京鹿子娘道成寺

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九代目市川團十郎の白拍子花子 四代目歌川国政 画、『白拍子花子 市川團十郎』 。明治14年4月東京市村座で上演の 『鎮西八郎英傑譚』から中幕『春色二人道成寺』を描いた役者絵。
九代目市川團十郎の白拍子花子
四代目歌川国政 画、『白拍子花子 市川團十郎』 。明治14年4月東京市村座で上演の 『鎮西八郎英傑譚』から中幕『春色二人道成寺』を描いた役者絵。

娘道成寺』(むすめ どうじょうじ)は、歌舞伎舞踊の演目のひとつ。またその伴奏音楽である長唄の曲名。

正式の外題は『京鹿子娘道成寺』(きょうがのこ むすめ どうじょうじ)。

かつては道成寺の伝説を題材にした「娘道成寺もの」の演目が複数あり、それぞれお家の芸である独特の所作や振付けを盛り込んだものだった。外題も初代瀬川菊之丞の版は『百千鳥娘道成寺』(ももちどりー)、初代中村富十郎の版は『京鹿子娘道成寺』などと異なる枕語を添えて区別していた。現在に至るまでその形が伝わるのは中村富十郎家の版のみである。

目次

概要

道成寺に基づく。筋もほとんど同じである。

構成

全体は道行、問答、長唄に大きく分けられる。 幕が開くと「聞いたか、聞いたか」「聞いたぞ、聞いたぞ」のセリフを言いながら大勢の所化が登場。(聞いたか坊主)舞尽くしのセリフがある。この所化は、襲名披露の上演の際は幹部俳優が特別出演(御馳走)で出る。

  • 第一段
    • 道行:花道から花子が登場。音楽は義太夫で、花子のに対する恨みを語る。
    • 問答:花子と所化が珍問答をする。
    • 長唄:ほとんど白拍子の一人舞台である。音楽は長唄で、出囃子で歌われる。
  • 第二段
    • 乱拍子:花子が烏帽子を付け、能をまねて踊る。
    • 急の舞:
  • 第三段
    • 中啓の舞:歌舞伎らしい踊りとなる。中啓(扇)を持って踊る。歌詞は能の『三井寺』から取った鐘づくしである。
  • 第四段
    • 手踊:恋の切なさを娘姿で踊る。
  • 第五段
    • 鞠歌:少女の鞠つきをまねて踊る。歌詞には遊郭を詠み込む。
  • 第六段
    • 花笠踊り:古い流行歌『わきて節』から取った踊り。赤い笠を持って踊る。
    • 合方(チンチリレンの合方)
  • 第七段
    • 手ぬぐいの踊り(くどき):女の恋心を歌う。
    • 鞨鼓の合方
  • 第八段
    • 山づくし(鞨鼓の踊り):22の山の名前を詠み込む。胸に鞨鼓を着けて踊る。
  • 第九段
    • 手踊: 「ただ頼め」の唄で踊る少女らしい踊り。
  • 第十段
    • 鈴太鼓:鈴太鼓を手に持って踊る。テンポの速い踊り。田植え歌。
  • 第十一段
    • 鐘入り:鐘に取り憑く。これ以降は後に付け加えられたもので、演じられないこともある。
  • 第十二段
    • 祈り:坊主の祈り。このあと花四天の捕り手たちが花道にかかかり、「とうづくし」を演じる。この間、鐘の中では白拍子から蛇体への衣装替えが行われていることになり、全般的に一種の間奏曲の働きを行っている。
  • 第十三段
    • 蛇体:恐るべき姿の後ジテ(蛇体)が現れる。
  • 第十四段
    • 押戻し:後ジテが花道に。押し戻し(大館左馬五郎)があって、本舞台に戻る。ここでは荒事芸が中心となる。最後は、捕り手が蛇の形を表し、後ジテが台の上で、押し戻しが元禄見得でそれぞれ決まり幕となる。

あらすじと見所

道成寺を舞台とした、安珍・清姫伝説の後日譚。

清姫の化身であった大蛇に鐘を焼かれた道成寺は女人禁制となっていた。そして永く鐘がなかったが、ようやく鐘が奉納されることとなり、供養が行われることになった。

そこに、美しい花子という女がやってきた。聞けば白拍子だという。鐘の供養があると聞いたので拝ませてほしいという。小僧たちは白拍子の美しさに、舞を舞うことを条件として入山を許してしまう。

花子は舞いながら次第に鐘に近づく。小僧たちは花子が実は清姫の化身であったことに気づくが時遅く、清姫の魔力に翻弄される。とうとう清姫は鐘の中に飛び込む。と、鐘の上に大蛇が現れる。

上記があらすじであるが、構成の章で見た通り作品のほとんどが主役による娘踊りで占められている。つまり、このあらすじは舞踊を展開するための動機と舞台を用意するための設定であって、劇的な展開を期待すると作品の方向性を見失ってしまう。まずは、演者の踊りそのものを鑑賞するのがこの作品の要点である。

歌舞伎舞踊のエッセンスとして

舞の華麗さ、品格の高さが要求されるのみならず、1時間近い時間ほとんど一人で踊りきるため、芸の力と高度な技術に加え、並はずれた体力が必要である。歌舞伎舞踊の頂点をなす作品であり、過去多くの名優が演じた。初演の初代中村富十郎以後は、三代目坂東三津五郎四代目中村芝翫九代目市川團十郎五代目中村歌右衛門六代目尾上菊五郎七代目坂東三津五郎六代目中村歌右衛門七代目尾上梅幸などの名優が演じ、現在では七代目尾上菊五郎十八代目中村勘三郎四代目坂田藤十郎五代目坂東玉三郎が得意としている。

なお娘道成寺には立役の『奴道成寺』(やっこ どうじょうじ)や二人の白拍子が踊りを競う『二人道成寺』など、さまざまな派生形がある。

九代目團十郎は十代の頃、『娘道成寺』を毎日踊ることを日課としていた。この踊りには、踊りの要素のすべてが入っており、基礎訓練には格好の教材だったからである。

関連項目

今日は何の日(5月27日

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