中院流

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

移動: 案内検索

中院流(ちゅういんりゅう)は、真言宗東密)の事相(じそう)の法流の一つ。明算(めいざん)(中院阿闍梨)(1021~1106)が派祖。小野流系の法流。高野山に伝わる代表的な事相の法流であるが野澤根本十二流には入っていない。

真言宗における事相の意義に関しては、真言宗を参照のこと。

目次

由来[編集]

明算は高野山定誉(祈親上人・持経上人)のもとに高野山の復興のために尽力した。定誉滅後に小野流の成尊より受伝した。高野山の中院(弘法大師御住坊)に住して、空海弘法大師)より真然に相承(受け継がれた)された秘訣(修法の方法や修法に関する決まりごとなど)に精通していたため、多くの僧侶が事相などの修学のために明算のもとを訪れたという。

中院流系譜[編集]

中院流の四度加行(しどけぎょう)[編集]

高野山内で伝法灌頂を受法する場合、中院流の次第をもとにした四度加行(しどけぎょう)を高野山にある高野山真言宗の寺院(高野山大学で行う場合の加行道場(大菩提院)などもある。また、高野山以外の地域に所在する高野山真言宗寺院で行う場合もある。)で行う。現在、中院流では、四度加行と併せて理趣経加行を行うことが多い。またこの他に護身法加行を四度加行に入るより前に行うことがある。なお、伝法灌頂は、ほとんど高野山内の寺院(宝寿院)で行われる。

真言宗では四度加行は共通の名称だが、中院流以外の他の法流でも四度加行を行うが、行の内容や順序が違う場合がある。また、四度加行は真言宗の僧侶にとって必修であり、基本の行法(修法)である。また、四度加行を行うまでには、得度、受戒を経なければ行えない。

中院流の四度加行では、十八道(じゅうはちどう)・金剛界(こんごうかい)・胎蔵界(たいぞうかい)・護摩(ごま)の4つの段階があり、4つの段階それぞれに加行(けぎょう)・正行(しょうぎょう)がある。4つの段階を経て、伝法灌頂を受法する資格があり、伝法灌頂壇に入檀して、伝法阿闍梨位を得られる。

本尊[編集]

中院流と他の法流の違いを四度加行を例として挙げれば、十八道は、詳しくは十八道念誦頸次第(じゅはちどうねんじゅくびしだい)といい、18種類の印契・真言で構成されている。ここまでは他流でも同様であるが、そのときの本尊は、中院流で大日如来、三宝院流では如意輪観世音菩薩、伝法院流では、両部不二の大日如来である。

なお、中院流の四度加行中の本尊の仕様を記せば、十八道加行・正行・金剛界加行までは絵像で単独で描かれた金剛界大日如来を安置することになっている。単独の絵像がない場合は、金剛界曼荼羅を本尊とする。また、絵像の金剛界大日如来と弘法大師像・高野四社明神(絵像)を併せて安置することになっている。

金剛界正行・胎蔵界加行の間は金剛界曼荼羅を、胎蔵界正行には胎蔵曼荼羅を本尊とするが、ともに両界を掛ける。護摩加行の間は金剛界大日如来と両界を掛ける。当初より三幅(もしくは両界)を正面に安置し護摩正行まで掛け替えない場合も多い。護摩正行は不動明王を本尊とする。いずれも大師、明神を併せて掛けるのは先に同じである。

過程[編集]

中院流の四度加行の過程を記せば、十八道の正行に入るためには、懺悔滅罪のための行として108遍(もしくは21遍)の礼拝(らいはい)をして、読経・真言念誦をする礼拝加行(加行)を行う。その後、「十八道念誦頸次第」を行法する十八道の正行に入り、(十八道を終えたことになる)十八道の正行で用いた「十八道念誦次第」の行法が、次の金剛界の加行となり、つぎに金剛界への正行(金剛界念誦次第)に進み、金剛界の正行の行法が、胎蔵界の加行となる。(胎蔵界の正行は胎蔵界念誦次第を用いる)こうして加行・正行と繰り返して、護摩の正行(次第は「息災護摩私次第付不動」そくさいごまわたくししだいつけたりふどう)が終えるまで日数を決めて繰り返し行う。

しかし、次第(四度加行や修法の方法などを記した書物)を読むだけでは、事相の習得は出来ない。次第に記されていない阿闍梨(師)の口伝(師から弟子への面授)が不可欠であり、この口伝に基づいた作法と次第の内容を行うことが事相を習得することであり、また、このことが事相の流派が多く分かれた理由でもある。しかし現代においては、時間が無い、受ける人数が多いが教える師が少ない、などの理由で大きな部屋に集められ、師が早口で言うのをコピー配布されたテキストを見ながら急いでこなしていくのが現状で、建前である口伝面授というのが、教える事において逆に柔軟性を欠く原因になっているとも言える。

中院流では四度加行を、近頃は通常100日間行う。日数を定めるようになってきている。以前は長期間にわたり行っていたが、後になり日数を定めるようになった。

四度加行は、一日に三座、初夜(午後7時)・後夜(午前4時)・日中(午前10時)行い、四度加行を中断した場合は最初からやりなおすことになっている。また、四度加行中は斎戒沐浴を行い、修法中に便所に行って中座した場合は、直ちに水浴して身体を清浄にしてからでないと修法が行えないなど、厳格な規則がある。しかし厳冬期においては必ずしも守られていない。

法流の伝授[編集]

(真言宗で)事相の伝授を受けるためには、必ず、事相の教えを乞う、阿闍梨(師)より許可灌頂(こかかんじょう)を受けなければならない。

四度加行を行う過程で、加行を行うための作法で必要とされる事相の伝授が適宜、行われるが、伝法灌頂を受けていないと伝授出来ない行法(修法)があるため、事相の一流伝授を受けるためには伝法灌頂を受けていることが必須条件である。中院流の一流伝授を受けた後、事相の研鑽のためにさらに、他の法流を数年の期間をかけて学んで、(僧侶によっては、寺院の寺務があるため、学び終えるまでの期間には個人差がある)法流の一流伝授を受ける僧侶も多い。

他法流に自分が学びたい修法があった場合、その修法だけの伝授を受けることが出来る。これを「抜き伝授」という。

伝授の内容は、指導する阿闍梨(師)により細部に関しては個人差がある。これは伝授をする阿闍梨(師)が中院流以外の流派の伝授を受けていたりなどの理由が挙げられる。事相の伝授には面授(口伝)を重んじたためであり、このことが事相の流派が分派した理由でもある。中院流においても作法の細部に関しての差異は問題視されない。

高野山内では中院流を教えている僧侶(寺院)がほとんどだが、中院流と他の法流を受け継いでいる僧侶(寺院)が高野山内にあり、希望する僧侶に他の法流を教えることもあるが、現在では以前に比べ少なくなっている。

関連項目[編集]