G7
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先進7ヶ国と欧州連合 |
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G7(ジーセブン)は、英語: Group of Seven の略で、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つ[1]の主要な先進国のことである。
概要[編集]

イタリアとカナダが加わる以前は、仏、米、英、西独、日[2]の5か国が参加するG5(ジーファイブ)と呼ばれていた。1975年にイタリアが参加し第1回先進国首脳会議が開催されG6(ジーシックス)となる。その後1976年にカナダが加わり第2回先進国首脳会議が開催されG7となった。現在では、首脳や各大臣による会合は全てG7の枠組みとなっている。カナダ以外の6か国は20世紀前半までの帝国主義時代における列強にあたる[3][4]。
1998年サミットから2014年のロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入までは、ロシア連邦もサミットに参加していたため、G8(ジーエイト)と呼ばれていた[5]。
なお、ロシアの参加によって首脳会議や閣僚会合がG8という枠組みとなっていた時代においても、先進7か国財務大臣・中央銀行総裁会議に関してはG7の枠組みで活動していた。そのため一時期は「G7=先進国財務大臣、中央銀行総裁会議」の略称として用いられていたとされる。
- 経緯の詳細および開催された首脳会議の一覧等については「主要国首脳会議」を参照
開催[編集]
回 | 年月日 | 開催国 | 開催地 | 備考 |
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1 | 1975年11月15日 - 17日 | フランス | ランブイエ | カナダ・ロシア(当時はソビエト連邦)を除く6か国で開催。 |
2 | 1976年6月27日・28日 | アメリカ合衆国 | サンフアン | カナダが参加し、7か国となる。 |
3 | 1977年5月7日・8日 | イギリス | ロンドン | |
4 | 1978年7月16日・17日 | 西ドイツ | ボン | |
5 | 1979年6月28日・29日 | 日本 | 東京 | |
6 | 1980年6月22日・23日 | イタリア | ヴェネツィア | 日本は大平正芳首相が衆参同日選挙中に急死したため、大来佐武郎外相が代理出席。 |
7 | 1981年7月20日・21日 | カナダ | オタワ | |
8 | 1982年6月4日 - 6日 | フランス | ヴェルサイユ | |
9 | 1983年5月28日 - 30日 | アメリカ合衆国 | ウィリアムズバーグ | |
10 | 1984年6月7日 - 9日 | イギリス | ロンドン | |
11 | 1985年5月2日 - 4日 | 西ドイツ | ボン | |
12 | 1986年5月4日 - 6日 | 日本 | 東京 | |
13 | 1987年6月8日 - 10日 | イタリア | ヴェネツィア | |
14 | 1988年6月19日 - 21日 | カナダ | トロント | |
15 | 1989年7月14日 - 16日 | フランス | ラ・デファンス | 「アルシュ・サミット」と呼ばれる。フランス革命200年祭(パリ祭)に合わせて開催。 |
16 | 1990年7月9日 - 11日 | アメリカ合衆国 | ヒューストン | |
17 | 1991年7月15日 - 17日 | イギリス | ロンドン | ソビエト連邦のミハイル・ゴルバチョフ大統領がゲスト参加 |
18 | 1992年7月6日 - 8日 | ドイツ | ミュンヘン | |
19 | 1993年7月7日 - 9日 | 日本 | 東京 | |
20 | 1994年7月8日 - 10日 | イタリア | ナポリ | |
21 | 1995年6月15日 - 17日 | カナダ | ハリファックス | |
- | 1996年4月19日・20日 | ロシア | モスクワ | 核の安全のための特別サミット。※非公式 |
22 | 1996年6月27日 - 29日 | フランス | リヨン | |
23 | 1997年6月20日 - 22日 | アメリカ合衆国 | デンバー | |
24 | 1998年5月15日 - 17日 | イギリス | バーミンガム | 初のG8公式サミットかつ、英国初の地方開催サミット。先進国とは言い難い状態だったロシアが加わったため「先進国首脳会議」から「主要国首脳会議」に改称 |
25 | 1999年6月18日 - 20日 | ドイツ | ケルン | |
26 | 2000年7月21日 - 23日 | 日本 | 名護市 | 通称「九州・沖縄サミット」。日本初の地方開催サミット |
27 | 2001年7月20日 - 22日 | イタリア | ジェノヴァ | |
28 | 2002年6月26日・27日 | カナダ | カナナスキス | |
29 | 2003年6月2日・3日 | フランス | エビアン | |
30 | 2004年6月8日 - 10日 | アメリカ合衆国 | シーアイランド | |
31 | 2005年7月6日 - 8日 | イギリス | グレンイーグルズ | ロンドン同時爆破事件が起こり、予定が大幅変更に。 |
32 | 2006年7月15日 - 17日 | ロシア | サンクトペテルブルク | ロシアで初開催。 |
33 | 2007年6月6日 - 8日 | ドイツ | ハイリゲンダム | |
34 | 2008年7月7日 - 9日 | 日本 | 洞爺湖町 | 通称「北海道・洞爺湖サミット」 |
35 | 2009年7月8日 - 10日 | イタリア | ラクイラ | 2009年4月6日のラクイラ地震で被災したため、国際的な被災地支援を狙い、開催地をラ・マッダレーナから急遽ラクイラに変更。 |
36 | 2010年6月25日 - 27日 | カナダ | ハンツビル | G8に続き、G20(20か国・地域首脳会議)も同地で開催された。「ムスコカサミット」とも呼ばれる。 |
37 | 2011年5月26日・27日 | フランス | ドーヴィル | |
38 | 2012年5月18日・19日 | アメリカ合衆国 | キャンプデービッド | |
39 | 2013年6月17日・18日 | イギリス | ロック・アーン | |
- | 2014年3月24日 | オランダ | デン・ハーグ | 核セキュリティ・サミット開催と同時にクリミアのロシア編入に関しての緊急開催。 |
40 | 2014年6月4日・5日 | ベルギー | ブリュッセル | ロシア・ソチで開催予定であった。デン・ハーグで行われた臨時サミットでロシアの参加資格停止が決定され、G8からG7となる公式サミット。 |
41 | 2015年6月7日・8日 | ドイツ | エルマウ | |
42 | 2016年5月26日・27日 | 日本 | 志摩市 | 通称「伊勢志摩サミット」 |
43 | 2017年5月26日・27日 | イタリア | タオルミーナ | |
44 | 2018年6月8日・9日 | カナダ | シャルルボワ | |
45 | 2019年8月24日 - 26日 | フランス | ビアリッツ | |
- | 2020年6月10日 - 12日(中止)[6] | アメリカ合衆国 | 6月に行われるはずだったが、新型コロナウイルスの世界的大流行のため延期となった[7]。その後、ワシントン近郊での開催を検討[8]されたが実現出来ず、後述のように参加国の問題で合意がされないこともあり、11月、アメリカの政権交代(ドナルド・トランプ→ジョー・バイデン)が確実となり、また新型コロナウイルスの蔓延も収まらず結局開催されなかった。ただし3月16日及び4月16日にG7首脳テレビ会議が開催されている[9]。 | |
46 | 2021年 | イギリス | 未定 |
G7の今後のあり方[編集]
近年は中国やインドなどの新興国の急速な経済的発展の反面G7の経済力と影響力低下[10][11]に伴い、世界経済に関してはG7にEUとロシアおよび新興経済国11か国を加えたG20の枠組みで議論される事が多くなっている[12][13][14]。
2010年2月5日から6日まで2日間の日程でカナダのイカルイトで開幕したG7の財務大臣・中央銀行総裁会議では、世界経済の現状について意見交換する夕食会の後、膝詰めで話し合う「炉端対話」が行われ、フランスのクリスティーヌ・ラガルド財務相からG7の今後のあり方が提案されたが結論は出ず、継続議論となった。日本からは菅直人財務相と白川方明日銀総裁が出席した[15]。
現在では、ロシアによるクリミア併合や中国の海洋進出などを受けて、法の支配や基本的価値の共有を標榜するG7の結束は高まっている[16]。だが、価値観外交よりも国益外交を主張するトランプ大統領誕生より2019年には初の首脳宣言見送りとなった。
2016年5月31日、日本の岸田文雄外務大臣(当時)は、記者会見で「G20の台頭」に対して、「G7は特に、自由、民主主義、法の支配、人権と言った基本的な価値観を共有する主要国の枠組みだと思います。」「国際社会が経済も含めて不透明化する中にあって、この枠組の意義、存在感は益々高まっていくのではないか、このように認識しております。」(一部抜粋)と語っている[17]。
2020年6月、同年の開催国にあたるアメリカのトランプ大統領はG7の枠組みを「時代遅れだ」と批判し、ロシア、オーストラリア、インド、韓国を加えG10またはG11に拡大したい意向を示したが、新型コロナウイルスの流行を背景に「対中包囲網」という意識もあると見られる。ただし、G7全諸国の承認が必要であるのが上限でイギリスやカナダはロシアの参加に反対し、ロシアも中国排除の仕組みに意味がないと難色を示した[18][19][20]。韓国に関しては中国メディアからは「韓国自体国力、影響力のない国」と批判[21][22]された。日本政府高官が米政府に対し、北朝鮮問題との理由で韓国の参加を拒否[23][24][25]を伝えたと日本のメディアは報じている。また、EU外相のジョセップ・ボレルは「米国(トランプ大統領)にG7の枠組みを変える権限など一切ない。」と米国を批判[26][27][28]している。その後7月27日にはドイツが韓国の参加を拒否した[29]。
現在の首脳[編集]
脚注[編集]
- ^ “G20とは何ですか? G7とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan”. www.boj.or.jp. 2020年7月27日閲覧。
- ^ “「日本こそがアジアで正真正銘の先進国」と言われるのは一体なぜか=中国報道 (2020年5月5日)” (日本語). エキサイトニュース. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “サミットに注目! そもそもなぜこの7カ国? | 就活ニュースペーパーby朝日新聞 - 就職サイト あさがくナビ” (日本語). asahi.gakujo.ne.jp. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “G7サミットに象徴される帝国主義時代とたいして変わっていない統治の仕組み[橘玲の世界投資見聞録]” (日本語). 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン. 2020年6月20日閲覧。
- ^ G7首脳会談 「ロシアのG8参加停止」を採択 G7と対立 「新たな冷戦時代」に突入2018-11-02閲覧。
- ^ 米議会、ロシアのG7復帰に反対ParsToday2019年12月4日
- ^ トランプ米大統領、6月のG7首脳会議をテレビ会議で実施へ ロイター2020年3月20日
- ^ “トランプ氏、G7サミットの通常開催検討 「正常化の象徴に」”. 産経新聞. (2020年5月21日) 2020年5月27日閲覧。
- ^ “2020 G7サミット”. www.mofa.go.jp. 外務省 (2020年4月16日). 2020年12月16日閲覧。
- ^ “よくわかるG7 世界シェアと勢力” (日本語). 日本経済新聞社 〜ビジュアルデータ. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “G7の名目GDP(USドル)ランキング - 世界経済のネタ帳” (日本語). ecodb.net. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “開催迫るG20大阪サミット、G7とは何が違う? 坂東太郎のよく分かる時事用語(THE PAGE)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “形骸化が進むG7とG20機能強化の必要性 | 2019年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)” (日本語). www.nri.com. 2020年6月20日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “「G7サミット開幕 存在問われる会議に」(時論公論)” (日本語). 解説委員室ブログ. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “情報BOX:イカルイトG7、景気刺激措置と出口戦略に関する要人発言”. トムソン・ロイター. (2010年2月7日) 2010年12月24日閲覧。
- ^ 中ロの領土変更を批判 G7結束、サミット閉幕 - 日本経済新聞、2015年6月8日版
- ^ “岸田外務大臣会見記録”. www.mofa.go.jp. 外務省. 2020年2月19日閲覧。
- ^ “欧州、トランプ氏の中国包囲網「わな」警戒-G7欠席は最終手段だが” (日本語). Bloomberg.com (2020年6月15日). 2020年6月24日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2020年6月2日). “【主張】G7の延期 拡大より結束を優先せよ” (日本語). 産経ニュース. 2020年6月24日閲覧。
- ^ “トランプ氏、ロシアをG7に招待 英・カナダは…(写真=ロイター)” (日本語). 日本経済新聞 電子版 (2020年6月2日). 2020年6月24日閲覧。
- ^ “中国メディア「韓国はたいしたことないのに、なぜG7参加? 」(WoW!Korea)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年6月28日閲覧。
- ^ “トランプ氏の韓国G7招待に中国が「その国は大した力もない。意味ない」と上から目線(西岡省二) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2020年6月28日閲覧。
- ^ “日本、拡大G7の韓国参加に反対 対中、北朝鮮外交に懸念:東京新聞 TOKYO Web” (日本語). 東京新聞 TOKYO Web. 2020年6月28日閲覧。
- ^ “日本が、拡大G7の韓国参加に反対” (日本語). Pars Today (2020年6月28日). 2020年6月28日閲覧。
- ^ “日本、拡大G7の韓国参加に反対 対中、北朝鮮外交に懸念 | 共同通信 ニュース” (日本語). 沖縄タイムス+プラス. 2020年6月28日閲覧。
- ^ “米はG7枠組み変える権限なし、EU外相が批判 - SankeiBiz(サンケイビズ)”. www.sankeibiz.jp. 2020年7月6日閲覧。
- ^ “米はG7枠組み変える権限なし、EU外相が批判” (日本語). 産経ニュース. 2020年7月6日閲覧。
- ^ “トランプ氏にG7の枠組みを変える権限はない、EU外相”. www.afpbb.com. 2020年7月6日閲覧。
- ^ “日本に続きドイツも、韓国など含めるG7拡大に反対=韓国ネット落胆「外交力はゼロ」|ニフティニュース”. ニフティニュース. 2020年8月4日閲覧。
関連項目[編集]
- G8(主要国首脳会議)
- 先進国
- G77
- G20
- G24(中国、インド、中南米の反米諸国によって構成される。「主要国」はいずれも非加盟)
- ビッグ4
- 米中二極体制(G2)
- G3 / G4 / G5 / G10 / G15
- Gゼロ
- BRICs
- 財務大臣・中央銀行総裁会議