京都大学の立て看板

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
石垣には京都大学の学生が作製した立て看板が並んでいた(2010年撮影)

京都大学の立て看板(きょうとだいがくのたてかんばん)では、京都大学吉田キャンパスの周辺に設置されている立て看板について記述する。

概要[編集]

京都大学吉田キャンパスの周辺には学生サークルなどが設置した立て看板が多く設置されている[1]立て看(たてかん)、タテカンと通称される。この立て看板は「京大の文化」ともされ、内容も政治的な主張から集会の案内に至るまで様々である[2]。これらの立て看板は絵柄を直しながら先輩から看板を受け継ぐ伝統がある[3]学生運動が盛んだった1960年代から70年代と比べて、その数は減ってきており[2]、2012年時点では、正門や百万遍、東山東一条の交差点の付近に並んでいた立て看板の数は40枚ほどであった[1]

他の大学では規制やSNSを通じた発信などの代替手段の確保などによって立て看板の数は減っている[4]

2018年の撤去問題[編集]

大学が位置する京都市(以下、市)は、京都大学(以下、大学)に対して立て看板が市の屋外広告物設置条例に反しているとして撤去を求めていた[5]。また、市は道路法上での不法占用であると指摘もしている[6]。市の条例は2007年に規制が強化され、市内の他の場所では既に規制が守られていた[5]。こうした背景を受けて、大学では2017年12月に立て看板を大幅に規制する「京都大学看板規程」を発表した[7]。この規程では道路に面した部分には立て看板の設置を認めず、キャンパス内部でも大学の公認団体のみが看板の設置を認められる旨である[7]。この規程は2018年5月1日から適用が開始されることとなった[8]。この規制に反発する学生は連名で公開の場での話し合いや説明会を求める要求書を大学に提出した[8]

規程の運用日までに大半の看板が自主的に撤去された[9]。しかし、この時点でも残っている看板は約30枚あり[9]、大学の職員が看板に撤去の通告書を貼って撤去を促した[10]。立て看板の撤去に反対する学生は通告書を剥がしていき、その際に職員ともみ合いとなった[10]。また、教員や学生らが製作した垂れ幕によって対抗する場面も見られた[9]。同年5月13日には道路に面して設置された立て看板が一時全て撤去された[11]。この日は日曜日の早朝だったため大きな混乱は生じなかったが、午後には撤去に抗議する看板が再び立てられた[12]。この抗議の看板は「こざっぱりとしてはる。」と京都弁で皮肉が書かれていた[13]。また、看板が撤去された石垣にはA4用紙7枚で一連の立て看板問題を解説する貼り紙も貼られていた[13]

撤去された看板は大学内の保管場所に置かれていたが、14日深夜に何者かが保管場所から看板を持ち出し再び正門前などに設置した[14]。職員が防犯カメラを確認し、警察に通報した[15]。保管場所のフェンスは曲げられ、人の入る隙間があった[14]。その後、学生ら30人ほどが集まり、看板を持ち出して行った[15]。この時に学生らと職員がもみ合いになったが、けが人はいなかった[15]。大学は器物破損容疑として京都府警川端警察署に被害届を提出した[16]。なお、この再び設置された看板に対して破壊行為が行われ、看板5枚が引き倒されるなどしていた[17]18日深夜には看板は再び撤去された[18]

その後も「攻防」が繰り返され、大学や市を批判する看板や貼り紙が現れている[19]

2018年5月19日から20日の2日間、京都市立芸術大学で立て看板の展示会が行われ、自主的に撤去された立て看板38枚が展示された[3][20]

5月22日には京都大学出身の弁護士が連名で「表現の自由を脅かす」として看板撤去の措置を見直すよう声明をあげた[21]。また、京都市の市民約30人が「立て看文化を愛する市民の会」を結成し、23日に市条例の改正を求める要望書を市に提出し[22]31日に立て看板規制の見直しを求める要請書を大学に提出した[23]

立て看板の3度目の撤去は5月31日に行われ、一連の問題を批判した貼り紙が撤去されたことに対して「貼り紙は看板規程の対象外」であることを批判するビラが提示された[24]。さらに4度目の撤去が6月8日に行われたが、この時は石垣そのものを描いた看板も撤去されている[25]。また、4度目の撤去後には看板撤去に抗議する卒業生が「私を撤去せよ」の立て札を持つ「人間の立て看板」が登場した[25]

看板の設置規制を見直す声を受けて、学外の通行人からも見える位置に看板の設置場所を新設する方針が6月14日に明らかとなった[26]。そして、10月1日から新しい設置場所が使用開始となった[27]

7月13日には石垣に立て看板の代わりとして立てかけられていた畳が燃えるトラブルが発生した[28]。京都大学特別教授の本庶佑らに対するノーベル生理学・医学賞受賞を祝福する立て看板や貼り紙も設置されていたが、看板規程に基づいてすぐに撤去された[29]

11月22日の学園祭(11月祭)では立て看板の歴史や規制の経緯をテーマにした企画展が開かれた[30]

京都大学総長の山極寿一6月13日に立て看板問題について公的に初めて言及し、法令遵守のため撤去規制の見直しをするつもりがないことを明言した[31]。その後7月20日には「看板がなくなって寂しい」旨の発言とともに市の条例の中で改善策をとることを述べた[32]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b 佐藤剛志 (2012年10月23日). “(週刊まちぶら)京滋版 東大路通の学生街 左京区 自由育む活気、今も”. 朝日新聞. 2012-10-23 
  2. ^ a b “京大立て看板、景観損ねる? 「広告物」市が条例違反指摘”. 朝日新聞. (2017年11月26日). 2017-11-26 
  3. ^ a b “自主撤去タテカン、これが「表現」 京都市立芸大で展示会”. 京都新聞. (2018年5月19日). 2018-05-19 
  4. ^ 斉藤寛子・足立耕作 (2018年1月16日). “大学、去りゆく立て看板 ルール徹底・告知SNSに”. 朝日新聞. 2018-01-16 
  5. ^ a b “京大タテカン、撤去へ 学生、再考要求も大学拒否 来月規定適用”. 朝日新聞. (2018年4月29日). 2018-04-29 
  6. ^ 京都市都市計画局広告景観づくり推進室 (2018年7月1日). “京都大学の立て看板について”. 京都市. 2018年11月15日閲覧。
  7. ^ a b 京都大学立看板規程”. 京都大学 (2017年12月19日). 2018年11月13日閲覧。
  8. ^ a b “京大立て看規制、大学は対話拒否 学生と対立、自由の学風どこへ”. 京都新聞. (2018年4月29日). 2018-04-29 
  9. ^ a b c “立て看撤去「タレカン」で抵抗も 京大新ルールに賛否”. 京都新聞. (2018年5月2日). 2018-05-02 
  10. ^ a b “京都大、立て看板の撤去通告 学生ら抗議で一時騒然”. 京都新聞. (2018年5月1日). 2018-05-01 
  11. ^ “京大立て看板、市条例受け撤去 大学方針に学生反発も”. 京都新聞. (2018年5月13日). 2018-05-13 
  12. ^ “京大立て看撤去、学生も賛否両論 午後には抗議の立て看も”. 京都新聞. (2018年5月14日). 2018-05-14 
  13. ^ a b “立て看撤去の京大に皮肉看板 「こざっぱりとしてはる。」”. 京都新聞. (2018年5月14日). 2018-05-14 
  14. ^ a b “保管場所から深夜搬出…立て看板再び設置 京大に十数枚”. 京都新聞. (2018年5月15日). 2018-05-15 
  15. ^ a b c “立て看再設置「看過できない」 京大、被害届提出へ”. 京都新聞. (2018年5月16日). 2018-05-16 
  16. ^ “フェンス破壊で京大が被害届 撤去立て看板運び出し問題”. 京都新聞. (2018年5月16日). 2018-05-16 
  17. ^ “再設置の京大タテカン、破壊 職質に「むかつく」”. 京都新聞. (2018年5月17日). 2018-05-17 
  18. ^ “京大立て看、大学側が再び撤去 前回撤去後に学生が設置”. 京都新聞. (2018年5月18日). 2018-05-18 
  19. ^ “京都大:立て看攻防、持久戦に 「門川はん、いけずやわぁ」 学長を皮肉るイラストも”. 毎日新聞. (2018年5月26日). 2018-05-26 
  20. ^ 菅沼舞 (2018年5月20日). “「立て看板」展:西京・市立芸大できょうまで”. 毎日新聞. 2018-05-20 
  21. ^ “京大立て看撤去「表現の自由脅かす」 出身弁護士連名で声明”. 京都新聞. (2018年5月22日). 2018-05-22 
  22. ^ “京大立て看板撤去、撤回を要請 周辺住民、市条例改正も”. 京都新聞. (2018年5月23日). 2018-05-23 
  23. ^ “京大立て看撤去「表現の自由否定」 市民グループが見直し要請”. 京都新聞. (2018年5月31日). 2018-05-31 
  24. ^ “京都大:立て看、3回目の強制撤去 すぐさま批判のビラ”. 毎日新聞. (2018年6月1日). 2018-06-01 
  25. ^ a b 菅沼舞 (2018年11月15日). “京都大:立て看、4回目の撤去 抗議の“人間立て看”登場”. 毎日新聞. 2018-11-15 
  26. ^ “京大、立て看設置場所を新設方針 学外から見える西部構内に”. 京都新聞. (2018年6月14日). 2018-06-14 
  27. ^ “京大のタテカン、規定守り「復活」 /京都府”. 朝日新聞. (2018年10月17日). 2018-10-17 
  28. ^ “京大「立て看板」の畳燃える 現場に花火、燃え移る?”. 京都新聞. (2018年7月13日). 2018-07-13 
  29. ^ “本庶氏祝福の立て看板もダメ 京大がすぐ撤去”. 京都新聞. (2018年10月2日). 2018-10-02 
  30. ^ “「学園祭のテーマは当局に撤去されました」京大で立て看展”. 京都新聞. (2018年11月23日). 2018-11-23 
  31. ^ “立て看撤去「対話できる訳ない」 京大総長、法令順守を強調”. 京都新聞. (2018年6月13日). 2018-06-13 
  32. ^ “タテカン問題で改善措置を検討 京大総長”. 朝日新聞. (2018年7月21日). 2018-07-21 

関連項目[編集]