世界史の構造

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『世界史の構造』
(せかいしのこうぞう)
世界共和国へ』(2006年)
著者 柄谷行人
発行日 2010年6月24日
発行元 岩波書店
ジャンル 世界史
形態 単行本
ページ数 530
前作トランスクリティーク――カントとマルクス』(2001年)
公式サイト 岩波書店
コード ISBN 978-4-00-023693-5
Portal.svg ウィキポータル 歴史
[ Wikidata-logo-en.svg ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

世界史の構造』(せかいしのこうぞう)は、柄谷行人の著作。 2010年岩波書店より発刊[1]2015年1月に岩波現代文庫として改版[2]

内容[編集]

世界共和国へ』は本書の先行ダイジェストであった[3]。ゆえに、本書と重複する内容も多い。

A.互酬、B.再分配、C.商品交換の結合態としての世界システムの変遷を語り、それらを越えたDという交換様式への道筋を示す。ミニ世界システム、世界=帝国、世界=経済(近代世界システム)そして現在と未来という順序で章立ててある。

ミニ世界システム[編集]

ミニ世界システムという章では、ほとんど考察されてこなかった、交換様式Aがドミナントである世界システム(氏族社会)の発生を論じる。

交換様式AとCの差違を説明するために、互酬の呪術性が注目され、マルティン・ブーバーの「私と汝」「私とそれ」という考え方が参照される。また、氏族社会が首長の力を強化せず平等な社会である(すなわち直ちに国家に転化しない)理由の説明になるものとして、ジークムント・フロイトの『トーテムとタブー』が再評価される。

世界=帝国[編集]

国家論[編集]

国家とは、交換様式Bがドミナントな社会構成体で、ホッブスの『リヴァイアサン』が参照される。国家の本質は戦争にあり、ゆえに、国家とはまず他国に対して国家なのだ、とされる。

預言者[編集]

交換様式Dは普遍宗教の預言者によって開示されたものであるとする。ウェーバーの分類する預言者には倫理的預言者と模範的預言者があることを考えると、キリスト教回教仏教の各教祖だけでなく、イオニア自然哲学者やソクラテス孔子老子などの思想家も、普遍宗教の預言者と同じであると言う。

近代世界システム[編集]

資本主義社会[編集]

景気循環[編集]

景気が上がったり下がったりするのは、労働力という特殊な商品のせいであり、循環が周期的であるのはその時代の世界経済の主力になる世界商品(軽工業製品、重化学工業製品、耐久消費財、情報など)の都合によるとされる。

恐慌[編集]

恐慌の本質は信用恐慌にあるとされる。産業資本主義経済では、商品を作って売った差額が利潤になり、そこから拡大再生産のための設備投資をするのだが、商品が売れるということには困難が伴うので、とりあえず売れたことにして、決済を後にする。商品が売れていなかったことが判明して、恐慌が起こる。

資本の揚棄[編集]

交換様式Dは「アソシエーション」とパラフレーズできる。協同組合はアソシエーションである。株式会社協同組合化(ロッチデール原則に基づく、会社の意思決定における、労働者及び株主の“一人一票”化)すれば資本を揚棄できるが、一社だけでそれをやると他の企業との競争に敗退するため、国家規模での法制化をしなければならないとする。また、一国だけでその法制化をやると、他国の干渉を招くから、世界同時革命でやらなければいけないとも。

現在と未来[編集]

国連について[編集]

国連はまだ覇権国と国際資本に左右される場所であるが、WHOなどの医療・環境・文化の領域ではアソシエーション的な組織体制になっていることを指摘した。

アーツ・アンド・クラフツ運動との関連[編集]

ロマン派は「失われた過去への憧憬」と「資本=国家への対抗」という二つのモチーフを持っているとし、英国ロマン派はパーシー・シェリーを筆頭にラスキンなども後者の傾向が強いとされる。ウィリアム・モリスアーツ・アンド・クラフツ運動も、その伝統上のものとして注目される[4]

反響[編集]

翻訳[編集]

以下の翻訳は岩波書店による単行本に加筆された版に基づく。

2012年9月中央编译出版社より『世界史的构造』  趙京華(中国社会科学院文学研究所研究員)による中国語(簡体字)訳。

2012年12月『가라타니 고진』 曹泳日による韓国語訳。

2013年2月心靈工坊より『世界史的結構』 林暉鈞(国立台南芸術大学)による中国語(繁体字)訳。

2014年デューク大学出版局より『The structure of world history ~from modes of production to modes of exchange~[5] マイケル・ボーダッシュ(日本のポピュラー音楽を論じた『さよならアメリカ、さよならニッポン』の著者。シカゴ大学准教授)による英訳[6]

2017年Metis Yayıncılıkより『Dünya Tarihinin Yapısı: Üretim Tarzlarından Mübadele Tarzlarına[7]』Ali Karatayによるトルコ語訳。

2018年CNRSより『Structure de l'histoire du monde』Isabelle Flandrois・浅利誠による仏訳。

脚注[編集]

書誌情報[編集]

  • 柄谷行人『世界史の構造』(岩波書店、2010年 改版、岩波現代文庫、2015年)

関連項目[編集]

関連文献[編集]