重言
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重言(じゅうげん、じゅうごん)は、「馬から落馬する」「馬がいななく」のように、同じ意味の語を重ねる日本語の修辞技法。意味を強調したり語調を整えるため[1]、あるいは理解を確実にさせるために用いられる[2]。二重表現、重複表現ともいう。有名な重言としては長嶋茂雄が現役引退時のスピーチで述べた「我が巨人軍は永久に不滅です」がある。
「頭痛が痛い」などの修飾語と被修飾語の意味が重複する形が重言となる。「巨大」「重複」「表現」など類義の漢字を重ねた熟語は、通常、重言とはいわない。ただし、同じ漢字を重ねた「堂々」「悠々」などの熟語を、畳語の類義語として重言ということもある。
また、「びっくり仰天」「むやみやたら」[3]「えんどう豆」[4]「好き好んで」[5]「眉をひそめる」などのように、言葉の変化とともに二重表現としてではなく一つの単語や慣用表現として認識されるようになってきた例もある。さらには「きつねうどん」のように、地域によって意味が重複するかどうかの認識に差がある場合もある。
ブランド名と商品名の通称が同じ場合、○○の○○となる場合があるが、これは重言では無い。(ユナイテッドコーヒーの「カフェグレコのカフェグレコ」や、江崎グリコの「グリコのグリコ」など)。また、裁判員制度の通称の「裁判員裁判」も重言では無い。
特に日本語で顕著であるが、外来語は語句の意味を考えないで適当な言葉を付加することが多いため、重言になりやすい。
例[編集]
日本語と外来語の重複[編集]
- 排気ガス - 気はガスという意味である。排気、排ガスが正しい。
- チゲ鍋
- ロコモコ丼
- シェリー酒 - シェリー(英語: sherry)だけで「酒」の意味がある。
- ラム酒 - ラム(英語: rum)だけで「酒」の意味がある。
- ハングル文字 - グルは朝鮮語で「文字」の意味がある。
- マスケット銃 - マスケット(英語: musket)に「銃」の意味がある。
- クーポン券 - クーポン(フランス語: coupon)に「券」の意味がある。
- ニポポ人形 - ニポポはアイヌ語で「人形」の意味がある。
- 設計競技#デザイン設計競技 - デザインは英語で「設計」の意味があるが、「デザイン」を意匠という意味で使えば重言では無い。
固有名詞[編集]
- 銀行では、「○○バンク銀行」という表記がある。バンク(英語: bank)に銀行という意味があるが、銀行法第六条に定められた「銀行は、その商号中に銀行という文字を使用しなければならない。」という規定の為である。
- TVKテレビ - かつてのテレビ神奈川の略称
- KLMオランダ航空 - KLMのLがLuchtvaart(航空)という意味で有り重複している。英語表記でもKLM Royal Dutch Airlinesと重言である。
- ゆうメール
- ディズニーリゾートラインの全ての駅(リゾートゲートウェイ・ステーション駅・東京ディズニーランド・ステーション駅・ベイサイド・ステーション駅・東京ディズニーシー・ステーション駅)
- DCコミックス - Cはコミックスの意味であるため重言。英語表記でも同様である。
外来語と外来語の重複[編集]
- ワインビネガー -ビネガー(英語: vinegar)の語源的意味は「すっぱい (egar) ワイン (vin)」。
- サルサソース - サルサ(スペイン語: salsa)は「ソース」の意味。
- グレイビーソース - グレイビー(英語: gravy)は肉汁(ソース)という意味。
- マグカップ - マグ(英語: mug)にカップの意味がある。
- ガードマン - ガード(英語: guard)に「警備員」の意味がある。
- フラダンス -フラ(ハワイ語: hula)は「ダンス」の意味。
固有名詞(外来語と外来語の重複)[編集]
- サハラ砂漠 - 「サハラ」はアラビア語で「砂漠」の意味。
- ゴビ砂漠 - 「ゴビ」はモンゴル語で「砂漠」の意味。
- リオ・グランデ川 - 「リオ (rio)」はスペイン語で「川」。「グランデ (grande)」は「大きい」。
- メナム川 - 「メナム (แม่น้ำ)」はタイ語で「川」。現在では非タイ語話者による勘違いと見なされ、同呼称が使用されることはほとんど無くなった。
古典[編集]
「浄瑠璃『鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)』(近松門左衛門作、1717年初演)で重言という言葉が使われている。この作品に何度か出てくる「馬から落ちて落馬」というフレーズは有名で、典型的な重言の例として頻繁に言及される。
竜の駒にもけつまづき、馬から落ちて落馬いたしたと、片言やら重言やら
これが現代にも伝わり、「古の昔、武士の侍が―」と頭に挿入される言葉遊びになった。
荘子の「重言」[編集]
荘子は、自著『荘子』にて寓言、重言、卮言という3つの文章術を提示したが、ここでいう重言とは古の偉人の言葉を引用して説得力を増す話法を指し、同義語の重複表現とは無関係である。