。
  3. ^ 571系電車における唯一の他の鉄道事業者への譲渡事例であった。
  4. ^ a b FS30は制御車クハ2450形が、FS330は電動車デハ2400形がそれぞれ装備した台車である。両者の基本設計は同一であったものの、前者は固定軸間距離(軸距)2,000mmの車輪径762mm、後者は軸距2,200mmの車輪径910mmと、諸寸法は大きく異なる。
  5. ^ FS40台車のみは当初より西武から近江鉄道へ売却されることが決定していたための措置で、同編成のFS40台車は事実上譲渡に際しての甲種輸送用に装備していたものであった。取り外されたFS40台車はその後保々車両区から近江鉄道彦根工場へ輸送された。
  6. ^ もっとも、三岐線に在籍する唯一の吊り掛け駆動車であると同時に唯一の非冷房車でもあった同編成は、夏季には極力運用に入らないよう考慮されていた。
  7. ^ a b 譲渡されたのは575編成(クモハ575-クハ1576)であるとする資料も存在するが、正しくは本項の記述通り577編成(クモハ577-クハ1578)である。

参考文献[編集]

  • 『RM LIBRARY』 ネコ・パブリッシング
    • 西尾恵介 「31 所沢車輌工場ものがたり(下)」 2002年2月 ISBN 4-87366-266-4
    • 南野哲志・加納俊彦 「62 三岐鉄道の車両たち」 2004年10月 ISBN 4-7770-5068-8
  • 鉄道ピクトリアル鉄道図書刊行会
    • 富永裕之 「中京・北陸地方のローカル私鉄 現況2 三岐鉄道」 1986年3月増刊号(通巻461号)
    • 小松丘・大山俊行・高橋健一 「他社へ譲渡された西武鉄道の車両」 1992年5月増刊号(通巻560号)
    • 岡崎利生 「西武所沢車両工場出身の電車たち(譲渡車両の現況)」 2002年4月号(通巻716号)
  • 『新車年鑑』・『鉄道車両年鑑』 鉄道ピクトリアル臨時増刊号 鉄道図書刊行会
    • 「新車年鑑 1993年版」 1993年10月増刊号(通巻582号)
    • 「新車年鑑 1998年版」 1998年10月増刊号(通巻660号)
    • 「鉄道車両年鑑 2009年版」 2009年10月増刊号(通巻825号)

関連項目[編集]

他社の西武451系譲渡車